表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
32/114

水の章 クランバトル編 二回戦

 ○ レイナのバトル


 (実況)

 さあ、両クランが整列し!

 いよいよバトル開始が迫ってまいりました!

 ビッグファーマーズは、一回戦を苦戦の末に突発!  二回戦はどのような戦いをちせてくれるのか!


 方や、ディープインパクトは衝撃の3連勝で一回戦を突発!

 勢いに任せて、一気にベスト8に進出なるか!    注目の一戦となっております!


 (悠)

 あれ?何か相手の人達…。

 どっかで見たことあるような…。

 マリエさん。

 相手の人達、どこかで見覚えないですか?


 (マリエ)

 そうかしら?

 私はちょっと覚えがないわね。

 特徴的でもないし、誰かと勘違いしているんじゃない?


 (悠)

 そうなのかな~。

 まあ、マリエさんがそう言うなら…。

 多分そうなんだろうかな?

 ま、いいか。


 ところで~。さっきから気になってるんだけど。

 なんか今日は俺らの歓声多くないか?

 一回戦での圧勝が効いているのかな?

 俺ら早くも人気者?


 (リナ)

 よく聞いてみなさいよ。

 ほとんどマリ姉への声援よ。 

 茶色い声援って感じ。

 耳に毒だわ…。


 (観客)

 マリエさま~!!

 頑張って下さい!!

 妻には今日は遅くなるって伝えています!

 存分に戦ってください!!

 出来れば、少しだけ長く!!

 昨日よりも長く戦ってください!!

 私達は、少しでも長く!

 戦う貴女を見たいです!

 

 そうりゃ!

 マッリッエ! マッリッエ! マッリッエ!

 マッリッエ! マッリッエ! マッリッエ!


 (悠)

 なんか声援が具体的過ぎない?

 これはホントに声援なの?

 (レイナ)

 マリエさんのファンは、何だかコアな人が多いですね。

 見てください。

 早くもファングラブ的な段幕までありますよ。

 貢ぎまくって捨てられそうで怖いです。

 (リナ)

 マリ姉なら、絞れるだけ絞りそう。

 何だかこっちまで怖くなってきたよ。


 (マリエ)

 皆、ありがとう~!

 頑張るから、応援してね~!


 マリエさんは、応援席に手を降って答えている。

 やはり、生来の人気者だ。

 対応も手慣れている。


 (悠)

 流石マリエさんだな。

 何の緊張感も感じない。

 自然体だ。ホントに自然体。

 自然に騙すタイプだな。

 全く悪気なく騙す。

 いわゆる魔性タイプだ。


 (レイナ) 

 流石メンタルお化けです~。

 産まれ持った資質が違います~。

 私は緊張で、ちょっと具合悪いです~。

 (悠)

 だな。俺なんか人の声援なのに、胃が痛くなってきたよ…。

 やっぱり人前はダメだな…。


 俺とレイナのネガティブコンビは、本日も順調に緊張している。

 方や、マリエさんは楽しそうに声援に答え。

 会場を回り始めた。


 リナはやる気満々。

 早く戦わせろと言わんばかりに、会場の隅に移り、ウォーミングアップをしている。


 二人とも、対戦相手など全く気にしていない様子だ。

 俺の相手の見間違えも、二人にしたら気にもならない話なのだろう。


 二人は挨拶が終わると、直ぐに自分の世界に入り込み、集中を始めている。

 一方俺達は、挨拶後も会場を見渡し観客の多さにたじろいでいた。

 気が付けば会場中央に二人きり。

 ポツンと取り残されている。

 いつも通り、対照的なコンビが出来上がっていたのだ。


 (??) 

 あんれ?お嬢ちゃん?

 あんた船であった人じゃないけ?

 

 俺達は聞き覚えのある声に振り向いた。

 そこには、ポートバレットからの船便で、リンゴの手入れをしてくれた、あの農夫のオジサンが立っていた。

 

 (レイナ)

 あれ?オジサンは港の?

 どうしたんですか!?こんな所で!?


 この場でその質問はどうなの?と思いつつ、俺とレイナは農夫のオジサンと話を始めた。


 (悠)

 お久し振りです。

 先程整列の時にいらっしゃいましたか?

 皆さんと何処かでお会いした気がしていたのですが…。どうも確信が得られなくて…。

 でも、やっぱりお会いしていたみたいですね。


 それで~。

 こちらにいらっしゃるということは…。

 一回戦勝って来たんですよね?


