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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
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クラン活動の章Ⅱ

 ○ 心具 それぞれの課題 リナの場合


 皆さん今日も一日お疲れさまでした。

 

 宿屋に戻った俺達は、夕食後に昨日同様部屋に集まるよう伝えられていた。


 今日の活動を通して、皆さんの資質の凄さを改めて体験させていただきました。

 こんな凄い人たちの案内人をさせていただける。 改めて幸せを感じた一日でした。


 ホントそうだよ! 

 私たちと行動できることがどれ程幸運なことか、しっかり理解しておくんだよ!

 リナがまた調子に乗っている。


 はい。

 今日の様子から、皆さんは今でも十分過ぎるほど強いと感じました。

 ですが、様々なクランを見てきた私からすると、若干の物足りなさを感じるのです。


 物足りなさ?

 自分で言うのもなんだが、俺達はホント強い方だと思うぞ。

 三人がいれば負けることなんてないんじゃないか?まだ何か足りないのか?


 悠兄の言う通りだよ!

 私たちなら帝にだって勝てるんじゃない!?

 マザーは心配し過ぎ!

 私なんてあれで全然本気じゃないんだよ。

 二人もそうでしょ?

 リナが納得いかない様子で同調を求める。


 まあ、確かにね……。(悠)


 私も少し加減しました…。(レイナ)


 俺達も一応同意する。


 確かに皆さんは強いです。

 ですが、決定的な部分が欠けているのです。

 断言できます。

 皆さんは同じEランククランとバトルをしても、100%負けます。

 もしかしたら格下にも負けるかもしれない。

 このままいけば、一回も勝つことなくクランランク上昇の道は絶たれるでしょう。


 皆さんはそれくらい大きな問題を抱えています。

 これについては、明日から受ける依頼により、嫌でも実感することになるでしょう。


 んがーー!!!!

 ムカつくーー!!!!

 何が実感することになるでしょう。だ!!!

 明日も力の差を見せつけて、今の言葉絶対取り消させてやる!!!!

 マザーあんた覚悟しときなさいよ!!!

 リナがぶちギレてマザーを怒鳴り散らす。


 俺は始めてリナによくやったと心の中で同調していた。


 もちろんいい意味で期待を裏切っていただけるなら大歓迎です。

 ですが案内人をする以上。 

 皆さんに危険がある場合はお伝えしなくてはなりません。

 今のままでは皆さんはどこにも勝てません。

 

 ですので、これからクラン活動を終えた後は、それぞれが能力向上に向け、トレーニングをしていただきたいのです。


 トレーニング?

 筋トレでもするのか?

 俺は不思議に思い尋ねた。


 少し違います。

 皆さん一人ひとりに違ったメニューの訓練を受けていただきます。


 見ていただくのが早いでしょう。

 では、まずはリナさんから初めて見ましょう。

 こちらに来ていただけますか?


 マザーはリナを部屋の中央に導く。


 リナはまだ怒っているのか、不機嫌そうな態度で部屋の中央にたった。


 で?何をするんですかー?

 何をしても私は全部こなして見せますよー。 

 リナの機嫌が伝わってくる。


 それは頼もしいです。

 ではこれから私が部屋の至るところから赤と青のボールを投げます。

 赤のボールは剣の心具で叩き落として下さい。

 青のボールは叩かずに避けて下さい。

 因みにボールはプラスチックなので怪我の心配はありません。

 用意はいいですか?


 なーんだ。そんな簡単なことなんだ。

 気合い入れて損したよ。

 いつでもどうぞ。

 完璧にこなしてあげるよ。

 リナはふてぶてしさに磨きがかかっている。

 どうやら足りないと言われたことが相当悔しいらしい


 では、始めますね。


 マザーの光が分裂し、部屋中に散らばっていく。


 いきます!

 その瞬間。部屋の様々な方向からリナ目掛けてボールが一気に飛び出してきた。


 あんなに一杯!?

 全方位から!?

 あんなの捌くなんて無理だよ!


 俺とレイナが思わず声をあげた。


 しかし。


 クッ!このぉ!

 リナはその敏捷性を活かし、次々とボールを叩き落としている。

 青いボールは見極めきちんと避けているようだ。

 あまりの手捌きに手が何本もあるようだ。 

 

 リナに弾かれたボールが部屋中に散らばっていく 

 スッゲェー!やっぱあいつ化けもんだろ。


 しかしその時……。


 バシ!

