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15.内政






 新物語、『この中に一人カマホモがいる!』、始まります。始まるかボケぇ!



 俺たちの作戦会議に恐ろしい程自然にカマホモが溶け込んでいた。

 俺がその存在に気付いたのは、カマホモ毒殺作戦を提唱した時に本人から『僕に毒は効かないよ』って言われた時だった。本気でびっくりしたわ、毒殺対象から否定入るんだもんよ。


「俺たちの会議にごく自然に入り込み、情報を抜こうとするなんて何て狡猾な野郎だ。血の気が引いたぞ」

「もしかして参加したのは拙かったかい? 僕がいるのにそんな会議を始めるものだから、アドバイザーとして残って欲しいのかと思ったよ」

「なんでぶっ潰す必要のある相手にその方法を相談するんだよ!? お前らも気付いてたなら指摘しろよ! 追い出せよ!」

「まさか斉木君が素で気付いていないとは思わなかったので……何か考えがあって愛理さんを参加させているのかなと」

「アイリ? なんだそれ?」

「昨日の夜に一度自己紹介したんだけどね……遠野愛理、それが僕の名前だよ。よろしくね、僕の主人公様」


 コーヒー片手にウインクして自己紹介するカマホモ。こいつ、愛理なんて言うのかよ……顔だけじゃなくて名前まで女みてえじゃねえか。これにスティックついてんのかよ、マジありえねえよ……詐欺過ぎる。

 げんなりとする俺に、カマホモが『気軽に愛理と呼んでいいんだよ』とか言ってくるけど絶対呼ばねえ。誰が野郎をファーストネームで呼ぶか。俺の中でカマホモは永遠のカマホモなんだよ。

 げんなりとする俺を見て楽しげに微笑むカマホモ。ぞっとするくらい美人なのに、カマホモなんだよな……世界色々と間違ってるわ、マジで。

 肩を落としながら、俺はカマホモに昨日訊ね損ねたことを訊いてみる。


「それで、昨日は色々あり過ぎて訊き忘れてたけどよ。なんでお前、俺たちをこのゲームの世界に連れてきたんだ。なんで俺たちなんだ。俺たちに何をさせてえんだよ」

「僕がこのゲームに君たちを閉じ込めた理由が知りたいのかい?」

「あ? 馬鹿、ふざけんな、微塵も知りたくねえよ。喋んなボケ」

「理由訊いたの斉木君なのに何いきなり全否定してるんですか!? 話してくれようとしてるのに止めて下さいよ!」


 うるせえな、もったいぶられると意地張りたくなる年頃なんだよ。俺はツンデレなんだよ。ツン10デレ0の黄金比形成してんだよ。

 河合にガミガミと説教される俺を微笑ましく見つめるカマホモ。なんだろう、殴りたい、この笑顔。

 やがて説教が落ち着いた頃、カマホモは話を切りだして理由を語り始めた。


「それでは少しばかり昔語りをしようか。僕がどうしてこんな力を手に入れたのか、そして君たちを選んだ理由、君たちに何をさせたいのかをね。あれは今から二年前のこと――」

「待て、俺はカマホモの過去なんぞ微塵も興味ねえ。そもそも俺は長話を聞き続けられねえ体質なんだ。という訳で面倒は長話は俺のマネージャーである河合にしておけ」

「いつから私は斉木君のマネージャーになったんですか!?」

「河合は後で俺に400字詰めレポート三枚以内でカマホモの話をまとめて提出する事。話が終わるまで、俺は外で遊んでるわ」

「あっ、陽太が外に行くなら私も行くっ! 私も遊びたい! 玲夢先輩、愛理さんの話がどんなだったか後で教えてねっ!」

「え、ええええ!? 雪ちゃん、待って下さい! わ、私もっ!」

「私も魔法の試し打ちしにいくよ! リアル肉体で魔法を撃てるなんてこの先一生ない経験だよ! 玲夢ちゃん、お願いねっ!」

「そ、そんなあ、相坂先輩、待って下さ……」


 一番に飛び出した俺を皮切りに、結城と先輩までカマホモの話から脱出した。どうやらみんな面倒な話を聞きたくはないらしい。

 ホームギルドに河合を残して、俺たちは街中を歩いていく。とんだ貧乏くじを引かせてしまったが、まあそれが河合って気もするし、しかたねえ。

 ふと、男女を密室に残してやばいんじゃないかと思ったりもしたが、カマホモは女に興味ねえから大丈夫だろ。俺は河合に何かお土産でも買ってやるかと考えながら、街へ向かうのだった。
















