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チェンジアップ

「ナイスボール!」

壮介の声がグラウンドに響く。


壮介「やっぱお前のストレートいいな!受けてて気持ちいいわ!」

俺「そう!?ありがと!でも、130のストレートとか、高校生ではどこにでもいるじゃん!」

壮介「そうかなー?」

監督「普通の130じゃ、いるな。でも、お前のストレートは、ノビがすごいんだよ」

俺「ノビですか?ノビって、あんまし分かってないんですよね」

監督「普通、人がボールを投げると、重力によってボールは落ちる。それはわかるよな?」

俺「はい」

監督「でも、ノビがあるか、ないかで、その落ちる変化量が違うんだよ」

俺「俺のは落ちにくいってことですか?」

監督「そうだ。ノビがあると、バッターが低いと思って見逃した球が入ったり、また実際の球速以上に速く感じたりするんだ」

壮介「あ、わかります!受けてても、低めの球がすごい伸びて来るんで、予想よりもミットが少し上に行くんですよ!」

俺「そうなのかー。自分で自分の球を受けたことないから、分かんなかった(笑)」

壮介「まあ、そりゃそうだよね(笑)」

監督「だから、ストレートは球速だけでなく、いかにノビのあるストレートを投げることができるかが大事なんだ」

俺「へー、そうなんですね…すごい勉強になりました!」

壮介「ホント何も知らなかったんだな。もっとちゃんと勉強しろよ(笑)」

俺「は、うるせっ。お前が言うな(笑)」

監督「仲良いな(笑)」

俺&壮介「そうですね(棒)」

俺「あ、今思ったんですけど、先週から練習しているチェンジアップって、このノビのあるストレートと関係しているんですか?」

監督「あー、そうだ。ノビのあるストレートを軸にした配球で、たまにチェンジアップを投げられると中々打てない。チェンジアップがあることで、さらにお前のストレートが活きてくる」

俺「なるほど!面白いですね!」

監督「それでチェンジアップ慣れたか」

俺「簡単でしたね(笑)もうマスターしましたよ!」

監督「ほー。壮介は受けててどうだ」

壮介「すごいっすね!1週間ですけど、もう完璧ですよ!」

監督「そっか。じゃあ、投げてみろ!」

俺「はい!」


壮介のミットにめがけて、投げた。

バンッ!


壮介「ナイスボール!」

俺「よし!」

監督「次はストレート投げてみろ!」


次はストレートを投げた。

バンッ!


壮介「ナイスボール!」

俺「いい感じ!」

監督「壮介!どうだ!」

壮介「いいですね!こう球速差があると、打てないですね!」

監督「ホントにそう思うか?」

壮介「えっ?」


「藤村!ちょっと来い!」

監督が女子マネージャーの藤村さんを呼んだ。


監督「藤村、ちょっと見ててくれ」

藤村「はい」

監督「もう1回投げてみろ!まずはストレート!」

俺「はい!」


バンッ!


壮介「ナイスボール!」

俺「よし!」

監督「次はチェンジアップ!」

俺「はい!」


バンッ!


壮介「ナイスボール!」

俺「よし!」

監督「壮介、何も思わないか?」

壮介「えー…、いい球だと思いますけど…」

監督「藤村はどうだ」

藤村「んー、ストレートの時とチェンジアップの時のフォームが微妙に違うように思いました」

監督「その通りだ」


藤村さんはスコアラーを担当していて、野球にめちゃくちゃ詳しい。

他の女子マネとはちょっと違う。

モテたいとか、青春したいとか関係なく、ただ純粋に野球が好きで、マネージャーをしているような人。


俺「あの!3人で何話してるんですか?」

マウンドからは3人が何話しているか、聞こえない。


監督「あ、もう1回投げてくれるか」

俺「はい…」

監督「壮介、今度はアイツの肘に注意して見ろ」

壮介「はい」

監督「まずはストレート!」


バンッ!


壮介「ナイスボール!」

監督「次はチェンジアップ!」


バンッ!


