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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
42/114

水の章 クランバトル編 二回戦 マリエ編Ⅴ

○ お姉さんの本気


 (鵜骨)

 喰らえ!

      必殺! 双頭鳥の尾!


 鵜骨さんの必殺の鞭が、唸りをあげてマリエさんに迫った。


 しかし、その時俺は確かに見た。

 絶対絶命とも言えるこの状況で…。

 チャンスと言わんばかりに、にやりと笑う。

 マリエさんの表情を。


 (実況)

 鵜骨選手の鞭が唸りをあげた~!

 マリエ様は足を痛め、動けそうにない!

 避ける事が出来ずに、立ち尽くしている~!


 我らがマリエ様!

 まさかの、大大大ピ~~ンチ!

 ここに来て、今大会初黒星か~!?


 バシィ!!


 会場内に、何かがぶつかり合う音が響く。

 その瞬間…。

 観客の大多数が、マリエさんの敗北を悟った。

 会場は受け入れ難い現実を前に。

 多くの人が目を伏せ、顔を背けた。


 ……。


 会場が一瞬の静寂に包まれる。


 そして…。


 (マリエ)

 きゃ~。やられた~。


 …。な~んてね。


 はい。つ~かまえた~。


 マリエさんの声が、会場の静寂を打ち破った。


 全員が恐る恐る闘技場に目を向ける。


 そこには…。


 鞭を構えた状態のまま、右手を禍々しい蔦状の植物に絡み付けられ、身動きが取れなくなっている鵜骨選手が…。


 そして、鵜骨選手の右手を拘束している恐ろしい植物を。

 出血した左足の傷口から発生させ、不敵に笑うマリエさんの姿があった。


 マリエさんの傷から発生している植物には。

 無数の棘があり。

 先端には口の様な穴があり中に牙も生えている。


 そして…。

 まるでそれ自体に意思があるかのように。  

 ウネウネと動きながら、傷から這い出てきている様だ。


 その余りにもおぞましい姿に。


 誰もが息をのみ。言葉を失った。


 (悠)

 な、なんだ!?

 なにが起こっている!?

 なんだよあれは!?

 あの気持ちの悪い植物は!?


 まさか、マリエさんの足から!?

 ダメージを受けた足の傷口から!?

 傷から植物がでてるのか!?


 俺は余りにも不気味なその光景に。

 思わず声を震わせた。

 得たいの知れないものが、仲間の傷口から出現している…。

 その背筋が凍るような状況に。

 不安にも似た、底知れぬ恐怖心を感じずにはいられなかった。


 (リナ) 

 な、何よあれ…。

 あの気持ち悪い生き物は…。

 どうしてマリ姉の傷口から!?

 なんであんなところから生えてるのよ!?


 まさか、マリ姉は体の中に?

 あの気持ち悪い植物を飼っていると言うの!?


 有り得ない…。そんなことは有り得ないわ…。

 あのマリ姉が、あんなものを好んで体に住まわせるなんて…。


 けれども…。

 じゃあ、どうなってると言うの!?

 今、あそこではなにが起きてるのよ!?


 戦う前、マリ姉が言っていた通り…。

 確かにマリ姉の「凄い所」は見れたけど…。 


 これって…。こんなことってあり得るの!?

 人の体から、植物が生えてくるなんて…。

 そんなことが、あっていいと言うの…?


 リナもあまりの光景に驚きを隠せない。

 目を見開き、明らかに表情が曇っている。

 今起きている事が信じられず、頭の中が混乱している様だ…。。

 

 (植物)

 キシャ~~!!!


 植物は突然。おぞましい叫び声を上げた。

 そして、鵜骨選手の腕をズルズルと這い上がり始める。


 (鵜骨) 

 な、なんじゃこれは…!?

 どんどん腕さ登ってくる!?

 鞭を持つ手が、急に引っ張られたと思ったら…。

 なんなんさこれは!?

 これはあの人の足から!?

 傷口から蔦が出てきて、手に絡み付いたのか!?


 どうなってんのさ!?

 これは一体どういうことなんさ!?

 あの人は、体の中で植物を育ててるとでも言うんか!?


 そんなこと有り得ないべ!

 人の体内に植物が生えてるなんて!

 どう考えても有り得ないべ!


 なんなんや!

 こんな恐ろしい事をしでかすなんて!

 あんた一体何者なんや~!!



