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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
85/114

水の章 対エリアス・ペール 第2ラウンドⅤ

 ○ 燃えるもの 燃やすもの


 ダァァン!!!


 体中から吹き出す煙を纏い。 

 リナはいつも以上に力強く。

 反撃に向けた、その一歩を踏み出した。


 そして、次の瞬間…。

 

 パァン!!!


 闘技場に、強烈な破裂音が響き渡る。


 (マリエ)

 「とらえた!?今度は完璧に!!」


 マリエの叫び声と同時に。

 攻撃を受けたエリアスは、数メートル吹き飛ばされる。


 (エリアス)

 「ッッッツ!?」

 「なん…!!だと!?」


 スピードを上げたリナの攻撃を、エリアスは辛うじて目の端でとらえていた。


 (エリアス)

 『速い!捌くのは無理だ!』


 即座に回避は不可能と判断。

 咄嗟に魔法を用い、水の膜で全身に纏う。

 これにより全身の防御を強化したのだ。


 歴戦の勇であり。

 ステラ一の拳法家としても名高い彼女。

 その彼女を以てしても。 


 肉眼で把握できたのは、リナが攻撃を放つ。   まさにその瞬間のみであった。

 それ以外の移動・抜刀等の攻撃に移るための予備動作。

 それら全て。とらえることは叶わなかったのだ。


 (エリアス)  

 『信じられん!!何だこの速さは!?』

 『速い!いや、速すぎる!!』


 『今までも十分速かったのに!!』

 『急激に何倍にも速度が上がっただと!?』


 『先程までのこやつの様子…。』 

 『あれは正に、心具との対話。』 

 『そのものであったはず…。』

  

 『それにより、あやつから魔力を感じるようになった。』

 『つまり…。こやつはあの時が、初めての対話であったはず…。』


 『まだ心具の真名も知らん。』

 『己の心を少し覗き見たに過ぎんはず…。』


 『それなのに。その程度で…。ホンの少し…。心具の使い方のコツを得ただけで…。』 


 『これ程までに突然!これ程の高みへ!?』

 『ここまで錬度があがるものか!?』


 『あり得るはずがない!!』

 『だがこれは事実!!』

 『あやつは既に私の意識の外!!』

 『黙視不可能なレベルの速さを手にしている!』


 『なんと言う才能!!』 

 『これが事実だというなら…!!』

 『こやつの資質は…!!』  

 『まさか!私以上に…!?』


 エリアスは驚嘆の思いを胸に、体制を立て直し、顔を上げる。

 しかし、そこにリナの姿はなく…。


 『いない!?まさか!?何処に…!?』


 咄嗟にエリアスが周囲を見回す。

 すると、既にリナの気配は直ぐ隣にまで迫っており…。


 ゾクッ…。

  

 エリアスの右半身に悪寒が走る~…。


 (エリアス)

 「くっ!!右か!?」


 得たいの知れぬ成長速度。

 黙視すら困難な人智を超えたスピード。

 対応は困難と思われたが…。


 エリアスは百戦錬磨ともいえる、その豊富な戦闘経験から。

 リナから僅かに漏れる殺気を感じとり、攻撃方向の察知を可能としていた。


 (リナ)

 「遅い。遅いのよ。感じとることさえ遅すぎる」

 「水の大陸の重鎮。エリアス・ペールともあろう人が!!」


 パァン!!!

  

 察知していた通り。

 リナは右から強烈な一撃を放つ。


 エリアスは咄嗟に右半身に防御を集中。

 辛うじて攻撃の直撃は間逃れた。


 しかし、攻撃の威力により。 

 再び彼女の体は、数メートル吹き飛ばされることになる。


 (エリアス)

 「ぐうっ!!!」

 

 『やはり速くて肉眼ではとらえきれん!!』

 『この私が気配で察知するのがやっとだと!?』

 『馬鹿げておる!!』 

 『ホントに無茶苦茶なスピードだ!』

    

