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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
11/114

砂漠と鳥の章

 ○ 砂漠の鳥


 *『』内は回想です。


 あ~つ~い~。(リナ)

 そして、く~さ~い。(小声)

 馬車の中からリナが項垂れる声が聞こえる。


 俺達はバニスターと別れた後、水の都を目指し出発した。

 今は水の都行きの船便に乗るため、港町を目指している道中。

 砂漠地帯を馬車で進んでいる。


 スカン砂漠

 炎の大陸にある最大級の砂漠地帯。

 広大で辺り一面砂しかない。

 見渡せど砂。砂砂砂だ。

 中間点となるオアシスの村まで馬車で一日がかりだ。

 マザーの案内がなければ確実に遭難している。


 馬車の操縦担当は俺。

 これは相談もなく決まった。 

 俺も確認もせず受け入れた。

 きっと娘を持つ父親とはこのような立場なのだろう。世のお父さんお疲れ様です。


 二人は交代で周囲の見張り。

 もちろん馬車の中からだよ。


 ね~!オジサン!(リナ)

 馬車の中から不機嫌そうな声がする。

 ワタクシ熱いの!何とかして下さる!?

 リナが熱さに耐えきれず八つ当たりをしてくる。

 

 はあ~。俺はため息をつく。

 すいませんね~。(悠)

 皆さん我慢してるんですよ。

 お客様だけ特別とはいかないんです。

 『お前中で涼んでるだろ!』

 『俺はずっと外で日に晒されてんだぞ!』

 俺は渋々リナの三問芝居に付き合った。 

 無下に扱うと余計に気分を損なうからだ。

 これまでの付き合いで嫌と言う程経験してきた。

 

 まあなんて態度なの!?(リナ)

 私は客よ!?

 お客様は神様ですのよ!?

 何とかするのが貴方の役目でしょ!?

 その青い髭は何のためにあるの!?

 リナは芝居に拍車がかかっている。


 髭は今関係ないだろ!(悠)

 髭は気にしてるんだからあんまりイジるなよ!

 神様! 神なら俺の髭をどうにかしてください!

 そしたら貴女に従います!

 俺は自分の濃い髭をイジられたら怒る。

 誰に対しても怒る。

 日差しや気温による苛立ちの問題ではない。

 そこは俺のデリケートゾーンなのだ。


 まあ、何て態度でしょう!(リナ)

 そんな奴は、もっと男性ホルモン受信すればいいのよ!

 もうモサモサになって奥さんに嫌われるがいい!

 貴方もあの忌々しいツルピカ鳥も!

 あ~アイツら!思い出すだけでイライラする!


 『うちの可愛いキヨカちゃんはそんな理由じゃ嫌いませ~ん!』

 『お前なんかと一緒にすんな!』

 俺は心の中で反抗する。

 俺がリナに反抗するのはいつだって心の中だ。 


 ちなみに。

 リナの言うツルピカ鳥とは、この砂漠に生息するダチョウの様なモンスター「スカン鳥」のことだ。

 こいつらは生息数も多く、道中何度か戦闘を繰り返してきた。


 特性として。

 こいつらは群れで行動する。

 モンスターとしては知能も高いようで、仲間同士コミュニケーションを取って戦うのだ。

 スピードが速く。

 前線のリナでさえ苦戦を強いられる。

 リナが押さえきれない個体は俺がフォローし、何とかここまでは乗りきってきた。


 …。

 いや、実際乗りきったのは戦闘だけだ。

 俺たちは奴等に、クランとして始めて存続の危機に立たされている。


 では、何があったのか。

 そして何故リナがこいつらを忌み嫌うのか。

 そこを説明したい。


 その原因は幾つかある。


 まず第1に、奴等は目付きが悪い。

 悪いと言うかエロい。

 酔っ払ったエロオヤジの様な目付きだ。

 群れでこちらを見たときの景色は壮大だ。

 コントの○村けんが、こちらをいっせいに見つめてくる。

 あれはテレビから出てはいけないものだ。

 そう痛感させられる。


 第2に、歩き方が千鳥足だ。

 これは熱い地面に長時間触れないよう。そういった歩き方になったとマザーに聞いた。

 それでもあいつら、時々露骨に脚を熱そうにアチアチとばたつかせやがる!

 お前ら全然環境に適応出来てねーだろ!