 鵜骨選手は、自身が陥っている。

 あまりにもおぞましい光景に。

 悲鳴にも似た叫び声を上げた。


 いや。鵜骨選手だけではない。

 俺達を含めた、会場全体が。

 あまりにも信じがたい光景を前に。 

 心の底から恐怖を感じていた。


 マリエさんを熱狂的に応援していた人達も。


 彼女の傷口から現れた、おぞましい植物を見て。

 

 言葉を失い、立ち尽くしていた。



 ズルズル…。ズルズル…。


 植物がさらに傷口から這い出てくる。


 そして、体を得た植物は…。

 嬉々として、鵜骨選手の腕に、さらに絡み付いていった…。


 (鵜骨)

 ひぃぃぃ~!!! 何ぞこれ~!!!

 ズルズル動いて腕さ上がってくる!!


 気持ち悪か~!!!やめてくんろ~!!

 離れろ!!この!!このぉ~!!


 鵜骨選手は、植物を引き剥がそうと、必死に腕を振り、左手を叩きつけている。


 しかし、植物はお構い無しに、鵜骨選手にどんどん絡み付いていった。

 そして、鵜骨選手の右腕と鞭は、植物により完全に拘束されてしまった。


 (鵜骨)

 うわ~!離れろ~!助けてくんろ~!


 鵜骨選手は、完全にパニックに陥っている。

 腕を引きちぎらんばかりに、植物から無理矢理引き剥がそうとしている。


 (実況)

 これは…。これは一体…。

 何が起こっていると言うのでしょうか…。


 鵜骨選手が、マリエ様にトドメを刺そうと鞭を振るった瞬間…。

 マリエ様の足の傷口から…。

 あの得体の知れない、植物が飛び出し…。

 鞭をブロックした様にも見えました。


 そして…。

 植物はそのまま、鞭に絡み付き…。

 徐々に拘束する範囲を広げ…。

 現在は、鞭と鵜骨選手の右手を完全に拘束しております。


 しかし…。

 あのマリエ様が出現させたとは思えない…。

 あの植物の恐ろしい姿に。


 私も含めた会場全体が…。

 恐怖を覚え、正に絶句しております。


 このバトルは…。

 マリエ様はどうなってしまうのか…。  

 私達が知る。美しく聡明なマリエ様は…。

 再び戻ってきてくれるのでしょうか…。

 私も固唾を飲んで、見守りたいと思います。


 実況も現状を伝えるので精一杯な様子だ。


 そう。誰しもが息を飲んでいたのだ。

 今しがた起こっている、信じられない目の前の光景に…。


 突然人の傷口から現れた、あの恐ろしい植物を。

 今までに見たことがある人物など、恐らくこの会場にはいないだろう。


 (悠)

 鵜骨さんの言う通りだ…。

 ホントに何なんだよアレは?

 ホントにマリエさんが体内で育てていたのか?

 そんなバカなこと有り得んのかよ…。

 体の中で、あんな恐ろしい生き物。

 飼ってるなんてさ…。


 俺達は状況を理解できぬまま。

 ただただ同じ言葉を繰り返していた。

 今自分の目の前で起きている現実。 


 そう目の前で起きている事を、信じる事が出来ない。

 確かに見えているものを受け入れられないのだ。


 こんな感覚は、今まで一度だって経験した事がない…。


 この状況をどう整理すればいいのか…。


 頭の整理が追い付いてこないのだ。


 しかし、その時…。


 (マザー)

 そうか!

 力のコントロールに秀でたマリエさんなら…。

 もしかしたら、この方法で…。


 マザーは隣で声をあげた。

 その様子から、マザーは何かに気が付いた事が理解できた。


 この不気味な光景を、理解出来る可能性があると言う事なのか…。

 俺は藁にもすがる思いで、マザーに尋ねた。

 

 (悠)

 マザー。頼む。今なにが起きているのか…。

 少しでも分かったのなら教えてくれ。

 正直に言って、俺は今の状況が理解できない。

 理解できないからこそ、マリエさんのあの姿が、怖くて仕方がないんだ。


 友達を。仲間を。

 恐怖の対象として見続けるのは嫌なんだ。

 俺はそんな心配をしてしまう位に…。

 今の得たいの知れない状況が怖いんだよ。


 頼むマザー。

 あの恐ろしい植物は何なんだ…?

