表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

前夜祭

新宿の雑居ビルで、便座に腰掛けたまま死んでいる男が発見されたのは、八月も終わりを告げる頃、早朝5時のことだった。

この男はビル内の輸入代行業事務所に勤める、48歳の無邪気な馬のような人物だった。

清掃会社の担当者(老婆)が、掃除を始めてから間もなく発見した。

新宿西警察署の上山刑事が、ビルの管理者室応接間で、発見した老婆に質問した。

横で横川警部補が腕組みしながら、鼻をほじっている。

「お姉さん、男性トイレの個室を掃除する時に、いつもと違う感じはしなかったですか?何でもいいんですよ。」

お姉さんと言われて、上機嫌になった老婆は言った。

「私がこのビルに着いたのが、午前4時45分でした。同僚のクマ子さんとタバコ吸いながら、掃除の準備していたわな。」

ビルの周りをパトカーの赤色灯で照らされ、黄色い現場用のテープが揺れている。

「クマ子さんが、一番上の階から始めて、私が一階から始めるのが、いつもの流れだなす。」

「それで、一階から始めて間もなく発見したと。あれ?クマ子さんは?」

「なに、8階から始めてるよ。」

横川警部補が、口角泡を飛ばして言った。

「そ、そんな筈は無い。この状況で続けているわけないぞ。」

その時だった。階段を駆け下りる威勢のいい足音が響いて来た。

「横川さん!は、8階から老婆の死体が見つかりました!」

「なぬっ!老婆の死体だと。服装は!?」

「この方と同じ作業着です。」

「どんな状態なんだ、老婆は。」

「便座に腰掛けたまま死んでいます。」

それを聞いていた、斉藤ヨネ(老婆)は腰を抜かしてつぶやいた。

「やっぱり老婆だと思われてたのね。」


マスコミが過熱し始めた。事件は本庁も重要視して、新宿西署会議室には

「新宿雑居ビル便座殺人事件対策本部」と戒名が貼られた。

この殺人事件が、便座殺人事件と意味不明な言われ方をしているのは、死因が特定出来ないからなのだ。

共通点は、ケツを出して便座に腰掛けたまま死んでいた事だった。

凶器も見つからない、銃創も身体に無い、一つだけ気になるのは、毒殺に似た反応が見られる点だった。

しかし、口内、咽頭部などからは毒物反応が見られない。無い無いづくしで、科捜研もお手上げ状態だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