 俺達は思わずツッコミをいれたくなる。


 第3に、鳴き声が気持ち悪い。

 あひゅるふぅ~~。

 鳴いているんだか、吐息が漏れているんだか分からない声を出す。

 近くで聞くとホントに気持ち悪い。

 背筋がぞくぞくする。


 そして最後に…。

 これが間違いなく一番の理由だ。

 あいつらの習性で、

 群れの危機を感じると、仲間同士で合図を出し撤退する。

 群れの全滅を避けるためだろう。

 それはいい。流石は野生のモンスターだ。

 敵ながら実に理にかなっている。

 ただ、問題はその撤退の「合図」の方だ。

 

 あいつらの撤退を告げる合図。

 その合図が…。

 本当に。とにかく。

 ……。

 「臭い…」のだ。

 何故ならその合図は尻からの「ガス」。

 つまり「屁」だからだ。


 それは臭い。とにかく臭い。鬼のように臭い。

 そういうと鬼に申し訳ないくらい臭い。

 もう本当に臭い。

 臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い!!!!!!

 思い出しただけで気持ち悪い…。

 

 それは奴等と始めて戦った時のこと…。


 おりゃー!

 ザシュ!リナがスカン鳥を切りつけた。

 

 あひゅるふぅ~!

 一応断末魔なのか?

 スカン鳥は絶叫しその場に倒れた。


 リナは相手のスピードに苦戦をしていたが、それでも基本的な速さはリナが上だ。

 足場が砂でも関係ない。

 リナはそこに適応しているはずの野生のモンスターよりも速いのだ。

 こいつに速さで勝てる奴はいないんじゃないか?

 そう思わせる逞しさを、

 リナは既に身に付けてきた。


 悠兄!次は!?

 リナから指示を仰がれる。


 リナ!右の2体を倒せ!(悠)

 相手のバランスが崩せる!

 何体かこっちに来るが俺が防ぐ!


 オーケー!任せたよ!

 ザッ! リナが走り出す。

 普段のトレーニングの成果か、この辺の連携は大分板についてきた。


 ちょこまかちょこまかと!

 正々堂々戦いなさいっての!

 ザシュ!

 あひゅるふぅ~~!

 リナは一瞬で2体を切り伏せる。

 本当に強い。

 リナは本番になると一段と強さが増すタイプだ。


 悠兄!キリがない!(リナ)

 私が中央こじ開けるから馬車で突破しよう!

 そう言うとリナは敵陣中央に突撃を開始した。


 待て!(悠)

 まだ相手の手の内を把握しきれてないだろ!

 リナの悪い癖だ。直ぐに決着をつけたがる。

 俺はリナを止めようとした。


 だがその時だった。

 ブーー!

 リナの目の前で、一匹が腰を震わせ突然大きな音を出した。


 は!?え!?なに!?(リナ)

 リナは突然の大きな音に動揺している。


 それを合図に周りの鳥も音を出す。

 ブーー!ブーー!ブーー!ブーー!ブーー!

 音は連鎖的に群れ全体に波及していった。

 そして音が全体に波及し終えると。


 ドドドドドド~~!!

 エロい目をした鳥達は一目散に走り去っていった。


 …。

 ポカーン…。

 なんだぁ?今のは?(悠)

 俺は突然のことに驚きを隠せなかった。


 びっくりしました~。(レイナ)

 何かの合図でしょうか?

 後ろでレイナも驚いている。


 とにかく相手は逃げた。(悠)

 何とかバトルを無事に終えることができたみたいだ。

 全員怪我がなくて良かったよ。


 『今回はリナが大活躍だったな。』

 そう気を緩めた時だった。


 フワッ。

 風に乗り、物凄い臭いが鼻に突き刺さった。


 うわっ!?なんだこれ!くっさ!(悠)

 臭いです!嫌だ!これ何ですか!?(レイナ)


 まさか!?

 俺とレイナは顔を見合わせた。

 その時俺たちは気が付いたのだ…。

 先程の鳥が出した大きな音…。

 あれは…。


 「屁」だったのではないかと…。

 

 ゴホゴホ!ゴホゴホ!

 酷い臭いだ!(悠)

 辺りに臭いが充満し息が出来ない。


 そうだ!リナは!?

 群れの中に突撃したリナはどうなったんだ!?

 俺はリナの方に目を向けた。


 …。

 ……。

 リナは空を見上げたまま。

 その場に呆然と立ち尽くしていた。


 リナ!?大丈夫か!?