 何か分かったのなら教えてくれ。


 俺は普段は有り得ないような、真剣なトーンでマザーに助けを求めた。


 あの植物は一体何で、どこから来たのか…。

 マリエさんにとって、あの植物はどういう存在なのか…。


 突如現れたこの疑問で、今の俺の心は、不安で満たされてしまっていたのだ。

 

 (リナ)

 私も…。私にも教えてよ、マザー。

 あの気持ち悪い植物は、マリ姉の中に生えているの?

 マリ姉は体内でアイツを飼っているの?


 あまり考えたくないけど…。

 事実を知らないと、私達はマリ姉を誤解してしまうかもしれない。


 私もそれ位に…。

 今起きている状況が、怖くて仕方ないの…。


 あの気の強いリナでさえ、今の状況に取り乱している様だ。  

 リナは腕で体を抱え込んでいる。顔色も悪い。


 沸き上がる不安を、必死に押さえ込んでいる様に見える。


 (マザー)

 私も確実な事は言えませんが…。

 分かりました。

 お伝えできる範囲で説明致します。 


 恐らくですが…。

 あの植物は、マリエさんの体内に生えている訳ではありません。

 マリエさんの魔法により、出力されたものと考えられます。

 ですので安心して下さい。

 マリエさんは、貴方達と同じ普通の人間です。

 それが分かっただけでも、お二人が心配されていた、大きな疑問の1つは、解決しましたよね?


 俺とリナは無言で頷いた。 

 そして俺は、マザーの言葉を聞いて、心から安堵していたのだ。


 万が一にでも、マリエさんが体の中に、あんな化け物を飼っていると言うものなら…。

 俺は今後のマリエさんを、恐ろしい物を見るような目で、見続ける事になっていたかもしれない。


 彼女に辛い思いをさせずにすんだ…。

 俺は自分の気の小ささで、マリエさんが傷付く様な事態に陥る事は無くなったと。

 ホッと胸を撫で下ろしたのだ。


 そして…。マリエさんは。

 あの植物の出力に際し、精霊と交信は行わず…。

 自分の体内に流れる魔力のみを、使用したのだと思割れます。


 マザーは、落ち着いた口調で。

 ゆっくりと説明を続けた。


 俺達を落ち着かせ。きちんと状況を理解して貰おうという、マザーなりの気遣いが、そこにはあったのだろう。


 (悠)

 体内の魔力?

 魔力っていうのは、心具を通して精霊と交信して得るものじゃないのか?

 俺達の体の中にも魔力は発生しているのか?


 俺はあまり魔力の感覚が鋭くはない。

 魔力が体を流れているという話は、いまいちピンと来るものではなかった。


 (マザー)

