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7話 豚の神秘

ストックが無くなったOrz

これからの高校生活に期待を寄せるような会話、自己紹介のような会話、共通の趣味や話題で盛り上がっている会話。廊下は今、そんな様々な人と人の言葉の往来であふれていた。

「奏、さっきは助けてくれて・・・ありがとう」

アヤが照れた感じで俺にそう言った。やっぱイケメンには美女がお似合いだよな。なぁ、アヤ・・・レズっつうのやっぱなしにしろよ。

「・・・別に、気にするな」

なんだか少し気恥ずかしく感じた俺は、ごまかすために目をそらし、生還した要に話しかけた。

「そういえば、新入生代表ってお前だろ?がんばれよ、ポチ」

「ポチと言うな。それに、俺は代表じゃない」

「え?なんで?」

おかしい。この学園は例年エスカレータ組の勉学で1位の人を代表としているはずだ(ちなみに昨年の代表は零・・・すなわちポチの飼い主だった)。

「学園長に少々頼みごとをしてな・・・」

「代表を辞退させろってか?」

「ああ、それでなんだが、代表の座は繰り上げでアヤになった」

要の奴が意外なことを言った。アヤが?俺はそんなこと聞いてねーぞ。アヤを少し睨むようにして見る。

「え?な、なに?奏、どうして怒ってるの?」

あわてた様子で俺に尋ねてきた。

「・・・要、何故辞退したんだ?」

アヤを無視して要に尋ねた。すると、要は落ちてきてもいないメガネを、くいっと上げる動作をして言い放った。

「零さんが原因だ」

なんとなく予想はついていたが、やっぱりか。

「零さんは俺が代表と知ると、『要と零はLOVE・LOVE』とかいう恐ろしい旗を作って、見せてきたんだ」

「は?」

唖然とした。姉は要に対して強い愛情を持っていることはわかっていたが、まさかここまで常軌を逸していたなんて、予想外だ。

「その旗を見せてくるだけならまだいい、だがあの人は・・・おれが挨拶するときになったら、それを全校生徒が見える位置に貼り付けるとか言い出したんだ!」

「・・・」

「それほんとなの!?要!」

アヤが鼻息荒く興奮しながら要に言った。「ああ」とため息混じりに言いながら、額を押さえる要。それに対し、アヤは「すごいな~零さん。やっぱり尊敬しちゃうな~」と左手を頬に添え、熱っぽくほざいた。

二人の温度差がすごいな。1000℃くらいはあるのではなかろうか?蒸発した水が瞬時に氷に、氷が瞬時に気体へなりそうだ。試してみようかな・・・。

「アヤ、お前も知っているだろ?零さんのあの凄まじい人気ぶりを」

要が、興奮しすぎて全身トマトな状態のアヤに言った。

「うん、知ってるよ!」

「ならわかるだろ。全校生徒の目の前でそんなことされたら、俺は命がいくらあっても足りなくなるような、そんな状態に追い込まれるんだぞ?」

切羽詰ったような顔をしている。

だが・・・


「お前、朝姉さんと堂々とイチャってただろうが」

俺がそう突っ込むと、要は顔を真っ赤にして反論してきた。

「あれは零さんが、ここなら誰にもバレないと言ったからだ!」

「おいおい、人のせいにすんのか?まあ、でも俺しか気付かなかったみたいだから、姉さんの言っていることは間違っちゃいなさそうだけどな」

「当たり前よ!」

アヤは腕を組み、胸を張ってそう言った。そこでなんでお前が誇らしげに威張ったように言うんだよ。

「とにかく、そういうわけだ。アヤ、代表の挨拶はしっかりな」

要のその言葉にアヤはうなずいた。ふう、と息を吐くと要は目を閉じた。どうやらこの話をこれで切り上げるつもりのようだ。だが、そうはいかない。まだ、聞いていない疑問がある。

「豚ちゃんをどうやって説得した?餌付けか?やっぱ」

要は閉じていた目を開けると答えた。

「ああ、北海道産寿司ネタ詰め合わせ、松坂牛ステーキ3kg、地元の老舗の4種の大福10個ずつで辞退の権利を買収した」

やはり餌付けだったらしい。

「動物愛護団体の人に怒られるぞ?『この子は過食症なんですから、エサを与えないでください!』って」

「そんなこと言われてもな、エサを見せた瞬間にエサが俺の手元から奴の口の中に入っていってしまったんだから、仕方ないだろう」

要はメガネを布で拭きながらそう答えた。

新事実が発覚した!豚ちゃんはどうやらエスパータイプみたいだ。

「まさか、袋とか包みごと食べたのか?」

「ああ、わが目を疑ったよ。バクンッ!とかいう音がしたと思ったら、手にはもうすでにエサが無かったからな。かわりに手が謎の粘液で塗れていたが・・・」

汚いな、豚ちゃん。だが、やはり豚ちゃんはエスパーなようだ。それにしても凄まじい食欲だな。箱ごと食べるなんて。

「いや、普通におかしいでしょ!箱ごと食べるなんて!」

手をシュパッと俺の腹の辺りに軽くあてて突っ込みを入れてきた。

アヤ、お前は豚の神秘というもの理解していないようだな。

「うん、アヤの意見に賛成」

くるっとこちらに振り向いた涼がそう言った。

「黙ってろKY」

「よし!それじゃあ移動するぞー」

俺の言葉と同時に名張先生が俺たちAクラスの生徒たちに告げた。先生は移動を開始し、先頭の生徒二人もそれに続いた。これから入学式が始まる。






1階の東端に体育館に繋がる廊下がある。俺たちは今、そこで待機中だ。

『新入生入場』

スピーカーから聞き覚えのある女性の声が聞こえた。それを聞いた先生は先頭の二人を引き連れて入場する。それから等間隔で二人ずつ体育館内に入場する。

そして俺の番になった。隣はアヤだ。敷かれたベージュ色の小奇麗なカーペットの上を歩く。先輩たちが拍手をしているが、その音はあまりよく聞こえなかった。俺の目には、卒業式の時よりかなり肥えてしまった奴が映っていた。その迫力のあまり、意識を持っていかれていたのだ。

