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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
40/114

水の章 クランバトル編 二回戦 マリエ編Ⅲ

 ○ 扇VS鞭


 (審判)

 始めい! ドオン!

  バトル開始を告げる太鼓が鳴り響いた。


 (実況)

 さあ!我らがマリエ様と鵜骨選手の試合が始まりました!

 二人がどのようなバトルを繰り広げるのか!

 楽しみに見守りたいと思います!


 まずは、マリエ様!

 顔の前で扇をヒラヒラとはためかせております!

 一回戦同様に、相手の出方を見ているのでしょうか!?


 一方の鵜骨選手!

 開始と同時に、腰に着けていた心具!

 自慢の鞭を取り出しております! 

 一回戦で見せていた巧みな鞭さばき!

 このバトルにおいても発揮できるでしょうか!?


 (マザー)

 対戦相手の鵜骨選手。

 心具は鞭ですね。

 形状から見るに、攻撃範囲は近~中距離。

 マリエさんは中~遠距離タイプ。

 相手を近づけず、如何にして得意な距離感を維持していくか…。

 上手く足を使っていきたい所です。

 マリエさんの戦い方に注目ですね。


 (悠)

 何てこった…。

 まさか相手の心具が「鞭」だなんて…。

 こんな所でも、決断を迫られてしまうのか…。

 まだ、自分が決めるには早いと思っていたのに!

 まだ、その部分は未開発なのに!

 俺は!俺は一体! 


 どっちのマリエさんを、期待しなければいけないんだ~~!?


 俺はあまりに悩ましい状況に声をあげた。

 頭を抱え、しゃがみこんだ。

 悩ましい。

 それほどまでに悩ましい状況なのだ。


 (リナ)

 ちょっと!

 いきなり叫んでどうしたのよ!?

 それに何!?

 どっちのマリ姉を期待するって!?

 何を言ってるの!?

 マリ姉は一人じゃない!

 どっちも何も、マリ姉が勝てるように応援しなさいよ!

 何をそんなに困ることがあるのよ!?


 リナは俺が何を考え、悩んでいるのか分からないようだ。

 俺だってマリエさんの勝利は願っている。

 それは当然のことなのだが…。


 俺が悩んでいるのは。

 俺が苦悶しているのは、そんな単純な事ではないのだ。

 男としての…。  

 これからの生涯に渡る、趣味嗜好に関わる。

 崇高な、特別な悩みなのだ。


 (悠)

 リナ。マリエさんの勝利を応援するのは当然だ。

 俺達は仲間なんだ。

 無事に。何事もなく、勝って帰ってきて欲しい!


 けどな!俺が悩んでいるのはそこじゃない!

 試合に関することじゃない!

 そんな単純な事ではないんだ!

 人生に関わることなんだ!


 (リナ)

 ハア~?

 マリ姉の戦いが、あんたの人生にどう関わるって言うのよ?


 (悠)

 いやいやいや。

 それが関わっているんだよ。

 それも深く。かなりディープな部分にな。


 いいか、リナ。

 俺が…。いや、会場にいる男達全員がだ!

 俺達が悩んでいるのはな!


 俺達は!マリエさんが、対戦相手を!


 鞭で「打つ」姿が見たいのか!

 それとも「打たれる」姿が見たいのか!


 会場にいる男共はみんな!

 今、正に!

 自分の嗜好がどちらにあるのか!


 その「決断」を迫られているんだ~!!!

 いるのだ~…。いるのだ~…。だ~…。だ~…。


 俺は叫んだ。それは魂の叫びであった。

 魂の叫びであるからか、俺の声は山彦となって会場に響き渡った。

 


 (リナ)

 ……はい?


 (悠)

 いいかリナよ!

 俺達、男達は皆!

 何となくではあるが…。

 自分はどちらかと言えばSかな?Mかな?位の認識を持ってはいるんだ…。


 けれど、これはあくまで「感覚的な」話だ。

 なんと言っても、実際にそれを確かめる場面に恵まれる人は、思った以上に少ないからだ。


 だから、多くの人は、実際には経験がないため。

 答える時はあくまで、何となく自分に合ってそうな方で答えている。

 ホントに無念な話だ。

 しかし、残念ながら。それが現実なんだ。


 しかし!今回は、何となくでは乗りきれない!