 『更に悪いことに…。』

 『これ迄よりも遥かに攻撃そのものが重い!!』

 『速さが増した分。一撃の重さが、先程までの比ではなくなっている!?』 


 『防ぐだけで精一杯なのに、体が攻撃方向に大きく吹き飛ばされてしまう!!』

 『制御出来ん程、体制を大きく崩されている!』


 『体制が崩れるから、次の攻撃への対処が間に合わない!!』

 『準備が間に合わんから、結局次の攻撃の出所が探りきれん!!』


 『くそ!!なんて様だ!!』

 『たったの数発くらっただけなのに!』 

 『完全に奴のスピードに掻き回されておる!』

 『思考も行動も、全てが後手に回っておるわ!』


 手を着き。必死にバランスを取る。

 少しでも速く体制を立て直さなくてはならない。


 今度こそリナを見失わぬよう、急いで視線を向けるが…。


 (エリアス)

 『いない!?くそ!!やはり間に合わんか!!』

 『次は!?次は何処から!?』

 (観客)

 「エリアスさま!危ない!後ろです!!」

 (エリアス)

 『!?』


 観客の声により、背後のリナの気配に気が付く。

 咄嗟に背後の防御を固めた。


 パァン!!!

 

 再び破裂音が響き渡り。

 エリアスの体は逆方向に吹き飛ばされる。


 (エリアス)

 『やはりとらえきれん!!』

 『こうも簡単に背後を!!』

 『まずいぞ!やはり体制を整える暇がない!!』

 『攻撃の手も休みそうにない!!』

 『奴め!このまま一気に決める気か!?』


 パァン!!パァン!!パァン!!パァン!!


 スピードと勢いに乗ったリナの攻撃は、体制の整わないエリアスを他所に、容赦なく続けられた。


 攻撃を受ける度に、エリアスの体は左右に振られている。

 彼女は既に、自身の身を守ることで精一杯。

 体を丸め。防御のみに集中する形となっていた。


 丸まった体を上下左右に吹き飛ばされる。

 そんな様子を、観客たちは総立ちになり。

 見守り続けていた。


 (観客)

 「スッ!スゲー!!!」

 「一体何が起きてるんだ!?」

 「エリアス様の体が、ボールの洋に四方に弾かれ続けている!?」


 「嘘だろ!?信じられない!?」

 「あのエリアス様がなす術もないのか!!?」


 「あの剣士、今までは加減してたってのか!?」

 「こんな凄い攻撃見たことねーぞ!!」


 パァン!!パァン!!パァン!!


 帝の側近が容易く翻弄され続けている。

 そんな信じがたい光景に、闘技場全体が驚嘆の声に包まれる。


 観客からすると、信じられない。

 信じたくない光景が繰り返されている。


 しかし、この状況に肝を抜かされているのは、何も観客だけではなく…。


 (悠)

 「うっそだろ!?突然何なんだアイツ!?」

 「速い!!!速すぎるだろ!!」

 「リナの姿が全然目で追えないぞ!!」


 「何とか分かるのは!」

 「エリアスさんがリナの攻撃を受けて、前後左右に振り回されていること!」


 「リナの太刀筋!詰め寄る動き!そんなの全く見切れない!」

 「いつ近付いて!いつ攻撃をしているのか!」

 「その瞬間すら、目に写らないなんて…。」


 悠も唖然とした表情で二人の様子を見ている。  仲間の突然の急成長に、何が起きたのか全く理解できずにいたのだ。

 勿論、他の二人も同様である。


 (マリエ) 

 「移動速度が速いとか。」

 「剣を振るう速度が速いとか。」

 「最早そんなレベルの話ではない…。」


 「攻撃に移る動作。」

 「剣を構える所作。」

 「打ち込む瞬間の構え。」

 「打ち込まれる太刀筋。」


 「その全て。私たちは何一つとらえることが出来ない。」

 「ただ速い。ぶっちぎりで。」

 「理由は単純明快なのに。」

 「私たちには、リナちゃんの攻撃を把握する術がない。」


 マリエも目を丸くしながら、呆然とリナを見つめている。

 目の前の光景が、ただただ信じられない。

 彼処にいるのは、本当に自分の知るリナなのだろうか。

 そんな疑問さえ、芽生え始めていた。

 

 (レイナ)

 「リナちゃん…。ホントに凄いです…。」

 「本当に速い…。これがリナちゃんが求めていた本物の速さ。」

 「リナちゃんが追い求めていた、本物の力。」


 「ずっと一緒に頑張ってきた私には分かります」

 「リナちゃん。きっと今、凄く楽しんでる。」

 「理想が形になり、心から喜んでいる。」


 「リナちゃんの努力が、やっと実を結んだ。」

 「私も嬉しい。本当に嬉しいです。」

 「やっぱりリナちゃんは、凄いです」

 「私の…。憧れの人です。」

 

