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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
78/114

水の章 副官 エリアス・ペール 控え室の攻防

 ○ クランを貶める者


 ダァン!

 ドガァン!


 (リナ)

 「くそ!あのくそ女!調子に乗りやがって!」

 「誰が虫けらよ!ふざけやがって!」

 「休憩が明けたら覚悟していろ!」

 「絶対目にもの見せてやる!」


 闘技場修復による小休止。

 皆が控え室に戻った瞬間。

 リナの怒りが再び爆発した。

 

 控え室の椅子を手刃で叩き割り。

 体を怒りでワナワナと震わせている。

 その表情は正に鬼。

 鬼気迫る程の怒りに満ちている。


 (レイナ)

 「リ、リナちゃん。お、落ち着いて下さい。」

 「リナちゃんが虫けら何て、そんなこと絶対ありませんから…。」

 

 レイナがオロオロしながら話し掛ける。


 (マリエ)

 「怒っていては、相手の思う壺よ。」

 「あれは完全な挑発。乗ってはダメ。」

 「落ち着いて対策を考えましょう。」


 マリエは毅然とした態度で自覚を促す。


 二人は懸命にリナを落ち着かせようとするが。

 当のリナは全く聞く耳を持っていない。

 それどころか、不機嫌そうにレイナを睨み付けている。

 レイナはその表情に怯え、言葉に詰まる。

 付き合いの長いレイナだが。

 こうなってしまうと、手の施しようも無い様だ。


 それを見越してか、マザーがゆっくりとリナに近付いていく。


 (マザー)

 「リナさん、少し落ち着いて下さい。」

 「せっかく出来た貴重な時間です。」 

 「クランとして、今後の作戦を練り直せねばいけません。」

 「物に当たる時間があったら、打ち合わせに使いましょう。」

 「このまま何も話し合えないようでは、それこそ相手の術中にはまってしまいますよ。」


 マザーがリナを諭す様に話し掛ける。

 少し口調が強いのは、機嫌により周りを振り回すリナへの、牽制の意味も含まれているのかもしれない。


 (リナ)

 「グダグダうっさいわね!分かってるわよ!」

 「ただイライラが引かないのよ!」

 「アンタも見てたから分かるでしょ!?」


 「あのヤローは、言うに事欠いて、私を《虫けら》呼ばわりしたのよ!?」

 「今日の私は絶好調なの!」

 「本当に今までにないくらいに!」

 「それをあのヤローは!」


 リナはエリアスの言葉を思い出したのか。

 拳を握りしめ、体を小刻みに震わせている。


 (リナ)

 「あ~!くそ!本当にムカツク!」

 「私のプライドがあいつを許さないのよ!」

 「私には打ち合わせ必要ないでしょ!?」

 「スピードだけなら私が上みたいだし!」

 

 「それに。私が速すぎるのか、バトル中に全然フォローが無かったじゃない!」

 「打ち合わせが必要なのは後衛の皆でしょ!?」

 「私には関係ない話じゃない!」

 

 「私はこれまで通りスピードで攪乱するから!」

 「私のフォローや陣形は皆で修正してよね!」


 「仲間なら頑張って私に合わせて頂戴!」

 「そしたら私が華麗に倒して見せるから!」


 「ほら!さっさと打ち合わせを済ませなさい!」

 「上手くまとめてくれたら、私がアイツをタコ殴りにしてやるわ!」


 リナは勢いよく椅子に座り。

 そのままふんぞりかえって頭上を見上げている。 何やらブツブツと、エリアスや周りへの不平不満を呟いている様だ。


 絶好調の自分に落ち度はない。 

 打ち合わせは、自分に着いてこれない皆さんでどうぞ。と言うことらしい。

 

 『なんて態度の悪い奴だ』

 そう思いながらも、リナに着いていけない事実も相まって、誰も口を開けずにいた。


 控え室は、不機嫌なリナの態度により、微妙な空気に包まれていた。


 (悠)

 「…。もういいよ。」

 「マザー、打ち合わせを始めよう。」

 「リナが落ち着くのを待っていたら日が暮れちまう。」

 「それこそ時間が勿体ないよ。」


 「それで…。何から話し合う?」

 「外から見ていてどうだった?」 

 「俺たちはどうしたらいい?」

 「どうすれば、あの人と…。」

 「化け物みたいなあの人と、マトモに戦える様になるんだ?」


 悠が打ち合わせが進むよう口火を切った。

 相手を怖れ。何も出来ず。

 仲間を見ている事しか出来なかった現実。

 『このままではいけない。』と。

 彼なりに焦りを感じているのだ。


 それを受け、マザーは悠の元に移動していく。


 (マザー)

