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2話 四人四色

今回はシリアスが少し入ります。                    4/10ストーリー上に支障が出たため、少し改訂しましました。

式場を後にした俺たちは教室でだべっていた。



「ふむ、アヤはまた懲りずに奏に勝負を挑むのだな?」

「ああ、だからまた叩きのめすんだよ、俺が」

「ふーんだ。今度こそ私が勝つもん」

「あー、もしかして審判って俺で決定?」

教室に着いて休憩時間に入った途端、涼は要に誘いを入れた。だが、

『俺が観客なら、当然審判はお前がやるのだろう?』

と言われ、その要求を一度飲んだ。そのくせに、またぶり返したのだ。それを俺に

『男らしくねーな、このチキン野郎』

と蔑んだ目で言われたのが堪えたのか、しぶしぶ審判役を引き受けた。涼は臆病者呼ばわりされるのを非常に嫌がる。そこを突いてやった。ふんっ、ざまーみろ色男。

「それにしても、あんな賑やかな卒業式ってここだけじゃない?」

「まあ、確かにうるさかったな」

「アヤ、奏、お前たちも十分うるさかったぞ」

自分のことを棚の上にあげて文句を言ったアヤと俺が要に注意された。

「みんなー、写真撮る準備ができたから集まってー!」

担任の若い女教師がクラス全員に呼びかける。クラスメートたちが教卓の前へとぞろぞろ集まりだした。俺たち4人もそれに続く。

「おっと」

「えっ?」

「あっ」

あまりの密集度のため足元の何かに躓いてしまった。俺はそのまま、前にいたアヤに抱きつくような形で倒れてしまった。ちなみに、下の「あっ」が俺の声だ。

「すまん、奏、アヤ」

どうやら、要のやつが俺のことを躓かせたらしい。お前俺に何か恨み持ってんの?

「うわあー、奏君ってすごく大胆なんだねー!」

「ウホー!ウホウホー!」

「ウホホホ!ウホウホ!」

可愛らしい声だが、少しむかつくことを言った女子の声の後に、けたたましい野郎語(またの名をゴリラ語)が飛び交った。俺は動物愛護団体の人じゃないからその言葉を理解できない。でもまあ、表情でかなりの動揺と焦りが見て取れるが。

てゆーか、うるさい。周りがざわめいている。これでも十分騒ぎになっているが、これ以上は騒ぎを大きくしたくない俺は、アヤの上から退こうと手を動かした。

「きゃっ!」

「え?」

不幸な事故だろ、これは。

俺が左手を動かしたのと同時にあいつは、身じろぎした。そのとき、俺の手がアヤの左胸を押すように触ってしまった。

「あ、その、手を・・・どけて。奏・・・」

周りは先ほどとはうって変わって、嵐の前のような静けさだ。

「わ、悪かった・・・わざとじゃない」

慌てて手をどけ、立ち上がる。女の子の胸を触ったのは初めてで、ちょいドキドキした。大きさは手のひらにちょうどフィットするほどで、驚くほどにさわり心地が良かった。うむ、すばらしい。ほめてやろう、レズよ。

「ねえ、今失礼なことを考えなかった?」

俺同様立ち上がったアヤが怒ったような表情をしている。

「・・・何言ってんの?」

冷や汗が流れたが、気にしない。少し間が空いてしまったが、何とかごまかすことにした。ん?なんだよその疑いに満ちた目は。

「ウウウー・・・」

今まで静かにしていた周りのゴリラ共がうなり始めた。

「奏、良かったな。ラッキースケベの称号を獲得したみたいだぞ」

近寄ってきた要が耳元で、囁いた。俺は要をにらみつけると、言ってやった。

「警察に突き出すぞ?」

「お前はラッキースケベの称号を失ったようだ」

よし、よく言えました。さすが2号、類稀なる俺への忠誠心だ。だが、たまに反抗するんだよなー。ああ、今はちょうど反抗期の真っ只中か。首輪でもつけてやろうかな・・・逆らったら電流か流れる的なやつ。