 それは何故か!もう分かるだろう!?


 鞭で打たれるのは!鞭で打つのは!

 絶世の美女! 

     我らがマリエ様なのだ!!


 こんな綺麗な女性が!

 それも、目の前で!

 鞭に関わる姿を見る機会なんて!

 人生を通しても、恐らく2度とないはずなんだ!

 分かるか!?

 こんなチャンスは2度とこないんだ!

 会場の皆もそれは分かっている!

 

 人生でたった一度…。

 最初で最後のチャンスなんだ!

 分かるか!?最後なんだぞ!?

 2度とないんだぞ!?

 それならば、絶対に自分の嗜好に沿ったシーンを見なくてはいけないだろう!?

 死に物狂いで、そのチャンスを掴まないといけないだろう!?


 万が一だ…。ここで万が一にでも…。

 自分の嗜好の選択を間違え…。

 反対の方向に向けた応援をしてしまう…。

 つまりは、間違った嗜好を期待してしまうと…。


 これは最悪の場合だ。

 もう取り返しがつかない…。

 2度と自分の嗜好における、最高級のシーンを拝むことは出来ないんだ。

 これは、後悔という言葉では語り尽くせない。

 つまりは、


 生涯における最大級の後悔を背負うことになる!


 俺が本当に見たかったのは、こっちの姿ではなかったのか!

 俺は人生で一番大切な選択を間違えたのかと!

 取り返しのつかない、非常な現実を叩きつけられる事になる!


 分かるか!?

 ここは絶対に間違えられないんだ!

 絶対に負けられない!

 男の戦いが今、目の前で!

 始まろうとしているんだ~!!

  だ~!だ~。だ~。だ…。…。。


 俺の言葉は、再び会場中に響き渡った。


 パチパチ…。パチパチパチパチ。

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


 会場中が、俺の言葉に同調し、拍手に包まれた。

 分かる!分かるよみんな!

 俺達は同じ気持ちなんだ!

 同じ悩みを抱える仲間なんだ!


 俺の言葉で会場は1つになったのだ。


 (悠)

 ありがとう!みんな!ありがとう!

 お互い悔いのない選択をしような!

 俺達は仲間だ!

 皆が望むような形になることを、俺も願ってるよ!


 俺は歓声に手を振って応えた。

 会場中の男性は皆。

 俺と意識を共有する仲間なんだ!


 俺は心地いい一体感に、身を委ねていた。


 (リナ) 

 何なの!?何なのよこれは!?

 何て人達なの!?

 ホントに男ってバカばっかり!

 真面目に聞いて損したわよ!


 あのバカおやじだって、ついさっきまで黒歴史を

あんなに反省していたのに! 

 もう同じ鉄を踏もうとしてるじゃない!


 私はもう知らないわ!

 もう絶対構ってやらない!

 今決めたわ!絶対決めた!


 この人が真面目な話をする事は、きっともう2度とないと思うべきなのね。

 もうしらない!やっぱり、あんたはもう。

 壁に向かって一人で話続けてなさいよ!

 そうやって黒い歴史を積み重ねるといいわ!

 もう私には付き合いきれないわよ!


 リナは下らない話に付き合わされ、かなりおこってしまったようだ。

 顔を真っ赤にし、こちらを向いてはくれなくなった。

 

 (マザー)

 同感です…。もう彼に…。

 あの人のバカな話に付き合うのは止めましょう。

 時間があまりにも無駄すぎます…。

 会場の人達もそうですが…。

 今日だけで、一体どれだけの時を無駄にしたか。

 ホントに真面目な顔をして、どうしてこうも下らない話を次から次へと…。  

 もう付き合いきれませんよ…。


 二人は遂に、俺の馬鹿話に見切りをつけたようだ。熱く男心を語る俺の隣には、気づけば誰もいなくなっていた…。


 (リナ)

 さあ!マザー!応援よ!

 あんな奴はほっときましょう!

 マリ姉がんばれ!相手をよく見て!

 落ち着いていけば大丈夫よ!