 「悠さん。どうもこうもありません。」 

 「皆さんが一番よくお分かりでしょう。」

 「一言で済みます。」

 「最悪でした。」

 「その一言につきます。」


 「普段のトレーニングを全て無駄にする。」

 「これまで積み上げてきた物を全て否定する。」

 「実に滑稽なバトルでした。」


 「バトル中に、エリアス様がつまらないと仰っていましたが、正にその通りです。」

 「全く持って中身のない。」

 「全く持って手応えのない。」

 「実につまらない。あっぱれなバトルでした。」

 

 「この時間で修正が効かない様なら、本大会における今後のバトルは、全て棄権した方がいい。」 

 「じゃないと主催者及び相手に失礼です。」


 「それくらい酷い内容でしたよ。」


 マザーの言葉は実に辛辣であった。

 しかし、言われる節は皆持ち得ている。

 全員が目を伏せ、バトルを思い返し。

 自分の不甲斐なさを悔やんでいた。

 

 (マザー)

 「分かりました。少し個人個人で考えてみましょう。」

 「バトルが思うようにいかなかった原因。」

 「その原因を分析すると…。」


 マザーは、ふよふよとレイナに近づいていく。


 (マザー)

 「ここにいる…。」

 「最も後方に位置しながら、相手の動きを分析もせず。仲間への指示出しも出来ない。」

 「仲間の危機にも、ただ黙って立っていただけの魔法使い。」


 (レイナ) 

 「え!?あ、いや!その!」

 「…。す、すいません。」


 「確かにその通りです。私は何の指示出しも出来ませんでした。」

 「私がもう少ししっかりしていたら。」  

 「もう少し戦況を分析できていれば…。」 


 「エリアスさんの攻略するヒント位は、この時間でも掴めたかもしれません…。」

 「マザーの言う通りです。」

 「私は後衛としての役割を果たせませんでした」


 「皆さん、ホントにすいません。」 

 「何も手助け出来ませんでした。」


 レイナは、突然の指摘に、一瞬戸惑った表情を見せた。

 しかし、バトルの内容を思い返し、自分の非を認め深々と頭を下げる。


 (レイナ)

 「本当に申し訳ありません。」

 「リナちゃんのスピードに、まったく着いていけませんでした…。」  

 「指示を出したくても、リナちゃんが速すぎて…。」

 「ホントに申し訳ないです…。」


 (マザー) 

 「…。」

 マザーは、黙って向き直り。

 マリエに近づく。


 (マザー)

 「そして…。」

 「前線の動きに翻弄され、持ち味であるキレのある魔法と分析力を完全に封じられた。」

 「役割である前衛のフォローには、ほとんど入り込むことさえ出来ない。」


 「ただ相手に隙が生まれるのを、指をくわえて待っていただけの踊り子。」


 (マリエ) 

 「…。」

 「返す言葉もないわ。」

 「いつも以上のリナちゃんのスピードに。」

 「私も全くついていけてなかった…。」

 「ホントに情けない話よね。」


 「あの女も上手く立ち回ったのか。」

 「私と悠さんがフォローしにくいように。」

 「常に、私や悠さん。そしてアイツの間に、リナちゃんの体が入り込む様に動いていたわね。」


 「互いをフォローするため。」

 「お互いに等距離を保つのは、マジシャンズ・スクエアの生命線。」

 「そうでなくては、この陣形を組んだ意味が失われてしまう。」


 「お互いが敵との間に入り込まぬよう。」

 「常に陣形を等距離に保とうと、私なりに動いていたんだけど…。」


 「私には、圧倒的にスピードが足りなかった。」

 「それくらいに今日のリナちゃんは速い。」

 「これは、私も含め全員の課題になりそうね。」


 マリエは扇で自分を扇ぎながら答える。

 マザーは黙ってその言葉を聞き。

 再びふよふよと悠の元に移動していく。


 (マザー)

