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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
29/114

水の章 クランバトル編 一回戦反省会

 ○ 大会一日目 反省会


 (マザー)

 皆さん。本日はホントにお疲れさまでした。

 無事に初戦突破。

 大きな怪我人も出ず、理想的な形で初日を終えられました。

 各人が、自分の能力や課題を確認できたのも、大きな収穫になりましたね。


 一回戦が終わり、イグ・ノウレッジの研究発表会に付き合った俺たちは、その後宿屋に戻った。 

 今は明日の二回戦に向け、反省会兼ミーティングを行っている。

 集合場所はいつも通り。

 俺の部屋だ。


 (リナ)

 まあ、私にしてみれば。

 相手が弱すぎて何の練習にもならなかったけどね。明日こそは、少しでも骨のある奴と戦いたいわ。


 リナは相変わらず、今日の対戦相手には納得していないようだ。

 もっと強い奴と戦いたいだなんて。

 全く意味が分からない。

 普通、戦うのは怖いし、楽に勝ちたいんじゃないかな…。

 

 (悠) 

 いやいや。

 リナの対戦相手。確かグラハムだっけか…。

 アイツだって、決して弱い相手では無かったぞ。

 未来予知なんて、スゲ~心具じゃね~か。

 リナにしてみれば物足りないかもしれないが…。

 普通なら、あんな風に瞬殺するなんて無理だ。

 まあ、なんだ…。

 面と向かって言うのも恥ずかしいが…。

 やっぱり対人戦。

 特に一対一の戦いなら。

 リナに勝てる奴は、そうはいないんじゃないか?


 俺はリナを見ながら、全員に伝わるよう話をした。


 (マリエ)

 そうね。あのスピードについてこれる人は…。

 きっと、ほとんどいないでしょうね。

 確実には言えないけど…。

 リナちゃんが、私達の中で、1番一対一に向いているのは間違いなさそうね。

 まあ、もちろん性格も含めてだけどね。


 (レイナ)

 リナちゃん。

 戦う前からやる気満々でした~。

 相手の心具なんて関係ない。

 開始と同時に一撃で倒す。 

 そういう気配が体中から涌き出てました~。

 結果的にホントにそうするから。

 やっぱり、リナちゃんは凄いです~。

 

 (リナ)

 ハッハッハッ!

 皆やっと私の偉大さに気付いたのね!

 私ってば、ホントに強いのよ!?

 もしかしたら、この大会の間に、水の帝を越えちゃうかもね!

 

 リナは立ち上がって、自信満々に胸を張っている。顔もどうだと云わんばかりだ。

 正に鋼のメンタル。

 開会式でビビっていた姿は何だったんだ…。

 

 (悠)

 出たよ。メンタルお化け。

 その自信。少し俺とレイナに分けてくれよ。

 体はゴリラ。心はお化け。

 名探偵も真っ青だな。

 (リナ)

 誰がお化けよ!?そしてゴリラよ!?

 人を化け物みたいに!

 あんた女性に対して、その発言はサイテーよ!

 (悠)

 バカにしてねーよ!誉めてんだぞ! 

 身体能力・メンタル、どっちも普通じゃねーって意味だよ!

 誉めてんの!羨ましがってるの!

 (リナ)

 はあ!?誉めてる!? 

 それなら、もっと言い方ってもんがあるでしょーが!


 俺とリナは、また下らないことで言い争いを始めた。皆慣れたもので、最近はそれほど慌てて止められることは無くなってきた。


 (マザー)

 まあまあ、二人とも落ち着いて下さい。

 喧嘩をするようなお話ではありませんよ。


 マザーの仲介により、俺とリナは一端会話を中断した。実は、言うほどお互い怒ってはいない。

 コミュニケーションの一つの形になりつつあるのだ。


 (マザー)

 今お話が出た通り。

 今日の戦いを通して、リナさんの戦闘能力の高さは、間違いなく証明されたと思います。

 しかし、対人戦では皆さんの中で一番強い。

 リナさんなら、誰にも負けないという考えは、少し間違っているのです。


 (リナ)

 何よ、マザー。

 私の素晴らしい戦いにケチつける気?