「ねえ、斉木君、気付いてるかな?」


 街を歩いていると、先輩がそんな問いかけをしてきた。

 気付いてるって何がだよ。いきなり、そんな問いかけをされても分かる訳がねえ。少し思考を巡らせ、俺は先輩に満面の笑みで知ったかぶりをしてやった。


「もちろん気付いてるに決まってんだろ。ハッピーバースデー先輩! また一つ大人の階段昇っちまったな! ひゃっほーい! めでてえ!」

「私の誕生日は二カ月後だよっ! プレゼント楽しみにしてるねっ!」

「あ? 何さりげなくプレゼント要求してんだ、万年金欠ボーイの俺にプレゼント要求なんぞ、面の皮厚過ぎだろ、貧民から重税を取ろうとするから反乱が起きんだよ。こうなりゃ一揆だ、一揆を起こすしかねえ! ハァイ! ボク、イッキーだよ! イッキーバースデイートゥーユーウ! つーか、マジで金ねえから、そんな立派なもん期待すんなよ?」

「うんっ! 楽しみにしてるね!」

「ああ、ずるいずるい! 陽太、陽太! 私の誕生日、一か月前!」

「既に終わってんじゃねえか!? 過ぎたるは及ばざるがごとしって言葉の意味を知らねえのか。無知なお前に教えてやる、この言葉の意味は『過ぎ去ってしまったことは振り返ってもしかたない、前を向いて生きようぜ』って意味で、昔日本の偉いオッサンが……」

「『何事もやり過ぎはよくない』って意味でしょ? そもそもこの言葉は日本じゃなくて中国、論語から……いひゃいいひゃいっ! なにするにょよっ!」


 俺の啓蒙活動にドヤ顔で間違いを指摘した結城に天誅。両頬をびよんびよんと引っ張って結城の変顔を楽しむ。あらやだ、美少女の顔を変顔に変えるっておもしれー。

 そんな結城を玩具にしている中で、先輩が何事もなかったかのように話を続ける。いや、止めねえのかよ。本当に色々ぶっとんだ先輩だよな、相坂先輩って。


「私が言っているのは、人の気配。周りに私たち以外のプレイヤーが誰もいないんだよ」

「あ? 言われてみりゃ、確かに誰もいねえな。いつもなら街中でうるせえくらいメッセージボードが飛び交ってやがるのに、今日は何も聞こえねえや」

「メンテナンスじゃないの? それなら人がいない理由も説明がつくし」

「それだといいんだけど……こんな昼からメンテナンスするかな」


 人の気配がないことを考え込んでいる先輩。

 俺にとっちゃ喧しいメッセージボード音も俺を舐め腐る馬鹿共もいなくて最高に気楽なんだけどな。


「ほら、悩んでも仕方ねえだろ? そういう難しいことは全部河合に押し付けようぜ。なんせ河合は頭いいからな、あいつ成績学年二十位くらいなんだぜ? 廃人ゲーマーのくせにマジ有り得ねえわ」

「ほえええ、凄いねえ。私なんか下からトップテンに入ってるよ!」

「胸張って言うんじゃねえ! もう少しなんとかしねえとマジで俺たちと同学年じゃねえか!」

「陽太! 陽太! 私学年一位だよ! この前の中間、全教科満点で一位だったよ! 褒めて褒めて!」

「あ? 何さらっと大嘘かましてんだこいつ。俺はバレバレの嘘とカマホモが何よりも大嫌いなんだよ。二度とそんな面白くない冗談言うんじゃねえぞ」

「ほ、本当なんだってばー!」


 俺の腕に抱きついてきゃんきゃんと吼えるポメラニアン。こいつ、俺に構って欲しいあまり学年トップなんて嘘を……マジで必死過ぎて可哀想になってきた。元の世界に帰ったらこいつのためにビーフジャーキー買ってやるか、犬用のお得セットのやつ。