 あ、青!(レイナ)


 あ、クソ!(リナ)

 ドン! 痛た!?

 リナに赤いボールが複数ぶつかった。


 青いボールを一球弾いてしまってから、リナの様子が明らかに変わっていった。


 バシバシ!ドン!バシバシバシバシ!ドン!


 何球かに一球がリナの体にぶつかるようになった


 リナが弾く球も赤と青の区別がなく、リナは球を弾くのに精一杯なようだ。

 

 3分位その状態が続いただろうか。


 はい終了です。

 マザーがボールを投げるのを止めた。


 ハアハアハア。

 リナは肩で息をしている。


 凄い。

 リナちゃんほとんど弾いちゃった。

 レイナが驚いた様子で話す。


 確かにリナは驚くべき手捌きでボールを弾いていた。 


 だが、


 リナさん。素晴らしい動きでした。

 しかし、一度青のボールを叩いてから、明らかに集中力を落としましたね。

 後半からは青と赤の区別なくすべてのボールを叩き落としていましたよ。

 実は青いボールは全部で50個紛れ込ませていました。

 リナさんが弾いた青いボールは、

 ええと…46個ですね。

 これではダメです。青は避けないと。

 因みに赤は200個。

 そのうち43個がリナさんにぶつかっています。

 今日のトレーニングは失敗ですね。

 マザーがリナに告げる。

 

 さて、やってみてどうでしたか?


 …。リナは少し考えている。

 難しかったよ。マザーの言う通り途中からきちんと判別できなくなった。

 頭では分かっても体がついてこないような感じ。

 飛んでくる物体の位置は把握出来ても、色の判断までは頭がついていかない。

 迷い始めたら急に体が動かなくなった。

 青と気づいても。叩く体制に入ってしまってるから止めれない。

 悔しいけど難しかった。

 多分すぐには成功できないかな。

 

 俺はあれだけの数の球を弾き返せるのは、十分凄いと思うが、リナには何か思うところがあるようだ。


 次は絶対成功させてやる。

 マザーもう一回やらせて!

 リナは先ほどまでの険悪な関係を忘れたかのように頼み込んでいる。


 分かりました。

 ですが次にレイナさんのトレーニングの説明をします。

 一通りの説明が終わったらトレーニングを再開しましょう。

 リナの発言にマザーはなんだか嬉しそうだ。


 ○ 心具 それぞれの課題 レイナの場合


 レイナさんは自分の課題に既にお気付きではないですか?

 マザーがレイナに訊ねる。


 はい。魔法の出力の調整が上手く出来ません。

 フルパワーで出力することはできても、力を抑えて小さな魔法を発生させることができないんです。 それと魔力を練る時間が長いと思います。

 威力は低くても素早く発動する魔法が必要だと思います。


 なんと。

 素晴らしい自己分析力ですね。

 まさにその通りだと思います。


 今日のレイナさんの魔法。

 もしかしたら威力だけならステラでも十指に入るレベルだったかもしれません。

 ですが、あれだけの魔力は生成するのに時間を有します。

 また、あの威力では相手を殺傷してしまうでしょう。

 それではクランバトルの際に使い物になりません。あくまでも殺傷には至らない威力の魔法を短時間で連発する技術が必要になります。


 では、部屋の中央に。

 マザーに促されレイナも部屋の真ん中に立つ。

 

 実はやることは同じです。

 私はまた部屋の四方八方から、赤と青のボールを投げます。

 ただし今回は大小様々なサイズのボールを投げます。

 今回のボールは魔力の塊です。

 レイナさんはボールの大きさに合わせて、丁度ボールを燃やしたり破裂させられる規模の魔法を発生させて下さい。

 赤なら火の魔法を。青なら水の魔法を発生させて下さい。

 どちらも許容量の魔力を受けると消滅します。

 魔力が多いと炎や水がその場に発現し残ります。

 魔法が発現すると失敗です。

 では、始めましょう。


 いきます。

 マザーが声をあげた瞬間。部屋中に大小様々なボールが飛び出してくる。

 リナの時とは違い、ボールはそれほど早くはない

 ふよふよと漂いながらレイナに近づいていく。


 レイナは一つずつ丁寧に消滅させていく。

 レイナらしい。実に丁寧な作業だ。

 パン!パン!