 (マザー)

 いえいえ、決してそんなつもりは…。

 勝って兜の緒を締めろと言いますか…。 

 (リナ)

 何よ~。勝った時は盛大に喜べばいいじゃない。

 私達、もう兜被る世代じゃないのよ。

 (マザー)

 いえ、これは諺というやつで…。

 

 リナとマザーは、何故か兜の話題に進もうとしていた。

 その話題を遮るように、話を始めたのはマリエさんだった。


 (マリエ)

 マザーが言いたいのは、つまり。

 戦いにおける「相性」の話よね?

 いくらリナちゃんが強くても、相性が悪ければ苦戦することもある。

 そういうことでしょ?

 

 マリエさんの発言を受け、リナと言い合っていたマザーは、部屋の中心にふよふよと移動した。


 (マザー)

 マリエさん。ありがとうございます。

 私が正に伝えたかった話。

 皆さんも、身をもって体験したと思いますが。

 対戦相手と相性が悪ければ、どんなに強くても、苦戦を強いられることは有り得るのです。


 (悠)

 相性か~。

 俺も能力的にマークⅡはキツかったな~。

 アイツの相手は、リナかレイナの方が向いていたよな~。


 (マザー)

 今日の戦いの中で、一番相性で苦戦したのは。

 間違いなく悠さんでしょうね。

 逆に相性・実力共に勝っていたのは、リナさんとマリエさんでしょう。

 悠さんの能力は、相手自身や攻撃を吹き飛ばして防ぐことが出来ます。

 しかし、あれだけ巨大で重たい物を吹き飛ばすのは、流石に少し厳しかった。

 リナさんやレイナさんなら、スピードと力。

 そして魔法で労せず仕留め得たかもしれない。 

 そういう意味で、今後は相性が悪い相手に当たってしまった場合。如何にして戦い抜くか。

 これが皆さんの課題になるでしょう。


 (リナ)

 相性ね~。確かにそれはあるか。

 私、悠兄にはまだ勝てる気がしないけど、今日のマークⅡには多分苦戦しないもんな~。

 戦ってる時も思ったけど、確かに相手の心具が分からない中でどう戦うのか。

 そして相手が苦手なタイプの時にはどうするか。

 もっと頭使わなきゃダメなのかな~。

 私、そういうの苦手なんだよな~。


 (マザー)

 そういう部分で、一番この大会に向いているのはマリエさんでしょう。

 相手の心具と能力を把握し、こちらの能力は把握させない。

 そう言った高いレベルの駆け引きを行えるのは。 ウチのクランでは、間違いなくマリエさんです。


 今日の戦いの中で、マリエさんの策略はずば抜けていましたよね。

 皆さんは、これからマリエさんの戦い方を参考にし、戦闘における、「思考の早さ」を身に付けて頂きたいものです。


 (レイナ)

 確かに、マリエさんの戦い方は見事でした~。

 相手には一切気付かせず、自分の能力にはめ込んでいく。

 素晴らしい心理誘導でした~。

 とても勉強になります~。


 (マリエ)

 あらあら。皆さんに誉めて頂いて恐縮だわ。

 ただ、私はあまり強い力を持った能力ではないから…。

 一応自分なりに考えて戦う必要があっただけよ。

 「考えよう考えよう」とあまり意識せず。

 自分の得意な形に、如何にして相手を陥れるか。

 私はそっちの方が大切な気がするわね。 

 

 (マザー)

 確かにその通りかもしれません。

 相手と相性が悪いとき。

 それはつまり、相手の形では、部が悪いということ。

 そこで、如何にして、自分の得意な形に持っていくか。

 これから沢山の相手と戦闘を重ね、皆さんが少しずつ学んでいくべき課題でしょう。


 複数で戦うクランバトルであれば、お互いの弱点をフォローし会えますが。今大会は個人戦です。

 個人の課題の確認と、個々のレベルアップという意味では。

 早い段階でこの大会に参加できたことは、幸運だったかもしれませんね。


 (リナ)

 自分の得意な形ね…。

 私はやっぱり、真正面からバキバキやり合いたいな~。

 チマチマチマチマやられると、やっぱりイライラしちゃうわ。 


 (悠) 

 リナらしいな~。

 まあ、今はそれでもいいかもしれんが…。


 これから勝ち上がるにつれて、相手も強くなる。 俺もそうだけど、自分の苦手なタイプがどんな奴か。そういう奴とはどうやって戦うか。 

 頭の中でシミュレーションしておいた方がいいかもしれないぞ。

 俺は今日、それが骨身に染みたよ。


 (リナ)

 シミュレーションか~。

 イメトレってやつよね~。

 私、自分が負ける姿って、あんまり想像出来ないのよね~。

 頭の中でイメトレすると。 

 大体私が圧勝して、大歓声を浴びる展開になるのよ。


 (悠)

 どんだけポジティブなんだよ!