 (マザー)

 はい!応援しましょう!

 マリエさん!頑張って下さい!

 距離を保っていきましょう!

 (悠)

 そうだ!会場中は、バカな男ばっかりだな!

 マリエさん!頑張って下さい!

 力を抜いていきましょう!

 鞭の件は、今度身を持って教えて下さい!

 お願いしますね!

 

 俺は一人になるのが寂しいのと。

 この年齢で、これ以上の黒き歴史を積み重ねる事への恐怖心から、普通の応援に切り替えることにした。

 この話は、今度酒の席で、レイナにでもゆっくり聞いて貰おうと思う。

 今は真面目に応援します。

 

 闘技場では。

 マリエさんと鵜骨さんは、相手の出方を見ているようだ。二人には未だに動きがない。


 (ビッグファーマーズの方々)

 鵜骨どん!

 相手が女性でも関係なか!

 いつも通り、どんどん攻めてけ~!

 畜産で鍛えた鞭さばき!

 今こそステラ中に見せ付けてやっべ~!


 ビッグファーマーズの方々も、動きのない状況に応援にも力が入る。

 試合会場は、一層緊張感が高まってきた。


 (鵜骨)

 皆あんがと!応援嬉しいべさ!

 けど、何でか分からないけど!

 オラ今迷ってんだ!

 このままでいいのかな!?

 このまま仕掛けていいのか分からないんだ!

 

 鵜骨さんは、仲間の声援に答える形で、現状を吐露した。

 彼も、マリエさんと対面し、戦い方に苦慮しているようだ。 

 

 (ビッグファーマーズ)

 何を言うかね!なんば迷うことなかよ!

 いつも通りガンガン攻めたらええ!

 それがおんしのやり方やろ!

 戦い方を変に変えたりすんな!

 足下すくわれっぞ!

 いつも通りが一番ばい!

 思いっきりぶつかればよいばい!


 (鵜骨) 

 分かっているんだ!

 いつも通り戦うしかないことは!

 それしか出来ね~ことも知ってる!


 けど!けどな! 

 見ろ!対戦相手の女性を!

 あの人すんごい失礼な人やったけど!


 やっぱり…。やっぱり綺麗さねぇ。

 あんな綺麗な女性…。

 村育ちのオラは見たことねえ!

 お前らもそうだべ!?

 オラなんか緊張で標準語で話しちまってんだぞ!

 

 (ビッグファーマーズ)

 標準語で!?鵜骨どん標準語話せると!?

 ギャハハハハハ~!

 似合わんとね~!その姿勢が既に力入っとる!

 リラックスリラックスや~!


 (鵜骨)

 分かっとるさな!

 けんど!よく見てみぃ!

 あのお姉さんに、いつも通りに行けるとか!?

 オラには無理なんじゃ~!


 (ビッグファーマーズ)

 そんに綺麗か~?言い過ぎやろ~。

 なあ、皆~。


 ビッグファーマーズの皆さんは、ジーっとマリエさんを見つめている。


 (ビッグファーマーズ)

 お、おう…。そうかなぁ。た、確かに~…。

 鵜骨どんの言うことも分かるきに~。


 いや~、たまげた~!

 やっぱり都会には綺麗な人がいるんやな~って、オラ達もおったまげたさ~。

 あ!オラも!やっぱり都会さ凄かね!

 な~!びっくりするわ~!

 オラ達、農家のほっかむりしたおなごしか知らんもんな~!

 せやせや!オラも写真でしか見たことないわ!

 オラ、帰って母ちゃんに会ったら、なんかガッカリしちゃいそうだ~!

 ハハハハハハ~!

 これはここだけの話やけど~!

 やっぱり田舎者からしたら、都会のおなごは別格やね~!

 誘惑が多すぎて恐か恐か~!

 ホンにホンにな~!

 農業組合の集まりで来ただけやったけど~。

 オラ、あの人見れただけで~。

 ちょっと満足しとるもん。

 あ、これも母ちゃんには内緒な~。

 

 アッハッハッハ!

 そげなこと言うて~!

 嫁子さ、村に置いて~!