壮介「あっ」

監督「わかったか?」

壮介「投げる時の肘の高さが違う…」

監督「その通りだ。チェンジアップの時の方が肘の位置が高くなっている」

壮介「そうですね。全然気づきませんでした」


「監督!ちょっと見てもらってもいいですか!」

トスバッティングをしているキャプテンが監督を呼んだ。


「おう!すぐ行くわ!」

監督が大きな声で返答した。


監督「なあ、壮介」

壮介「はい」

監督「アイツはチェンジアップが簡単だって言ってたが、確かに投げるだけなら簡単だ」

壮介「はい」

監督「でもな、ストレートと全く同じフォームで投げるのは簡単じゃない。これは変化球なら全般に言えることだ」

壮介「そうですね」

監督「でも、アイツのスライダーは、ストレートを投げる時のフォームとほとんど違いがない。それは中学の時から投げてきたからだ」

壮介「はい」

監督「でも、チェンジアップは先週から練習し始めたばっかで、しかも意味も分からずただ練習してただけだろ」

壮介「そうですね…」

監督「お前がアイツを引っ張って、お前がアイツにチェンジアップをマスターさせるんだ!わかったか?」

壮介「はい!!」

監督「いい目だ!頼んだぞ!」

壮介「はい!」


監督がキャプテンの方に向かった。


俺「ちょっと何話してたの?」

壮介「チェンジアップがまだまだだって話」

俺「えっ、どこが!?」

壮介「あ、藤村さん。純也が投げる所、スマホで動画撮ってもらってもいいですか?」

藤村「いいよ」

俺「おい、どこがダメなんだよ」

壮介「動画見たら、すぐ分かるから、投げて!」


そう言って、俺が投げる所を動画で撮り、それを見て、ストレートとチェンジアップでフォームが違うことを知った。

それから何度も投げて、撮って、確認を繰り返したが、すぐには上手くいかなかった。


俺「ダメだ…フォームを意識しすぎると、コントロールが思うようにいかない」

壮介「難しいな」

藤村「そう簡単に上手くいくはずないわよ。まずはコントロールよりもフォームを完璧にしなきゃ。コントロールはそれからでいい」

俺&壮介「そうですね…」

藤村「よし!投げ込みはやめよう!」

俺&壮介「えっ?」

藤村「まずはフォームを完璧にしたいから、シャドーピッチングの方が良いわ」

壮介「なるほど」

藤村「体育倉庫に、大きい鏡があるから、それを借りましょ」

俺&壮介「はい!」


それからシャドーピッチングをひたすらした。



「よし!今日の練習はここまで!」

キャプテンがグラウンドに響き渡る声で言った。


俺「じゃあ、鏡片付けようか」

壮介「おう」

藤村「私倉庫開けるね」

俺&壮介「お願いします」


体育倉庫に鏡を運んで、グラウンドに戻る時に俺が言った。


俺「俺何も知らなかったわ。監督になんでチェンジアップ覚えろとか言われたのも」

壮介「俺は一応お前のストレートが良いから、それを活かすためと分かってたけど(笑)」

俺「ホントに!?」

壮介「ホントだよ!(笑)」

藤村「でも!」

俺&壮介「ん?」

藤村「ストレートを活かすためだけど、一番はそこじゃないと思うよ」

俺「どうゆうこと?」

藤村「私が勝手に思ってるだけかもしれないけど、チェンジアップってさ…」

俺&壮介「うん」

藤村「ピンチで投げる時に、すごい勇気がいるらしいの」

俺「なんで?」

壮介「あ、スローボールだから!?」

藤村「そう!」

俺「あ、確かに。ノーアウト満塁とかで、チェンジアップを投げるのはすごい勇気がいるかも…」

藤村「だから、監督はピンチであってもチェンジアップを投げられる度胸を竹中君に身に付けて欲しかったんじゃないかな」

俺「そうだったのか…」

藤村「これは壮介君も同じね。その場面で、竹中君を信じて、チェンジアップを要求できる度胸を身に付けて欲しかったんだと思う」

壮介「そっか…」

俺「俺チェンジアップを完璧にマスターするよ!」

壮介「そうだな!ピンチの時、俺マジで投げさすからな!(笑)」

俺「おう、何球でも投げてやるから、何球でも要求してこい!」

壮介「おう!」

藤村「あまり何球も連続で投げると、さすがに打たれるよ(笑)そうゆう球じゃないし(笑)」

俺&壮介「そうですね…」

藤村「(大丈夫かな…)」


あれから俺はチェンジアップの練習に時間を掛け、ストレートとのフォームの違いがほとんど分からないくらいまでになった。

またコントロールも10球中8球は狙った所に投げれるくらいになり、ほぼマスターしたといって良いレベルになった。

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