水の章 クランバトル編 一回戦Ⅲ
○ 舞煽る姫
(審判)
はじめ!ドォン!
いよいよマリエさんの戦いが始まった。
(実況)
さあ、いよいよ私達のお姉様!
マリエ様の戦いが始まった~~!
しかし!
ここで少しだけお時間をいただきます!
大会本部から、我々に対し、悲しいお知らせが入りました!
内容ですが、以下の通りです!
諸君は立派な大人である!
まずは帝様の御前であることを理解せよ!
そして大人である以上!
節度を維持した応援を心掛けたし!
はめを外す場ではないことを申し添える!
大会本部エリアス・ペール!
・・・・・。
いいですか!皆さん!
エリアス様が仰る通り!
越えてはならない一線が、世の中にはあります!
私達に今求められているのは自制心!
自分を律し!
節度ある応援を心掛けて下さい!
それが大会本部の願いのようです!
繰り返します!
大人として!恥ずかしくないよう!
節度ある応援を心掛けて下さい!
私は忠告しました!
大会本部から何を言われても!!
ここからは自己責任です!
それでは、皆さん!
ここからは~~~~!!!
節度ある!!大人の時間だった~~~~!!!
私も節度ある実況を心掛けま~~す!!
ちくしょ~~!!
(観客)
うお~~!!!
実況マンも分かってるじゃねーか!!
俺たちには、結局守るべき責任がある!!
気持ちに任せて行動していい年齢じゃないんだ!
くそ~~!!現実に引き戻しやがって!!
結局は、社会や家族に責任ある立場なんだ!!
分かってるんだよ!ちくしょ~~め!
そうりゃ!
せ・つ・ど! せ・つ・ど!
せ・つ・ど! せ・つ・ど!
(悠)
すげぇな!
マリエさんの応援が、テンションと現実のせめぎあいの末。節度への応援になってるぜ!
(レイナ)
こんな状況でも、最後まで自分を律しようと…。
好きなように楽しめないなんて…。
大人は大変な生き物ですね…。
あ、涙が。
(リナ)
なんてことなの…。
私の周りにはアホしかいないのか…。
(マザー)
リナさん。大丈夫です。
私もこの人達には、若干着いていけてません…。
・・闘技場中央にて・・
(フィーブル)
いやいや。
ホントに凄い声援だ…。
これは対戦する身としては…。
かなりしんどいな。
完全な悪役だ…。
フィーブルは眼鏡をあげ直した。
(マリエ)
やりづらくしてご免なさい。
でも、許してあげて?
彼等も普段はきっと、一生懸命。
家族や社会のために生きているのよ。
きちんと自分を律し、真面目に生きているの。
それは貴方も同じでしょう?
けれど!今日はそんな皆さんでさえ!
自分の欲望を抑えきれないほど!
叫ばずには要られないほど!
それ位美しいものに出会ってしまった!
普段押さえていたものが!
一気に爆発してしまうほどの…!
欲情を押さえきれない対象に出会ってしまった!
そう結局は!私の存在がいけないの!
会場の皆さん!
心を乱すようなことをしてしまったこと!
どうか許して下さい!
マリエさんは、大きな身振り手振りを交えて観客にアピールをしている。
マリエさんの大袈裟な演技に、会場の盛り上がりが一層高まってくる。
(観客)
マリエさん!貴方は悪くありません!
産まれてきてくれてありがとう!
身振り手振りまで美しい~!
ピーピー!好きだ~~!
結婚して下さ~~い!
マリエさんは、歓声に対し。
扇を振りながら一礼した。
大きな会場向けなのか。
一つ一つの動作が普段よりも大きい。
流石元プロ。
会場に合わせた振る舞いを心得ている。
(リナ)
あきれた…。
いくらマリ姉でも、冷静に見れば、あれは演技にしか見えないじゃない。
男って何であんなに単純なのかしら。
(悠)
う~ん。確かにそうだ。
今回ばかりはリナに同意かな。
何だか今のマリエさんの振る舞いは不自然だ。
わざと会場を煽っている。
煽ることを目的にしている。
そんな風にも見えるよな?