 お前!?まさか…!?(悠)


 リナは俺の声に気付き、にっこりと笑ってこちらを見た。

 正気の目ではない。意識が混濁している。

 白目と黒目を交互に繰り返している。

 リナは静かにこちらに歩き始めた。

 

 その時。

 『逃げろ!リナに近づいてはならない!』

 俺とレイナは本能でそう理解した。 

 俺たちは歩み寄るリナに背を向け、一目散に走り出した。

 リナも何も言わず俺たちを追いかけてきた。


 逃げている最中。

 リナちゃん。どうしてあんなことに。(レイナ)

 レイナはそういって涙を流した。

 友を思う。美しい涙だった…。


 だが、俺はレイナに告げた。

 レイナ。あれはもうリナじゃない。

 リナの形をした何かだ。

 せめて俺たちの手で葬ってやろう!

 俺たちがやるしかないんだ!

 レイナは涙を堪えながら、こっくりと頷いた。


 リナのスピードだ。

 長くは逃げ続けられない。

 そろそろ本気でリナを殺らねばならない。

 二人で腹をくくった時だった。


 あの~。臭いは水で簡単に落ちますよ。

 砂漠の鳥ですから、成分が水に弱いのです。

 バトル開始と共に姿を消していたマザーが現れ、俺たちに告げた。


 早く言え!このバカ!(悠) 

 危うく自らの手で仲間を土に還すところだっただろ!

 そうよ!リナちゃんを土に還してでも生き延びたいと思ってしまいました!(レイナ)

 二人でマザーに怒りをぶつけたその時。


 ブワッ。鼻をつんざく臭いを背後から感じた。

 フタリトモナゼニゲル?(リナ)

 リナが白目を向いたまま後ろに立っていた。


 リナ違うんだ!

 悪いのは全部マザーなんだ!

 オエッ!くっさ!(悠)

 そうなのよ!

 マザーが直ぐに教えてくれないから!

 ああ、臭いです…。

 私もうダメです。(レイナ)

 

 ワタシナニシタ。

 ナゼニゲル。ワタシクサイカラカ。

 ダレガイチバンクサイ。

 オマエラワカルカ?(リナ) 

 リナは意識が保てないからか、何故か漫画に出てくる中国人のような話し方になっている。


 その直後

 ああ、もうダメです。

 リナちゃんごめんなさい…。(レイナ)

 バシャーン!

 レイナが水の魔法を放ち、リナの臭いを洗い流した。


 …。

 リナはずぶ濡れになり無言でその場に立ち尽くしていた。


 …。…。…。…。

 ぎぃ。バタン。

 俺たちは3人とも無言のまま、馬車に乗り込み出発した。


 その後数時間。無言で馬車に乗り続けた。

 3人の関係に始めて少し亀裂が生じた瞬間であった。


 ・対スカン鳥 第2戦


 スカン鳥と俺たちの因縁はこれだけでは終わらない。

 俺自身も他の群れとのバトルの際、酷い目に合わされているのだ。


 リナはこの戦いでは、群れを一人で片付ける勢いで走り回っていた。 


 オラァ!!○ね!このハゲ臭鳥が!!(リナ)

 バキっ!

 リナが先程の恨みを晴らすかのように大きくジャンプし、スカン鳥の頭を殴り付けた。

 まさにその時!

 

 ブーー!

 攻撃と同時に鳥から屁が飛び出したのだ!

 ギャー!また~!臭い~~!!(リナ)

 悲鳴をあげ、リナは余りの臭いにその場で悶え転がっていた。


 アッハッハ!マジかよ!

 コントじゃねーか!(悠)

 なんと美しい流れだろう。

 あまりの面白さに爆笑し、俺もその場で腹を抱えて転がりこんだ。


 そして直後に気づく…。

 見上げるとそこには…。

 自分の目の前に、一匹のハゲエロ目鳥の可愛らしいお尻があることに…。


 ブーー!ブーー!ブーー!

 合図は群れ全体に波及していくんだ。

 スカン鳥の習性だったね。


 そして…。


 ああ、そっか。

 そろそろ君の番だね。

 俺は側に立つ彼のお尻を見つめる。

 チラッ。

 彼は何だか頬を染め。

 申し訳なさそうにこちらに視線を送った。

 どうしてそんな顔をするんだい?

 君は何も悪くないじゃないか。

 君はただ、自分と。

 仲間を守りたいだけじゃないか。

 

 時間にして数秒であったが、その瞬間。

 俺と彼は間違いなく生物の枠を越え解りあった。

 俺はスカン鳥と心を通わせたのだ。


 ブーー!

 彼の強烈な一撃が目の前で炸裂した。

 生温かい強烈な風が顔を叩く。

 うわ!臭ぇ!

 くそ!この鳥ふざけんな!ゴホゴホ!

