第95話 美少女たちの水着コンテスト
女子たちは、さっそく水着選びに取り掛かる。
満月は、ここぞとばかり、キャーキャー騒いでいる。ダイナマイトボディをアピールするための水着。何着あっても足りないだろう。貰ったビキニ画像。確かにすごかった。
剣華も、明るく弾けている。こういう時は、普通の女の子なんだな。いや、基本的にいつも普通の女の子だけど。オレに暴力を振るわなけりゃ。
蘭鳳院は、物静かだけど、やっぱりニコニコしている。真剣に水着を選んでいる。蘭鳳院の真剣な表情、とにかく綺麗だな。うむ。
オレも中学時代は、キャッキャして水着を選んでいたものだけど。
3人の女子は、選んだ水着を持って、試着室へ。
満月が、ニヤリとして、
「勇希、覗いちゃだめだからね。おとなしく、外で待っててね」
カーテンを閉める。
なにを言ってやがる。この前、オレを試着室に引っ張り込んだくせに。実に危険な女だけど、今日は委員長がいるからな。安心だ。こうしてみると、委員長の威光と言うのも、ありがたいものだ。
三つの試着室の前でオレは待つ。
女友達と一緒に水着の買い物をしたことあるけど、男子として女子の水着買い物に付き合うなんてもちろん初めて。下着買うのには付き合わされたけど。
こういう時って男子はどんな心境なのかな。
やっぱりワクワクドキドキするのか。まぁ、そうだろうな。
でも、彼氏でもないのに、男子を水着買うのに付き合わせるものなのかな?
女子ども。あいつらは、オレのことを結局どう考えているんだろう?
「ねえ、私着替えた。準備オーケーよ」
左端の試着室から満月が顔だけ出す。
「みんな準備できた? せーの、で、一緒にカーテン開けようか」
中央の試着室から、剣華が、右端の試着室から、蘭鳳院が顔を出して、
「準備いいよ」
「オーケーよ」
満月が、
「じゃぁ、カーテン開けるよ。せーのっ」
3つのカーテンが開いた。
おおっ
さすがに、オレもちょっとドキドキする。
華やかな女子たちが、さらに彩られて。
3人とも、しっかりポーズを決めている。
満月は、元気いっぱいに。
剣華
剣華は、可愛く。
蘭鳳院は、クールに。
満月の水着。
デニムのビキニだ。なるほど。ダイナマイトボディ、セクシーというか、元気溌剌アピールだな。健康美そのもの。いや、セクシーにも見える……これは映えるな。ビーチで注目を集める満月の姿が目に浮かぶ。自信満々で、胸を突出している。春の海を夏に変えそうだ。満月のパワーなら、何が起きたっておかしくない! やばい女だ。
剣華の水着。
白地に赤を基調とした花柄のビキニ。布地は多めで、落ち着いてるけど可愛らしい感じ。委員長、私服はかわいい系が好きなんだな。剣華の体のライン見るの初めてだ。均斉が取れていて、胸もしっかり。チアで鍛えてるからだろう、腕や太ももはしっかりしている。剣華、ちょっと恥ずかしそうにしている。とても暴力委員長には見えない。暴力を振るわなければ、本当に可愛い女の子だな。暴力衝動ってのは一体どこから来るんだろう?
そして、蘭鳳院。
ターコイズブルーの、シンプルなビキニ。布地面積かなり小さい。露な肌。惜しげなく。ビキニの明るい青に、蘭鳳院の透き通るような白い肌が、本当にキラキラして見える。この前はコバルトブルーのチュニックだった。蘭鳳院は青が好きなんだな。白と青のコントラスト。
ほっそりして、痩せ気味な、研ぎ澄まされた体。スラッとした、美しいラインの手足。
やはりオレは、目を奪われてしまう。
レオタード姿を見たけど、ビキニはもちろん初めて。今までで1番いっぱいみえる肌。胸もあまり抑えつけてないから、ボリューム感がはっきりと。新体操の時とは違って、お澄まし顔で、クールにポーズを決めている。海辺でも別世界感全開にしそうだな。この子はなんでオレの目の前に現れたんだろう。いったいなんのために。この子はオレのなんなのだろうか。
ドキュッ
うぐぐ。
なんだろう。女子たちに圧倒されて。女子の水着くらい……別に、なんてことないはずなんだけど……
「ねぇねぇ、勇希、どう? 誰が1番?」
満月が言う。
「ええ……一番なんて、決められないよ。みんな可愛いから」
「もう、誰かに決めなきゃだめだからね!」
その後、女子たちは何度か着替えた。女子の水着選びが、試着1回で済むはずがない。
いろいろ見させられた。みんなおしゃれだな。オレの中学のときの水着選びとはやっぱりちょっと違うな。雰囲気が大人になっている。高校にまだ入学したばかりなのに。
女子たちの、華やかで、パワフルで、発散される春の彩りに、オレは……もうなんだか……こんな気分は初めて。はじめての体験。強烈すぎる。ずっと続いたら本当にフラフラになりそうだ。
「そろそろ、いいかな」
剣華がいう。
満月と、蘭鳳院もうなずく。
水着選び終了。水着ショー終了だ。
3人とも、セーラー服に着替えて出てくる。選んだ水着を手に。
オレは、ふうっと息を吐く。やっと終わりだ。何とか立っているぞ。ヒーローだからな。
「で、勇希」
満月が、目をランランとして、
「審判の時間よ。誰のが1番良かった?」
うぐ……
どうしよう。そんなの本当に決められないよ。女子目線でも。男子目線なんて……よくわからないし。
でも……ともかく、誰かに決めなきゃいけないんだ。
「あの、みんな、すごくよかったよ。お洒落で、可愛くて、かっこよくて。だから誰が1番なんて言う事じゃないんだけど。どうしてもって言うなら、そうだな」
オレを1番惹きつけたのは、もちろん、
お澄まし顔の子、どうしても目が離せない子、どうしても惹かれてしまう子、最初から答えは決まっていた。
「うーん……蘭鳳院……が良かったかな」
おおっ、と剣華満月が声を上げる。
剣華が笑顔で、
「よかったね、麗奈、やっぱり一文字君て、麗奈しか見えないみたいで」
満月は、ニヤリとして、
「勇希、これ水着のコンテストよ。わかってる? 中身のコンテストじゃないんだから。麗奈に執心だと、麗奈の水着も、好きになるのね」
い、いや……そういうわけじゃ……
「それとも」
満月が、オレの顔を覗き込む。
なんだ?
「勇希も、露出の多いビキニが良かったってこと? やっぱり男子よねえ。麗奈の肌、きれいだし」
お、おい、なに言ってるんだ……別にそういうことじゃ。確かに水着よりも、蘭鳳院の肌にオレは目を奪われていたんだけど。
蘭鳳院、ちょっとだけ、頬を染めている。
なんだろう。
オレは、蘭鳳院以外選べなかったんだ。どうしても。席が隣だから? そうなのかな。それとも、もっとなにか別の。




