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3話 俺対あいつ

一応ほのぼの恋愛小説ですが、青春スポーツものっぽくなるかもしれないです。

「ただいま・・・つっても誰もいないか」


帰宅した俺はかばんを2階の自室に放り込むと、1階に降り、テレビを見始めた。ちっ、つまんねークソ番組しかやってねーのか。


-20分後ー


いい加減腹が減ったので、食べ物が無いか冷蔵庫や棚をあさったが、どれも食材のままのやつだけだった(俺は料理できないからあっても意味無い)。仕方ない、近くのコンビニで何か買うか、と考えていたとき。

ピンポーン 

どうやら、来客のようだ。誰が来たのか確認するために、のぞき窓から人物を確認する。

・・・ なんだ、レズかよ。 

ガチャッ  ドアを開ける。

「ち、昼食はもうとった?」

「いや、まだ」

「その、よければ一緒に食べない?」

「いいのか?」

「うん、これ持ってきたんだ」

アヤは後ろに隠していた左手を俺の前に突き出した。その手には風呂敷に包まれた重箱(おそらく)がつるされていた。

「助かる。ありがとな」

でかした、よくやった。

「あっ・・・う、うん」

俺の破壊力抜群の人を見下したような笑みを見たアヤは頬を染め、俯いた。さすが俺。どうやら俺の笑みは涼より上のようだ。負けなしのアヤに土をつけた。

「どうした?上がれよ」

「お、お邪魔します」

そう言うと、アヤはリビングへ入り、いすに腰掛け、風呂敷を解いた。中はやはり重箱だった。パカッと重箱を開けると、色鮮やかで、おいしそうな数々の料理が目に飛び込んできた。

「ほぉ、すごいな」

「そ、そうかな?ありがと」

俺が素直な感想を言うとアヤは礼を言った。察するに、どうやらこの数々の料理はこいつが作ったものみたいだ。おそらく、朝にあらかじめ作っておいたのだろう。大変すばらしい。お前が変な性癖を治したら、将来俺の嫁にしてやろう。と考えながら、煮物を箸でつかみ、食べる。

「うまいな。おまえ、これなら料理人として商売できるんじゃないか?」

褒めごろそうと賛辞の言葉を送る。

「うっ、うう~」

するとこいつは、きもい唸り声を上げて、顔を耳まで紅く染めた。藍色の輝く瞳で俺を見つめてきた。

そうか・・・ヨイショされると発情するのか。大変だな、変態って。

俺たちは重箱の中身をきれいに片付けて、食事を終えた。アヤは、ニコニコしながら上機嫌で帰っていった。帰る前に俺が礼を再び言った時は、けっこーやばかったみたいで、もじもじしていた。頼むから襲ってくるなよー。と思ったが、杞憂で終わって何よりだ。さて、2時までごろごろするかなー。


PM2:30 


俺たちは水城邸の中庭の西側にあるテニスコートに集まっている。俺とアヤは中等部で使っていたテニス部のユニフォームに身を包んでいる。アヤがスカートをはいている姿はこういう時しか見れないから貴重だ(何せ親父さんの意向で基本男装だからな)。

「よーし、今日溜まりに溜まった憂さ晴らしのスタートだ」

準備運動を終え、ネットをはさんでアヤと向かい合う。

「はぁ・・・いじわる」

意地悪と言われても困る。何せ意地悪しにきているのだからな。だが、言葉とは裏腹にあいつは緩みきった顔で俺を見ている。

お前やっぱ変態だな。きっと俺にぼこぼこにされんのを期待しているに違いない。・・・ああ、気持ち悪いやつだ。

「じゃあ、始めるぞー」

「表ー」

「おもっ、裏!」

涼がラケットをコートにたて、回す。クルクルと回転するラケット。次第に回転が弱まり、バランスが崩れた。

カラン・・・

「表」

「よし、俺からだな」

サーブは俺からになった。少し焦った様子で涼が声をかけてきた。

「わかってると思うけど、あんまり強く打たないであげてね?」

「はいはい」

涼の言葉を聞き流す。お前のその正義感にあふれるセリフに従ったら、憂さ晴らしにならないだろう。対戦相手のアヤの方を見ると、要となにやら話し込んでいる。小声のため聞き取れないが、アヤのニヤけ具合(奏の笑顔にやられただけ)からして、おそらく要が入れ知恵している。 なんだよ、やっぱ反抗期か。仕方ない、この試合が終わったら、首輪でもつけるか。