 レイナはその光景を笑みを浮かべながら眺めていた。

 瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。


 レイナはそれを拭いながら、悠とマリエに質問をした。


 (レイナ)

 「けど、今までも頑張ってきたのは知っているけど…。」 

 「突然どうして…。ここまでの力を?」

 「お二人は何か分かりましたか?」


 悠とマリエは顔を見合わせる。

 そして、悠がゆっくりと話し始めた。


 (悠)

 「エリアスさんは対話を終えた。」

 「そう言っていた…。」

 「その後からのリナはあの通り。」

 「まるで別人だ。」


 「自信に溢れて。」

 「体から煙まで出しやがった。」 


 「心具と対話を交わすと、人は体から煙を出すようになるのです。」

 「なんて、そんな訳ないよなぁ。」

 「○ーマスでもあるまいし…。」


 (マリエ)

 「いやいやまさか。」

 「そんなわけないでしょ…。」

 「○ーマスじゃないんだから。」


 「私もレイナちゃんも、ホンの少しだけ心具の《声》を聞いたことはあるけど…。」

 

 マリエは握り締めている扇をじっと見つめる。


 「私の場合は、特に目立った。身体的な変化は見られなかった…。」


 マリエは視線をレイナに向ける。

 レイナはその視線を受け、コクコクと頷いた。


 (マリエ)

 「…。」


 マリエはレイナの同意を受け、暫し手を顎に置きリナを見つめる。

 そして、考えを巡らせながら語り続ける。

 

 「つまり…。」


 「恐らく。心具との対話に因って引き起こされる変化は、個人個人で大きな違いがある。」


 「言ってしまえば、その人の心の状態。」

 「心の形。在り方によって様々となる…。」

 「心具の数だけ、対話による効果は違う。」

 「目に見える現象。見えない現象。」

 「現れかたも、きっと違いがある…。」

  

 「それなら…。」

 「少なくとも、体から発せられている煙。」

 「あれは、リナちゃんの心が導いた答え。」


 「より強さを求めたリナちゃん。」

 「心具はそんなリナちゃんと対話し。」

 「その想いに応えた。」


 「それにより引き起こした現象。」

 「それがあの煙なら…。」

 「彼女は煙の効果に因って、一段と強くなったことに疑いの余地はない…。」


 「彼女が纏っている煙…。」

 「魔力に近い何かを感じるけど…。」

 「煙そのものには、魔力を感じないの…。」


 「つまり、《煙自身は魔力を帯びていない》。」

 「煙はあくまで、リナちゃんが魔力を使用したその《結果》。」

 「魔力を用いた事により生まれた副産物ね。」


 (レイナ)

 「煙自体には、確かに魔力を感じません…。」

 「けれど、リナちゃん自身には、確かに魔力の流れを感じます。」

 「けれど、煙という目に見える物体は、魔力を帯びていない。」

 「なら、実際の魔力は一体何処に…。」


 (マリエ)

 「そう。それが一番の疑問。」

 「彼女は一体、魔力を何処で使っているのか。」

 

 「…。」

 「これはもう、消去法で導く以外に方法はないわね。」


 (悠)

 「消去法?」

 「つまり、マリエさんの中では、幾つかの可能性が浮かんでいると?」


 (マリエ)

 「ええ。まあ、あくまで《可能性》であって。」

 「確信のある《答え》ではないけど…。」

 「彼女が魔力を使っているのであれば、その使用方法は、私の知る範囲では二つしかないから。」


 (悠)

 「二つ…。二つだけ?」

 「以外に少ないですね。」

 「魔法の種類とか。なんか沢山あるはずなのに」

 「ちなみに、何と何の二つなんですか?」


 悠に答えようとするマリエであったが。

 先に答えにたどり着いたレイナが、思わず声をあげた。


 (レイナ)

 「そうか!マリエさんがいいたいのは、内と外!この2つですね!?」

 (悠)

 「内と外?」

 (マリエ)

 「そう。正解。まさにその通り。」

 「つまり、私やレイナちゃんの様に、魔力を現象として《外》。」

 「つまりは外部に出力し、魔法として相手に放つ使い方。これが1つめの使用法。」


 「そして、2つ目が《内》。」

 「私も前に試したけれど。」

 「体内に宿した状態で使用する方法。」


 「私が知る限りでは、魔力の使い方はこの二つしか存在しない…。」


 「そして、煙がその《外》に該当する。」

 「つまり、魔力の外部に出力された姿ではないとしたら。」


 「彼女が魔力を使っているのは…。」

 「外部。相手や自分の心具に対してではなく。」


 (悠) 

