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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
12/114

扇の章

 ○ オアシスの村


 あ~。やっとついた~。(悠)

 マジ死ぬかと思った。

 しかもまさかの臭いで…。


 あの臭ハゲ鳥との死闘に勝利した俺たちは、やっとの思いでオアシスの村に辿り着いた。


 村に入り、馬車を押しながら宿を探していた。 途中何度も村の人たちとすれ違う。  

     

 (村人)    

 おい!あれ見ろよ!

 砂漠で火事だ!凄い炎だぞ!

 あれ?変な臭いがする?


 ホントだ!砂漠に燃えるもの何てないのに!?

 あれ?なんか今臭くなかった?


 スカン鳥の大きな群れが壊滅したらしいぞ!

 砂漠最大規模の群れらしい!

 ん?なんか臭いな?なんの臭いだ?


 わざわざ利口なあいつらを!?

 相手はどんな奴等だよ!?

 きっと悪魔だ!

 スカン鳥を壊滅させた悪魔が村に忍び込んでるかもしれないぞ!

 あれ?なんか臭くない?

 お前屁こいた?


 何でスカン鳥を!?

 あいつらなんてちょっと餌やれば直ぐに満足して帰るのに…。

 大人しくて利口な鳥をわざわざ壊滅させるなんて…。なんて酷いことを…。可哀想に…。

 男性は涙を堪えている様子だ。

 しかし。俺たちの横を通ると。

 あれ?臭いな?誰か屁こいたのか?


 レイナが壊滅させた鳥の群れは、村からでも燃えているのが分かるほど、ゴオゴオと大きな火柱をあげ燃え続けていた。

 砂漠の空が赤く染まっている。

 それを見ようと人々が、村の入口方向に向かい。

 黒山の人だかりになっていた。


 そして火事を見に行く人々は、俺たちの横を通る度、口々に臭いのことを口にしていった…。


 (リナ・小声)

 やっぱり全然臭い落ちきれてないんだよ。

 やだ~。超恥ずかしいよ~。

 早くお風呂入りたい…。

 てか、戦わなくて良かったんじゃん!

 何で誰も教えてくれないのよ!


 (悠・小声)

 あれだけの量をかけられたんだから臭いは仕方ない。今は耐えよう。

 命があるだけ有難いことだ。

 しかし、戦わなくていい無害な相手に殺されかけるなんて…。

 しかも臭さで死ぬなんて…。

 悪い意味で伝説作るところだった…。

 俺は涙を堪えながら話した。


 (悠)

 そして後ろのお姉さん(レイナ)は、まだ無言なんですが…。怖いんですけど…。

 本当にどうしましょ…?

 後ろを歩くレイナは、ずっと何も言わず無表情で歩き続けている。 

 あまりの迫力に、俺もリナも萎縮していた。


 (リナ)

 ねぇ!なんかレイナ凄い迫力なんだけど!?

 後ろからなんか、

 ゴゴゴゴゴゴ~~。って音聞こえるんですけど!

 怖いよ!オジサンが何とかしてよ!


 (悠)

 何とかってお前の方が付き合い長いだろ!?

 何とかならねーのかよ!?

 オジサン若い娘であんな黒いオーラ出す人見たことないよ!

 見てよあの娘!

 普段あんなにおっとりしてるのに、今は黒い顔して、なんか息づかいも「コーホー。コーホー。」って言ってるよ!

 あんなの友情を知る前のウォー○マンだよ!

 ベ○クローで頭刺されそうだよ!


 (リナ)

 誰よそれ!?

 あ~、もう!

 これも全てあのバカ鳥のせいよ!

 あのツルピカ!

 絶対許さないから!

 私まだ鼻が利かないんだよ!?