 馬鹿な犬ほど可愛いというが、そんな飼い主の気持ちが少しだけ分かった気がした今日この頃。駄ポメとおっとりゴールデンを連れて、俺たちはいつもの街の外、ナルミノ平原へと足を運んでいた。

 そして、俺たちの姿を見つけてぴょんぴょんと跳ねてくるナリア。なんかもうこいつとの付き合いも長えな。俺は動物王国の主の如く、両手を広げてナリアを呼ぶ。


「おー! よしよし! こっちだこっち!」

『ぷぴー!』


 腕を広げた俺目がけて飛び込んでこようとするナリア。可愛い奴め。

 そんなナリアのジャンプに合わせて、俺も宙を舞ってボレーシュート。空中回し蹴りが見事に決まり、ナリアは空の彼方へ消えて行った。レベルが上がってるせいか、飛距離も随分伸びるようになったもんだ。

 ナリアを蹴り終え、満足した俺は先輩と結城に声をかける。


「ほれ、生身の体で魔法撃ちたかったんだろ? ナリア相手に好きなだけ撃ってこいよ。俺もその辺で遊んでるわ」

「ありがとう、斉木君! 沢山撃ってくるよー!」

「わ、私も! 攻撃魔法はないけど、スキル色々試してみる!」


 そう言って散らばりナリアを追っかけ回す二人。うむ、無邪気な光景だ。まるでライオンが兎を追い掛けるがごとき光景だわ。

 是非とも河合にも魔法を撃ってもらい、現役中二病高校生アイドルユニットを結成してもらいたかったが残念だ。

 俺はナリアをみつけては蹴り飛ばす作業を繰り返す。カマホモで溜まったストレスを魔物狩りで晴らす、実に合理的だ。

 もし魔物が動物型だったら、動物愛護者の俺としては断固として反対するところだが、相手はサッカーボール。気がねなんぞいらん。

 ひたすらナリアを蹴り続け、その数が百匹を超えた頃。一匹のナリアが大地に落下すると同時に、何やら不思議な指輪を落としやがった。あ? なんだこれ?

 先端に血液の如く赤い宝石のついた指輪。分からねえもんは人に訊く、実に良い言葉だ。俺は廃人先輩に早速この指輪の正体を訊くことにする。


「なあ先輩、これって何だ? ナリアが落としたんだけどよ」

「うーん? ナリアのドロップする指輪……たぶん『魔魅の指輪』じゃないかな?」

「魔魅の指輪?」

「うん。これを装備すると、バトル中に異性モンスターを極めて稀に魅了することがあるんだよね。その状態で戦闘終了すると、モンスターが仲間になるっていうアイテム」

「異性って何だ。ナリアに雄雌あんのかよ。」

「まあナリアだけじゃなくて、この世界にはインキュバスとかラミアとかエンジェルナイトと可愛い女の子型のモンスター多いからね。モンスター娘を集めてる男プレイヤーさんには当初人気のアイテムだったよ」

「だった? なんで過去形なんだ?」

「今はもっと効果の凄い上位アイテムが発見されてるし、何より魅了する確率が本当に低いからねっ。今では基本、ギルドに売り払ってお金にするくらいかなあ。でもでも、かなりレアなアイテムだよ。おめでとう!」

「ふーん。まあいいや、金にも困ってねえし。いらねえ」


 俺は迷わずその指輪を草原へと投げ捨てた。それを慌てて拾って俺に差し出す結城。おお、ナイスセーブ、ナイッセー。しかし、こいつ、マジで前世犬なんじゃ……試しに何度か繰り返してみるが、無邪気な子犬のごとくジャンピングナイスセーブの繰り返し。

