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第7話 勝手に読んではいけません

モートン様が帰った後で、義母は私に問いただした。


「それで、どうなったのですか?」


「少し考えさせてくださいとお返事しました」


細かい話はやめておこう。この人たち、バカだもん。モートン様がそうおっしゃっていた。


「ええー」


いかにも不満そうな声を出したのは、横で聞いていたアンとステラだった。あなたたちの婚約じゃないんだから、黙っていたらどうなのかしら。


「何を考えることがあるのですか! お父様の命令なのよ」


義母が厳しく言った。


「父に手紙を書いてみます」


私はそれだけ答えた。



これまでなら、義母にどう説明しようかとか考えていたが、そこらへんは全部省略することにした。

だって、この人たちバカですもん。説明する必要ある?


私には関係がない人たちだわ。私に関係があるのは、私自身とこの場合は父だけ。

私が婚約してもしなくても、義母や義姉たちに影響はないし、責任を取ってくれるわけでもないでしょう。


私は、嘘でも知らんぷりでもどんどん使おうと思った。これまでは、なんだかちゃんと言わないと悪いような気がしていたけど、言っても仕方ないわ。時間の無駄よ。


私はその晩、せっせと手紙を書いた。父はどういう思惑でこの結婚を勧めてきたのかしら。


しかし、義母もせっせと手紙を書いたらしい。


それから、モートン様もせっせと手紙を書いたらしかった。




一か月後のある日、学園から戻ると、義母と義姉たちが、歯をむき出して嬉しそうに笑っていた。


「エレクトラ、いい知らせがあるのよ」


絶対何か悪い知らせだ。


義姉たちが嬉しそうなのが解せない。確か明日は、義姉たちは三度目の追試のはずなのに。

ぜひとも追試には受かってほしい。落第されたら、アンはとにかくステラは同じ学年になってしまう。


「お父様から手紙が来たわ。婚約を認めるって」


「まさか!」


私は真っ青になった。


「ほほほ。あなたにも手紙が来ているわ。婚約を認めるって内容よ」


封が切られていた。これは私宛ての手紙なのに、どうして開けるの? 真剣に腹が立った。


「なぜ、勝手に封を切るんです!」


私は金切り声で抗議した。


「まあ、怒るなんて」


義母は口元をすぼめた。


「あなたは未成年ですもの。当然じゃない?」


「私たちも読んだわ。いいお話だって、書いてあったわよ」


「エレクトラには、お似合いですって! あれくらいの子どもが」


アンとステラは口々に言った。

義姉たちには全く関係ない。好奇心で読んだんだわ。


私は手に持っていた本でアンを殴った。ついでにステラも殴った。


「「きゃあああ」」


たいして痛くもなさそうなのに、二人は大げさに悲鳴を上げた。びっくりしたせいもあるだろう。


「これは許せないわ! 暴力をふるうだなんて!」


つかつかと義母がやってきて、私をグーで殴ろうとした。私は本で防御した。


「通信の秘密を侵すからですわ!」


義母は立ち止まった。


「何を訳の分からないこと言ってるの!」


「だから、アンとステラは通信の秘密って言葉がわからなくて、追試に落ちました」


これは本当だ。一般常識の先生がこぼしていた。

私は、先日、先生に呼び出しを食らい、何の用事だろうとびくびくしながら先生の個室に出向いたら、アンとステラについて愚痴られたのだった。


「エレクトラ嬢、あなたに言うことじゃないのだけれどね。お母さまにそれとなくおっしゃっていただけない? このままだとあなたの親族のお二人、確実に落第するわ。一番簡単な一般常識を落としたのよ? 信じられる?」


一般常識と言うのは、通信の秘密などの勉強だ。つまり、他人宛ての手紙を開けてもいいですか? ○×で答えなさいって質問が並んでいる科目だ。絶対、開けて読んでいいって回答したんだろう。常識ないもの。


「落第生なんか出したくないのよ。おうちで、もう少し勉強するように伝えてくださらない?」


むろん、私はかしこまりましたと返事した。だって、私は優等生。それしか取り柄はないんだもの。

でも、モートン様の言う通り、私が義母や義姉たちに関わる必要はない。そんなことでエネルギーを使いたくないの。告げ口したと恨まれるに決まっているわ。言わなければトラブルを回避できるのよ。

そもそも私に言われるまでもなく、補習や追試が何を意味するのか自分で知っているでしょう。

それなのに私より先に帰っているだなんて、絶対、補習をサボっているわ。


「なんですって? 追試?」


義母の手が止まった。









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