 「ここが一番いただけなかったかもしれないですね…。」

 「一度たりとも自ら仕掛ける事もなく。」

 「役割であるフォローすら、一度も実施していない。」


 「仲間がやられる瞬間は黙って見過ごし。」

 「その後は心を折られて立ち尽くしていた。」

 「陣形の建て直しすらも儘ならない。」


 「正に、ただ変な格好で立っていただけ。」

 「単純な人数合わせにしかなっていない。」


 「そんな名ばかりのキャプテン。」


 (悠)

 「いやいや、返す言葉もないけど、変な格好は余計だろ…。」

 「あれ…?」

 「てかお前もこれ変だって分かってたのかよ!」


 「分かってわざとやらせてたのか!」

 「お前、実際はかなりヒデェー奴だな!」

 「人の善意に漬け込んで恥をかかせやがって!」

 「俺たちの世界なら、俺のアダ名はスターで決まってんだかんな!」 


 「いい方のスターじゃねーからな!」

 「恥ずかちい方のスターだかんな!」


 悠はマザーを指差しながら激昂する。

 しかし、マザーは黙ったまま。 

 悠の目の前を漂い続ける。


 (悠)

 「…。」

 悠も、マザーが冗談を受け入れるつもりはない事を理解する。


 (悠)

 「わ~たよ。マザーの言う通りだ。」


 『てか、フリじゃなかったのかよ…。』

 『本気で皮肉に使ってくるとか酷くね?』

 『これ、お前が用意したから着てるんだけど。』

 『決して俺のセンスじゃないからね?』


 『それにしても、フリとも取れる分かりづらい言い方しやがって。』

 『これだから素人は嫌なんだよ…。』

 『フリのオンオフが分かりづらいよ。』


 『はっきり分かりやすく。』

 『これ芸の基礎だからね?』

 『まあ、もういいや。真面目な話しよう。』


 「本当に俺は…。」

 「な~んにも出来なかった…。」

 「リナのスピードには着いていけね~。」

 「着いていけね~から、フォローも出来ね~。」

 「簡単に陣形の距離感も乱しちまった。」


 「あれじゃあ、マリエさんだって上手く距離を掴めるはずがねーよ。」

 「陣形が乱れたのは俺のせいだろな。」

 「全くリナに着いていけなかった。」

 「本当に皆には申し訳なかったよ。」


 「そんで、何よりも情けないのが…。」

 「あれだけ調子が良さそうなリナがやられて、俺は一瞬で心が折れちまった…。」

 「あの状態の…。あれ程の力を発揮しているリナで勝てないなら…。」

 「俺になんて絶対勝てるわけね~。って。」

 「もうバトルに負けちまったと決め込んで。」  「勝手に勝負を捨てちまった。」 


 「まだマリエさんもレイナも居たのに…。」

 「一人で試合を放棄しちまったんだ。」


 「キャプテンの俺がこの体たらくだ。」 

 「エリアスさんがガッカリしても仕方ね~よ…。」

 「皆、本当にごめん。」

 「今回は何から何まで俺のせいだよ。」


 悠は頭を掻きながら俯いてしまった。

 あまりにも情けない自分の姿に。

 この場に居合わせる事すら恥ずかしい気持ちになってしまっていたのだ。


 (マザー)

 「ふむふむ。」

 「まあ、皆さん。それなりに思う所はあるみたいですね。」

 

 マザーはメンバーの中心に移動する。


 (マザー)

 「私は…。」  

 「私は良いことだと思っています。」

 「このタイミングで、エリアスさんにメタくそにやられて。」

 「しかも、バトルの成績に関係のないエクストラで。」

 「皆さんのこれ迄の全てをぶち壊してくれた。」


 「これは決して悪い結果ではない。」

 「寧ろ喜ばしい事だと、私は思っています。」


 (レイナ)

 「め、メタくそ?」

 「メタくそでも良いんですか?」

 「私は、今までの努力は何だったのかと。」

 「何のためのトレーニングだったのかと。」


 「何だか非常に情けなく…。悲しくなっているのですが…。」


 レイナが恐る恐る手をあげる。

 発言したのはレイナだが、この言葉には全員に思うところがあるだろう。


 (マザー)

 「勿論。メタくそのままではいけません。」

 「メタくそのクランに未来はありません。」

 「メタくそな最期が待っているだけです。」


 「けれど…。この経験を次に活かし、今後はメタくそにならなければいい。」

 「メタくそな未来を、自分の力で変えてしまえばいい。」


 「そして、皆さんにはそれが出来る。」

 「私はそう思っている。」

 「だから良かったと言っているのです。」


 (悠)

