第78話 ヒーロー少女は隣の美少女のスカート丈が気になります
オレを見つめる蘭鳳院。
白い肌の輝き、イルミネーションの中、限界まで露出して、正面からいっぱいに。
蘭鳳院、オレを見て、驚いた風は無い。
予期していた?
ひょっとして、オレが蘭鳳院の後を追っているのに、気づいていた?
追っているのに気づいて、待ち構えていた?
「ねえ」
蘭鳳院がいった。
「勇希、なんで、私の事尾けてるの?」
やっぱり気づかれていた。
で。
尾けている? だって?
あっ、そうか。確かにそうとも言えるな。
蘭鳳院を追ってオレは……
でも、尾けてるなんて、そんな……
蘭鳳院、君がそんな肌丸出しの格好で、危ない目にあうといけないから、ちゃんと守ろうと、ただそれだけの気持ちで、君を追っていたんだよ。
陰ながらヒーローの務めを果たそうと。
でも。なんだか。蘭鳳院はわかってないようだ。
不審の目をオレに向けてくる。
なんてこった。オレ、挙動不審だった?
どうしよう。
なに、オレはヒーローだ。女の子に言い訳なんかしない。する必要もない。
ちゃんと話す。話せばいい。堂々と。ちょっとした行き違いや誤解が大きな問題になるんだ。
説明する。いいわけじゃない。何しろ、オレは正しいことをしてるんだ。
よし、言ってやるぞ。
「あの……蘭鳳院のスカートがあんまり短いもんで……気になっちゃって……」
「はあ」
蘭鳳院は目を丸くする。
驚いているようだ。
そうだな。
蘭鳳院は真の男は見たことがない。目の前の女の子を守るために立ち上がった男。そういうのを見たことがない。だから驚いてるんだ。
だが、わかっただろう。そういう男もいるんだよ。
よし、オレの心は伝わった。伝えた。
フッ、
蘭鳳院、男として言っておく。勘違いをするなよ。
別におまえだから守るとか、そういうこと言ってるんじゃないんだ。おまえはオレの隣の席のかまってちゃんに過ぎない。おまえは決して特別じゃない。オレにとって特別な存在だとか、思うなよ。
「じゃあ、ずっと不純なこと考えながら、私のことを尾け回してたってこと?」
蘭鳳院が言った。驚いた表情。
え?
なに言ってるの?
不純なこと?
いや、オレがそんなこと考えてないよ。考えるわけないじゃないか。だから、君のスカートが短すぎるってのは、それで周囲のみんなが不純なことを考えて、回り回って、蘭鳳院、おまえが危険な目にあうかもしれない。ちょっと、挑発しすぎている、そう思ったんだ。
いや、ちょっとじゃなくて、だいぶ挑発しすぎてるぞ。
おまえはそんな子だったのか。
だから、その、オレがおまえを守らなきゃいけない。
ヒーローの務め。オレはヒーローだからな。当然だろう。要するにそういうことだ。元はと言えば、おまえがそんなスカート履いてるのが……悪いんだぞ!
胸元も全部丸出しにしちゃって……学校出てすぐ……ここじゃ、学校の生徒だっていっぱいいるのに……いったい蘭鳳院、おまえは何をしようと……オレをあんまり振り回さないでくれ! いくらヒーローだって、いつも女子をみんな全部守ってあげるなんて、無理なんだぞ!
今日はオレがたまたまおまえを見つけたからよかったけど……
「やあ、ここにいたんだ」
声がした。
オレと蘭鳳院は、振り向く。
声の主。越野。
テニス王子登場。