 俺たちは鳥への愚痴。

 今のレイナへの対応をギャーギャー喚いていた。


 その時だった。


 (レイナ)

 大丈夫ですよ。

 悠兄さんもリナちゃんも、さっきまでに比べると「それほど」臭くはありません。

 レイナはそう言いながら、

 ニッコリとこちらを見る。

 しかし、その目はまだ死んでいた。

 レイナはリナと違い、臭いで頭が壊れたらしい。

 優しい表情で腹黒いことをズバズバ言ってくる。


 (リナ)

 元々あったレイナの優しさ。

 それを感じさせつつ、発言の中には必ず毒が含まれている…。

 こんな形で後遺症を残すなんて…。

 やはりスカン鳥。

 恐るべし…。

 

 あひゅるふぅ~~!

 あいつらの鳴き声が、顔と共に頭をよぎった…。


 俺たちは野生のモンスターの恐ろしさを、身をもって体感してしまったようだ。

 これからの旅路は、そこに生息するモンスターの特性を、把握してから戦いに臨もうと心に誓った。


 (リナ)

 もうレイナ怖いから話変えるけどさ。

 港町に向かう道中とはいえかなり人が多いよね。


 空気を変えようとリナが村の話を始めた。

 リナの言うとおり、オアシスには多数のクランが来村しているようだ。 

 商人も多く来ており、村は活気に満ちあふれていた。


 (悠)

 あまり大きな村じゃないみたいだけどな。

 毎日こんなに賑わってるのかな?

 それならもっと発展してもよさそうだけど。

 俺もリナに同意する。

 そう思ってしまう位、村には人が溢れている。

 

 その時、突然後ろから聞き覚えのない声が聞こえてきた。


 (女性)

 あなた方旅人さん?

 村が賑わいだしたのは最近なのよ。

 何でも皆さん。

 水の大陸に行きたいみたいねぇ。

 帝と会えるチャンスがあるとか。

 ここは港町までの通り道ですからねぇ。


 綺麗で艶っぽい声だ。

 ふと、声の方向に目をやる。

 そこには…。


 声と同様。  

 スラリと背が高く。とても綺麗な。 

 艶っぽい女性が立っていた。


 バリバリバリバリ!!!

 女性を見た瞬間。

 雷に撃たれたかの様な衝撃が全身を走った。


 女性は。

 まるでテレビに出てくる女優の様な…。

 いや、もしかしたらテレビでも見ることがないかもしれない。

 その姿は。見た瞬間。

 ハッと引き込まれるようだ。


 初対面の相手で。

 一瞬姿を見ただけなのに。

 息を飲むような衝撃を受けた。

 目を離すことが出来ず。

 息さえも苦しくなった。

 何なんだろうこの感覚は。

 自分でもよく分からない感覚。

 言葉ではとても表現できない。

 とにかく人生で始めての経験だった。

 

 (女性)

 どうかされました?

 ボーッと立ち尽くす俺に女性が声をかけてくる。


 (悠)

 ……。

 ~~っ???

 いや!あのですね!

 俺は突然のことに久し振りに緊張したのか。

 言葉が全く出てこなかった。


 そんな俺を女性は不思議そうに見つめている。


 『ああ!マズイ!

  もしかして変な奴だと思われてる!?』

 『何か返さないと!何か!

  こんなとき何話せばいいんだっけ!?』  

 『うわ!今の俺の動き!

  絶対気持ち悪い奴と思われたよ!』

 『こんな美人と話したことないし!

  いったいどうすりゃいいんだ!』

 『あれあれ!?

  結局今何の話してるんだっけ!?』

 『マズイマズイ!頭全然働かない!』

 俺は自分の感覚に驚いたのと、突然見たこともない美人と話をしなくてはならない状況に陥ったため。完全にパニックになってしまった。

 身体中に力が入り、ガチガチに固まっている。

 汗が止まらない。

 ヤバイ。完全にフリーズモードだ…。


 (リナ)

 うわ!お姉さん凄い美人!

 モデルさん!?

 こんな美人始めてみたよ!