 「内…部?」

 「つまり、自分の体内で魔力を使用している?」


 (マリエ)

 「恐らく…。としか言えないけど。」

 「私に分かる範囲では、そう結論せざるを得ない…。」

 「彼女は、心具の助力を受け、自分の体内で魔力を使用し。」

 「あの神がかった速さを手にいれた。」


 「私は、そう結論付けているわ。」


 (悠)

 「体内で魔力を使うことで速さを得た??」

 「物理的に足に風を纏うとか。」

 「水流に乗るとかではなくて?」


 (マリエ)

 「私もそこがしっくり来てないのよ。」

 「魔力を体内で使用するメリットは、私からすると、相手に気付かれにくいって部分だけ…。」 


 「彼女と心具がどういう考えで、体内で使用するという結論に至ったのか。」

 「そこがイマイチ分からないのよね。」


 悠とマリエは腑に落ちない様子で、顔を伏せている。

 しかし、そこに得意気な表情でレイナが割って入ってくる。


 (レイナ)

 「なあんだ!簡単な話じゃないですか!」

 「実にリナちゃんらしい単純明快な結論です!」


 レイナはクスクスと笑い、二人に説明を始める。


 (悠)

 「レイナ先生や。その答えは如何に?」


 (レイナ)

 「せ、先生ですか!?何だか照れ臭いですね。」

 「まあ。悪い気はしません。」

 「では…。ごほん!」

 「やあやあ御二人とも、聞いてください。」

 (マリエ)

 『まあ、急に得意気に…。』 

 『ホントに可愛いわね。この娘は…。』


 (レイナ)

 「皆も心具を使うから分かるでしょう。」 

 「マザーもよく言っている話ですし。」


 「心具を用いて攻撃をする際には。」

 「一般的に攻撃に必要と言われる全ての要素。」

 「即ち、心・技・体。」

 「その全ての質が求められる。」


 「これは皆さんご存知ですね?」


 (悠)

 「はあい!先生!」

 「それ僕も知ってます!」

 「だから攻撃の際には迷いなく!」

 「全神経を集中しなさい!ってマザーが言ってました!」

 「悠さんはいつもいつも脇道に逸れて、話が全然進まないって!」

 「最初の頃からずっと~!」


 (レイナ)

 「はい!もう結構です!」

 「余計な事は話さないで下さい!」

 (悠)

 「はあい!すいませんでした!」

 (マリエ)

 『いっつも返事だけはいいのよね。この子は。』


 (レイナ)

 「え~…。ゴホン!では続けます。」


 「この要素が全てが揃うこと。」

 「つまりは、心技体。全ての状態が整った時。」 「心具は始めて、十分な威力を持った攻撃を発動することが出来る。」

 

 「悠君がいつも言われている様に。」

 「心の整わない。即ち集中力を欠いた攻撃は。」

 「如何に剛健を誇る筋力を得ようとも。」

 「心具を用いたクランバトルでは、全くその役割を成さない。」


 「心具の威力を高めるのに必要なのは、あくまで《心の強さ》。」

 「自分を知り。弱さを知り。」

 「それを以てしても、自分を信じた強き心。」

 「その強靭な心をもって、始めて心具はその威力を発揮する。」


 「つまりは、クランバトルに於いて《迷い》や《焦り》。《後悔》や《焦燥》。」

 「そう言った所謂《負の感情》と言われる感覚は、心具の力を妨げる大きな要因になり得るのです。」


 (悠)

 「はあい!先生!それも知ってます!」

 「心具の使い方や、戦いかたに迷いがあると、心具もそれに合わせて威力が変化するって、マザーが言ってました!」

 「人によっては、心具の形まで変わってしまうと言う話も有るみたいです!」

 「有名な話だと、前の大陸間大戦の時に…!」


 (レイナ)

 「はい!悠くんそこまでです!」

 「余計な事は話さないで下さいと先程も言いました!」

 「次に同じ注意を受けたら、罰を与えますので覚悟をして…!」

 (悠)

 「はあい!重ね重ねすいませんでした!」

 (マリエ)