 (農夫)

 んだ~。

 すまんね~。

 ワシ恥ずかしくて一番隅っこさ並んでたから、気付かなかったかもな~。


 ワシら、水の帝様にお願いして~。

 農業用に綺麗な水さ提供して貰いたくて~。

 何となく参加したんさ~。

 そしたら、あれよあれよと予選突破して~。

 初戦もなんとか勝ってさ~。

 二回戦で終わりかな~。って思ってたけど~。 

 まさか、お嬢ちゃんのクランやったとはさ~。


 あの綺麗かお馬は元気かえ~? 

 あんな綺麗か馬なら、また手入れさしてみたいもんだわ~。


 オジサンは、相変わらず優しそうな。

 ゆっくりとした話し方であった。

 笑顔でニコニコと話す様子から、完全に警戒心を溶かれてしまう。

 これから戦う相手には思えなくなってくる…。


 (レイナ)

 え?あ?

 オジサン達が、今日の相手なんですか!?

 あの!よ、よろしくお願いします!


 リンゴちゃんも元気です!

 あの後から毛づやもツヤツヤで。

 あの子も喜んでいました。

 私も綺麗にして貰って嬉しかったです!

 ホントにありがとうございました!


 それで…。

 あの、今日は…。その…。

 お、お手柔らかにお願いします…。


 レイナはようやく事態に気付いたらしい。

 慌てた様子で、オジサンに頭を下げていた。


 (悠)

 『あ、ホントに気付いてなかったんだ。』

 『流石にちょっとびっくりしちゃうな。』

 オジサン、どうかお手柔らかに。

 お互い、怪我なく終わりましょうね。


 俺はオジサンに、会釈をし、当たり障りのない挨拶を済ませる。

 こういう部分は、社会人になって身に付いた。

 それこそ、当たり障りのない技術かもしれないな…。


 (農夫)

 こちらこそ~。

 お互い恨みっこなしで~。

 頑張って戦いましょ~。

 お嬢ちゃんも~。

 怪我せんようにな~。


 オジサンもニコニコと手を降って答えてくれた。

 彼は、リンゴの件も含めて。

 ホントにいい人なんだとよく分かる。

 相手の優しさを知っていること…。

 これがウチのクラン。

 特にレイナにどう働くか…。

 俺は拭えない不安を感じ始めていた。


 俺はレイナに視線を向ける…。


 (レイナ)

 オジサン達が…。今日の相手?

 私は、オジサンと戦わなくてはいけないの?

 あの、リンゴちゃんを綺麗にしてくれた…。

 優しいオジサン達と…?

 

 『やはりこうなってしまったか。』


 これが明確な俺の感想であった。 


 レイナは、明らかに動揺している様子だ。

 杖を握りしめ、視線が覚束ない…。

 今日戦うのは難しいんじゃないか?

 俺は頭の中で、どう判断すべきか結論を急いでいた。


 (悠)

 レイナ!おい、レイナ!

 大丈夫か!?

 おい!しっかりしろ!


 落ち着きがないレイナに声をかける。

 レイナは、俺の声に気付き、ようやく正気を取り戻した様にも見えた。


 (レイナ)

 え?あ!はい!

 大丈夫…。です!

 何でもありません!

 少しボーッとしただけです。

 相手が…。相手が誰でも関係ない!

 私だって戦えるんだ!

 それくらいの覚悟は、昨日既に済ませています!


 (悠)

 ホントかよ!?

 明らかに動揺しているだろ!

 別に順番は自由なんだ!

 今からだって、先鋒はリナに代わって…。


 俺は、リナに話をしに行こうとする。


 (レイナ)

 大丈夫です!

 相手が、あのオジサン達でも関係ありません!

 私に!私にやらせて下さい!

 お願いします!

 リナちゃんには何も言わないで下さい!

 

 レイナは俺の腕を掴み、リナに話をするのを制する。

 

 (悠)

 何言ってんだよ!?

 無理だって! 

 さっきから、震えてるだろ!?

 それに、レイナはあのオジサン達の事。

 リンゴの事もあって気に入ってんだろ!


 いきなりそんな相手は無理だって!

 あの人達と戦うなんてレイナには無理だよ!

 今日は一端止めとこう!?

 戦うのは次回からにすればいいだろ!?  

