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・始まる前のプロローグ

 書きかけの古い奴を引っ張り出してみた。

 あんまり長くしないつもりですが、書くペースは遅いので暇があったら読んでください。

 約、一巻分で終わりにする予定です。

プロローグ


「他三人はどうした?」

「土地周辺の守りで忙しいと連絡がございましたわ」

「おやおや、こちらも重要な案件だと言うのに」

 質問を投げかける老人に淑女が答え、その答えに呆れたような声を漏らす青年。それを見つめる小さな女の子。四人が全員人の形を取っていながら、まるで人である気配が全くしなかった。

「それで、番席はどうなりました?」

 青年が訪ねると、老人は溜息を洩らしながら答える。

「総席はぬらりひょんに譲った。あ奴なら十分素質があろう」

「その後、下を一つずつ上げました。それ以外の交代はありませんね」

「末席はどうなりましたか?」

「空席……」

 小さな少女が虚空を眺めるようにしながら呟く。

「それは困りましたねぇ~……。他に適任はいなかったのですか?」

「ダイダラポッチはどうでしょう? 十分頭目は勤まると思いますが?」

「ああ~、ダメなんですよ。彼、先月に鵬組に加わっちゃったみたいで、すぐに脱退するつもりはないみたいです」

「では、酒天童子はどうか? あ奴ならば十分にそれだけの力があろう」

「消えた……」

 少女の言葉に全員が溜息を吐く。

「他に目ぼしい者達もそれぞれ組に下ってしまった……。今更一から組を創立しようとする者もいないか……」

「そうでしょうねぇ……、なんせ例の日まで後季節一巡り分しかありませんしねぇ……」

「無理難題……」

 少女が結論付けた時点で全員に諦めの空気が支配しようとしていた。

 彼らの会議している場所に闖入者が表れたのはその時だった。

 ドカンッ! と、木作りに見える茶色の扉が音をたてて開き、そこに一人の着物を纏った少女が表れる。

 少女は真剣な表情で一歩一歩踏み出しながら語る。

「話を受けてまいりました。刀匠鬼、名を鬼姫と申すものです。此度より、祖父の意思を継ぎ、百鬼夜行末席にて頭目の番を貰い受けたく参り――ふむぎゅっ!」

 しかし、言葉の途中で爪先が何かに引っ掛かりベシャリと顔面から盛大にこけてしまう。

「つぅ~~~~~ぅ~~ぅぅ~~~~~~ぅ~~~……っ!」

 地面はそれほど固くもない土で出来ているので、それほど痛くはないはずだが、少女は顔面を押さえて必死にもがいてばかりいた。

 まるで高校生になって初めて喧嘩をした挙句、相手がボクシングを学んだ事のある不良に殴られた時のように、ただ激しく悶えるばかりであった。

 呆気にとられていた彼らも、議題を忘れてただ眺めるばかりいた。

 しばらくして先に復活したのは痛みを押さえている少女ではなく、議論していた小さな少女であった。

「闖入者……鬼神の孫娘と推定」

「~~~~~~~~~~っっっ! はい……っ!」

 少女はようやくそれだけ答えると、片手で鼻を押さえたまま立ち上がり、涙目になって彼らを見つめた。

「ま、末席の番号をいただけますか?」

 彼らは迷った。

 行動としては一切なにもしていないが、皆がアイコンタクトだけでも十分に意思疎通ができるほど同じ意見を持っていたのだ。

 これは無理だ。かなり無理だ。鬼神の孫娘は元々刀鍛冶だし頭目としても威厳とか技量とか、ともかく色々なモノが足りてない。だからこいつを選ぶのはかなり最悪の選択になる。末席に入れても名を汚しかねない。

 そこまで否定をあげておきながら、この後彼らはその申し出を受ける事になった。

 そもそも他に番を埋めるモノが出てこないのだからどうしようもない。代わりが立てられないのならどんな綺麗事を並べても意味はないからだ。

 万が一、この選択が愚かなモノであっても、組創設には最低百鬼を集めねばならない。それが出来なければ彼女の申し出はなかった事にされる。

 結果的に彼らは最後にこう結論付けた。

(もう、こいつでいいや……)








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