何か意図してやってるのかな?
リナはじっと俺を見つめる。
(悠)
え?なに?どうかしたの?
(リナ)
真面目な雰囲気であなたに同意されるとは…。
ちょっと…。いや、かなり意外ね。
明日は雪かしら?
(悠)
むむ~。
俺だってたまには真面目な話くらいしますよ。
てか、どっちかというといつも真面目だよ?
失礼な奴だな~~。
(レイナ)
まあまあ。
二人とも何だかんだでいつも真面目です。
それより見てください。
そろそろマリエさんが動きますよ。
レイナがマリエさんを指差す。
マリエさんは再び、フィーブルに話しかけている様だ。
(マリエ)
あ~あ。ホントに簡単なものね。
ああ、ごめんなさいね?
試合中に少し横道に逸れてしまったわ。
でも、見てごらんなさい?
観客の皆。あんなに私に釘付けよ?
これって面白いことだと思わない?
結局、普段どれだけ高尚なフリをしていても。
人間もあくまで、貴方が研究をしている動物の一種でしかないのよ。
その部分の勉強にはならないかしら?
私達の世界では、人間は猿から進化したと言われているのよ?面白いでしょ?
(フィーブル)
人が猿からか…。
確かに生物的な特長は似ているが…。
あくまで人間は精霊が作りしもの。
我らの崇高な研究においても、そこは犯してはならない。
所謂、「絶対不可侵な領域」だよ。
貴女の説が、若干興味深いものでも…。
それは研究者の倫理に反する…。
私には受け入れられないよ。
しかし、今までの言動といい。
貴女は開始前の理知的な様子とは、随分と雰囲気が変わっているな。
観客を前に舞い上がったか?
冷静さを欠くタイプには見えなかったが…。
少し残念だよ。
動物が好きなもの同士。
敬意を持った、いい戦いが出来ると思ったのだが…。
(マリエ)
戦ってみたらイメージと違った。か…。
フィーブルさん?
貴方、あまり女性に夢を見ない方がいいわよ?
女性っていう生き物は、必ず表と裏の顔がある。
表の顔を見て、イメージと違ったなんて…。
女性との交際経験の少なさを暴露しているようなものよ?
(悠)
痛~~い!!今のは痛~~い!!
俺は胸を押さえて倒れこんだ。
(リナ)
何よいきなり!?
一体何があったの!?
(悠)
マリエさんの今の言葉は!
モテない青年男子には絶対に言っちゃダメなの!
今までの人生で一番触れられたくない部分なの!
同じ立場の人間は!
人が言われてるのを見るだけで!
心が抉られちゃうの!
頑張れフィーブル!
お前みたいに、研究に青春を費やしたっていいじゃねーか!
皆が女子と遊んでいる横で、試験管だけが友達でもいーじゃねーか!
科学室の幽霊とか言われてもいーじゃねーか!
俺はお前が間違ってるなんて言わない!
お前の青春を否定したりしない!
俺達は仲間だ!
お互い来世は!
絶対モテモテの人生過ごそうな!
(フィーブル)
人の青春を勝手に暗黒期にするな!
研究仲間も彼女もいて、それなりに楽しんだわ!
(悠)
嘘つけ!
お前みたいなヒョロ眼鏡が学校で地位を築けるわけあるかい!
せいぜい、教室の隅で見立たないように愛想笑いする仕事してただけだろうが!
俺には分かる!
お前はこっち側の人間だ!
見栄をはるな!同類にはバレるんだぞ!