 リナが女性に気づき声をかけた。

 普段いがみ合うことが多いが、俺にとっては大きな助け船だ。

 『リナ、ナイスフォロー!』

 俺は心の中でリナを褒め称えた。


 (レイナ)

 ……。

 …。

 ビジン。

 ビジン?

 …美人?

 え?凄い美人!?

 美人どちらに?

 レイナが突然我に返ったように言葉を発した。


 あれ?わたし…?

 レイナは辺りをキョロキョロ見回し、不思議そうな顔をしている。

 そしてリナの横にいる女性に気がついた。


 リナちゃん?

 え!?リナちゃん!?

 その隣にいる方は!?

 リナちゃんその方はどなたですか!?

 本当にお綺麗な方…。

 こんな素敵な方にあえるなんて…。

 私旅をしてきて良かったです!

 レイナは泣きそうになりながらヨロヨロと女性に近付いていった。


 (悠・リナ)

 『あれ!? もしかして元に戻ってる!?』

 俺たちは女性に話しかけるレイナに驚いた。

 さっきまでの半分レイナ・半分悪魔状態が解除されていたのだ。


 (悠)

 おいおい!どうなってんだよ!?

 レイナ元に戻ってるぞ!?

 

 (リナ)

 分かんないよ!何で普通に戻ってんの? 

 確かに普段から可愛いものとか綺麗な物は好きだけど…。

 まさかお姉さんが美人過ぎるから!?

 その衝撃で正気を取り戻したってこと!?

 俺とリナはまさかの事態に顔を見合わせる。


 (レイナ)

 どちらのご出身ですか!?

 ご家族は!?ご両親は!? 

 ご兄弟はいらっしゃいますか!?

 今はどちらにお住まいですか!?

 お名前は!?血液型は!?身長は!?

 お仕事は!?普段心掛けていることは!?

 ああ、何から聞いていいか!!

 こんな綺麗で!!白くて!!

 お顔が小さくて!!

 ああ、私おかしくなりそうです…。


 レイナは目を輝かせながら、嵐のように女性に質問を続けている。

 女性もレイナの勢いに押され、若干困っている様子だ。


 (悠) 

 あれ?やっぱり戻ってない? 

 相手の表情に気付かず、話し続けるレイナに、俺は普段とは違う違和感を感じた。


 しかし。


 (リナ)

 はあ~…。

 あ~~~。

 いや、あれはレイナだよ。

 間違いなく元に戻った。

 リナは頭をかきながら残念そうに話す。


 あの娘は本当に好きな物に対してはとことん夢中になるの。

 それこそ周りが全く見えなくなるくらい。

 レイナがあそこまで夢中になるのは、将棋くらいのもんだけど…。

 よほどあのお姉さんが気に入ったみたいね。


 そう話すリナの視線の先で、レイナは目を輝かせながらお姉さんに詰め寄っている。

 リナしか知らないレイナの以外な一面に、俺は少し驚かされた。


 (女性)

 ちょっと、ちょっと待って!

 ありがとう。綺麗と言って貰えるのは嬉しいわ。

 ただ、そんなにいっぺんには答えられないわ。

 一つずつ聞いてくれる?

 

 女性はレイナを落ち着かせようと話しかける。

 対応も言葉使いも大人で、実に落ち着いている。

 

 (レイナ)

 す、すいません!

 私ったら興奮しすぎてしまって!

 大変申し訳ありません!

 レイナは冷静さを取り戻し、女性に深く頭を下げている。

 やっぱり元のレイナに戻ったようだ。

 俺はホッとしていた。


 (レイナ)

 では、一つだけ教えてください…。

 あの…。その…。

 今日泊まるのにいい宿を知りませんか?

 来てるクランが多いみたいで、宿が取れるか心配なんです。


 (悠・リナ)

 『え!?マジで!?』

 『何故このタイミングで!?』

 『さっきまでの質問はいったい…。』

 『確かに現実的でレイナらしい質問だけども!』

 あまりに唐突な質問に俺とリナは思わず固まってしまった。

 普段のレイナもやっぱり

 少し変なのかもしれない…。


 (女性)

 宿!?