 レイナの魔法により弾けたボールが音をたてる。


 しかし、すぐに魔力の出力スピードが間に合わなくなったようだ。

  

 あれ?あれあれ?

 ちょっと待ってください!

 間に合いません~!

 待ってください~~! 


 魔力のコントロールが不安定になり、ボールには容量を越える魔力が注ぎ込まれた。

 ボールは割れるが、魔力が強すぎて炎や水がその場に残っている。

 やはり弱く出力するのは難しいようだ。


 えっと、えっと…。

 レイナはどんどん焦っていった。


 赤に水を、青に炎をぶつけてしまい、部屋のあちこちで魔法が出力されている。


 トレーニングが進むに連れて赤いボールに注がれる魔力が大きくなった。

 天井を焼き付くす程の火柱が上がっていく。


 そして


 パァン!青いボールが音を立てて弾けた。


 バシャーーン!

 レイナの頭上で割れたボールから水が溢れる。


 びしょびしょです。

 もうやですー。

 レイナは水の直撃を受けずぶ濡れになってしまった。

 

 はい、そこまで。マザーがボールを止めた。

 

 部屋は水浸しに。

 炎による煙の匂いが立ち込めていた。


 レイナさん実際やってみてどうですか?


 最初の5つまでは何とか魔力を調整できましたが、それ以降はまともにコントロールが効かなくなりました~。

 思うよりも多くの魔力を注ぎ込んでしまうので、途中からパニックです~。

 これかなり難しいです~。

 一瞬で全部焼き付くす方がずっと簡単です。

 すぐには出来そうにありません~。


 レイナは水浸しになったためか泣きそうになっている。

 

 俺からすると、後半の魔法の出力がだせるだけでも十分凄いんだが…。

 二人ともトレーニングの意識が高いんだな。

 俺は心の中で二人に感心していた。

 

 当然すぐに出来るとは思っていません。

 トレーニングを続けて徐々に身に付けていきましょう。

 焦らなくても大丈夫ですよ。

 マザーはレイナを落ち着かせるように語りかけた


 因みにボールはそれぞれ50個ずつ、計100個ありました。

 今日は6個目から出力がずれ、32個目でずぶ濡れです。

 次はもっと数を伸ばしましょう。


 分かりました。また次もお願いします~。

 レイナはいつもどおり深々とお辞儀をした。



 ○ 心具 それぞれの課題 悠の場合


 さて、最後は悠さんですね。


 あ、やっぱりやるんだ。

 俺はとぼけてみせる。


 当たり前です。

 というか一番トレーニングが必要なのはあなたですよ。

 マザーから厳しいお言葉をいただく。


 そうなんですか~?

 何でも防げる悠兄さんが一番能力として凄かったと思いますが~。

 レイナがマザーに質問する。


 確かに悠さんの力は珍しく、クランに対してとても有益なものです。

 ですがこの手の能力は使い方によって、薬にも毒にもなり得ます。

 要するにきちんと扱えるようにならないと非常に危険なんです。


 とりあえず悠さんもトレーニングを受けてみて下さい。


 分かった分かった。

 マザーに促され、俺は部屋の中央に移動する。


 で、俺はどんなことをするんだ?

 

 お二方と同じです。

 どちらかと言うとリナさんに近いトレーニング方法です。

 赤と青のボールを投げますので、赤は弾き、青は避けて下さい。


 マザーこのトレーニング好きだな~。(リナ)

 

 実はこれは私の考えたオリジナルのトレーニングです。

 そのうちボールの数や色を増やして、どんどん集中力と判断力。

 そして心具の活用の幅を広げていって貰います。

 自分で言うのもなんですが、このトレーニングをやりきった時。

 皆さんは本当に強いクランになると思います。

 そんな期待を私は皆さんにしているんです。


 マザーの言葉を聞き俺は少しヤル気がでてきた。


 よし!さっさと始めようぜ。

 俺は準備体操をしながら声をかけた。


 分かりました。では始めます。 

 いきますよ。

 マザーの声と同時に部屋の四方からボールが投げ込まれた。

 リナの時よりは少し遅く、レイナよりは速い感じだ。


 赤は弾く! バシ! 

 集中し手を赤いボールに向ける。

 青は避ける!

