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エレクトラの婚約者  作者: buchi


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第2話 超ハイクラスなお友達

「ああ、おかしい。なんなら一緒に登校なさいませんこと? 私のうちなら近いですわよ?」


マチルダ様は笑いの合間にそう言った。


確かにマチルダ様のタウンハウスは実は隣だった。公爵家のタウンハウスは、表通りに面し、ウチの家はその真裏の裏通りにあると言う背中合わせの位置関係だ。


「自分の家柄が格上だからと言って、そんな態度を取るだなんて、許せませんわ!」


アーネスティン様は怒って

鼻の頭に見えないくらいの皺を寄せた。

王弟殿下の娘なので、貴族の格としては最高であり、ブロンドの髪と整った目鼻立ちはいかにも高貴の人と言った感じで、一見冷たそうに見えるが、本当は情に厚い方だ。

婚約者のオーウェン様も同じく王家つながりの公爵家の御曹司だそうだ。


公爵令嬢のマチルダ様は豊かな栗毛の美人で、この方にも六歳くらい年上の婚約者が決まってらっしゃるそうだ。数か月前に婚約者の方のお父様の侯爵が亡くなられ、あとを継いだため、とてもお忙しく、最近はちょっと会えないのと寂しそうだった。マチルダ様の卒業を待って結婚されるそうだ。


「いいですわねえ」


婚約者のいない私はなんだかうらやましかった。


二人とも幸せそうだ。ローズマリー様も幼馴染の婚約者がいるらしい。伯爵家の御曹司だそうだ。


「でも、もうすぐ、ヘンリー様のお父様は侯爵になられるって聞きましたわ」


アーネスティン様が、ローズマリー様の婚約者のお父様についておっしゃった。

してみると、ウチの父の侯爵への陞爵(しょうしゃく)もあり得る話なのかしら。


「今は仕事が忙しくてなかなか会えないけれど、とてもお優しい方なのよ」


ローズマリー様は、黒髪のいかにもおとなしそうに見えるお人形さんのような方だ。

三人そろうと、まるで高貴、上品、おしとやかを陳列したような感じになる。


そこへ、しがない伯爵家の娘の私が混ざっている。


「羨ましいわ。アーネスティン様たちとご一緒だなんて」


羨ましがられている割には、嫌がらせなどはなかった。これも一応伯爵家の娘だからかしら?


近寄りがたい超ハイクラスな令嬢方といつも一緒にいるからか、これまで義姉たちは、学園では私に全く近づかなかった。



最初、私と姉妹になるのだと知った時、アンとステラはものすごく嫌そうな顔をした。


「伯爵家! あまり下賤な者と一緒になりたくありませんわ」


伯爵家って、下賤だったんですか?

それに、私と一緒になって遊んでいる超ハイクラスなお友達の令嬢方は、そんなこと一言も言いませんが!


「エレクトラ、王弟殿下のご令嬢や公爵令嬢とお友達なのですって?」


義母が聞きつけてきて、私に問いかけた。


「え? はい」


「その方たちに、アンとステラを紹介して、お友達になってもらいなさい」


私はびっくりした。


「なぜですか?」


アンもステラも、タイプが違うし、お友達になりたくなさそうだけど。


義母は見下げ果てたように私を見て、ため息をつくと、教え(さと)すように言った。


「あなたは頭が相当悪いのですね。学園へは社交を広めるために行っているのです。少しでも高位の貴族とお近づきにならなくてはいけません」


ああ、それで、侯爵家のローズマリー様を省いたわけなのか。


「誰ですか? その方。侯爵の令嬢とも知り合いなのですか?」


いかん。食いついてきた。説明を求められ、説明すると次の指令が下った。


「その方もご紹介なさい」


「どうなさるおつもりですか?」


アンとステラは、どーんとしたタイプである。プライドが高く、人に何かしてもらうことを当然だと考えている節がある。

侯爵家のご令嬢なので、それが当たり前なのかもしれないが、学園ではどうなんだろう。一応、学園では生徒は学業の前には平等ということになっているけど、無意識のうちに失礼な態度を取らないか心配になるわ。


「さっきから言っているでしょう。もちろん、お友達になるのです」


「ええと、学園に入って一年くらい経っています。お友達になるなら、もうなっていると思います」


「だから、あなたが紹介するのです」


わからんのかと言う剣幕だった。


そんなこと言われても、無理じゃないでしょうか。性格的に合わない気がするのですけれど。一応注意を試みた。


「紹介しても、お友達にならないと言われるかもしれませんよ」


「このバカ娘。そこを何とかするのがあなたの役目でしょう」


バカ娘とはなんだ。バカはそっちだ。

私にそんな役目があるわけないじゃないの。自分で何とかしたらどうなの。


「王弟殿下のご令嬢に、お嫌だと言われたら、私にはどうしようもありません」


「アンとステラは十分なしつけを受けて、礼儀正しい振る舞いのできる、素性正しい娘たちです。あなたのお友達のような、高貴の方々に大変ふさわしい娘たちです」


この前、アーネスティン様が家柄を鼻にかけるだなんて許せないとおっしゃっていたのですが、どうしましょう。

アーネスティン様を矯正しろとかいうつもりではないでしょうね。


「そして、あなたは身を引きなさい。身分が十分ではありませんから」


私は頭に血が上ってきた。私から友達を取り上げる気?


「友達って何なんですか!」


友達の定義が間違ってるわ!


義母は、突然の私の剣幕に驚いたようだったが、バカにものを教えるのは苦労するとつぶやいて、念入りに説明してくれた。


「友達になると言うことは、縁を結ぶと言うことです。つまり、出来るだけ有利な方とお知り合いになるのですよ。伯爵家の娘より、侯爵家の娘と縁を結ぶ方が有利だとお気づきいただくのです」


違うわよ!











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