 やっぱりメンタルお化けだな!お前は!

 (リナ)

 何よ~!自信があるのは良いことでしょ~!?

 (レイナ)

 まあまあ。

 リナちゃんの言うことも正しいです。

 勝つイメージを持つことも、きっと大切なんですよ。

 (リナ)

 さっすがレイナ!

 よく分かってるじゃない!

 苦戦するイメージなんて、戦いの時の足を鈍らせるだけよ!

 私は相手が強くても勝つの!

 結果的に私が勝つんだから、相手の能力は関係ないのよ!

 (悠)

 結局そうなんのかよ…。

 ホントに羨ましい奴だな、お前は…。

 (レイナ)  

 リナちゃんはそれで良いんですよ~。

 実際、今までも結果が着いてきてますから。

 (悠)

 まあ、確かに…。

 結果的に勝つし、実際強いからなリナは…。

 (レイナ)

 そういうことですよ。

 あの~、それで突然で恐縮なんですが~。

 悠兄さんにお聞きしたいことがあるのですが~。

 

 レイナは恐る恐る、身を屈めながら手を挙げる。


 (悠)

 俺にか?なんだ?急にあらたまって? 

 (レイナ)

 いえ…。大したことではないのですが…。

 今日の試合。マークⅡを相手に…。

 悠兄さんは、どうやって勝ったんですか?

 闘技場でリナちゃんが聞いてましたが…。

 あの時は、イグ・ノウレッジさん達の発表会になって、きちんと聞けなかったので…。

 私、出来れば知りたいのですが…。

 (リナ)

 あ~!そうだった!

 あの時、悠兄の力が見えないから!

 私もどうやったか分かんなかったんだ!

 すっかり忘れてたよ!レイナナイス!

 悠兄!私も知りたい!教えて教えて!


 リナも勢いよく手を挙げ、俺の解答を促した。


 (マリエ)

 私も…。

 私も知りたいわね。 

 相性の悪い相手を、貴方が如何にして倒し得たのか…。今後の戦いの参考になると思うの。

 

 マリエさんも壁に寄りかかりながら、ゆっくりと手を挙げる。

 手の挙げ方だけでも3者3様。

 こういった行動の違いは、見ている側としては実に面白い。

 

 (悠)

 そっかぁ~。確かに説明してなかったな。

 一応、皆の試合を分析するのは大事だよな。

 経験を共有することもできるし…。

 よし!ちょっと時間下さい!

 今から説明しますね!


 (マザー)

 私からもお願いします。

 きっとこれからのバトルに、活かすべき部分がある様な気がします。

 (悠)

 よし!マザー!

 任せなさい!


 俺は皆に促され、自分の試合の説明を始めた。


 ○ 反省会Ⅱ レイナの決意


 (悠)

 じゃあ、説明させていただきます。

 (リナ・レイナ)

 よろしく!

 お願いします~。


 (悠)

 はいはい。

 それでは、取り合えず最初らへんからかな? 

 開始と同時に、俺は取り合えず、マークⅡを吹き飛ばそうとしたんだ…。

 俺の力は、マークⅡの肩辺りに直撃したはず。

 けれど、マークⅡは少しよろけただけ。

 場外に吹き飛ばすのは、ちょっと難しそうな感じだったんだ。

 (マリエ)

 覚えてるわ。 

 私達も見た感じ、吹き飛ばすのはちょっと厳しいと感じたもの。


 (悠)

 そうなんですよ。

 俺の唯一の取り柄が、あんな序盤にいきなり封じられた訳です。

 正直。あ、これもうだめかもな…。 

 って思いましたもん。

 (リナ)

 早いな!

 あんたもっと頑張んなさいよ!