(リナ)
このオジサン…。
なんて寂しい青春時代を…。
(レイナ)
リナちゃん。
今は触れないであげましょう。
きっと悠兄さんが、話してて一番辛いはずです。 見てください。
肩が震えてます。
きっと昔を思い出して泣いているんですよ。
(リナ)
今くらいは優しくしようかな…。
(マリエ)
ウチの外野が煩くてご免なさい。
話を戻させて頂くわね。
それにしても、「我らの崇高な研究」か…。
貴方も随分と、面白いことを言うわね。
マリエさんは会場を見渡しながら話を始めた。
そうね。
皆さんにも話ついでにもう一つ教えてあげる。
例えここにいる人達が。
もちろんフィーブルさん、貴方も含めてね。
自分が、どれだけ地位や誇りを有していると思っていたとしても…。
医者も。弁護士も。教師も。建築家も。宿屋も。会場にいる皆さんも。
そしてもちろん…。
あなた方「研究者」も。
そう言ってマリエさんはフィーブルを指差した。
私から言わせれば、元を辿れば所詮は「人間」。
猿と同じ。たかが動物の「一個体」。
生物の許容を越える自制心など存在し得ない。
貴方が有している「研究者」という「立場」。
そこにどんな高尚な気位を感じていようと。
そんなものは、動物として産まれた後の、後天的な定義付けでしかない。
そんな後付けの自制心なんて。
私の前では意味をなさない。
それをこれから証明してあげる。
貴方も立場なんか忘れて、私と向き合える幸せをもっと堪能したら?
これだけ近くで見れる機会は。
きっと2度とないわよ?
会場でバカみたいに叫んでいる人の方が、ずっと素直で可愛いわ。
「ああやって、猿のように吼え猛る。」
あれが私を見た、「人間」という動物の、本来あるべき姿よ。
バサッ!
マリエさんは扇を開く。
そして話を終えると、扇で口元を隠し、にっこりと笑った。
(悠・リナ)
な!?バカ!?さる!?
いくらなんでもそれは!?
俺達はマリエさんの発言に驚き。
思わず会場を見渡した。
・・・・・しーん・・・・・
会場はさっきまで愛嬌を振り撒いていた、マリエさんの突然の発言に。
水をうったような静けさに包まれた。
(リナ)
ねぇ、ちょっと!
今のはいくらマリ姉でもマズイんじゃないの?
皆黙っちゃってるじゃん!
(悠)
ああ!
流石にアレはいい過ぎだ!
いくらマリエさんが女王さま気質でも。
流石にバカや猿呼ばわりはマズイ。
けど…。それ位のこと。
マリエさんだって分かってるはず…。
なのにどうして?
やっぱり何か。
考えや意図があるのか…?
俺は闘技場のマリエさんに視線を送るが、彼女は扇を平つかせながら、ただ不敵に微笑んでいる。
会場の雰囲気など、どこふく風だ。
(実況)
ウ、ウキーーーー!!!!!
マリエ様、なんたる発言っきゃーー!!!
声援を送る我々を猿呼ばわりキャーー!!!
猿は妻を家に帰してまで応援してたモンキー!!
いくら美人でも、流石に許せないッキー!!!
(観客)
ウキャー!!!
ウッホホ!ウッホホ!
ウキウキー!!!
ドンドコドンドコ!!
それでも好きだ~~!!
ウホっ!ウッホホ!ウホ?
会場が猿たちのドラミングとブーイングに包まれる。
流石にマリエさんと言えども、この発言まで許容しては貰えなかったようだ。
(リナ)
なんなのよこれ?ブーイングなの?
皆、猿語で何言ってるか分かんないわよ!
てか、なんで猿を受け入れてんのよ!
プライドはないの!?プライドは!!
一人だけどさくさで告白までしてるし!
(悠)
ウキャ!?ウッホホウッホホ!
ウッキー!キシャー!
ウアッホホ!ウホ。ウホホ!
はあはあ、ダメだ!
観客の中に偶然来てた、ボスの田吾作と話したが、皆興奮して抑えが効かないみたいだ。
田吾作で無理なら、もうどうしようも…。
(レイナ)
田吾作さん!?
あの伝説の猿山のボス、田吾作さんが!?
彼でも無理なら、止められる人は…。
いいえ、猿はもういないじゃないですか!?
(リナ)
ねえ?
あんたらもしかして私のことバカにしてる?
それって楽しいわけ?
てか、田吾作って確か前にもいなかった?
って田吾作はどうでもいいわ!
ああ!もう!
マリ姉がピンチなのに!
こいつらは猿と遊んで何やってんのよ!