 本当に哀れみが胸の奥から込み上げてきたので、なんとなく頭を撫でてやる。すげえ喜んでる。コミュニケーションに飢えてんだなあ……

 しかし、結城がこの状態じゃ、このチンケなゴミ指輪捨てられねえじゃねえか。どう処分したもんかと悩む俺に、首を傾げながら先輩が訊ねかけてくる。


「指輪捨てちゃうの? 装備していようよー、もしかしたら激レアな魔物娘が仲間になるかもしれないよっ!」

「死んでもいらねえ。そんなの連れてくくらいならナリアを百匹引き連れて百鬼夜行ならぬ百鬼雑魚するわ」

「どうして? 女の子モンスター凄く可愛いの多いのに? 斉木君もきっと気に入るよ!」


 分かってねえ、このぽんこつは何一つ分かっちゃいねえ。

 俺は大きく溜息をつきながら、先輩に向かって理由を説明する。


「もううちには三匹も女モンスターみたいなのがいるだろうが。これ以上増やしてどうすんだ、俺の精神的疲労が天元突破するだけだっつーの」

「え? 陽太、もう魔物仲間にしてたの? どんなの、教えて教えて」

「見たいなら鏡見ることをお勧めするぞ。色気のかけらもねえポメラニアンが映ってるからよ……ああもう! ぽよんぽよんうるせえ!」


 俺が力説する中、何度も足元で体当たりをして邪魔をするナリア。そのナリアを全力で蹴り飛ばし、鬱憤を晴らす俺。

 全く、人が熱を込めて語ってるのに邪魔をするなんてとんでもないサッカーボールだ。やっぱりサッカーは駄目だわ、時代はテニスだわ。ワールドカップより四大大会だわ。俺のウインドK炸裂するわ。

 大地に落下して消え去るナリアを眺めようとしていた俺だが、ナリアの姿が消えない。あ? バグかこれ? 首を傾げていると、ナリアが起き上がり、ぽよんぽよんと近づいてきた。何だこいつ、しぶてえな。

 何かメッセージボードが出たが、俺は気にせずナリアを再び蹴り飛ばした。良いシュートだ、そろそろ日本代表も俺を呼んでくれねえかな。

 そんなことを考えていると、また起き上がったナリアが俺へと近づいてくる。やだ、何この健気な魔物。なんか蹴ることに罪悪感覚えてきたんですけど。しかし慈悲など与えねえ、もう一発特大のシュートをしようとした俺に、先輩が口を開いた。


「ねえ、斉木君。そのナリア、指輪の効果が発動しちゃってるみたいだよ? さっきから『仲間にしますか?』ってメッセージが出てるよ」

「……あんだと?」


 俺の足元でぴたりと止まり、じっと見上げてくるサッカーボールことナリア。

 そして、その頭上に出てくる『指輪の効果が発動しました。ナリアを仲間にしますか?』という文字。マジか、これ持ってるだけで発動するのかよ。

 仲間にするかどうか、そんな答え分かり切ってるわ。断然ノーだボケ。ノーを選択しようとした俺の手を、ポメコこと結城がしがみ付いて邪魔をする。あ、飼い主に逆らいやがった、やっぱり駄ワンコだわこいつ。


「何邪魔すんだよ。ナリアなんて仲間にしてもしゃーねえだろ、こいつ魔物の中で最弱じゃねえか。プロ野球のドラフトで幼稚園児とるようなもんだ、クビクビ、さっさとクビ」

「なんで!? モンスターを仲間にする経験なんて一生に一度あるかないかじゃん! 仲間にしようよ!」

「馬鹿野郎! 仲間にするって、いったい誰がこのサッカーボールの面倒を見るっつーんだよ! うちには既に三匹雌犬がいるんだよ! もうペットは手一杯だ、野に返してきやがれ!」

「私が見るから! 絶対面倒見るから!」

「そういって一週間くらいで餌やりも散歩も俺の仕事になるんだろうが! 分かり切ってんだよボケ!」

「斉木君! まるで野良犬を拾ってきたかのような会話になってるよ!」

「きっと強くなるよ! 最近のスライム系の初期モンスターは大化けする可能性高いんだよ!? 魔王を倒すようなナリアになったり、物凄い美少女のナリアになったりするかもしれないじゃない!」