「それじゃ、試合始めるよー!」

涼がそう言うと、要は審判席の後ろ側にあるベンチに腰掛けた。さあ、ぶちのめしタイムの始まりだ。 


「アヤ、奏対策はできてるのか?」

「う~んいまいち。奏の苦手なネット際に落とすドロップやボレーで攻めようかな、って考えてるんだけど」

私と奏の対戦成績は0勝3敗で私の全敗だ。しかも、4ゲーム以上はとったことが無い。でも、1月前の試合で彼の弱点っぽいのを発見した。彼はドロップショットやコードボールで返ってくると、捨てに行く傾向にある。彼はしなやかな見た目に反してパワー型で、スマッシュやジャックナイフを多用する。しかし、彼はあまりスタミナは無い。そこをつこうかと思う。でもその考えは要の言葉によって破棄させられた。

「その考えでは前回と同じように6-3で負けるぞ?」

「え?」

「・・・ふぅ、奏の弱点はお前の得意なバウンドを変化させるショットやロブ、ボレーだ」

「うそ!?コードボールとかじゃないの?だってこの前普通に返してきたよ?」

「いや、コードボールについてはめんどくさがってるだけだろう。普通に返してきたのはおそらく偶々だ。昨年負けた相手はアヤと同じ技巧派だったからな」

「そうだったんだ。アドバイスありがとー。なんか自信出てきた!」

「ふっ、ではな」

要は涼を見ると、ベンチへと移動した。

「よーし、奏に勝つぞー!」 


 パコン!  ドッ  

「ちょっ!・・・15-0!」

なんか涼が非難の目をおれに向けてるが無視する。どうやらアヤは俺の超高速サーブに反応できなかったようだ。俺のサーブはMax190Km近くある。とれなくても恥じることはないぜ、レズ。トントンとボールを地面にたたく。少し間をおいてからボールを軽く上に投げ、インパクト時に力をこめる。 

パコン!   ドッ  

「30-0!」

ふん、たわいの無い。そう思い、サーブを打つ。  

ドッ   パコン! 

おっ、今度は返してきた。だけど、何の変哲も無い返球だ。ジャックナイフでもお見舞いしてやろう。そう意気込んで、片足で跳んだ。しかし、それは失敗だった。


スカッ


 「はあ!?」

バウンドしたボールが60度くらいの角度で大きく左に曲がった。やってくれる・・・てっきりコードボールを狙って失敗したダメショットかと思っていたが、まさかあんなサイドスピンのかかったショットをネットすれすれで打ってくるとは。

・・・・・・決めた。要にはぜってー首輪つける。これはあいつの入れ知恵に違いない。俺の大嫌いな横に変化するショットをあんな紛らわしい形で打ってくるなんて。でも、それを実行して成功させるアヤのテクニックも恐ろしいけどな、ほんと。 


「ふうー・・・」

よかった、うまくいった。要の言っていたことは本当だったらしい。コードボールと見せかけたのは私の思い付きだったけど、見事に引っかかってくれた。奏は悔しそうな顔をしたり、ちょっと怒ったような顔をしたり、ころころと表情を変えている。

ふふっ、かわいい・・・。

・・・といけないいけない。試合に集中しなくちゃ。

 パコン! 