「ウホウホッ!ウホホ、ウホー!」

「ウキー!ウキャキャキャキャー!」

「ウホ!ウホウホ!ウホホー!」

いつからこの教室はジャングルになったんだ?ゴリラとかサルが物凄い剣幕で騒ぎ立てている。野生の動物は凶暴らしいからな。ここは先生を盾に使おう。

「先生、ゴリラ共を静かにさせてください。」

「ゴ、ゴリラ!?・・・・・・そ、そうね。この騒ぎのままでは撮影ができないわね」

先生はすぅっ、と空気を吸い込むと・・・。

「静かにしなさい!!」

鼓膜が破れるかと思った。すごい声量だな、先生。一人でウホウホ共の雄たけびを上回るとは。辺りはシーンとしている。先生は手を叩くと、

「撮影に入りますから、皆さん並んでください」

と言った。今まで雄たけびを上げていた野生の類人猿共も、今は大人しくなっていて、しっかり指示通りに並んでいる。嵐は去ったようだ。



ー奏にとってラッキーなのかそうでないのかよくわからない事故を起こした同時刻ー


俺、宮崎 要はいつもあいつを見るとイライラする(だから、足を引っ掛けた)。昨年の秋、あの出来事で二人は相当なショックを受けたみたいだ。

当事者である俺が”みたいだ”なんて言い回しを使うのは不適切だが、奏が物凄い顔していたのだから、仕方ないだろう(とにかく、ショックを受けたときの顔ではない。アヤはかなりショックを受けたが。)アヤに関しては自業自得としかいえないが、かなり痛々しかった。何かの重圧に耐えるかのような、そんな顔をした彼女はあいつに言った。

『私があの家では跡継ぎとして扱われているのはしってるよね?』

『ああ。・・・それがどうした?』

どーでもいい、っという雰囲気を醸し出していた。そんな奏を見た彼女は目に涙を浮かべながら

『そのせいなのかな?私、男の人より女の子の方が好きみたい』

と言った。何故そんな心にも思っていないことを奏に言うのか図りかねたが、おそらく、あの人の意向にアヤが従ったからだろう。


『え?・・・』


そのときのあいつの”うわっ、こいつきもっ!”という表情はすさまじかった。まるで頭のおかしい人を見るような、かわいそうな存在を見るような、そんな表情だった。だが、あいつはアヤの頬に伝う涙を見た瞬間すまなそうな顔をした。

けど、ドSでブラックなあいつは彼女に追い討ちをかけた。

『へぇ、俺はてっきり親父さんの意向で男装してんのかと思ったんだけど・・・そういうことか』

ニタァ、っと意地の悪い顔をした。奏のことを睨み付けたアヤは涙を拭い、

『そういうことよ!悪い!?』

と言い放った。俺にはバレバレの嘘にしか聞こえなかったが、奏と、大人しく二人のやり取りを見ていた涼は”えぇ~!!?”という驚愕を顔に表していた。おいおい、信じんなよ。と言いたかったが、顔を真っ赤にして逃げ去っていったアヤに気をとられて、言う機会を失ってしまった。

それから今に至るまで、あの二人はアヤを百合娘と思い続けている。

・・・お前には同情するよ、アヤ。


教室の中が静寂に包まれている。私の左胸を、腹黒でナルシストな幼馴染の手が触っている。すごく恥ずかしい。

「あっ、そ、その。手を・・・どけて。奏・・・」

私的には『早く手をどけなさい、奏』とクールに言ったつもりだったのだけど、どもってワタワタしてしまった。

彼は慌てて手をどけると、珍しく謝り、立ち上がった。私もそれに続く。心臓が破裂しそうな勢いでドキドキいっている。みんなの前で奏に触られるなんて・・・


はぁ、このことがお父様に知られれば私は頭に鉄拳を入れられるだろう。


『来るべきときまで清純でいなさい』


それが私に下された命令。さらに、お父様は古い日本の考えに共感しているらしく、3姉妹の中で長女の私を跡継ぎに決めたようだ。本当は私は好きな人だっている。でも、お父様を”失望”させたくない。その強迫観念が私の心を抑えつける。ああ、欝だ。私はストレスで禿げちゃうかもしれない。

奏のほうを見ると、彼はにやけている。

こういう顔をしている時は、どーせ下らないことを考えているのだろう。私のことをレズだの変態だのと・・・自分で招いた結果とはいえ、失礼だよ、まったく。

どうして・・・いつも、私にはイジワルなんだろう?