 

 息を止めようとするが、リナの攻撃から発狂までの見事な流れを思い出し、笑いを押さえることが出来ない。

 

 あひゃひゃひゃひゃ!

 うわ!クセェ!ゴホゴホ!

 あひゃひゃひゃひゃ!

 ああ、クセェ。勘弁してくれ…。

 あひゃひゃひゃひゃ…。

 あ~。クセェ~…。

 笑いと同時に臭いを大量に吸い込んでしまう。

  

 臭いのあまり意識が遠退いていく。

 笑いながら意識を失う日が来るなんて…。


 悠ちゃ~ん。悠ちゃ~ん。

 無意識の世界で婆ちゃんの声が聞こえた。

 悠ちゃ~ん。

 お蕎麦茹でたよ~。

 こっちさおいで~。


 バアちゃん!?(悠)

 お蕎麦出来たの!?

 わ~い!バアちゃんの蕎麦だ!

 懐かしいなぁ。

 俺バアちゃんの蕎麦大好きだったんだよ。

 

 悠ちゃん。

 こっちさ居たらいつでも茹でたげるよ~。 

 バアちゃんの声は変わらず温かかった。


 嬉しいな。毎日バアちゃんの蕎麦が喰えるのか。

 それもいいな~。

 でもバアちゃん。

 俺流石にこんな死に方は嫌なんだぁ。

 俺は思わずバアちゃんの前で泣いてしまった。


 バアちゃんは困った顔をして、何かを言おうとしていた。


 その時…。 

 バシャーン!

 俺はそこで意識を取り戻した。 


 バアちゃん!?(悠)

 俺が飛び起きると、

 俺とリナは並んでびしょ濡れになっていた。

 レイナが無言で俺たちを見下ろしていた。


 …。…。…。…。

 

 ぎぃ。バタン。


 そして起き上がり、

 3人でまた無言で馬車に乗り込んだ。


 その後今に至る。


 ・ 対スカン鳥 最終戦


 ああ、思い出したくもないわ。(リナ)

 俺たちはその後鳥達とのバトルは避けてきた。

 これ以上の被害は仲間の関係に深刻な亀裂を生じかねない。


 その証拠に…。  

 レイナは馬車の隅でタオルを顔にかけて寝込んでいる。

 俺とレイナを洗い流す度に、余りの臭さで発狂。

 終には体調を崩したのだ。


 こりゃ、馬車とリンゴがいなけりゃ死んでたな。

 リナがこの状況を嘆くように呟いた。


 リンゴとは馬車を引く馬のこと。

 レイナが名をつけた。

 大きな白い牝馬で、非常に頭が良い。

 俺たちにも直ぐになついた。


 リンゴが好きだからリンゴです。(レイナ)

 レイナらしい可愛らしく素直な名付けだと思う。

 

 お!リンゴのお陰でもうすぐオアシスに着くぞ!

 俺はオアシスを指差し二人に告げた。


 やっと着くんですか~。

 レイナが体を起こし弱々しく声を出した。

 

 そうだよレイナ!

 あのツルピカともやっとおさらばだ!

 リナがそう言い、オアシスを指差した。


 その時だ…。

 あひゅるふぅ~! 

 あひゅるふぅ~~!

 あの鳴き声が響いた…。

 

 俺たちは気付いてしまった…

 リナが指差すその先。

 オアシスに着く直前に。


 奴等の大量な群れがあることに…。

 

 俺とリナはその光景に絶望した。

 エロ目の集団もこちらに気が付いたようだ。  

 やる気満々といった様子で向かってきている。


 私嫌だ!もうあいつらとは戦わないから!

 リナは俺の胸ぐらを掴み、泣きながら駄々をこねる。

 

 俺だって嫌だよ!

 あいつらとはもう一生関っちゃだめ。次はないよって医者に止められてんだ!(悠)

 俺もリナと同様。どうにもならない駄々を言う。


 だってホントに嫌だ。

 あいつら臭いんだもん。


 その時。

 もういいです。私が殺ります。

 私が全部終わらせます。

 レイナがゆらりと立ち上がった。

 顔はどす黒く、いつもの可愛らしい雰囲気はまったく感じられない。


 「殺ります」!?(悠・リナ)

 動物好きで、基本的にモンスターでも命を奪うことに抵抗があるレイナ。

 そんなレイナが発するとは…。

 あまりの事態に、俺もリナも言葉を失っていた。


 私が殺ります。二人は馬車に居てください。

 レイナはそう言うと杖を持ち馬車を降りた。


 レイナは一人群れの前に立った。

 群れもレイナのあまりの迫力に気圧されているのか、近付くことが出来ずにいる。

 ジリジリ…。

 お互いが距離を計り、

 緊迫した空気が流れている。


 おい。ホントにレイナ一人で大丈夫なのかよ?