 速い!さらに、奏のサーブは速いだけではなく、重い。技巧派で、しかも女の私にはかなりきつい。でも返せないほどでもない。  

 パコン!

今度はショートバウンドでスライスを打つ。

 ガッ・・・ポトッ 

「30-30!」

奏は先ほどのことに警戒して少し下がり気味だった。でもそれは、1月かけて成功率を跳ね上げたコードボールの格好の餌食。この調子ならもしかしたら、勝てるかもしれない。そんな期待が私の中で膨らみ始めた。


PM3:10

 あのハ○キング馬鹿のせいで、アヤは俺の天敵に成り上がった。あいつの返球は決まってバウンドが変化する。きついのはロブで、強烈な回転がかかっているためスマッシュを打っても、コントロールが難しく時々アウトになる。そのせいで、スマッシュやジャックナイフがうまく打てない。それに・・・

ガッ・・・ポトッ 

「ゲームレシーバー、4-3!」

まただ。あいつはこれで10回連続でコードボールを成功させたことになる。成功率100%とかどんだけだよ。でもゲームカウントは俺が4あいつが3だ。さらにアヤのほうは息が乱れ始めている。一方の俺はまだスタミナに余裕がある。よし、ここは気を引き締め直して・・・ 

「あっ!お姉ちゃーん!」

肩に桜華学園指定の鞄をかけた、将来期待できる女の子がアヤに駆け寄ってきた。この子の名前は水城 ミコト。桜華学園中等部2年生(新3年生)でアヤより1つ下の妹だ。姉と同じ綺麗な金髪にどこか優しさを含んだ碧色の瞳、顔はもろ日本人顔でかわいい感じだ(背もちっさい)。後3年も経てば背も伸びてきれいな女の子になるだろう。その時になったら、俺の元へ嫁に来るがいい。

「はぁ、はぁ・・・お帰り、命。今奏と試合してるからベンチでまっててね」

「うん!」

命は反逆者がいるベンチの方へと駆けていく。

「あ、あの・・・」

「ん!?」

び、びびった・・・なんだアカリか。驚かせんなよ。

俺に話しかけてきた子の名前は、水城 明。水城3姉妹の一番下でおとなしい子だ。命と同い年で、命と一緒に学園から帰ってきたようだ。艶のあるサラサラな茶色がかった黒髪に茶色い瞳、大和撫子を想像させる容姿をしている。この子はアヤと命とは血が繋がっていない。だが、3人は羨ましいほどに仲がいい(俺の姉につめの垢でも飲ませたい気分だ)。しかも、昨年は仲良く3人で全国大会に出場した(アヤが3位、命が8位、明は3回戦敗退だった)。この姉妹はどんだけテニスの才能に溢れてんだよ・・・俺未満の才能だけどな。 

「明、どうした?」

優しい(クラスの女子共だったら感極まって失神する)笑顔と声で話しかけてやる。

「そ、そのぉ・・・お、お姉さまのことよろしくお願いします」

消え入りそうな声で変なこと言いやがった。なんだその、私の姉をもらってくれ!!みたいなセリフは。明だったらもらってやっても良いが、あいつはいらね。

「うん、わかった。試合再開するから命のところへ行っておいで」

「は、はい」

俺が心に思っていることと反対の返事をしたにもかかわらず、明は向日葵のような笑顔を浮かべて走っていった。

・・・俺はなんて罪な男なのだろう。

パコン! ドッ! 

「・・・」

「フィ、15-0!」

おい、ふざけんな。こっちはまだラケット構えてねーんだぞ。それに涼も試合進めんな。さっきの無しにしろよ、おい!

 パコン!  ドッ! 