 (悠)

 だから、この後頑張ったでしょ!

 勝ったんだから許しなさいよ!

 まったく…。これだからメンタルお化けは…。


 え~と、続けますね。

 その後、マークⅡの攻撃に晒されました。

 この一撃も強烈で。

 実際、弾くのが精一杯。

 私は盛大に吹き飛ばされました。

 (マザー)

 覚えています。

 ホントに弾くので精一杯。

 果たして次は防げるのか…。

 そう思えてしまう位。

 相手の一撃は強烈でした。


 (悠) 

 やっぱり、端から見てもそう感じたのか…。

 今考えても、あそこからよく勝ったもんだよな。

 自分でも驚きだよ。

 (マリエ) 

 だからこそ、聞く価値があるのよ。

 あの場面から、どう逆転したのか。

 皆が共有するのは、凄く大切なことだわ。


 (悠)

 確かにそうですね。

 やっぱり話せて良かったのか…。

 ええと…。続けます。

 そして、状況が不利だと悟った時。

 これが非常に嬉しかったのですが、皆の応援が聞こえてきたんです。

 実はこれが逆転の方法を思い付く、きっかけになりました。

 (レイナ)

 私達の応援がですか!?

 何だか凄く嬉しいです~。


 (悠)

 ホントにそうなんだよ。

 皆には、日頃から感謝しているけど。

 この時ほど、有り難さを感じた事はなかった。 

 今日の勝利は皆のお陰だよ。

 ホントにありがとう。


 俺は座りながらではあったが、皆に感謝を込めて頭を下げた。


 (リナ)

 声援を力に覚醒したのね!

 なんて熱い展開なの! 

 私、そういうの大好きだよ!


 リナは嬉しそうに。興奮した様子で身を乗り出している。

 確かにリナの好きそうな展開かもしれないな。


 (悠)

 そう。皆の声援で力を得た俺は…。

 ふと、「皆ならどうやって勝つのかな?」と思ったんだ。

 ここで大事だったのは、俺以外の皆なら、きっとマークⅡに勝てると気付いた事だ。

 俺は皆なら、こう勝つだろうとイメージをしてみたんだよ。

 (マザー) 

 他の方の戦いをイメージか…。

 なるほど、確かに自分のやり方で手詰まりになった時。

 他の仲間の戦い方を参考にするのも、一つの有効な手立てかもしれない…。

 面白い発想ですね。


 やっぱりこの機会を設けたのは正解でした。


 (悠)

 そう言って貰えると、話す方としても嬉しいね。

 そう。そこで俺はある作戦に行き着いた。

 名付けて、

 「失敗したらレイナにお任せ」

 「リナは無理だからマリエさんで行こう」

 作戦だ。

 (リナ)

 …。なにそれ。センスわる。

 てか、何で私だけ否定されてんのよ!

 そこは私を選ぶところでしょーが!

 (悠)

 名前は今決めたんだよ。 

 センス悪いとか言わないでよ…。

 何だか悲しくなる…。


 まあ、作戦を要約するとだな。

 俺は自分の能力を分析してみて…。


 リナみたいにゴリラパワーで押しきるのは無理。

 レイナみたいに魔法で圧倒するのも無理。

 マリエさんの戦い方なら参考に出来る。


 俺は咄嗟にそう考えたんだよ。


 これが俺の逆転のきっかけになって、俺を勝利に導いてくれたのです。


 (マリエ)

 私の戦い方を?何だか嬉しいわね。

 確かに、私と悠さんの能力には。

 「遠距離~中距離の技巧派タイプ」

 という部分で、少しだけ共通するものがあるわね。

 (悠)

 その通りなんです。

 俺もそれに気付いて、マリエさんの戦い方を頭の中でイメージして見たんです。

 

 (マザー)

 なるほど。系統が近いからこそ、マリエさんの戦い方はイメージしやすかった。

 実に理に叶った判断です。

 それで、悠さんはマリエさんのどんな戦い方をイメージしたのですか?


 (悠)

 時間も無かったから、断片的にしかイメージ出来なかったんだけど…。

 マリエさんなら、マークⅡの攻撃を、真正面から受けるようなことはしない。

 きっと風を使って、どっちかに「受け流す」んじゃないかと思ったんだ。


 (リナ)

 受け流す? 

