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『勇者リリアと記憶の王都ミルフェリア』Eden Force Stories Ⅲ(第三部)  作者: 瀬尾 碧


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『第四話・3 : 蒼光の前線、ふたりの刃が揃う刻』


セラフィーが横目だけをリリアに投げて、淡々と告げる。

「……まあ。威力は、確かに “勇者様” だったわ。」


次の瞬間、砦の奥で――

赤光が、脈をひとつ“余計に”打った。


まるで「まだ終わりじゃない」と、

世界の内側から爪で叩かれたみたいに、

薄皮が震え、夜気の膜がかすかに逆流した。


リリアは剣を構え直す。

黒い夜をまっすぐ裂くような眼で、前だけを射抜いた。


「……続きだ。行くよ。」


砕け散った紅晶の破片が朝靄に滲み、

蒼い火点が風にほどける一瞬、早朝の色がそっと一枚めくれた気がした。


その微細な光の揺らぎすら逃さぬように、

セラフィーは光刃を握り直した。

声は、氷片を舌の上でひと転がししたように、静かで鋭い。


「リリア。あなたは火力で押し切って。

 ……私は周囲を断つ。」


振り向きもせず、

ただ必要な言葉だけを、戦いの中心へそっと置く。


「乱れは取る。あなたはただ、前へ。」


その直後――


セラフィーの剣先が、ひと呼吸だけ震えた。

その震えに応じて、空気の奥底が、獣が息を潜めるみたいにふるりと粟立つ。


《シャイン・リヴレイション》


無駄のない一閃が紅晶兵の胸甲を紙のように裂き、動きを止めた。


星屑が砕け残った“鈍銀の線”が、

薄明の静けさを縫うように走った。

触れた空気が、一瞬だけ温度を失った。

光でも闇でもない、戦いの“覚悟”だけが持つ色。


それは、

朝靄の戦場にそっと落とされた、

――勝ち残るための、静かな宣告だった。


セラフィーの一閃は、

光そのものを“裁断面”にしたかのように無駄がなかった。


紅晶兵の胸甲が、紙を裂くより静かに割れる。

炎みたいに暴れ散るリリアの突破線と、

氷刃のように冷たく正確なその軌跡が、戦場の色を完全に二分した。


リリアが押し潰し、押し破り、押し切る。

――その荒々しい火力が生むわずかな“余った隙間”。

そこへ、セラフィーの白刃は迷いも予備動作もなく滑り込む。


「うおお!? 止まった!? 敵がピタッと止まったぁぁ!!

 これピタゴラスイッチや!! 勇者がドカーン! セラフィーはスパッ!

 “隙間産業の最高峰コンビ”やんけぇ!!」


ブッくんが墨を撒き散らして絶叫する。


だがセラフィーの動きは、ただの連携ではなかった。


リリアの攻撃の“数秒先”を見ているかのように――

リリアがまだ振り抜いていない未来の軌道へ、

白刃が先に入り、要らない乱れだけを削ぎ落とす。


「助かる!! セラフィーが全部拾ってくれるから……前だけ斬れる!!」


リリアは一度も振り返らず叫んだ。

背中の熱と速度だけで、セラフィーを“信じきっている”声だった。


セラフィーはその背へ、ほんの一瞬だけ視線を落とす。

(……この背中は、誰よりも前に立つ。

 ならば、そのすべての隙を消すのが――私の剣。)


六重の閃光が、時間を輪切りにするように走った。


倒れた紅晶兵たちの軌跡は、

まるで“リリアが進む未来線”をなぞるための道標のように

整然と、乱れなく崩れ落ちていく。


(……これでいい。

 リリアが前を穿つなら、私は――その前を“綺麗にしておく”だけ。)


早朝の薄い蒼光が、森の奥でひと呼吸だけ揺れた。

夜の名残と朝の始まりがまだ溶けきらない――

その境目の“温度を持たない光”が、二人の足元からすっと一本の“線”として立ち上がる。


ほんの一瞬だけ、世界の色が静かに区切られた。


その時。


ワン太が、リリアの背中を

ほんのわずかに――けれど、迷いのない“ひと押し”で押した。


その圧は、言葉よりも言葉らしかった。


(──迷うな。

 前へ出ろ。

 俺の後は……仲間が全部、支えてくれる。)


リリア――いや、颯太の胸の奥で、

澄んだ熱が、静かにひとつ “開いていった”。

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