「夢見てんじゃねえタコ! そういうのは妄想の世界だけにしやがれ! ほら、とにかくナリアをさっさと野に……」

「えーいっ、ぽちっとな」

「あ」


 俺の抵抗も空しく、先輩がメッセージボードのイエスの部分をポンと叩いた。

 そして現れる『ナリア♀が仲間になりました! 名前をつけてあげてください!』の文字。このぽんこつ、許さねえ、乳揉んでやる。

 怒りの炎を灯した俺に、先輩は笑顔で理由を説明する。


「これから私たちはレベル3000万なんていう未知の大ボスである愛理ちゃんに勝たないといけないんだよ? どんな些細なことでも、方法を残しておけるなら残した方がいいと思うんだっ。もしかしたらナリアが私たちの危機を救ってくれるかもしれないし!」

「ねえ、百パーセントねえ。こいつの仕事って俺の暇潰しのサッカーボール代わりになるくらいしかありえねえ」

「名前つけよ! 名前! なりぽんなんてどうかな!?」

「名前なんてどうでもいいわ!」


 俺が命名権を譲渡したことで、結城が嬉々としてナリアに名前をつけ始めた。なりぽんに決定らしい。

 こうして俺たちはなりぽんことナリアを仲間にしたのだが……どうすんだ、こんなの持って帰ってと正直最初は思ってた。

 だが、なりぽんはかなり有用な奴だと俺はすぐ理解する。こいつに夢中になってる間、結城の喧しさがこちらには向けられないのだ。

 そう、こいつは対ポメラニアン騒音対策アイテムだったのだ。やるじゃねえかナリア、夜中にそのチビ助を好きなだけスライムプレイしていいぞ。

 


 適当に時間を過ごして、俺たちはギルドへと戻っていく。

 そろそろカマホモも長話も終わり、河合もレポートに奴の長話をまとめてくれてる頃だろう。

 俺たちがギルド内に入ると、満足そうに微笑んでいるカマホモと恨めしげに俺を睨みつけてくる河合。なんで俺だけ睨んでんだよ、後ろの二人も同罪だろうが。

 しかし、断固として頭を下げず、俺は河合に頼んでいたものの提出を求めた。


「カマホモの言い分をまとめたレポートはできたか? ん?」

「……できました。愛理さんが添削してくれました」

「ほう? カマホモの分際で気が効くじゃねえか、本当に性別以外は隙がないなお前は。まったく、無駄にいらっとさせるカマホモだわ。どれどれ」


 俺は河合からレポートを受け取りながら、ざっと眺めていく。

 しかしまあ、こんだけ手の込んだことをして俺たちをゲームの世界に閉じ込めたんだ。俺たちと壮絶な因縁や、前世のこととか書かれてても俺は驚かねえぞ。それくらいこいつの執着ぶりは異常だからな。きっと唖然とするほどの壮大な理由が書かれているに違いねえ。どれどれっと。

 そこに書かれていたカマホモの過去、俺たちをこのゲームの世界に閉じ込めた理由、その目的をざっとまとめるとこうだ。



 ・二年前、中学生の頃に不思議な力に目覚めた。全ての人間を超越し、自分の望む世界を構成する神の力。

 ・それから様々なことをやってみた。異世界を救ったり、逆に滅ぼしたり、この世界で戦争に介入し、一人で一国の軍を滅ぼしたりしてみたが、心の充足は得られなかった。

 ・それから力を持つ意味を見失い、いつの間にか己の滅びを望むようになった。

 ・ただの終わりではなく、自分を滅ぼすに相応しい、まさしく物語の主人公のような人物を探し続けた。けれど、これまで試した連中はどいつも駄目だった。

 ・諦めかけていたとき、このゲームの攻略掲示板の書き込みを見て、気まぐれに河合を召喚したら、何か変な男の子がついてきてしまった。

 ・その男の子が何故かどんどん『主人公』としての素質を開花させる姿を見て、心奪われた。この人こそが、自分を滅ぼしてくれる主人公に違いないと確信した。おしまいまい。


「カマホモォォォォォォォォォッッッッツ!」

「あああっ!? 私が二時間かけて書いたレポートがっ!?」


 レポートを全力で破り捨て、怒髪天を突いて絶叫した俺は悪くないと思う。

 こんな、こんなゴミクソみてえな理由で俺はゲームの世界に閉じ込められてたのかよ。もうやだ、世界とカマホモなんて滅べばいいのに。

 













 神の石が淡く光り輝きました。



 属性『内政』を石に記録します。







(〃⌒∇⌒)

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