 あなたたち宿を探してるの!?

 それなら是非うちに泊まって言ってよ!

 女性は突然嬉しそうにこちらに声をかけてきた。

 

 (悠・リナ) 

 『え!?お姉さん食い付いてるし!?』

 話の展開が急すぎて、俺たちはついていくことが出来ないでいた。

 再びフリーズモードにはいる。


 (女性)

 あれ?もしかして?

 私の聞き違いかしら?

 女性はこちらの反応の薄さに心配になったようだ。

 

 (悠)

 あ!え!?

 いや、いやいや!

 すいません!宿探してます!

 探してるんです!

 どちらかご存知でしたか!?

 俺は何とか正気を取り戻し女性に質問する。

 

 (女性)

 良かった~。

 私何か聞き間違えたかと思ったわよ!

 女性はホッとしたようで優しく笑った。

 笑うととても可愛らしい。

 その笑顔に、俺も落ち着きを取り戻した。


 (女性)

 実は私、酒場で踊り子として働いているの。

 なかなか人気もあるのよ?

 酒場は宿の地下だから、私が口利きしたら宿は確保できると思うわ。

 ねぇ。せっけくだからそうしましょう?

 

 女性はクルクルと躍りながら話している。

 踊る姿も綺麗で見とれそうだ。


 (レイナ)

 行きます!泊まります!

 泊めてください!お願いします!

 レイナは再び嵐のように女性に詰め寄っていた。

 

 いいですよね!?二人とも!?

 レイナが興奮しながらこちらに同意を求めてきた


 (女性)

 どうかしら?私も嬉しいのだけれど。

 女性は微笑みながらこちらを見た。


 (悠)

 もちろんお願いします!

 俺の答えは決まっていた。

 美人な踊り子のいる宿…。

 男であれば断る理由はないよね!

 

 ・ 踊らされる夜


 女性に案内され、俺たちは宿についた。

 女性の口利きにより、混雑している状況で部屋も二つ用意して貰った。

 『これはなにかお礼をしなければ!』

 女性にまた会う口実が出来た。

 俺は嬉しくて心踊らせていた。


 更に女性から今夜のショーのチケットを頂いた。

 他の旅人の話によると、オアシスには彼女見たさで来ている冒険者も多く、チケットは何ヵ月も予約待ちになっているそうだ。

 その本人から直接ご招待いただけるとは…。

 これはやっぱりお礼をしない訳にはいかないでしょ!

 俺の胸は興奮で躍り狂っていた。

 自然と鼻息も荒くなった。


 (リナ)

 悠兄!そっちに赤ボールいったよ!


 !?

 リナの声で我にかえった。


 ばきぃ!ボールが顔面に直撃した。


 (悠)

 いってぇ~~!!

 俺は顔を押さえながら地面をのたうち廻った。


 (リナ)

 悠兄!?どうしたの!?

 ちょっと大丈夫!?

 リナが心配しこちらを見た。

 その瞬間。


 あ!しまった!


 ばきぃ!!

 リナの顔面にもボールが直撃した。


 いった~~い!!

 リナは俺に気をとられたのか、死角からのボールの接近に気が付かなかったようだ。

 鼻を押さえ悶えている。


 (マザー)

 悠さん!何ボーッとしてるんですか!? 

 トレーニング中は集中して下さい!


 なんか久し振りにマザーの声を聞いた気がする。

 それも怒った声だ。


 レイナさん!あなたもボーッとしないで!

 リナさんの周りのボールを破壊して下さい!


 (レイナ)

 はっ!

 え!?

 あれ!?あれあれ!?

 すいません!私ったら!

 分かりました!直ぐにやります!

 ん~!えい!

 リナが慌てて魔法を放つ。

 

 バシャーン!!