 1日や2日の違いだ!大して変わらないって!

 今日は一端仕切り直そう!

 な!?いきなり無理しちゃダメだよ!

 レイナ、緊張で顔色も悪くなってるし!


 俺はレイナの肩を掴み、必死に説得を試みた。

 しかし、レイナは頑なに、俺の腕を離さない。

 体は震えているのに、それに抗うかのように、腕に力を込めてくる。


 (悠)

 レイナ!一度リナに話すからな!

 リナと相談して決めるぞ!

 くそ!こんな時にリナは何やってんだよ!?


 俺はリナを探すが、リナは闘技場の隅で、黙々と体を動かしている。

 リナは今朝から少しだけ、俺達から距離を取ろうとしているのだ。

 レイナの件で意見が別れたせいだろうか。

 今のリナには、俺達の様子は目に入っていないようだ。


 (悠)

 おい!リナ!先鋒交代だ!

 今日レイナは、出場させない!

 相手が悪すぎるんだ!

 

 俺はリナに向かって叫んだ。

 俺の声にリナも気付いた様で、此方を見る。

 ただ、はっきりとは聞こえなかった様で、もう一度話すように、ジェスチャーで示していた。


 だから!先鋒をレイナと!

 

 俺はリナに、再び交代を伝えようとする。


 その時…。

 

 (審判)

 両クラン!

 先鋒戦出場者、中央へ!


 審判が先鋒戦出場者の集合を告げてしまった。

 

 (レイナ)

 はい!


 レイナは返事をし、そのまま闘技場中央へ進み出てしまった。


 (悠)

 おい!レイナ!いい加減にしろ!

 今日は無理だ!リナと交代だ!

 キャプテンとして出場は認められない!


 審判!待ってくれ!

 先鋒交代の予定なんだ!


 俺の様子を見て、審判がこちらに近づいてくる。


 (レイナ)

 悠兄さん!

 いい加減にするのは悠兄さんです!

 私はこのまま戦います!

 誰が相手でも関係ないんです!

 悠兄さんは下がって、向こうで応援していて下さい!


 レイナが大声で叫んだ。

 その声を聞き、俺達の異変を、リナとマリエさんも気付いた様だが…。


 (審判)

 ディープインパクト!

 何かありましたか?  

 先鋒戦が始まります。

 出場者以外は、闘技場から降りて下さい。


 審判が俺達の様子を不審がり、近づいてきた。 

 『チャンスだ』 俺は心の中で思った。


 しかし…。


 (レイナ)

 何でもありません…。

 少し出場順で揉めただけです。

 もう解決しました。 

 私が先鋒で問題ありません。


 レイナは、審判が俺に近付くのを手で制し。

 ここぞとばかりに、出場の意思を伝えてしまったのだ。


 (悠)

 んな!?レイナ!

 ちょっと待てって!


 (審判) 

 分かりました。

 では、そこのキミ!

 その変な服のキミだよ!

 試合を開始するから下がって!

 これ以上ここに居座るなら警告です!

 聞き入れないなら、試合は反則敗けとしますよ!


 俺は審判に交代を告げたいが、審判からは早く下がるように注意を受けてしまった。

 しかし、ここを譲るわけには…。


 (レイナ)

 聞きましたか?

 先鋒で反則敗けは、流石に厳しいですよね?

 もう私が戦うしかないんです。

 今更交代は聞いて貰えませんよ。

 さあ、悠兄さんは下がっていて下さい。


 レイナにしてやられた形となってしまった。 

 レイナは相変わらず緊張している様だ。

 杖を持つ手が震えている。


 (悠) 

 くそ!バカな維持張りやがって!

 何でそんなに頑固なんだよ!

 レイナ!よく聞け!

 見ていてダメそうなら、直ぐに止めるからな!

 

 俺は捨て台詞にも似た言葉を残し、駆け足でその場を離れる事しか出来なかった。


 レイナの初バトルは、不穏な空気と共に、幕を開けようとしていた…。

 

 ○ レイナのバトルⅡ


 (悠)

 くそ!レイナの奴!

 バカ維持張りやがって!


 俺は闘技場から、脇の応援席に飛び降りた。


 (リナ)

 さっきから、どうしたのよ?

 何だかごちゃごちゃ言ってたけど、よく聞こえなかったのよ!

 何かあったの?随分慌てた様子じゃない?