 はい。微弱ではありますが、人の体内にも魔力は流れています。

 体内を血管を通って巡る血液の様に…。

 魔力も体内を、「心魔龍脈」と呼ばれる脈を通って、目まぐるしく循環しているのです。


 しかし…。

 脈を通って、体内を巡る魔力の量は、非常に微弱であり、形も不安定です…。

 ですから、体内の魔力だけでは通常。

 魔法の出力には到りません。


 魔法タイプの心具を所持している人物でさえ…。

 自身の体内の魔力の流れを、完璧に感知するのは、非常に困難であると言われています。

 それは…。

 体内を流れる魔力は、その人の心身の状況や体調に左右され、量と質。 

 その方向が安定しないと為と言われています。


 しかし、体内にも「微弱ながら魔力は流れている」という事を考慮すると。

 その魔力を使用して、魔法を出力することは「理論上」は、可能と言えます。


 しかし、先程も話をしましたが…。

 その量と安定性を考えると、体内の魔力のみを使用して、魔法を出力するというのは…。  

 極めて困難な作業となります。

 よって実質的には。

 その手順を使って、魔法を出力する人物は、ほぼいないと言っても良いでしょう。


 ですから人々は、自分の体内の魔力を、心具を通して増幅し、安定させてから外界に放出します。

 そうして形作られたのが、我々が知る魔法というものなのです。


 そして、魔法を出力する際の…。

 さらに魔力を増幅させるために行う。

 精霊との交信についてですが。 

 精霊は、心具を通して増幅され、周囲に放出された魔力に導かれて集まります。


 心具使用者は、本人の魔力と、集まってきた自然界に溢れている、精霊の魔力を混ぜ合わせる事で。

 自分のイメージした形に魔法を具現化し、出力しているのです。


 精霊との交信と言うのは、基本的に自身の放出した魔力と、自然界の精霊の魔力を混ぜ合わせる。

 この作業工程を言うものです。


 そしてこれが、魔法を出力する際の「詠唱」と呼ばれる作業の本質となるのです。 


 つまり…。

 通常の魔法は。


 ①心具を通して自身の魔力を放出。 

 ②詠唱を行い、自然界の魔力を集める。

 ③2つの魔力を練り合わせ、魔法が出力可能な状態まで、魔力を増幅させる。

 ④自身がイメージした形に、魔法を出力する。


 という一連の流れで出力されています。


 通常は、②と③の流れの最中に、相手側に魔力の流れを感知されるため。

 魔法による攻撃に対する準備をされてしまう形になります。

 

 しかし、驚くべき事ですが。


 マリエさんは今回。

 この②と③の流れを完全に省略して見せました。


 彼女は元々、力の使い方が非常に上手く。

 既に詠唱を「舞」という形に変化させています。

 更に、前回の戦いでは日常的な動作。

 「立ち振舞い」という、所作の中にも紛れ込ませることに成功していました。


 ですが、今回はその「立ち振舞い」ですら、省略して見せました。

 体に流れる微弱で不安定な魔力だけを利用し。

 傷口から一気に植物を出力しています。

 

 それでは、相手はいつ、マリエさんが攻撃するのか全く分からない。

 攻撃のタイミングが分からない以上。

 マリエさんの攻撃を回避することは、ほぼ不可能な状況に陥ってしまう訳です…。


 鵜骨選手が、マリエさんの攻撃に気付かずに。

 あっさり捕まってしまったのはその為ですね。


 そして、あの恐ろしい植物は…。  


 恐らく、マリエさんの、自分自身の体内を巡る、魔力に対するイメージそのもの…。

 彼女が感じ取った自分の魔力の流れは、あの植物の様に恐ろしく。

 這えずり回る様な感覚であったということです…。


 マザーは、話を終え。

 マリエさんの方を見ている。

 彼女は、俺達やマザーの予想を遥かに上回る形で、自身の能力の高さを証明して見せたようだ。


 (悠)

 「お姉さんの凄い所を見せてあげる」か…。

 確かにスゲエや…。

 俺達の想像を遥かに越えるレベルで…。 

 あの人は力の使い方を習得していた訳だな。


 (リナ)

 立ち振舞いだけでも、十分力の動きの把握を困難にしていた…。

 けれど、ランクの高い…。

 レイナクラスの相手には、力の流れを見破られる危険はあった。

 まあ、そんな人はほとんどいないから、滅多な事では見破られないとは思うけど…。


 けれど…。

 マリ姉は、それよりも更に高いレベルで。

 力のコントロールを既に身に付けていた。

 精霊の魔力は使わず、自身の体内の魔力のみを使用するという、極めて困難な方法を…。  


 相手はマリ姉が、魔法を使う際の、力の流れを把握することは…。

 これで事実上「不可能」になった。


 つまり、マリ姉は…。

 これから戦いの中で、相手に攻撃を悟られる事はない…。

 攻撃の的中率は、ほぼ100%になった…。

 

 (悠)

 つまりは、回避はほぼ不可能…。

 (マザー)

 彼女の体内を巡る、あの恐ろしい植物に…。

 (リナ)

 相手は、ほぼ確実に、捕獲される事になる…。


 (悠)

 …。

 ハハ…。マジかよ…。

 ただ者ではないと思っていたけど…。

 実際のところ、なんて恐ろしい人なんだ。

 敵じゃなくて良かったと、今なら心からそう言えてしまうな…。


 俺達は、あまりに衝撃的な現実に、再び言葉を失っていった。


 そしてマリエさんは、飄々とした様子で。

 既に身動きの取れなくなった、鵜骨さんの元へ向かっていく…。


 (マリエ)

 あなたは~…。

 私に勝てると…。

 まさか本気で思ったのかしら…。


 自分の技が私をとらえ…。

 あまつさえ、そのダメージにより、私が身動きが取れなくなったと…。

 本気で思っていたのかしら?


 だとしたら…。


 バサッ!