 スッ…。上体を動かしボールを避けた。


 なんだ結構いい感じじゃん!

 そう考えていた時だった。

 

 ドン!ドンドン!


 背中にボールが次々と当たる。

 

 あれ!?

 後ろ側がカバー出来てない?

 もしかして能力の有効範囲を越えているのか!?


 思わず後ろを振り返りすべてのボールを弾き返した。


 ヤバイ!色を見分ける余裕がない!


 ドンドン!また背中にボールがあたる。


 クソ!また振り返りすべてのボールを弾く。


 悠兄、余裕ないな…。

 リナが呟くのが聞こえる。


 悠兄さん!落ち着いて下さい!

 ボール全体の様子をよく見て下さい!

 レイナが励ましの声をかけてくる。


 分かってはいるが…。


 自分の能力の有効範囲が上手く掴めない。

 目視した範囲なのか?

 それとも一度見たものなら背後でも弾くのか?


 頭の中がぐるぐると回る。

 焦りで完全にパニックになった。


 最後です!

 マザーが声をかけ、赤と青のボールを重なるように投げてくる。

 赤の後ろには青がある。

 赤だけを弾くんだ!

 集中し手を伸ばす。

 バシン!2つのボールが弾かれて壁にぶつかった


 はい。ここまでです。


 マザーがトレーニング終了を静かに告げた。


 …………。 

 ………………。

 あまりの不甲斐なさに俺は呆然と立ち尽くしていた。

 二人も上手くできなかったとは言え、ある程度の形は示していた。

 これから練習していけば、少しずつ結果に繋がるのが理解できた。


 でも……。

 俺の場合は………。


 少しの静寂のあと、マザーが口を開く。


 さて、悠さんいかがでしたか?


 ……。

 随分……。

 随分残酷なことを聞くじゃないか。


 見ての通りだよ。

 全然。何もできなかったよ。

 二人みたいに可能性を感じることさえできなかったよ。

 こんなのとクランを組まされた二人が可哀想だ。

 申し訳なくて顔向けできないよ。


 え?

 悠兄さん…。私たちはそんなこと…。

 レイナが心配そうに声をかけてくる。


 それを遮りマザーが声を張り上げた。

 そういうことを聞いているのではありません!

 トレーニングを通して何がわかりましたか!?

 貴方の課題は何ですか!?


 課題?

 こんなに何もできないのに課題も糞もないだろ。 言ってしまえば才能じゃないか。

 二人とは違い、俺には心具を扱う才能がない。

 そんな考えが頭のなかでぐるぐると回った。

 

 俺が答えられずにいると。


 心具の有効範囲がはっきりしないことじゃない?

 リナがマザーの質問に応じた。


 弾けるのが自分で望んだものだけでないのも問題だと思います。

 レイナが続けて発言する。


 いや、そうだけどそもそも…。

 俺が話そうとするが。

 

 悠兄の攻撃は視認できないからどの範囲まで対象なのか判断するのが難しいんだね(リナ)。


 こちら側から落ち着いて見ていましたが、私たちにも範囲を特定するのは困難でした。

 少し扱いづらい心具なんですね(レイナ)。


 二人とも……。


 二人は冷静に分析し、俺に課題を教えてくれた。

 俺がトレーニングで成果を出せないことを、まるで気にしていないかのようだ。


 なんですか。

 当人より周りの方のほうがよく気づいているみたいですね。

 悠さんトレーニング中はもっと集中して下さい。

 トレーニングの意味がありません。

 マザーからきつく叱責を受ける。


 でも、見ただろ?やっぱり俺には才能が…。


 悠兄。あんたバカなの?

 これはトレーニング!

 苦手を見つけて克服するためのもの!

 実戦じゃないんだよ!?

 今回分かったことを改善すればいいんだよ!

 それに才能が!?

 才能がなに!?

 昼間悠兄に負けた私たちをバカにしてんの!?