 

 リナが隣に駆け寄ってくる。


 (悠) 

 どうしたって、対戦相手見てたのかよ!?

 相手は、俺達がポートアクアに着いた時に、リンゴの手入れをしてくれたオッサン達なんだよ!

 あの時レイナと楽しそうに話をしてた人達だ!

 あのオジサン見覚えあるだろ!?


 (リナ)

 嘘でしょ!?

 じゃあ、何でレイナを止めなかったのよ!?

 あの娘が知っている人と戦える訳ないじゃない!


 俺に促され、リナも対戦相手を確認する。


 (リナ)

 ホントだ…。確かにあのオジサン達だ…。

 私としたことが…。何で気付かないのよ…。 

 レイナの大事な試合だってのに。

 対戦相手すら見ていなかったって言うの?

 皆と少し気まずいってだけで? 

 こんな大事なことを見落とすなんて…。


 バカじゃないの!?

 思い通りにならないからって!

 一人で子供みたいにふて腐れて!

 私何やってんのよ!


 リナは叫び、自分の不甲斐なさを悔いている。

 しかし、一番不甲斐ないのは俺だ。

 レイナの側にいながら、出場を止めることが出来なかったのだから…。


 (悠)

 港でちょっと話した程度の相手なんだ。

 リナが気付かないのも仕方ないよ。

 俺も農家のオジサンに声かけられるまで、はっきりとは分からなかったし…。


 それに、バカは俺だよ。

 側にいて。相手が知り合いだって気付いたのに。

 レイナを止められなかったんだ。

 アイツにまんまと出し抜かれたんだからな…。

 

 (マリエ)

 ちょっと!二人ともどうしたのよ!?

 さっきから、随分慌てて…。

 何かあったの!?


 マリエさんも、尋常ではない俺達の様子に気付いて駆け寄ってきた。


 (悠)

 マリエさん、実は…。


 俺はマリエさんに事情を説明した。


 (マリエ)

 そう。だから悠さんは、整列した時に見覚えがあるって言ったのね…。

 ごめんなさい。

 私は港で、彼等に会ってなかったから…。


 (悠)

 マリエさんが謝る理由なんてないですよ。

 俺が止められなかったのが全部悪いんだ。

 くそ!何でよりによって今日の相手なんだ!

 レイナは知っている人!

 ましてや、良くしてくれた人と戦える訳ないってのに!

 今からでもどうにか出来ないのか!?


 俺は、何か手はないかと頭を掻いて考える。

 しかし、後悔の思い以外に、頭に浮かぶものは無かった。

 

 (リナ)

 ちょっと!悠兄!

 アレ見てよ!

 相手の先鋒の人って…。


 リナが指差すその先にいた人物。

 俺は彼を見て、更に愕然とする…。


 (悠)

 マジかよ…。

 何でよりによって…。


 (実況)

 さあ!注目の試合の先鋒戦!

 ディープインパクトの出場選手は!

 気になっていた方も多いはず!

 一回戦は不出場であった癒しの白ローブ!


 岩本レイナ選手の登場だ~!!


 (観客)

 うお~!

 マリエさんも素敵だが!

 こっちもマスコットみたいで可愛いぞ~!

 レイナちゃ~ん!可愛い~!

 オジサンは一回戦からずっと応援してるよ~!


 レ・イ・ナ! レ・イ・ナ! レ・イ・ナ!

 レ・イ・ナ! レ・イ・ナ! レ・イ・ナ!

 

 (実況)

 そして対する、グランファーマーズ!

 先鋒戦出場選手は、一回戦に引き続きこの人物!

 昔ながらの優しい農家のオジサン!!

 こちらもキャラクターの様な愛らしさ!

 

  畑 大作選手だ~!!!


 そこには、申し訳ない仕草で会釈をする。

 あの優しそうな、農家のオジサンが立っていたのだ…。

 

 (悠)

 一番良くしてくれたオジサンじゃねーか…。

 どうしてこうなるんだよ…。


 俺は焦りから強く拳を握りしめる。

 レイナにとっては、能力に関係なく。  

 相性最悪な相手と当たってしまった…。


 レイナの初バトル…。


 一筋縄でいかないことは、間違いなさそうだ…。


 相手の愛らしい立ち姿が。


 俺達の不安を、一層強いものにしていた…。

 

 

 

 


   

 



 

 









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