 弾いたり、押し返したりしないの?

 (悠)

 そう!ここでリナ!

 お前の戦いも参考になったんだよ!

 お前なら、きっと正面から防ぎにいくだろ?

 実際俺も最初はそうやって防いだ。

 けれど、俺にはお前みたいなパワーはない。

 だから、リナみたいに防いだらダメなんだ。

 俺はそこにも気が付いたんだよ。

 だから、俺やマリエさんが防ぐ方法。

 これは、「受け流す」なんだと、お前のお陰で俺は気付いたんだ。


 (リナ)

 何だかよく分からないけど…。

 まあ、私のお陰ならきちんと感謝して頂戴!

 扱いをもっと、敬意を持ったものに変更することを希望するわ。


 (悠)

 はいはい。

 リナサマアリガトウゴザイマシタ。


 それで、勝ち目を感じた俺は、マークⅡの攻撃を受け流す機会を作ったわけだ。

 まあ、あの最高にカッコいい。

 勝利宣言のシーンだな。


 (リナ)

 ハイハイ。カッコイイカッコイイ。

 ユウニイスゴイスゴイ。


 (悠)

 …。話をつづけよう。

 そして、マークⅡがまさかの全力宣言。

 最初の一撃が手加減していたなんて知らないから、正直焦ったよ…。 

 けれど、結果的に。全力で打ってくれたから。

 多分俺は勝ったんだろうな…。


 (レイナ)

 相手の攻撃が強くなったから勝てた…。

 何だか不思議な表現ですね?


 (悠)

 確かに分かりにくいよな。

 それを今から説明するよ。


 マークⅡはスピードを上げて俺に向かってきた。

 そして、正に渾身の一撃を降り下ろしてきた。

 さっきと同じ方法なら、きっとマークⅡの力に負けて、俺は吹き飛んで敗北した。


 けれど、この時俺は。

 攻撃を「防ぐ」のではなく、「流す」事に力を使ったんだ。

 つまりは、力を正面からぶつけるのではなく。

 自分を中心に。円を描くように。

 自分からマークⅡの攻撃が逸れていくように。

 マークⅡの力の方向を変える様に能力を使った。


 弾き飛ばすのではなく、滑らかに横に滑らせる感覚だ。

 分かりにくいかもしれないけど、自分としてはそういう感覚で能力を使ったんだ。


 (マリエ)

 なるほど。

 感覚の部分は、本人にしか分からないけど。

 やろうとした事は分かる気がするわ。

 私が戦うにしても、あのパワーを風や植物を使って正面から防ぐのは無理。

 悠さんと同じように、風を使って、剣を自分から逸らすように防いだと思う。

 力がない私達は、そういった技術で太刀打ちするしかないものね。


 (悠) 

 そうなんです。

 だから、俺もマリエさんを参考にしました。

 そして、俺はマークⅡの剣を逸らした後。

 今度はマークⅡの剣に向かって、名一杯自分の能力を使い、地面に向かって負荷をかけた。

 マークⅡは、全力で攻撃してくれたこともあり、

俺の能力の負荷と、自分の重さに耐え兼ね、勢いよく地面に向かって転倒した。


 そして、結果的に機能が停止し。


 俺が勝ち得た。


 ってのがこの試合の内容なんです。


 長くなったけど、以上がこの試合の分析かな?

 最後に勝てたのは、結局マークⅡの力が強かったから。 

 咄嗟に上乗せ出来た俺の力なんて、もしかしたら大した物ではなかったかもしれないしな…。


 ただ、力を使う方向。

 これを一方向ではなく、複数の方向に出来れば。

 俺の戦いの幅は、もう少し広がりそうだな。

 そういう意味では、ホントにいい経験になる試合だったよ。


 (マザー)

 なるほど。力の方向か…。

 今後のトレーニングメニューの参考にもなりそうですね。

 悠さん。お疲れさまです。

 報告ありがとうございました。

 非常に参考になる部分が多いお話でしたね。


 (悠) 

 いや~。それほどでも~。

 何か参考になったなら嬉しいよ。


 (マザー)