 レイナが語気を強めて話している。


 いや、でも……。(悠)


 さっきもお話ししましたが、私たちが見ていても悠兄さんの攻撃範囲は分かりませんでした。

 悠兄さんは心具が少し扱いづらいだけです。

 今のままでも十分強いですがもっと強くなるために。

 これからも一緒にトレーニングを頑張りましょう。

 レイナは優しく励ましてくれる。


 悠さん。

 貴方の課題は先ほど二人が話したこと以外にもあると思います。

 それは、

 貴方が自分自身を。

 そして仲間を相手を信じきれない。

 心の弱さを持っていることです。 


 一度失敗すると、まるで全てがダメになったかのように諦めてしまいますね。

 トレーニング中も、一度ボールが当たってから一気に崩れていました。

 成功を目指すより失敗を極度に恐れている。

 あなたの中では、まるで成功することよりも、失敗しないことの方が大切なようです。


 一度失敗すると、元々お持ちの素晴らしい才能から目を反らし、自分はダメなんだと勝手に決めつけてしまうのです。


 以前も言いましたがあなたは強いです。

 貴方がいれば、貴方の大切な仲間が傷を負うことなく、これからの戦いに勝ち続けることが出来るかもしれない。

 そんな素晴らしい力を持ちながら、貴方はたった一度。

  しかもトレーニングが上手くいかなかったくらいで全部手放してしまうのですか?


 そんなことをお二人が望んでいると思いますか?


 マザーはゆっくりと…。

 諭すように俺に話りかけた。


 俺は……。

 マザーにどう返せばいいのか…。


 悩んでいたその時。


 ボカ!後ろから頭を叩かれた。


 痛っ!何すんだよ!

 振り返るとリナが立っていた。


 さっきから何ウジウジしてんのさ!?

 あんたは私がクランを組んでもいいと思った人間なんだよ!

 実力だって十分なんだからシャキッとしなよ!

 そんなんじゃ奥さんに笑われるよ!?

 

 クスクス。横でレイナが笑っている。

 リナちゃんはこれでも励ましているんですよ。

 恥ずかしいからこういう言い方しかできないんです。許してあげて下さい。

 レイナは楽しそうに話した。


 ちょっ!レイナ何いってんの!

 私はこいつがだらしないから…。

 リナは顔を赤く染め、レイナを小突いている。

  

 なんだか、前にもこんなことがあった気がする。


 やっぱり二人の方が前向きに。

 一生懸命現実と向き合っている。


 マザーの言う通り。

 俺は昔から失敗するのが怖くて。

 少しでも失敗の可能性があると分かったら、物事から逃げ出してきたのかもしれない。


 自分が一生懸命やった結果。

 力が通用しないと思い知らされるのが怖かったんだ。


 今回のトレーニングもそうだ。

 少し失敗しただけなのに、また次も失敗すると決めつけた。

 自分を信じてチャレンジしたなんてことは、

 人生で一度もないのかもしれないな。  


 いつからだろうか。

 周りから失敗したと思われるのが。

 何より自分がそれを認めるのが怖くなったのは。


 自分を信じることができなくなったのは…。


 …。あー、カッコ悪いなー。

 また二人にいいところ持ってかれたよ。


 俺は二人に励まされたことが嬉しくて、少し涙目になっていた。


 そんな顔を隠さずマザーに告げる。


 俺も自分の課題は分かったよ。

 次はもっと上手くやるから驚くなよ!


 二人も横でにんまりと笑っていた。

 この娘たちと組めてよかったと、また思い知らされてしまった…。


 分かりました!

 もちろん楽しみにしています。

 では、悠さんのトレーニング結果です。


 私は赤のボールを150。青を50投げました。

 悠さんが弾いたのは赤が70。青が38。

 無事に避けたのが12球。

 それ以外は体にぶつかっています。


 改めて聞くとすげー成績だ。

 次はこうならないように頑張ったる!

 二人のために心に誓った。



 トレーニングを終えたその夜……。


 こんこん。

 ドアをノックする音がする。


 はい?どうぞ?

 ……。


 どなたですか?


 シーン。何の返答もない。


 すると突然、ビュッ!

 赤いボールがドアの向こうから投げ込まれた。


 赤!?

 バシ!思わずボールを弾いた。


 お、いい反応ですな!

 悠さんその調子を続けてください。

 (マザーの声を真似ている)


 ドアから二人が顔を出した。


 マザーに借りちゃった。(リナ)

 一緒に練習しませんか?(レイナ)


 二人がにんまりと笑いながら近づいてくる。


 ……。プッ。あはははは。

 三人で顔を見合わせ笑った。


 その日から毎晩三人でトレーニングを繰り返すことになる。

 俺たちはクランとして一層結束を強めた夜だった。

 

 

 



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