俺は今、けっこう機嫌が悪い。クラスメートの男子たちが親友に罵声を浴びせている。

「黒宮てめー、水城さんになんてことしやがんだー!」

「そうだ、そうだ!う、うらやましすぎるぞー!」

「とっととその反則過ぎる顔を床にすりつけて、謝罪しろやー!」

・・・この男子3人は殺気立ってる周りの女子に放課後ヤラレてしまうだろう。ご愁傷様。奏は女子に絶大な人気を誇っているが、反面、男子には絶大な不人気を誇っている。男子に嫌われているのはしょうがないと思う。うん、あの性格だから。

でも、俺は彼を嫌いにはなれないだろう。彼は俺と一緒に、若者に人気のファッション雑誌『Best』と『Men's Elles』のモデルをしている。彼は父親がいなく、病気で働けない母と幼い妹と弟を養う俺の手助けをしてくれている。彼は自分の給金の半分(おそらく数十万円)を”お土産”という形で食べ物や玩具に換えて、俺の家族に渡してくれる。

正直かなり助かっている。特待生とはいえ、こうして此処に通えるのは彼の一助のおかげかもしれない。

昨年の夏、俺は彼に問うたことがある。

『何で他人の君がここまでしてくれるんだ?』

『別に、ただの自己満足だよ。でも、その自己満足で涼の家族が助かってるなら、それでいいだろ?』

俺は驚いて開いた口が塞がらなかった。ただの自己満足でここまでするのか・・・と。哀れまれているのかと、怒りが湧いた。でも、それ以上に彼の行動に強い共感を覚えた。このときからだろう、俺が彼を親友と思い始めたのは・・・。



AM11:30 


撮影を終え、その後特に何も無く、俺たちは帰宅の路についていた。ここ”桜華学園”はそこそこ広く、約6Kmの敷地面積を誇る(さすがお嬢様、坊ちゃま学園だ)。何で校舎から正門まで2Kmも離れてんだよ。

アホか。

徒歩だとそれなりに時間をくうので、この学園の正門には20分に2本中等部・高等部行きのバスが出ている。また、その逆も同じ間隔で出ている。そのバスに乗り、俺たちは正門へ到着。今はバスを降りている。

「みんな、2時に私の家に来てね」

「わかった」

「ふむ」

「うん。それじゃ、また後で」

涼は颯爽と帰っていく。おー、はえーはえー。涼の家はこの学園のすぐ近くで、正門(南側)から西に徒歩7分の場所にある。俺たち3人の家はそれぞれ近くにあり、学園の南東の方角の居住区にあるから帰りは当然一緒だ。


15分ほど歩いた。


俺の目の前には桜華学園の中等部校舎ほどの大きさの豪邸・・・水城邸がある。3階建てのでかい家、半径50mはある中庭、体育館を内包する離れ。

・・・ふざけすぎだろ、土地半分よこせ。

「着いた。それじゃ、2時に集合ね」

アヤは門で指紋認証を済ませると、門の隣のいたって普通の扉を開け中庭へと入っていった。

・・・この門ぜってー開かないだろ。開いてるところ一度も見たことねーぞ。俺は門の対面にあるちょっと大きめの一戸建て住宅を見つめる。


ただいま、我が家よ。

PS:要の家は奏の裏側にある美しい日本家屋で、涼の家は家賃7万の4人家族には狭い、古びたアパートです。

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