第94 話 勇希の審判
渋谷のショッピングビル。
偶然出会った、蘭鳳院、満月、剣華、3人の女子。
女子たちに掴まったオレ。そのまま水着買うのに付き合わされる。
水着売り場は、4階にあった。本当になんでもある。
オレは、3人の長身女子に引っ張られていった。長身女子に囲まれると、なんだか。圧が強い……長身てだけじゃなくて、クラスの美少女トップスリー。頭がクラクラする。いったいどうなってるんだ。まあ、いいや。とにかく付き合えばいいんだろう。
なんで付き合わなきゃいけないのか、よくわからないけれど。とにかく、危機を乗り切ったことだし、女子どもの気の済むようにさせよう。
「まだ4月なのに、もう水着買うの?」
一応、訊いてみた。
「私たち、5月の連休に、沖縄旅行に行くの。それで、そのための水着買うの」
蘭鳳院が事もなげに答える。沖縄旅行? 5月の連休に? 3人で?
優雅なお嬢様たちだな。
で、なんでオレが、水着買うのに付き合わなきゃいけないんだ? お嬢様たちは、お嬢様たちで、好きなようにすればいいのに。ヒーローの関わることじゃないぞ。
「勇希とは、たまたま会ったの。びっくりしちゃった」
蘭鳳院は、剣華と満月に説明する。
「こんなところで、たまたま会うなんてすごいね」
満月がニヤリとする。
「席が隣だと、ホント、強い絆があるんだね」
強い絆か。オレはどこまでいっても、女子どもから逃れられぬ運命にあるらしい。
蘭鳳院、何考えてるんだろう。オレを水着買うのに付き合わせて。
「あ、ひょっとして」
満月が続ける。
「私と勇希が運命の星にあるのかな。私が勇希をここに引き寄せた? もう、胸がドキドキしちゃう」
そんなことねーよ。いいかげんにしろ。
水着売り場に着いた。
色鮮やかな水着が、いっぱいに。まだ4月の春だけど、すごい彩り。
3人の女子たちは、目を輝かせている。
お嬢さん方、どうぞ適当に選んでください。オレには関わり合いのないことなので。
女子の水着なんて……オレは当分買う事はないだろう。そういえば今日は、女子の買い物ができなかった。まあ、いいや。
蘭鳳院がいった。
「せっかく勇希に来てもらってるから、私たちの選んだ水着、誰のが1番か評価してもらうっていうのどう? 審判やってもらうの」
「あ、それ、いいね」
満月、早速食いついてくる。
「勇希に1番決めてもらおうよ。コンテストね。やっぱり男子の目線で見てもらうって大事よね。面白い。私、がんばる!」
コンテスト? 何言ってるんだ。
満月が早くも不穏な。
「へえ、じゃあ、私も頑張らなきゃ」
剣華がいう。にっこりとして。
「一文字君、どんな水着が好きなんだろう」
おい、なに言ってるんだ。委員長まで。妙な胸騒ぎ。別にお嬢さん方がどこに旅行行こうが、何を買おうがいいんだけど。
評価しろ? 誰の水着が1番か?
コンテスト?
やれやれ。これから3人の女子の水着買い物に付き合って……しかも、評価だって?
どうなるんだ? 蘭鳳院は何を考えてるんだ?
これから3人の水着ショーが始まるってことか。
春の水着ショー。
この前のこと、満月の試着室での下着のことを思い出す。かなり不吉な予感がする。が、
落ち着け。委員長がいるんだ。満月だってそんなに無茶なことしないだろう。風紀を守る点については、委員長剣華は頼りになる。
いいだろう。女子の水着ショー。そんなのなんでもないぜ堂々受けてやるぜ。
オレはヒーローだからな。女子にびびったりはせぬのだ。
硬派らしく……水着の審判をしてやるぜ。
女子ども、男の中の男をナメるなよ。
フッ、
女子の評価をするのは、男子だ。つまり、そういうことだ。
よく教えてやる。