 出力が強すぎて水の魔法が発現。

 リナがその下でビシャビシャになっている。

  

 (リナ)

 …。

 ……。

 …ぅぉお前ら~~。

 ぃぃぃいいい加減にしろ~~~~!!!!

 リナは体を反らし、空に向かって怒声を発した。

 なんなんだよ!? なんなんだよ!?

 なんなんだよ!? なんなんだよ!?

 さっきから! さっきから!! さっきから!!

 そんなにあのお姉さんの躍りが見たいのか!?

 そんなに気になるか!?

 どっちにしろ後で見れるだろうが!!

 集中しろこら~~!!

 リナは顔を真っ赤にし、怒声をあげながら俺たちに近づいてくる。


 二人が集中しないと被害を被るのは私なんだよ!

 唯一真剣にトレーニングをしている私だけが被害に合うの!!

 分かる!? 何故なら前線が私だから!!

 前線は敵に囲まれるの!!

 一瞬も気を抜けないの!!

 それをあんたらは…。

 さっきから、にやにやにやにやしやがって~!!

 お前らの血は何色だ~~!

 リナは俺たち目掛けて大きく口を開けて叫んだ。

 余りに口を開けすぎて、そのまま俺たちを食べてしまいそうな勢いだ。

 

 (悠)

 ごめんごめん!

 ちょっと考え事をしてしまったんだ!

 別にあの人のことなんて考えてないよ!

 ただ、ちょっと「心が踊って」しまって…。

 俺はリナから目を反らして答える。

 顔は自然とニヤけていたようだ。


 (レイナ) 

 わ、わたしもそうです。

 私も考え事をしていたら。

 つい「心が踊って」しまいまして…。

 レイナも言い訳をしながら、顔がニヤけていた。


 (リナ)

 あんたら言い訳しながら「踊って」言うてしもうてるじゃん!!

 もう躍り見る気じゃんじゃんじゃん!!

 思考だだ漏れじゃん!!

 てか隠す気ないじゃん!!

 やる気もないじゃん!!

 始めからないじゃん!!

 するならもっとマシな言い訳するじゃん!!

 リナは俺たちの真意を見抜き一段と声を強めた。


 はっきり言って全く集中していない俺は、あの女性のことを考えながら。

 『こいつさっきから何一人でじゃんじゃんじゃんじゃん言ってんだ?』と思っていた。


 (レイナ)

 リナちゃん違います!

 それは言葉のあやです!

 レイナが挙手をし、珍しく自分の意見を主張しようとする。


 私たちはトレーニングを疎かにするつもりはありません!

 ただ、ちょっと思考の罠に。

 自分の浅はかな考えに

 「踊らされて」しまっただけです!!

 だから今日は早く酒場に行きましょう!!

 レイナは高らかに己の決意を言い切った。

 うん。

 恐らく自分でも、もう何を言ってるか分かってないだろうね。

 だって目に「早く躍り見たい」って書いてあるんだもん。

 

 (悠) 

 そうだぞリナ!

 俺だって踊りたいんだ!

 俺も素直に思ったことを口にしてみた。 


 今聞くと凄いねこの流れ。

 俺たち本当に何も聞いてなかったんだね。


 (リナ)

 もう会話滅茶苦茶だな!!

 隠すとかの問題越えてるだろ!!

 てかわざとだな!?

 私のことバカにしてんな!?

 リナはもう完全にぶちギレている。

 剣をもち、今にも切りかかりそうだ。

 

 (マザー)

 はい!そこまでです!

 マザーが緊迫した場をおさめた。


 二人ともいい加減にしてください!

 リナさんの怒りも最もです!

 トレーニングに集中しないなんて。

 貴方たちはいつからそんなに強くなったんですか!?いい加減に真面目にやりなさい! 

 お母さんの一喝を受ける。

 

 (悠・レイナ) 

 ご、ごめんなさ~い。

 俺たちは一気にしおらしくなり謝罪した。


 (マザー)

 まったく!綺麗な女性がいたくらいで何ですか!

