第三話 欲しいもの
第三話です。
俺が入院してからは、毎日母さんが見舞いに来てくれている。
「欲しいものがあるなら、何でも遠慮せずに言ってね」
母さんは来る度にそう言ってくれているが、俺は答える気になれなかった。
欲しいもの?
そんなのいくつもあるよ。
ユミの声が聞きたい。
ユミの笑顔が見たい。
ユミと話がしたい。
ユミに会いたい。
ユミが欲しい。
そんなこと言ったら、母さんは無理矢理にでもユミを連れてきそうだ。そういう人だ。
だけど、ユミがここに来たとして、何を話せばいいんだろう。もう、俺とユミは他人なんだ。出逢う前と同じ、赤の他人。だから、もう会えるとは思わないほうがいいんだろう。
俺の死が近くなったんだろう。昨日から体調が一段と悪い。母さんはすごく心配してくれて、今まで以上に気を遣ってくれた。
やめてよ。諦めてよ、母さん。その優しさは、いやなんだよ。
ユミを思い出すから、いやなんだよ。
そんな願いは届くはずなく、
「あ、そうそう、こんな手紙が届いてたわよ。ショウ宛に」
母さんはバッグから封筒を取り出した。
俺はそれを受け取ると、差出人を見た。三崎由美と書いてあった。ユミからだ。
俺はここ最近で、一番心を弾ませた。
未開封の封筒の封をきると、手紙を取り出した。
次回は手紙の内容ですよ。