 (悠)

 分かんないよ!

 私だってあんなレイナ始めてみたもん!(リナ)

 俺たちは不安に思いながらも馬車から様子を伺っていた。

 あ、動くよ!(リナ)


 レイナはゆらりと杖を掲げて叫んだ。

 滅せよ(ボソッ)

 ファイアーボール!!

 レイナの魔法が群れの先頭に直撃し、鳥は炎に包まれた。


 !?

 ヒィ~~!!怖い~!!

 魔法打つ前になんか怖いこと言ってた~!!

 俺とリナは怖さのあまり思わず叫んだ。

 

 あひゅるふぅ~~!

 魔法を受けた鳥が苦しんで声をあげる。


 でも単体魔法!?

 あんなにいるのに一体にしか魔法は使わないのか!?(悠)


 しかし、その時だった。

 ブーー!

 炎に包まれた先頭の鳥が思わず撤退の合図を出したのだ…。


 あ!そうか!

 レイナの狙いは!!

 ハゲ臭鳥合図しちゃダメーー!!!

 リナが何かに気付き声をあげた!


 しかし、時はすでに遅かった。

 遅すぎたのだ…。

 

 炎に包まれた鳥が合図を出す。

 合図は…。合図はそう「屁」だ。

 合図は後ろの群れに向かって放たれる。

 つまり合図を出すと。

 同時に炎が屁に乗り、群れに向かって放たれるのだ。


 ブーー!炎が後ろの群れ目掛けて飛んでいく。

 そして更に他の鳥が炎に包まれた。

 ボワッ!

 あひゅるふぅ~~!

 ブーー!炎に包まれた違う鳥も合図をだす。

 仲間を逃がすためだろう…。

 合図は波及していくんだ。

 スカン鳥の習性だったね。


 ブーー!ボワッ!メラメラ…。

 ブーー!ボワッ!メラメラ…。

 ブーー!ボワッ!メラメラ…。

 彼等は仲間を逃がすための合図で、どんどん他の群れを炎の渦に巻き込んでいった。


 それからは一瞬だった。

 ブーー!ブーー!ブーー!ブーー!

 ボワッ!ボワッ!ボワッ!ボワッ!

 仲間のために屁をこく鳥の群れは、あっという間に全体が炎に包まれた。

 鳥達は仲間に合図を出しながら次々に絶命していったのだ。

 せめて皆は逃げてくれという思いを屁にのせて。


 あひゅるふぅ~~!ブーー!

 あひゅるふぅ~~!ブーー!

 鳥達は断末魔をあげて倒れていく。


 炎がゴウゴウと立ち込める背景の中。

 まだ全ての鳥が倒れてはいない中で…。

 レイナが杖を下げ、こちらに歩いてくる。

 その様子はさながらハリウッド映画のワンシーンの様だ。


 あれは自殺です。(レイナ)

 私も自ら死に行く命までは救えません。

 あの子達が悪いんですよ。

 あんな方法でしか仲間を助けられない。

 そんな進化しか。

 しなかったのだから。


 レイナはそう言うと俺とリナの横をすり抜け馬車に乗り込んでいった。


 馬車の前は焼き付くされる鳥の群れにより、赤く染まっていた。


 あひゅるふぅ~~。

 あひゅるふぅ~~。

 鳥達の声が響く。


 …。

 俺たちは忘れてはいけない。

 あいつらはあいつらなりの方法で。

 仲間を救おうとしたことを。


 俺たちは忘れてはいけない。

 優しい人間ほど、怒った時には手がつけられないということを…。


 …。…。…。…。

 ぎぃ。バタン。

 俺たちは無言で馬車に乗り込み、オアシスにむかうのだった。

 

 炎が立ち上る砂漠を横切る。

 あひゅるふぅ~~。

 あひゅるふぅ~~。

 あひゅるふぅ~~…。


 彼等の声は次第に遠くなっていった…。


 鳥よ~鳥よ~♪

 俺の頭の中に懐かしの「トリ○ウタ」が流れ続けていた…。

 

 本日のクラン活動


 臭い鳥により人間関係に亀裂が生じる。

 クラン内の序列でレイナが1位になる。 

 スカン鳥大量虐殺クランとして砂漠に名を馳せる。

  

 





 

 


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