 マリエさんは、扇を開き、口元を隠した。


 (マリエ)

 だとしたら、ホントに愚かしい事だわ…。

 この私が、あの程度の攻撃を…。

 何の思惑もなく、全てくらってしまうなんて…。

 少しでも、そんな考えが浮かんでいたなら。


 貴方は本物の「愚か者」だわ。

 対戦相手の力量もまともに測れない。

 愚かな自分をきちんと反省する事ね。


 マリエさんは、腕を絡め捕られ、身動きの取れなくなった鵜骨さんに対し、容赦のない言葉を言い放っていく。

 マリエさんの表情は、相手の全てを見透かしているかの様な、いつもの自信に満ち溢れたソレに変わっていた。 


 腕を絡め捕られている鵜骨選手は、マリエさんの言葉を、ただ黙って聞くことしか出来ずにいた…。


 (鵜骨)

 あんたぁ…。

 試合前から失礼な人やち思ってたけど~。

 最後の最後まで、オラの事さ馬鹿にしとったんやな~…。

 勝てると浮かれてるオラを見てぇ。

 あんたはしめしめと笑っていた訳やか~。

 そういうことなら~…。

 確かにオラは、愚か者やっちかもしれん。


 けんど!けんどな!

 あんたはもう勝った気になっているかもしれんけど!

 オラはまだ負けた訳やない!


 右腕は確かに動かないし!

 この植物はこえーし、気持ち悪ぃ!


 けれど、それ以外は元気だ!

 例え右腕を失うことになろうとも!

 あんたみたいな失礼な人に、オラは絶対ギブアップなんてせんからな!

 あんたが疲れて嫌になるまで!

 オラは、最後まで粘ってやっかんな!


 エエか!オラはしつこいぞ!覚悟しいや!


 鵜骨選手が、マリエさんに食って掛かる。 

 マリエさんの態度は、確かに最後まで褒められたものではなかった。


 実力に裏付けされた自信…。


 しかし、どんなに相手を圧倒しようと…。

 戦いにおける相手への敬意というものは、実力以上に大事なものと言えるかもしれない。

 マリエさんにとっての今後の課題は、そういった周囲の相手への心遣いなのかもしれないな。


 (マリエ)

 面白い…。

 あなたは本当に面白い人ね。


 マリエさんは、再び扇で口元を隠し、クスクスと笑っている。


 (鵜骨)

 なんやねんな!

 泥臭く最後まで戦う!

 小物の心意気が、呆れて可笑しい言うんか!


 例え何を言われようと!

 オラは自分のプライドを!

 仲間の信頼にかけても!

 絶対にギブアップはせんからな!

 

 鵜骨さんは叫んだ。

 自分を。そして自分を信じた仲間を。 

 その全てを嘲笑うかのように振る舞うマリエさんに。 

 彼の怒りは頂点に達した様だ。

 彼は右腕を植物に締め上げられ続ける…。

 しかし、彼の目は死んではいない。

 逆襲のチャンスを、虎視眈々と狙っている様だ。


 (マリエ)

 面白い…。本当に面白い話だわ…。

 貴方はどうして、私の攻撃がこれで終わりで。 

 私がこの戦いで、貴方のギブアップによる勝利を望んでいると決めつけているのかしら?


 私がいつ、貴方に私の狙いの全てを話したと言うの?

 いつ、攻撃の手段が、これで終わりだと話したと言うのよ?


 マリエさんは、再びクスクスと笑う。 

 その姿を見て、味方であるはずの俺たちも、背筋が凍るような悪寒を感じていた。


 (悠)

 嘘だろ…。マリエさんは…。

 これ以上、まだ何か隠し持っているって言うのかよ…。

 

 (マザー)

 分かりません…。

 けれどマリエさんが、この状況で嘘をつく理由が見えてこない…。


 (リナ)

 マリ姉は、「凄いところを見せる」と言った。

 あの人が「凄い」と言うのだから、この先があっても不思議ではない…。

 何せあの人は、戦う前から十分過ぎる位に「凄い人」だったのだから…。


 俺達は、再び闘技場をみる。

 

 鵜骨さんも、マリエさんのただならぬ気配に。


 今までにない恐怖を感じている様だ…。


 彼の顔から流れる汗は。

 

 俺達と同様に、冷たい汗だろうと。


 俺は一人。考えていた…。 

 

 

 

 


 





 



 


 

 


 

 

 

















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