 『ホンっトに。返事はいいのよね。』

 『返事だけは素晴らしいのよ。この子は。』


 (レイナ)

 「はい。分かればいいんです…。」

 「そう。つまり心具を用いたバトルにおいては、その攻撃方法。」

 「所謂、魔力や心具の使い方に《迷い》や《不安》は有ってはならない。」

 「そう言った感情は、攻撃の威力そのものを低下させてしまう。」


 「そう!つまり!」

 「リナちゃんは、始めて魔力を使用する状態に立たされ。」

 「今から自分が魔法を使えると気が付いた時。」


 「この方法なら、間違いなくいける!!」


 「そう判断した結果が、あの煙なんです!」


 (マリエ)

 「…。」

 「確かに。《迷い》や《不安》と言った感覚を有したなかでは、あの速さや攻撃の威力は得られそうにない。」

 「けれど、アイツが言った通りに。」

 「あんな短期間で自分にあった魔力の使い方が身に付くものかしら?」

 「私も魔法を使うときに、未だに試行錯誤してる位なのに…。」


 (悠)

 「はあい!先生!」

 「僕なんて未だに自分の心具がどんな具合で発動しているのか分かっていませえん!」

 (レイナ)

 「はい、悠くん!」

 「貴方これで三度目ですね!」 

 「余計な事は話さない!」

 「先生との約束を破りましたね!」

 「これは先生!ちょっと許せません!」

 「罰としてバケツをもって立っていて下さい!」

 (悠)

 「はあい!すいませんでした!」

 「僕バケツもって立ってます!」

 (マリエ)

 『ホントに!返事だけは素晴らしいのよ!』

 『けどいつも返事だけなのよ!』

 『結果が伴った事が一度もないの!』

 『おしい!ホントにおしい子なのよ!』

 『頑張って!お姉さんは君の味方よ!』


 (レイナ)

 「え~!では続けます!」 

 「マリエさんが仰ることは最もです!」

 「私だってそうですから…。」


 「魔法の形状はこれで正しいのか。」

 「もっと詠唱を短く。もっと精度を高く。」

 「自分のやり方がホントに正しいのか。」

 「アドバイスが欲しくても、同じ心具を持つものは世の中に存在しない。」

 「だから自分で見つけるしかない。」


 「自分なりの。自分だけの心具の使い方を。」

 「自分だけの心のあり方を…。」


 「…。私も…。」

 「そうやっていつも悩んでばかりです…。」

 「一生懸命トレーニングをこなしても。」

 「何だかいつもしっくりこない。」 


 「何かが欠けている。」

 「何かが噛み合っていない。」

 「何処かが。きっと何処かに見落としがある。」

 「詠唱。魔力形成。魔力操作。魔法出力。」


 「何処かで、何かがおかしいのは分かる。」 

 「けれど、それが何なのかが分からない。」


 「いつもそんなジレンマを感じています。」


 「でも、きっとそれが普通なんですよ。」

 「まだまだ心具や魔法に触れたばかり」

 「まだまだ駆け出しの私たち。」


 「何が正しいのかなんて分からず。」

 「ただ思うままに。自分に出来ることだけを夢中でやっている…。」

 「きっとそれが普通です。」

 「私は少なくともそう思いますよ。」 


 (マリエ)

 「…。」

 「そうよね。今の私たちには出来ることなんて限れている。」

 「まして、私たちは絶対的に経験が足りない。」

 「この世界でクランを組んで。」 

 「クランバトルを経験した回数が少なすぎる。」


 「心具の本当の力。その使い方。」

 「その活かし方。その弱点。」

 

 「分かっているつもりではあっても、恐らく沢山の見落としをしている。」

 「私たちはこれから、それを経験を通して理解していく必要がある。」

 「バトルを通して、自分の欠点に気が付き、それを補うための努力をしていく事になる。」


 「そして、理解し、解決した欠点を次のバトルに活かしていく。」

 「それを何度も繰り返して、少しずつ自分だけの力を身に付けていく。」


 「そうやって積み重ねた試行錯誤の結晶が。」

 「いつか私たちのオリジナルの力となる。」

 「迷いを消し去り。自信を与えてくれる。」


 「そうやって身に付けたものが、本当の強さ。」

 「語るだけの強さなど、身をもって習得した強さの元では、その自信。その練度の足元にも及ばない…。」


 「けれど、リナちゃんはそんな試行錯誤を吹っ飛ばして、いきなり自分に最も適した形で魔力を使用することが出来た。」

 「その結果があの煙…。」    

 「レイナちゃんは、そう言いたい訳ね。」


 (レイナ)