 「サ、30-0!」

「くっ、テメェら・・・」

このままだと1ゲームとられる。俺は気を引き締め直して臨んだ。 

パコン!  ドッ  

 なんかアヤのサーブのスピードが上がってる気がする。だが、150Km前後のたいした速度ではないため、俺はフォアハンドで振りぬいた。 

 ガツ!   トンットントン・・・   

「40-0!」

「ちっ、小細工しやがって」

バウンドしたボールが進む角度を変えた。そのまま直進していたらラケットの面で正確に捉えていたはずである。しかし、実際はガットに当たり、地面に転がった。

スライスサーブ・・・アヤの十八番だ。アヤの放つスライスサーブは大きく曲がり、少ししか弾まないのが特徴だ。強烈な斜めの順回転、それがこの現象を引き起こす。・・・全国3位は伊達じゃないってか?気にいらねぇな、やっぱお前。  


 私はどうしたんだろう。かわいい私の天使(明)が奏と会話している。ただそれだけなのに、心の中はざわついている。

あ、奏が私には見せたことが無い笑顔で明と話してる。どうして?どうして、私にはその笑顔を向けてくれないのよ。・・・私の心に嵐が訪れた。

ボールを軽く投げ、思いっきり打つ。

「フィ、15-0!」

審判の涼は私と目が合うと、ビクッとして少し青くなって、顔を背けた。・・・なによ、失礼ね。奏は呆然としている。何してるのよ、ラケット構えないと打ち返せないでしょ。ま、いいか。

 パコン!   ドッ!

「サ、30-0!」

奏はやっとラケットを構えた。この試合、何が何でも勝たせてもらうよ。2年かけて会得した私オリジナルのスライスサーブは今まで、零さん以外返した人はいない。全国大会のときは、肘を痛めていて打てなかったけど、おそらく誰も返せなかっただろう。これは、どうやら奏も同様でガットに当たりはしたけど、そのまま地面に転がるだけだった。

「40-0!」

でも、奏の雰囲気が少し変わった。   


俺は、気持ちを落ち着け、アヤに目を向ける。 

パコン!    ドッ! 

アヤのサーブは普通のフラットだ。俺は片足で軽く前に跳び、ラケットを振りぬいた。

ドッ!

「40-15!」

さすがのアヤも、サーブをジャックナイフで返されるとは思っていなかったらしく、反応が遅れた。驚いた顔をしている。しかし、すぐに元の表情に戻った。そして、アヤはサーブを放った。肘の位置が若干高い(俺や姉くらいしかわからない程度)、スライスか。

・・・予想は的中した。俺はそのまま打点の低さを利用して、ドロップショットを打った。

 ガッ・・・   ポトッ

「40-30!」

よーし、入った。正直ヒヤッとしたけど、散々やられたコードボールの仕返しができて愉快だ。ざまーみろ。


PM3:40


「はぁ、はぁ、これで!」

俺は力を振り絞ってスマッシュをコートの端に叩き込んだ。

「くっ!」

そして、当初の予定通り、アヤを叩きのめした。


「ゲームセット!ウォンバイ奏、7-5!」

ものすごい接戦だった。正直アヤのほうが、俺を負かした奴よりも強く感じた。まっ、俺が勝ったけどな。

俺に敗れた負け犬は地に這いつくばって「はぁはぁ」言ってやがる。そうか、M属性にゴム臭好きが加わったか。ベンチで要と仲良く会話していた(たぶん)俺の花嫁候補の命と明が、ペットボトルとタオルを持って猛ダッシュでアヤの元に駆け寄った。

「おーい、俺には?俺には何も無いのかー?薄情だぞ、俺の花嫁候補たちよー」

ガシッ 

「ん?」

すごいさわやかな顔で、涼が俺の肩を思いっきり掴んだ。

「明ちゃんはお前じゃなくて、俺の花嫁候補な」

・・・

・・・

「黙れロリコン」

アヤが昨年3位だったのは、肘の負傷が原因です。その原因を作ったのは、奏。アヤとの初対戦で、しつこくパワーショットを打ち、アヤの肘が耐えられなくなったからです。肘の負傷が無ければ、1位を余裕とはいかなくても、獲得していたでしょう。

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