導かれし者
私は夢を見た。
「この世界は見えない闇に支配されてしまった。お前たち、この国に古くから伝わる七つの宝玉と神器を集め、この闇を打ち払うのじゃ。」
目が覚めるといつもの景色が見えた。
あの夢はなんだったのだろう。
偉そうな年寄りに語りかけられ闇を打ち払えなどという現実離れしたことを言われる少々むかつく夢だ。
せっかくの休日なのにこんな夢に起こされてしまった。
まあそんなことは気にせず部屋からでる。
「ママー朝ごはーん」
「はーいちょっと待ってねー。それにしても珍しく早起きねぇ。しずくらしくないわね」
私の名は「黒羽しずく」
普通の中学二年生だ。
パパが競馬で働いており、幼いころから馬術を習っているため、乗馬が得意。
「はい、朝ごはんできたわよー」
机におかれたのはご飯と卵と醤油。
ママ、おもいっきり手抜きしてるし……。
文句は言わず、卵を手に取る。
割ろうとした瞬間、机がずれ、卵が床に落ち、割れてしまった。
「なに、地震? あーあーもう卵割っちゃて」
ママがめんどくさそうにティッシュを取りに行く刹那、地面が突き上げられた。
地鳴りが響きガラスが割れる。
ああ、私は死んでしまうのか……。
脳内に死の文字が走る。その後私は気を失った。
「ねぇねぇ」
何者かが私に語りかけてくる。蝶の羽、桜色のドレス。
人目見てわかった。妖精だと。
ここは天国……?
「未来、変えたい?」
無邪気な子供のような声だ。
「この世界、滅びる。未来、行く?」
これはどう答えればいいのだろう。
悩んでいると、
「見えない闇、全てを飲み込む。
神器、七つの宝玉の力集いしとき、闇打ち砕く」
見えない闇? 神器? 宝玉?
あの時の夢と同じことをいっている。
もしかして私、勇者とかになっちゃうの?
「行く? 行かない? yes? no?」
「そんなの……わ、わかんないよ……!」
「父も母もみんな救える。このままだとみんな死ぬ……」
えっ、パパもママもみんな死んじゃうの?
そんなの嫌……!
「分かった。行くから!みんなを救って!」
妖精はにっこりと微笑んだ。
その後桜吹雪に包まれ気を失った。
「ふふふ。あははははは!」
妖精の笑い声が聞こえる。
私は仰向けに芝生に寝ていた。
頭上にあるのは……月?しかも変な顔。
気味が悪い。気持ち悪い。
私は立ち上がった。
足元には紫色の芝生。ここに寝ていたなんて最悪。心がブルーになる。
どうやらここは遊園地のようだ。
しかも規模がかなり大きい。
目の前にゲートが見える。
そこには「ホラージエンド」と書かれている。
「小さいお子様へここは怖いところです。注意してね」
いきたくない。私はホラー系が大嫌いだ。
でも妖精はお構い無しに早くと言わんばかりに奥へ進む。
「ううっ、みんなを救うには行くしか……。仕方ないなぁ……」
ゲートを越える分かれ道があった。
妖精は右の人気のないような場所に向かっている。
壊れた立ち入り禁止の看板がそこらじゅうにある。
これは演出なんだろうか。
小さな森へと入る。
顔のような模様の枯れ木がそこらじゅうにある。
常に見られているようで不気味だ。
「助けて~!」
妖精の声が聞こえる。すると、大きな蜘蛛の巣に捕まっていた。
そこにはおぞましい色のキノコを背中に飾った、大きな蜘蛛がいた。
毒はあるだろうか。それともこいつも演出のひとつなんだろうか。
そんなことより早く妖精を助けなければ。
近くにあった木の棒で蜘蛛の巣を払い除ける。これでも幼い頃から蜘蛛退治はやってきたため、慣れている。
妖精と蜘蛛が吹っ飛ぶ。
妖精が私のほうへ飛んでくる。
蜘蛛が地面に落ちた衝撃でキノコから胞子がばらまかれた。
するとその辺りに新たなキノコがはえはじめた。
気持ち悪い。
「早く行こ!」
私は妖精に呼びかけ、走り出す。
蜘蛛は追ってこず、そのまま巣の修復をしていた。
小さな森を抜け、そこにあったのはゴーストタウンと言う名の町であった。
大半が木でできた家だ。だが、床が抜けいたり、屋根に穴が空いていたりと、かなりボロい。
人気がないのに、なぜかただならぬ気配を感じる。
私は上のほうを見る。
そこらじゅうにふわふわ浮いているのは……幽霊? 作り物にしてはすごくリアルだ。
プログラム? ありえない。いや、未来だからありえるかも。
どんどん想像が膨らんでいく。
そんなこともお構い無しにどんどん先にいく妖精。
「待ってよー! あなたは飛べるからいいかもしれないけど私は走ってるの!」
息が乱れており、言葉にするのがやっとだ。
そしてすぐそばにあったベンチに座り込む。赤いペンキが剥がれ落ちている。妖精が戻ってきて顔色をうかがってくる
ため息をつく。日頃からもっと運動しておけばよかったと思った。
三分ほどたっただろう。
やっと息が整う。やっと心が落ち着いたと
思った刹那、足が何者かに掴まれた。
「キャッ! なにこれぇーーー!!!!」
私の悲鳴が響き渡る。足をバタバタと動かし振り払う。
足を掴んでいた正体は人の骨の手だった。
その手は虫のように這いつくばり私を襲ってくる。それだけではなかった。
私の悲鳴を聞きつけた幽霊が数十体飛んでくる。
私は全速力で走る。作り物でもプログラムでもお化けとか幽霊は怖い。
再び骨が私の足を掴む。
「キャーーー! やめてぇー!」
私はおもいっきり掴まれた足を前に振りだす。骨が前方へ吹っ飛んだ。
だが、骨はまだ弱らない。
前方から私の方へ一直線に向かってくる。
気持ち悪さで寒気が止まらない。
「来ないでー! 来ないでぇーー!!」
私は足を上げ、骨に向かって降り下ろし、踏み潰す。
何回も何回も。無我夢中に。
バキッ! ゴキッ! と骨が砕かれる音が響きわたる。
しばらくし、私は冷静さを取り戻す。
ハッと思い足をどける。
そこにあった骨はもう、手の形はなく、粉々になった灰のようなものだった。
謎の罪悪感が込み上げてくる。
と、同時に目に幽霊の顔が飛び込んだ。
「きゃあっ!」
気がつくと、幽霊たちに囲まれていた。
私は再び走り出した。恐怖で涙が出てくる。
「もう帰りたいよぉーーーー! こんなとこ、くるんじゃなかったぁー!」