 おなごにうつつ抜かしたなんて、言えるわけなか!これもオラ達だけの秘密ばいね~!

 

 いやさ~!

 嫁さんさ知ったら、オラ家からおんだされるわ!

 村なんて噂さあっという間に広がるけんね!

 オラ達、皆のお金でここにいるのに~!

 村にも居場所さなくなるべさ~!


 ワッハッハッハ~!

 オラ達は小さい頃から、イタズラばっかやってきたからな~!

 村の皆に信頼されね~べ!

 取り合えず大会で頑張ったことだけ伝えればいいさね~!



 グランファーマーズの皆さんは、何やら楽しそうに談笑を始めてしまった。

 少しだけ聞こえてきた内容から察するに…。

 俺は向こうの方々との方が、話が合いそうな気がしてきた。

 やっぱりいいな。あの人達。

 今度ゆっくり飲みにいきたいな。


 (鵜骨)

 皆は見てればいいから気楽さね~!

 オラあの人と戦わなきゃならんのよ~!

 もうどうしたらええのさ~!

 オラなんて~!

 いつも家畜達を鞭で誘導してるけど~!

 今なんて、あのお姉さんに鞭で打って貰いたいとすら、思い始めてるんだど~!

 オラ、もう試合やめて、あの人に鞭渡していいかな~?

 皆もう負けてもいいしょ~?


 (グランファーマーズ)

 アッハッハッハ~!バカ言うでね~! 

 鵜骨どんたら、ホンマにアホさね~!

 相変わらずのお調子者や~!

 それこそ村さ帰れんて~!

 嫁子にも顔合わせられんべさ~!

 大会で綺麗な女性が相手だったから、自分の鞭渡して叩いて貰いました~! 

 試合に負けたけど、悔いはないです~!

 なんか違う世界が見えました~!

 おっとうは、都会で男になって来ましたよ!

 

 ギャハハハハハ~!

 言えるわけなかて~!

 村中から、そうスカンやて~!

 オラ達も庇いきれんて~!

 子供さイジメられっぞ!

 鵜骨のおっとうは、都会で変態になったって~!

 農業組合の金使って変態になって帰って来たて!

 オラ達も子供さ言うぞ~!

 ええか~!鵜骨ん家のおっとうは、変態じゃ~!

 子供にも近づいたらイカン!

 変態さうつるぞ~!ってな~!


 ギャハハハハハ~!

 うつるうつる~!鵜骨の変態さうつるぞ~!

 皆、鵜骨の家には近づくな~!

 家畜にもうつってるかもしれんぞ~!


 (鵜骨)

 おまんら止めれ~!

 おまんらが誰にも言わなければ広まらんじゃろ! けんど、おまんらの様子見てると~。

 絶対面白がって村中に話すやろな~!

 くっそ~!せっかく都会さ来たのね~!

 男のお楽しみも叶えんと帰るのか~!

 つまらん!ホンマにつまらん!

 くそ~!こうなったら、真面目に戦って評価さ上げちゃる!

 鵜骨のおっとうは、強いんやて!

 村中に武勇を広めたるわい!


 鵜骨さんと、仲間達の楽しそうな会話も落ち着いたようだ。

 うん。さっきも言ったけどイジメはダメだよね。

 子供のためにもがんばれ!お父さん!

 

 鵜骨さんは腕捲りをし、マリエさんを真剣に見つめ始めた。

 いよいよ本格的なバトルが始まりそうだ。


 (鵜骨)

 お姉さん!

 あんた性格悪いけど、とびきり美人じゃね!

 出来れば戦いたくなか!

 まあ、出来れば鞭で叩いて欲しいけんど(小声)

 

 けんど!オラには村で待つ嫁子がいる!

 今は忘れていたいけんどな(小声) 

 だから、戦わなきゃならん!

 申し訳ないけど、きちんと戦って!

 勝たせて貰う!

 そして村中に響かせるんや! 


 オラは鞭で打たれるのが大好きな!

 

      無類の変態やってな~!

  

 鵜骨さんは、そう叫ぶと。

 マリエさんに向かって駆け出した。


 あれ?なんか後半おかしくない?


 (グランファーマーズ) 

 ギャハハハハハ!