 はい。もちろん参考にさせて頂きます。


 さてと…。

 どうでしょう皆さん。一日目を終えて。

 皆さん各々、思うところがあると思います。


 最初の試合。

 リナさんは、相手を秒殺し。

 チームに流れを与えてくれました。 

 この試合で我々は、チーム内の雰囲気。

 流れの大切さに気付きましたね。


 そして二試合目。

 マリエさんが戦略で相手を圧倒。

 私達は、クランバトルにおける、相手の情報の引き出し方。

 その駆け引きの大切さを。

 目の前で体験することが出来ました。 

 

 そして三試合目。悠さんの試合。

 悠さんは、相性の悪い相手に対し。

 どう戦うべきか。試行錯誤の末に見つけ出した。 仲間の戦いをイメージし、自分に取り入れる。

 これが必ず正解になるとは限りませんので、あくまで方法の一つとして。

 私たちに可能性を示してくれました。


 今日一日の試合。

 簡単にまとめるだけでも、これだけ多くの経験を私達はしている。

 実戦が少ない私達は、こうやって戦いを共有することで、少しでも経験値を上げていくしかない。


 この反省会を、是非次の機会に活かしてくれるよう。私は願ってやみません。

 

 (悠)

 経験値を上げるか…。

 自分で言うのも変なんだけど。

 俺、昔からこういうミーティング的な時間って、正直無駄だと思ってたよ。

 部活とか会議とかでも、早く終われよ、めんどくさい位しか考えてなかった。

 けど、真剣に聞くと勉強になるんだな。

 まさか、この年で気が付くとは…。

 何だか恥ずかしい気持ちになるよ…。


 (マリエ)

 あら?私だって同じよ?

 ミーティングなんて机上の空論。

 話をするくらいなら練習したら?

 って思っていたわ。


 けれど、それは日常の中のやり取りだからよ。

 私達みたいに、命のやり取りに近い経験の話し合いでは、その中身の濃さが全然違うわ。

 私達はこの話し合いで経験を逃すと、最悪次は死ぬかもしれないのよ?

 聞く方も話す方も、それは必死になるわよ。


 (リナ)

 確かにね。 

 タイプが違うとはいえ、相性が悪い相手にぶつかる可能性は、誰にでもあるんだよね。

 私も少しは苦戦する試合の想像しておこうかな。

 

 (悠) 

 お?リナさんも少しは謙虚になられましたな?

 それだけでも、今日の話し合いの意味はあったかもな~。

 (リナ)

 なによ~。私はいつでも謙虚でしょ~。

 けれど、悠兄だって苦戦するんだから、現実的に私もそういう場面はあり得るって思っただけよ。

 一応これでも皆のことは認めてるんだからね。


 (悠)

 それは…。

 それは光栄な話だな。

 素直に嬉しいもんだな。

 やっぱり今日の話し合いは大正解だった訳だ。


 俺はリナを見ながらにっこり笑った。

 リナは「やめてよ~。」と言いながら、照れて顔を赤くしていた。


 (マザー)

 皆さんにとって、いい時間になったみたいで良かったです。

 では、今日の反省会はこれくらいにして、明日に備えましょう。


 マザーが話をまとめ、解散を促そうとした時。


 (レイナ)

 あの…。皆さん。

 少しだけいいでしょうか?

  

 話を黙って聞いていた、レイナが口を開いた。


 (マザー)

 レイナさん?どうしました? 

 何か話し足りない部分がありましたか?


 (レイナ)

 いえ、あの…。

 皆さんに、少しだけ聞きたいことが…。

 あり…。まして…。

 その…。悠兄さんの話だったんですが…。


 (悠)

 お?俺か?

 なんか伝わらないことがあったかな?

 ごめんな~。

 どうしても、感覚で話しちゃうからな~。


 (レイナ)

 いえ!違うんです!

 その…。話の中で…。

 私なら、マークⅡに…。

 魔法を使って勝てると…。

 お話がありましたが…。


 (悠)

 おお、したした。 

 レイナなら魔法で圧倒出来ると思ったからな。

 俺にはそれが出来ないから苦労したんだよ。

 それが何かあったのか?


 (レイナ)

 それは、ホントにそう思ったのかなって…。

 悠兄さんが苦戦する様な相手に…。

 私が簡単に勝つなんて…。

 ホントにあり得るのかなって…。

 ちょっと信じられなくて…。


 (悠)

 いやいや。レイナなら勝つだろ?