 「はい。その通りです。」

 「リナちゃんは、自分に魔力が宿り。」

 「魔力を使って、何か新しい力を使うと考えた時」

 「一瞬で自分に最も適した能力を理解し。」

 「その能力に魔法を出力した。」


 「その方法に対して、一切の迷いも、微塵の不安を持たず。」

 「力を得た瞬間に、自身で最良の選択をすることが出来た。」


 「そしてそれが見事にハマり。」

 「あれほどの強敵を圧倒する程の進化を見せている…。」

 

 「信じられない話かもしれないけど。」

 「リナちゃんは心具と対話し、自分の属性を聞いた瞬間に、何をどう使うか即決したんだと思います。」

 「普通はあれこれ迷うものですが。」

 「リナちゃんは、なんと言いますか…。」

 「まあ、その…。どちらかと言うと分かりやすい性格なものですから…。」


 (マリエ)

 「…。」

 「レイナちゃんが言いたい事は理解できたわ。」


 「生まれつき高い資質を有した人物が、自分の本来の力の使い方を理解し。」

 「迷いなく、その力に身を任せた。」


 「そう考えれば、彼女の力が突然跳ねあがり。」

 「ステラ有数の使い手と渡り合ったとしても不思議ではない…。」


 「けど…。」

 「結局彼女が得た力。」

 「彼女の選んだ能力は何なのかしら。」

 「それがリナちゃんの変化の確信何でしょうけど…。」

  

 (レイナ)

 「フッフッフッ。」

 「そう!そこがこの話の確信です!」

 「そして、リナちゃんと付き合いの長い私だからこそ!」

 「リナちゃんの魔力の使い方に気がついて…!」


 (悠)

 「燃えてる…。」

(レイナ)

 「え…?」

 (悠)

 「先生のお友だち。」 

 「燃えてるよ?」

 「体中が、メラメラ燃えてるみたい。」

 「体の内側が、メラメラメラメラ燃えてるみたいだ。」

 

 (レイナ)  

 「こら!悠くん!余計な事は言っちゃダメ!」

 「何回言えば分かるのよ!」  

 「それを今から先生が説明を…。」


 (マリエ)

 「体中が燃えてる…。」

 「そうか!リナちゃんは魔力の出力先を内側!」

 「しかも、自分自身の能力アップに使っている!」

 「だから魔力の流れは感じるのに、実際の魔法の出力は感じられない!」

 「魔法自体が発生しているのも彼女の体内!」

 「彼女は魔力の精製と出力を全て体内で行っている!」

 「そして、煙が副産物なら…。」 

 

 (レイナ)

 「はい。恐らくはマリエさんの察しの通りです。

 「やはり、リナちゃんの生まれ持った属性。」

 「それは、情熱の《炎》。」

 「そして、誰よりも対人戦闘に強いこだわりを有しているリナちゃんは。」

 「自身の属性が《炎》と知った瞬間に。」

 「その炎で何をすべきかを瞬時に決断した。」


 「大規模な火力により、多くの敵を炎に包む様な広範囲魔法でもなく。」

 「一撃必殺となり得る、純度の高い。高密度の火球でもない。」


 「彼女は、《燃やすと言えばこれでしょ!》」

 「そう一瞬で決断した!」

 「実にリナちゃんらしい!」

 「単純明快な結論!」


 「けれど、それゆえ迷いも。恐れも存在しなかった。」

 「いえ、存在する隙間なんてなかった。」

 

 「だって燃えるんだもの。」

 「これしかないですよね。」

 「だってだってリナちゃんだもん。」


 (悠)

 「話を聞いてると…。」 

 「俺も何となく分かってきた気がする。」


 (マリエ) 

 「奇遇ね…。私もよ…。」

 「それが事実なら…。」

 「まあ、ホントに彼女らしいけど…。」

 

 悠とマリエは互いに顔を見合わせ、苦笑いをしている。


 (レイナ)

 「恐らく。お二人のお見込みの通りです!」

 「だって、あのリナちゃんですから!」

 

 (悠)

 「まあ、そうだよな。」

 「確かにリナらしいよ。」


 (マリエ)