 「メタくそな未来を変える…。」

 「俺たちならそれが出来るか…。」

 

 「何だか、今の俺には、藁としてすがりたい程の言葉だな。」

 「出来る事ならやってやりたいけど。」


 「今はゆっくり鍛えてる時間もないぞ?」

 「もう少しで闘技場も直っちまう。」

 「そんな短時間で未来を変えられるのか?」 


 マザーはふよふよと上下に漂った。

 恐らく人が頷くのと同じような。

 肯定の意味なのだと全員が理解した。


 (マザー)

 「はい。完璧にとはいきませんが。」

 「少なくとも相手が強くてもメタくそにはならない。」

 「短時間でもその程度は可能と考えています。」


 (マリエ)

 「具体的には?」


 (マザー)

 「はい。具体的に言うと…。」

 「単純なことです。」

 「全てをいつも通りにやればいいんですよ。」


 「ここで言ういつも通りとは、《気持ち》の事ではありません。」

 「パワー・スピード・魔力・知力・そして心具」

 「全てを普段の水準に戻せば良いのです。」


 「何も意気込むことはないのです。」

 「全てをいつも通りに。」

 「トレーニングとかわりなく。」

 「各々が把握可能な。自分の役割を果たす。」 


 「クランバトルにおいて、これは基礎であり、極意でもあるのですから。」


 (悠)

 「いつも通りに…。って。」

 「そんなんでいいのか?」

 「普段の俺達なんかで、あの化け物みたいなエリアスさんに勝てるのか?」

 「リナがいつも以上の状態になっても、あそこまでメタくそな内容だったのに…。」


 (マザー)

 「勝つのは難しいかもしれません。」

 「相手のレベルがあまりに違いすぎますから。」

 「けれど、いい所までは行けるかもしれない。」

 「普段の皆さんだって、十分すぎる程に強いですからね。」

 

 「更に加えるなら…。」

 「悠さんの話には、一部訂正が必要な部分があります。」 

 「いいですか?大事な事なので、ちゃんと聞いていてくださいね?」


 「今日の皆さんですが…。」

 「《いつも以上なのにメタくそだった。》のではなく。」

 「《いつも以上だったからメタくそになった。》のです。」


 「いつも以上の人物がいることが、必ずしもクランにプラスに働く訳ではありません。」

 「これは極めて重要な認識です。」


 「恐らく、悠さんとマリエさんは、これでお気付きになるでしょう。」


 (悠)

 「ああ。まあそういう事か。」

 (マリエ)

 「思い当たる部分は。確かにあるわね。」


 (レイナ)  

 「??どういう意味ですか?」

 「私には、何だかちんぷんが。かんぷんです。」

 「いつもより力が出るからメタくそになる?」


 「仲間が強い方が悪いなんてあるんですか?」


 (マザー)

 「まあ、そう思われても仕方がありませんね。」


 「この問題の複雑なのは、その部分なんです。」

 「問題の当人や周りが、本質に気づきにくい。」


 「ですが…。これ迄の話を思い返して下さい。」


 「このバトル。皆さんは始めて。」

 「圧倒的な、力の差を持つ相手と戦った。」

 「これまでは、順調過ぎる程に、勝ち星を積み重ねて来た皆さんですが。」


 「格上の相手と対峙することで、個々が様々な反応を見せ始めています。」


 「手強い相手を前に、気持ちが高ぶり。」

 「いつも以上の力を発揮する者。」


 「逆に相手の力に呑み込まれ。」

 「力を発揮できなくなる者。」


 「特に影響を受けず。いつもの自分を保つ者。」


 「其々が己の反応を確認し、自己分析を行う事ができました。」

 「久しぶりに原点に立ち返り、自分の欠点に目を向け始めている。」


 「これはとても良い傾向ですよね?」


 (悠)

 「まあ。そういう見方もあるのかな?」

 「言い方次第な気もするけど…。」


 三人は顔を見合わせ頷いている。

 それを見てマザーは話を続ける。


 (マザー)

 「そして…。分析の結果。」

 「残念ながら。この戦いで平静を保てなかった方が2名程居たことが分かりました。」

 「皆さんも一人は、既にお分かりでしょう。」


 「そう。一人は、相手に呑まれ。」

 「本来の力を発揮出来なかった《悠さん》。」 

 「プレッシャーに弱いタイプの人。」


 (悠)