 あれだけの魔法を使えるんだから。

 俺が勝てない相手でも、レイナなら勝てるって。


 (レイナ)

 ホントに…。そう思いますか…?


 (悠)

 嘘なんて言わないって。

 皆そう思ってるよ。

 ねえ?マリエさん?


 俺はたまたま隣にいた、マリエさんに話をふる。

 マリエさんも、頷きながらレイナに話しかけた。


 (マリエ)

 レイナちゃん。

 自信がないのかもしれないけど、ホントに皆そう思っているわよ。

 貴女は自分が思っているよりも、ずっと優れた力を持っているわ。

 私達が安心して戦えるのは、何かあっても貴女がいてくれるから。前にも話したわよね?


 (レイナ)

 私が…。いるから?


 (マザー)

 レイナさん。

 レイナさんは、少しだけ臆病な所があります。 

 ですが、それはレイナさんが優しいことの裏返し。ですから、無理に人を傷つけさせるような真似は、誰もさせません。


 けれど、強さという部分においては、お二人が話した通りです。

 今日対戦した相手。

 イグ・ノウレッジの誰が相手でも。

 レイナさんならば、まったく苦もなく倒してみせるでしょう。

 貴女には、それくらいの資質が備わっている。

 それは、誰しもが認めている事実なのです。


 (悠)

 そうだぞ、レイナ。

 だから俺は作戦名に、

 「何かあったらレイナにお任せ」

 って入れたんだ。

 皆お前の事を信頼してるんだ。

 そこは疑ったらあかんところだぞ。


 (マリエ)

 その通りよ。

 そして、力の使い方は人それぞれ。

 決して強制されるべきではないわ。

 レイナちゃんは、自分が力を使いたいと思った時。そうなった時に、力を使うべきなのよ。

 だから、焦らないで?

 自分の力をもっと信じてもいいと思うわよ?


 マリエさんの言葉を受け、レイナは拳を握ったまま、俯きながら黙っていた。


 そして…。


 (レイナ)

 悠兄さん!


 (悠)

 はい!

  ビクッ!

  突然大きな声で呼ばれて俺は驚いた。

 びっくりした~!

 いきなりどうしたよ?


 (レイナ)

 悠兄さんは、怖くなかったんですか!?

 あんなに大きい!相性も悪い!

 マークⅡを相手に!

 戦うのが怖くなかったんですか!?

 

 レイナは真剣な表情でこちらを見ていた。

 目には涙も浮かんでいる。

 本能的に、俺はこの問い掛けには誠意をもって答えるべきだと判断した…。

 俺は少し、呼吸を整え。

 レイナの問いに正直に答えた。


 (悠)

 怖かったさ。戦う時はいつだって怖い。

 俺は皆と違って臆病だからな。


 けれど、俺には皆がいてくれる。

 仲間がいるから、怖くても戦えるんだ。

 そして、何よりも。

 何かあったらお任せ出来る。

 レイナがいてくれる。

 怪我をしても、レイナが治してくれる。

 そう信じているから、俺は戦えるんだ。


 俺はレイナをまっすぐ見つめ、思ったことを素直に伝えた。

 過不足はあるかもしれないが、これが俺の正直な答えだった。


 レイナは、俯きながら。

 暫く何かを呟いているようだった。


 (レイナ) 

 やっぱりそうなんだ…。

 皆怖いのに…。我慢して戦ってるんだ…。

 私を信じてくれてるんだ…。

 私は…。それなら私は…?


 そして、顔を上げて俺達に向かって叫んだ。


 (レイナ)

 明日の試合!

 明日の試合から!

 私も!私も試合に出ます!

 皆と一緒に戦います!

 皆と一緒に!!

 私も!

       戦わせてください!! 



 そう叫び、泣きながら宣言をしたレイナの姿は。


 いつもの穏やかで優しいそれとは違い。

 

 決意を、覚悟を決めた。


 一人の女性の凛々しい姿だった。


 俺達には、そんなレイナが。


 いつもより、ずっと綺麗で…。


 何だか、大人びてしまった様に映っていた…。

 



 


 

 

 

 

 

 

 









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