「こ、こいつは・・・」

席についた俺は無意識のうちに驚愕の声を漏らしてしまっていた。

「奏、どうしたの?大丈夫?」

アヤの声にハッとした俺はアヤに顔を向けた。心底心配しているようだ。

「大丈夫だ。ただ豚ちゃんの著しい成長に驚いてしまってな」

「そういうことだったの・・・た、確かにあれはちょっと・・・」

寛容なアヤですらかなり引いている。豚ちゃんは一月前よりも横に50%でかくなっていた。横綱が子供に思えるくらいに・・・。

「新入生着席」

司会をしている上級生を見た。司会をしているのは我が姉だった。なるほど、だから旗を生徒に見せ付ける的な事を要に言っていたのか。要の判断は正しかった。確かにこんなところで『要LOVE・LOVE』とか云われたら男子全員敵にしかねないな。

周りを視線だけでざっと見てみたが、このクラスと他クラス、上級生を含めると少なくとも30人は目をハートにして姉を見ている。おそらくあの美貌とD(たぶん)の果実に目を奪われたのだろう。ったく厭らしいウホウホ共だ。

「学園長の挨拶、学園長お願いします」

そう言うと姉は少し後ろに下がった。豚ちゃんは卓上マイクに顔を近づけると声を発した。

「新入生の皆様、ご入学おめでとうございます」

あれ?なんかおかしくないか?

「・・・皆様はこれよりはれて我が桜華学園高等部1年生となられる訳ですが、3つほど私と約束事をして頂きたい」

すごいな豚ちゃん!たったの1月で人語をマスターするとは!俺は素直に感動した。豚が人語を喋ったのである。これぞ豚の神秘。

「まず1つは、この学園に入学したからには、きちんと正しく清浄な生活を送ること!タバコ、飲酒など以ての外!いいですね?」

生徒のことを正しく導こうとしているのは、その力強い口調でわかった。だが、そんな体型で言われてもな・・・。

「ぷー!くくくっ・・・はらいたい~!」

隣で涼が腹と口を押さえながら震えている。お前正義の味方の癖に何笑ってんだ?必死になってる豚ちゃんに失礼だろ?だけど、俺も気を緩めれば、顔が変形してしまいそうになる。涼のことは言えないかもしれないな。

「2つ、どんな時も友愛、親愛の情を大切に考え、いつでも、どんなときでも良いですから人を思いやってみて下さい。特に、君たちを今まで育ててくれたご両親に感謝の意を示すこと!」

勉学や運動ではなく、人の良心を教育することに重点を置いているようだ。

「3つ、これは私事ですが、いつでも学園長室は解放してあります。私に相談がある人はどうぞ、遠慮なく食料品持参でいらしてください!!」





これが狙いか!今までのきれいごとの意味は『”食料品持参”で来い』ということに集約されるようだ。こいつはやはりただの食い意地の張った豚だった。涼、お前は正しかったぞ。ちっ騙された。俺の純情返せ、このクソ豚!

俺が内心で豚ちゃんを罵っていると、副校長先生おばさんが壇上に上がった。そして、パァーン!という音が体育館内に響いた。副校長がでかいハリセンで豚ちゃんの頭を叩いたのだ。

「な、何をするんだ!?浜田君!」

「学園長!いい加減食べ物を生徒からもらおうとするのはお止めなさい!何度も言っているでしょう!」

「プギ~!プギ~!」

あ、豚語に戻った。副校長に引き摺られて、哀れ、豚ちゃんは退場された。

「あらあら・・・次はご来賓の方々からのご挨拶です」

生徒の大半がボーゼンとしているのに対し、我が姉はニコニコしながら、己の役目を全うしていた。

・・・もはや、何をいったらよいのか、言葉が見つからない。来賓の人たちが次々に『おめでとう』という言葉を言う。俺は笑いすぎて疲れたのか、蹲っている涼に声をかけた。

「おい」

「うん?なんだい?」

顔をゆっくりあげ、だるそうに言った。

「あの3人組はやっぱ俺がしばく」

「いいけど、というか物騒だね。あんな酷いこと言ったんだから当然だろうけど。でも、急にどうしたんだい?」

涼は苦笑いしている。

「なんてゆーか、男としてやっぱ俺がするべき事なんだろうなと思ってな」

俺がそう言うと、涼は「そうか」と満足そうに言った。うーんやはり、親友とはいえ女子のあいつに変なキモ男どもが纏わり付くのは、正直気分を害す。

決めた、奴らを放課後呼び出して、釘を刺す。俺は放課後にすることに対して、決意を固めた。

展開が急すぎた感じがぷんぷんする・・・きっと読んでくださっている方々は不満を感じたでしょう。文才が無くて申し訳ないです。

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