 「痛いわ~。耳が痛い!キーンとするね。」


 (マザー)

 「いやいや。気に病まないで下さい。」

 「実はこれ。」

 「さほど大きな問題ではないんです。」


 「何故なら気づき易いから。」

 「周りも本人も、欠点だと分析しやすいから。」


 「それに、大体は場数の問題だったりもする。」

 「だから欠点として、比較的に解決しやすい。」


 「自覚があれば尚更早い。」

 「恐らく、今の悠さんなら、再開後に同じ鉄を踏むことはないでしょう。」


 (悠)

 「確かにな。今はもう落ち着いたよ。」

 「バトルに戻ったら、全力をぶつけてやる。」

 「寧ろやる気に繋がってるよ。」


 (マザー)

 「実にいい傾向です。」 

 「その調子なら、きっと大丈夫でしょう。」

 「信じています。頑張って下さい。」

 

 (悠)

 「おうよ!任せとけ!」


 悠は拳を突き上げる。

 悪い意味での緊張は、十分ほぐれた様だ。


 (マザー)

 「さて…。本当に問題なのはこちらの。」

 「もう一人の人物です。」

 「レイナさんも疑問を呈していましたが…。」


 「所謂、強敵を前にすると、いつも以上の力を発揮するタイプ。」


 「この手の人物は、逆境に強く。負けず嫌い。」

 「性格事態は、全く問題はない。」

 「寧ろ物事に積極的で努力家。」

 「周りを引っ張っていける人が多い。」


 「けれど、常に力を追い求め。努力し。」

 「逆境にこそ力を発揮するが故。」

 「溢れてくる自分の力を、制御出来なくなる傾向がある。」


 「制御とはつまり。」

 「強くなった自分に夢中になる。」

 「客観視出来なくなる。」

 「力に酔って、周りが疎かになる。」

 

 「《自分の力》だけに注意が向き。」

 「周りの状況に目がいかなくなる。」

 「そういった危険な方向に、力を使ってしまいがちになる。」

  

 「これは非常に危険です。」

 「自分の力に気を取られ、周りの状況。」

 「つまり、陣形の距離感やクランのバランス。」


 「そういったクランバトルにおける、最も重要な要素を軽視しがちになる。」


 「こうなってしまうと事は厄介です。」 

 「陣形は意味を成さず、クランのバランスは崩壊。」

 「陣形が崩れ、お互いのフォローもままならない。」


 「最悪な場合は、一瞬でクランは壊滅。」

 「モンスターが相手ならその場でジ・エンド。」

 「クランは崩壊。解散です。」


 「…。」

 「さあ?もう皆さんお分かりですよね?」


 「先程から、そちらから睨みを効かせている。」

 「突き刺さるような視線が恐ろしいですが…。」


 「ですが…。これは事実なんです。」

 「いつも以上に動く体は、さぞ気分のいいものだったでしょう。」


 「ですが、もう一人はリナさん。」

 「そう貴女なんです。」


 「先程のバトル。」

 「通常では有り得ないほど。」

 「あそこまでクランを混乱させていた原因。」


 「それはリナさん。」

 「貴女が普段以上の力を、制御出来なかった。」 「周りに注意を向ける事が出来なかった。」


 「これが一番の原因です。」

 「陣形を乱し、クランを混乱させていたもの。」

 「それは逆境に伴って発揮された、貴女の底力なんですよ。」


 「ですから、これからの時間は…。」

 「如何にして、貴女の力をいつもと同程度に落ち着かせるのか。」


 「その方法を探す事に、全員で力を割くことになります。」


 「これが先程迄の。」

 「クランの…。所謂《メタくそな状態》から抜け出すための。」


 「最善にして急務な課題なんです。」



 全員がリナに視線を向ける。


 その先でリナは小さく肩を震わせている…。


 (リナ)

 「へぇ~。そう。そうなんだ。」

 「あんたまでアイツと同じ事を言うんだ?」

 「へぇ~。なるほどね~。」


 「何だかアンタもアイツも。」

 「私がいつも以上の力を~。」

 「貴方達が理解できない力を。」

 「突然発揮するもんだから~。」


 「随分と面白くないみたいじゃない?」


 「もしかして、私の力に嫉妬でもしてるのかしらね?」


 (悠)

 『荒れる…。』


 リナを除くメンバー全員が。


 この直後、控え室に嵐が吹き荒れる事を。


 確信した瞬間である…。


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