見えざる闇
エレメンタルタワー、管理室。
「エタロンド様!」
甲高い声でエレメンタルランドシンボルキャラクター、「キャトロン」が話しかける。
灰色の毛、尖った耳、上品なひげ、そしてガラス玉のような目をしている。
青色をベースとした服を着ており、いかにも王子のような格好だ。
「どうしたのかねぇ騒々しい」
小太りの男がサンタクロースの
ような自分のひげをさすりながら言う。
「はい、今ゴーストタウンに五年ぶりのゲストが侵入しました!」
「なにぃ…? あれがあるのになぜそんなところに……」
ホラージエンドの大人気アトラクション「ゴーストシューティング」をはじめとする、数々のアトラクションは山の頂上付近にある。
そこへ行くにはこのゴーストタウンの奥にある山道を進んでいくしかなかった。
しかし5年前、ゴーストタウンで幽霊のマシントラブルがあり、ゲストが負傷するという事件があった。
それ以来、ゴーストタウンは閉鎖し、三年ほど人が入れぬ地へとなった。
アトラクションへ行く道はなくなったため、ゴーストリフトというマシンが導入されるのであった。
そのリフトはまるで浮遊しているかのような体感ができ、大人気の移動手段へとなった。
それ以来、再開したゴーストタウンに足を踏み入れる人はおらず、驚かす幽霊達も、退屈していた。
「おぅおぅ、あやつら、久々の客に喜んでおるのぉ。じゃが、やり過ぎんようにのぉ……」
目の前に写し出されるモニター。
そこには幽霊に追い回されている少女が写っていた。
「ですが、なぜあのような場所に足を踏み入れたのでしょうか」
「なぜじゃかのぉ。ん? もしかして……」
「ま、まさか……宝玉を狙いに……!? もしそうならば今すぐ止めなれば!」
「そう焦るのでない。そうであっても宝玉を手に入れるのは不可能じゃ。そしてもし揃ったとしてもな……」
「そうですね……。肝心な神器はここにありますしね」
「うむ。じゃがもし揃いそうならば止めなければならぬ。後々めんどうなことになるからのぉ」
「そうですね。少し様子を見ましょう」
どのぐらい走っただろうか。
休憩した意味がないほど疲れが増してくる。
なのにも関わらず妖精は道案内をしてくる。もうついていくしかないや!
振り返った時にはもう幽霊はいなかった。
「ハァハァ」
乱れる呼吸。ふと気がつくと目の前に広がっているのは墓地だった。
「これならさっきの町にいたほうがましだったよ……」
息が整い、冷静さを取り戻したところで私は歩き出した。
うめき声があちこちから聞こえる。
枯れた木々、飛び回るコウモリ、いきなり飛び出してくるネズミ。
ああ、帰りたい。しばらく墓地を歩いていると、いきなり、
「HEY! お嬢さん! ちょっとおまちー」
「キャ!?」
いきなり帽子をかぶった赤色の幽霊が現れ、私に話しかけた。
「俺達の魂、心に刻んでくれ!」
次は細長く、顎のしゃくれた青色の幽霊が現れる。
「翻訳すると、魂を込めた歌を聴いてくれってことだボン」
ぽっちゃりした、黄色の幽霊がのんびりした口調でいう。
「あの……私、急いでるので……」
「まあまあ、そんなに時間とらせないからん」
スタイルのいい緑色の女幽霊がウインクしながら言う。
せっかくの逃げる言い訳を……。
「じゃあ、そこの墓石にでも腰かけて少し待っててくれ!」
えぇ、こんなところに座るの……?
恐る恐る座る。だが先ほどのベンチより、座り心地がよかった。
奴らはごそごそ慌ただしく、舞台の準備をしている。
なんだかんだでもう十分以上待たされてるんですけど……。
あれから更に十五分ほど待った。
そして……。
「さあ、お待たせしました! 俺達、ゴーソウルバンドでぇーすっ!」
全くお待ちしておりません。
「俺達のソウル、【SOUL☆LOVE】聴いてくれっ!」
「ワン、ツゥー、スリー、ボンッ!」
黄色がドラムを叩く。赤色はギター、青色はベース。緑色がキーボードだ。
「肉体、命、失って~も~心は熱いぜ」
「SOULLOVE~♪」
「魂、だけの、俺達だ~けど思いは強いぜ」
「SOULLOVE~♪」
「歳を重ねる、女は魅力に~♪ なるといいっても幽霊どうなの~?」
「矛盾な世界だ~けど皆生きてく~♪ だけど俺達、関係なぁぁぁーーーい!」
「SOULLOVE♪ SOULLOVE♪ 男も女もSOULLOVE♪ 魂刻め、人生これから楽しもうぜ~、幽霊LIFE!」
「SOULLOVE♪ SOULLOVE♪ SOULLOVE♪ SOULLOVE♪」
「心に刻め、魂燃やせ、最後は皆で」
「SOULLOVEーー!!!!」
やっと終わった……。なんだこの曲は……。
ロック? ラブソング? 訳がわからない。
ただとにかくうるさいかったため、頭がガンガンする。
「盛り上がってるかぁぁーーい!?」
ヤバい、次の曲が始まる。早く逃げなきゃ。
奴らはステージに夢中になっている。
ちょっと気の毒だったが、私はその場から去った。
墓地の真ん中まで来ただろうか。すると、
「助けてくれぇ……!」
と、今にも死にそうなかすれた声が聞こえてた。
さすがの私もさんざん幽霊やら骨やらライブやらに追い回されたりしたためか、もう慣れた。
冷静に周りを見る。
そこには人間の姿をした銅像があった。
すごくリアルだ。
まるで生きていたかのように。
そんな銅像を無視して私は再び歩き出す。
しばらく歩くと競馬場らしき建物が見えた。
すると妖精が急に速く飛びだした。
早くいこうと訴えかけるように。
宝玉とやらが近くにあるのだろうか。
仕方なく私は走った。
競馬場のすぐそばにまできた。ここであることに気づく。
「まさか……ここって……パパの……」
そのまさかだった。ここは間違いなく私の父親が働いていた競馬場だった。
そんな……未来で私がいた町はこんなことになっているなんて……。
認めたくなかった。だけど目の前には真実を見せつけられるような残酷な景色が広がっている。
妖精が心配そうに私の顔を見つめる。
「ごめんね、私が救って見せるから。さあ、案内を進めて」
私達は競馬場の内部へと向かった。