 鵜骨どん!鵜骨どん!

 大事なとこ間違ごうてる!

 本心出てもうてるぞ~!

 最後本音が混じっちまってる!

 本心隠さんと話しちまってるぞ!

 アッハッハッハ~!

 変態じゃ~!それじゃタダの変態じゃて~!

 

 グランファーマーズの皆さんは大爆笑だ。 

 ホントに仲が良さそうで羨ましい。

 鵜骨さんはどうやら、仲間内ではいじられキャラらしい。


 (鵜骨)

 間違えてなか!

 本心隠さんと戦うと決めたんさ!

 オラは勝って! 

 このお姉さんに、鞭で打って貰うんや~!

 

 くらえ! 必殺! 双頭鳥の尾!!

 

 鵜骨さんは、力強く鞭を振るった。


 グオオオ~~!!


 鞭は二又に分かれ、唸りをあげてマリエさんに向かう。


 (マザー)

 !?

 思った以上に、鞭のスピードが速い!

 突然二又に分かれることで、マリエさんの意表を突いている!

 きちんと見極め、かわしきらないと!!

 (悠)

 大丈夫だ!マリエさんなら…。


 バシン!バシン!


 (マリエ)

 クッ…!し、しまった…!


 二又の鞭がマリエさんをとらえた。

 マリエさんは、鵜骨さんの攻撃をかわすことが出来ず、まともにダメージを負ってしまった。

 マリエさんは攻撃を受け、その場に膝をついた。


 (悠)

 バカな!?マリエさんがまともにくらった!?

 速すぎて避けられなかったのか!?

 いや、違う…。

 避ける素振りすらなかった!!

 あまりに意表をつかれて体が固まったのか!?

 あの冷静なマリエさんが!?


 (リナ)

 ちょっとちょっと!

 マリ姉!?なんで避けないのよ!?

 いくらびっくりしても!

 いつものマリ姉なら、せめて片方だけでも避けられたはずでしょ!?

 どうなってんの!?

 ほとんど棒立ちだったじゃない!?

 避ける素振りすら取れないなんて…。

 マリ姉に何があったって言うの!?


 俺達はマリエさんを見る。

 マリエさんは、右の肩と左足にダメージを受けた様だ。

 どちらも赤く腫れ上がり、血が流れ出ている。


 (マザー)

 まさか…。私が試合開始前に話した通り…。

 やっぱり気合いが入りすぎて、どこか集中力を欠いてしまっているのでは!?

 あのマリエさんが、あれだけ無防備に相手の攻撃を受けるなんて…。

 普段の彼女なら有り得ない!

 やっぱり何かあったんですよ!


 (悠)

 確かに変だ…。

 試合開始前は大丈夫と言っていたけど…。

 マリエさん。やっぱり力が入りすぎていたのか?

 それにしても、相手の初撃を…。

 全てまともにくらっちまった…。

 しかも、左足と利き手の右肩かよ。

 これからの戦いも、滅茶苦茶不利じゃねーかよ。

 くそ!どうする!?

 最悪こっちからギブアップも…。


 (リナ)

 ヤバイよ。マリ姉…。

 相手は、近~中距離タイプなのよ!?

 近付けないで、遠距離から攻撃するのがセオリーでしょ!?

 相手から離れるためにも、どんどん動き回らなきゃいけないのに!

 よりにもよって、足を怪我するなんて…。

 どうしよう。このままじゃマリ姉!

 かなりマズイじゃないの!

 

 俺達はマリエさんを見つめる。


 マリエさんは、右の肩付近を抑え、かなり痛みを感じているようだ。

 苦痛に顔を歪め、鵜骨さんを睨み付けている。

 

 マリエさんの肩から血が滲み出る。


 俺達はマリエさんを信じ、戦況を見つめることしか出来ない。


 マリエさんは、この苦境をどうやって!?

 

 どう考えても、絶対不利な状況でしかない。


 でも、彼女なら…。


 彼女ならどうにかしてくれる。


 希望にも似た期待を、俺達は思い描くことしか出来ずにいた……。


 

 

 

 


 

 

 

 

  

 

 











 

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