(悠)
いや、遊んではいないよ。
ちゃんと情報収集してきたんだよ。
だけど、マリエさんのあの態度。
やっぱり何か裏があるような気がしてさ…。
あの人は自信家だが、あくまで理性的な人だ。
むやみやたらに、人を煽ったりはしないはず…。
きっと何か意図があるはず…。
…なんだよ。多分…。
だよね?レイナちゃん?
(レイナ)
はい。大丈夫です~。
私はてっきり。
悠兄さんは気付いていたのかと思いました~。
いや。気付いていないのに、あんなに遊んでいたんですか…?
それはちょっとびっくりです。
(悠)
…ごめんなさい。
・・・・・・・・。
(レイナ)
あ、いえ。私はべつにいいですが…。
『ホントに気付いてなかったとは。』
『流石にネジの緩みを疑います~』
この試合は、もう少しでマリエさんが勝ちます。
準備は既に整いました。
私はさっき、マリエさんが相手を指差した時に、勝ちを確信していますから~。
(リナ)
はあ!?あの時に!?
ただ、指差しただけじゃん!?
あのタイミングでマリ姉なんかしてたの!?
私何も気付かなかったわよ!?
(マザー)
私も注視していたつもりですが。
全く分からなかった…。
それに気が付いたなんて…。
やはりレイナさんは末恐ろしいですね。
(悠)
う~ん。やっぱりなんか仕掛けてたのか。
何かは分からんが、あの人が意味のないことをするとは思えないしな。
でも、仕掛けに気付くとは。
マザーの言う通り流石レイナだな。
お見逸れしました。
(レイナ)
いやいや~。
能力の相性のおかげです~。
マリエさんも精霊から魔力を貰うタイプですから。魔力の微弱な動きを、私は感じただけです~。
(悠)
いやいや。
それでもきちんと気付いたのはレイナ位じゃないか?
少なくとも、俺やリナ。会場は気付いていない。
やっぱりすげーよ。謙遜しなくていい。
レイナは間違いなく、俺達の中では。
その部分で飛び抜けてるよ。
(レイナ)
そ、そんなことないですよ。
あんまり褒めないで下さい~。
それに私は…。
私は、結局のところ。
皆さんに、助けられてばかりですから…。
レイナはそう言って俯いてしまった。
(悠)
…。
レイナ…。
レイナ。結果を焦らなくていい。
レイナは間違いなく俺達に必要な存在だ。
これは前にもいったろ?
今だって、マリエさんの作戦を、俺達の中で唯一見破っている。
クランの中で、魔力の扱いに一番長けるのは。
間違いなくレイナなんだ。
だからさ…。
その力が必要になる日がきっと来る。
今回の大会が全てじゃないんだ。
だから、そんなに落ち込むな!
一緒にマリエさんを。
マリエさんの勝利を応援しよう!
(レイナ)
ありがとうございます…。
はい。一緒に…。一緒に応援します!
俺とレイナはマリエさんに目を向ける。
その横でリナだけが、怪訝な表情でレイナを見つめていた。
(フィーブル)
会場を喜ばせてみたり、今度は煽ってみたり。
貴女は一体何がしたいのですか?
あれほど試合前は、私の研究についても好意的だったのに。
今は私を全く相手にしていない…。
いくらなんでもそれは失礼でしょう!
真面目に戦いなさい!
フィーブルはマリエさんにを指差し、激しく叱責した。
フィーブルからすると、開始の合図後から全く相手にされていない。
お怒りも最もかもしれないな。
(マリエ)
私を相手にしていない…。か…。
確かにこれまでの振る舞いは、対戦相手に対しては失礼かもしれないわね。
ごめんなさい。謝罪させて頂くわ。
マリエさんは胸に手をやり、フィーブルに頭を下げた。
(フィーブル)
私は謝ってほしい訳ではありません!
私の研究の成果を示すこの大会に、きちんと誠意をもって挑んで欲しいだけです!
どんな理由であっても、貴女が戦うのであればそれでいい!
では、こちらから行きますよ!
フィーブルはポケットから笛の様な物を取りだし、口にくわえようとした。
しかし…。
ガシイ!
その瞬間紐のような生物が、フィーブルの腕を掴んだ。
(マリエ)
今の流れで出したということは、それが貴方の心具という訳ね?