 たかだか一人の人間の、しかも「容姿」に魅せられてトレーニングに集中しないなんて!

 貴方たちは何様のおつもりですか!?

 冷静なマザーも怒りを押さえきれないでいる。

 マザーの怒りも最もなんだが…。


 (悠)

 いや、マザー本当にすまない。

 ただ、容姿に魅せられたってのだけはちょっと違うんだ。


 (マザー・リナ) 

 さっきから鼻の下伸ばしっぱなしの人が何言ってんですか/んのよ。

 鼻の下で伸ばすのは髭だけにしなさい。

 この件に関しては二人から完全に信頼を失ったようだ。

 てか、普通後半もシンクロしますかね?


 (悠) 

 いや、容姿ももちろん魅力的なんだけどさ…。

 俺はこの場を収めるために自分のデリケートゾーンについては涙を飲むことにした。


 ただ綺麗だからじゃなくて。

 全身から溢れでるものを感じたっていうか…。

 なんだろ…。…オーラっていうかさ。

 なんかあの人から目が離せなくて。

 強く引き付けられて。息が苦しくて。

 心を鷲掴みにされたっていうか…。

 そう、なんか凄く引き込まれたって感じだ。


 (リナ)

 要するにベタ惚れしたって話でしょーが!

 リナは力任せに俺の頬を引っ張った。

 (悠) 

 痛い痛い!違うってば!

 俺はリナの手を振り払う。

 

 俺にはキヨカちゃんという可愛い嫁さんがいるの!だから惚れたりはしないって!

 そういうことじゃなくて、あの人の…。

 神々しさ?後光?

 とにかく体から滲み出るものを感じたの!


 (リナ)

 何が違うのよ!

 (悠)

 全然違うんだよ!

 恋したんじゃないの!圧倒されたの!

 分かんないかな~。

 (リナ)

 全然分かんないわよ!

 あ~イライラする!

 俺とリナの会話は堂々巡りになっていた。


 (レイナ)

 あの、私も悠兄さんと同じなんです…。

 俺たちのやり取りをしばらく見ていたレイナが口を開いた。


 私も…。私も悠兄さんのように、あの方に引き付けられました。

 一目見た瞬間に。

 そう、はっきりと容姿を認識する前に…。

 あの方とお近づきになりたいと思っていました。

 自然と体が動いたような…。

 私も悠兄さんの「引き込まれた」っていう表現に近いと思います。


 (リナ)

 レイナまで?

 も~、二人とも何言ってんのよ…。

 リナは俺たちの話を理解できずに困惑しているようだ。

 無理もない。

 俺たち自身もはっきり理解している訳ではなく、

曖昧なまま感覚に頼った話をしているのだ。


 (マザー)

 もしかしたらその方は…。

 マザーが何かに気付いたかのように、話に加わった。

 今日の夜にもう一度お会いするんですよね?


 (悠)

 会うっていうか舞台に立つのを見に行くんだよ。

 チケット貰ったんだ!

 俺は子供のようにはしゃぎながらマザーにチケットを見せつけた。


 (マザー)

 そうですか…。

 マザーは少し考え込んでいるようだ。


 分かりました。いいでしょう。

 一端トレーニングは終了します。 

 そろそろ酒場も開きますし、会場に向かいましょう。


 (悠・レイナ) 

 いやっほ~~い!

 俺とレイナは大喜びし二人でガッツポーズをみせた。

 (リナ)

 はあああ~!?

 マザー甘すぎだよ!!

 一人真面目にトレーニングをしていたリナは納得がいかない様子だ。


 (マザー)

 リナさんすいません。

 ただ私も少し気になることがあるのです。


 リナは納得がいかない様だが、マザーの話を聞き、一応酒場に向かうことに同意した。


 ともあれ俺たちはトレーニングを切り上げ、酒場に向かうことにした。

 どんな躍りが見れるのか…。

 既に今から、押し寄せてくるワクワクに押し潰されそうだ。

 

 

 

 

  

 













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