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MY LOVER  作者: RAN
1/3

前編

「ただいま、トウカ」


「おかえり、シュウジ」



 いつも決まって私達は相手を迎える言葉を言うことになっている。


「トウカ、今日はどうだった?」

「別に。ずっと家にいたよ。そういえばシュウジの載ってる雑誌見たよ」

 シュウジはIT関連で成功した大企業の社長である。

 若くして社長になり、見目も麗しく、マスコミに対しても率直に誠実に対応するので、テレビや雑誌にも引っ張りだこなのだ。

 そして私は、外に出ずにそんな彼に養われている。

 私のこの状況を簡単に表す言葉があるなら、「ペット」。彼に飼われていると言ったところか。

「あぁ、見てくれた? どうだった?」

「カメラマンのセンスがよくなかったわ。シュウジのかっこよく見えるポイントをおさえてないんだもの」

「言ってくれるね」

「ところで、今日は久しぶりに肉じゃがを作ったのよ」

 私が普通のペットと違うところをあげるとすれば、餌の準備をするところだろうか。

 食事を作って彼を温かく出迎えるのだ。

 ただ、彼の帰りが遅くなったり、私の具合が悪くなればそれはできないが。

 私達はお互いに強制したり、何かに命令されてるわけじゃないけど、それぞれの役割はなんとなく決まっていた。

「あぁ、入った瞬間いい匂いがしたよ。和食は久しぶりだな。今日もよく働いて腹が減ったよ。ご飯、もらおうかな」

「了解。ヤマダさんもよければ食べていってください」

「ヤマダは強制的に夕ご飯食べさせるからよろしく」

「またそういう訳のわからないこと言うんですから、社長は。資料の整理があるので、少しお邪魔させてもらいます。……まぁ、夕食、いただけるとありがたいですが」

「はい、ぜひどうぞ」

 シュウジの後ろについて入ってきたヤマダさんは、シュウジの秘書だ。

 常にシュウジと行動を共にし、運転手などもこなす。

 秘書といったら、バリバリのキャリアウーマンをイメージしていた私は、ヤマダさんを初めて見た時には失礼ながら驚いた。

 それこそ事務の経理なんかをしてそうな、純朴な青年だったからだ。

 しかし、社長の右腕として働いている彼を侮ってはいけない。

 彼は常にシュウジ一番で物事を考え、行動している。

 そんな彼からしたら、私とシュウジの関係が一番気になるところだろう。

 高校の時に部活が一緒で、そこからつきあうようになり、今に至る私達。

『俺がトウカを養うから、だから、一緒に暮らそう』

 高校卒業の間際にシュウジに言われたセリフは、今でもその場面とともに鮮明に思い出せる。

 それから私とシュウジの今の生活は始まった。

 もっとも、いくら養うといわれたからといって、今のような生活は予想していなかったのだが。

 そんな関係の私達だから、私は、彼に会うたびにプレッシャーを感じているのだ。

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