ありがとう。
心具とその使用方法を、無事に確認できたみたい。
ギリギリギリ…。
フィーブルの腕を締め付ける生物が、その強さを一層強めていく。
(フィーブル)
ぐあああ!なんだこれは!
まさかこれが貴女の心具の力!?
しかし、いつ発動したんだ!?
そんな素振りは一度も…。
フィーブルの腕を縛り上げる紐状の生物は、急激に上方に伸びあがった。
フィーブルは、腕一本を縛られた状態で、上空に吊し上げられていく。
そして、遂にフィーブルは自分の心具を、手からポロリと落としてしまった。
マリエさんは、フィーブルの心具を拾い上げ、こう語り掛けた。
(マリエ)
私は…。
一瞬足りとも試合への集中を欠いたつもりはないわ。もちろん相手への配慮もね。
集中を欠いたとすれば、それは貴方の方よ。
私は貴方の前で、堂々と、優雅に。
心具を使わせて貰ったわ。
貴方には、私がただ、客席とじゃれあっている様にしか見えなかったかしら?
もしそうだとしたら。
対戦相手に敬意の欠片も有さない人間と見られたみたいで、少しショックね。
まあ、それはいいのだけど。
どちらにしても、貴方の心具は私の手の中。
私は貴方を拘束している。
この状況。試合はまだ続けるかしら?
(フィーブル)
ふざけるな!
まだ私は戦える!
貴女の心具の力が、この拘束だというなら!
ギブアップなど…!
ヒュン!
マリエさんの扇から風の刃が飛び出し、フィーブルの頬をかすめた。
フィーブルの頬から、たらりと血が流れ出る。
(マリエ)
私の心具の力が、ただの拘束なんて一言も言ってないわ。
貴方が例え上空にいたとしても、切り刻むくらいは訳ないのよ?
マリエさんは不敵に笑い。
扇で口元を隠すいつもの仕草をした。
(フィーブル)
バカな!
今の刃が心具の力だというのか!?
それなら私を拘束しているこの生き物は何だ!
心具に2つの能力があると言うのか!?
(マリエ)
それを私からホイホイ伝えるつもりはないわ。
さっきも話したけど、私は堂々と、優雅に。
心具を使わせて貰ったのだから。
後は、貴方の得意な研究で解読しないと。
それがバトルというものじゃなくて?
マリエさんはにっこりと笑う。
相手の戦意を削ぐかのように…。
この結果は自分からしたら、さも当然であるかのように。
彼女は不敵に、相手の前に立ち続ける。
(フィーブル)
相手の能力も、心具の発動さえも確認できないなんて…。
そこまでの力量差があるというのか?
…。
今、貴方の言うことが事実なら。
確かに集中力を欠いたのは私なのかもしれない…。
だが、欠いたのは集中力だけではなく。
実力の方でもあったというわけだな…。
(マリエ)
物分かりがいい人は、私嫌いじゃないわよ?
マリエさんは自分に向かい、扇をヒラヒラとはためかせている。
(フィーブル)
そもそも私など始めから敵ではないと言うわけか…。敗者に対して全く容赦はないな…。
…。
心具が奪われてしまえば、私は丸腰。
どちらにしても勝ち目はない…。か…。
フィーブルはそう話すと、悔しそうに下を向いた。そして、少し考えて再び顔を上げる。
審判!
ギブアップします!
私は敗けを受け入れる!
この勝負!彼女の勝ちです!
審判はフィーブルの言葉に頷き、マリエさんを見た。
(審判)
フィーブル選手ギブアップを宣告!
勝者!ディープインパクト
新藤マリエ選手です!
(実況)
勝負あった~~!!
この勝負!!
我らがマリエ様の勝利で~~す!!
(観客)
うお~~!!
マリエさんは、勝利の宣言に対しても、当然と言わんばかりに扇をヒラヒラと遊ばせている。
結局相手に一度も心具を使用させることなく、ノーダメージでの圧勝。
マリエさんは、初の実戦とは思えない位に、圧倒的な力を見せつけ。
我がクランの2連勝に貢献したのであった…。