 「彼女が魔力を使用し燃やしているもの。」

 「実に彼女らしい。」

 「魔力の出力対象。それは~…。」


 (レイナ)

 「そうです!」

 「それは他ならぬリナちゃん本人!」

 「もっと言えば、リナちゃんの体内にある運動エネルギーです!」

  

 「リナちゃんは、自分の体内でエネルギーを強く燃焼させることで、己の身体能力を常人の限界を超えたレベルにまで高め上げました!」


 「全ては、リナちゃんの速さへのこだわり!」

 「異常ともとれる、絶対的な《速さ》への執着心により、リナちゃんは自身の身体能力を極限にまで引き上げたんです!」


 「そして、その思いに心具も呼応し、リナちゃんは常識では考えられない程。」

 「まさに人智を超えた速さを手に入れた。」


 「エネルギー効率を極限まで高め。」

 「体中から煙が吹き出す程、莫大な熱量を体内で産み出すに至った。」


 「リナちゃんは自身の理想の姿をイメージし。」 「その姿を現実にするために、自分に何が必要かを瞬時に理解した。」

 「そして、心具もそれを受け入れ。」

 「彼女の想いに応えてくれた。」


 「そして、この二人の迷いなき決断が。」

 「今、目の前で格上の相手を圧倒する程の連続攻撃を産み出している。」

 「以上が私の導きだした結論です。」


 「自分の持ち味を知り。」

 「迷うことなくその長所を伸ばす決断をした。」


 「リナちゃんの実直な性格が、大幅なレベルアップを可能にした。」


 「今のリナちゃんなら…。」

 「もしかしたら、あのエリアスさんにだって。」


 三人は再びリナの戦いに視線を戻す。


 (リナ)

 「ハアアアア~~~~~!!!!」


 体中から蒸気を発し。

 円を描くように、エリアスの周囲を高速で移動するリナの姿。


 雄叫びを上げ、エリアスに何度も斬りかかる。

 その度に、エリアスの体は闘技場中を、前後左右に弾き飛ばされ続ける。


 (エリアス)

 「くそ!反応が追い付かん!」


 (実況)

 「こ、これはなんと言う光景だ~!!!」

 「帝様に反乱し!我々の大きな怒りをかったリナ選手!!」

 「沢山のブーイングに臆することなく!!」

 「我らがエリアス様を翻弄している~~!!」


 (観客)

 「嘘だろ!!なんてことだ!!」

 「こんな事…!!信じれん!!!」


 「水の大陸の副官たるエリアス様が!!」

 「大陸最強の武人と歌われるエリアス様が!!」


 「よりにもよって、あんな駆け出しに!!」

 「あんな!!帝様に刃を向けるような反逆者に!!」

 「ここまで追い詰められてしまうなんて!!」

 

 「こんな事は絶対に有ってはならない!!」

 「我が水の大陸の威信に関わる!!」


 「このまま決着がつくようものなら!!」

 「各大陸とのパワーバランスが崩れる!!」


 「ステラが再び戦火に包まれるような!!」

 「非常事態にだってなり得るぞ!!!」


 目の前の光景に、誰もが我が目を疑っていた。

 一つの大陸を代表する実力者。

 帝の副官という、誰もが羨む、最高レベルの資質を有する人物が。

 実践経験など、ほぼ皆無の若造に、徐々に追い込まれ始めているのだ。


 (悠)

 「これは…。もしかしたらこのまま…。」

 (マリエ)

 「いく…。かもしれない…。」

 「バトルの流れは、間違いなくこちらに向いている!」

 (レイナ)

 「いけ~!リナちゃん!!」

 「そのままソイツを!!」

 「大陸の副官を飲み込んじゃえ~!!」


 レイナの声援に応えるように、リナは一度足を止め、今度は剣をエリアスに向け、構えた。


 (リナ)

 「いくぞ!!エリアス・ペール!!!」

 「この刃!!今度こそアンタの喉元に届けてみせる!!」

 「今の私なら、それが出来るんだ!!」


 (エリアス)

 「あまり舐めるな!!若造!!」 

 「お前みたいな駆け出しに!!」

 「この私が遅れを取るはずがなかろうが!!」


 両者は叫び。同時に駆け出した。


 二人の渾身の一撃が、闘技場の中央でぶつかり合う。


 戦いの行く末は果たして…。

後々補正入れるかも知れないです…。

申し訳ありません…。

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