第77話 ヒーロー少女は隣の美少女を守ります
ショッピングモールの華やかな光の中。
蘭鳳院のファッション。大胆。大胆すぎる。オレを動揺させる服。コーデ。
スカート。明るい青。
それはいいんだけど。
短い。短すぎる。
学校の制服は膝丈だけど、これは膝上10センチ? いや、もっと?
ちょっと風で捲れて翻ったら、見えちゃうよ! 学校のスカートでも、十分短いけど。限界あるだろ。ショッピングモールの中だから、風は吹かないからって、危ないよ! ダメ!
そして、淡い紫色のトップス。胸の上から裸。首元も、肩も、鎖骨も、ワキも、露で……蘭鳳院のボリューム感いっぱいの胸のライン、しっかり見えて。
透き通るような白い肌が輝いている。眩しい。そんなに見せちゃっていいの? 全部丸出しで……やばいよね。大丈夫なの? 見せすぎだよ。
スカートの下、スラリとした脚。息を呑む綺麗なライン。曲線と直線とが。
素足に金色のかわいいサンダル。
オレはドギマギした。
大胆だな!
すごいな!
蘭鳳院って、こういう子だっけ?
雑踏の中、みんなの春の装い。だいぶ肌露出が目立つ。それでも、この蘭鳳院の装い、一番目立って肌露出が多い。
見せすぎ。絶対に見せすぎ。
まだ4月の夜なのに。寒くないの? そんなになんで露出しなくちゃいけないの。肌をみんなに見せて。見せなきゃいけないの?
注目を集めている。周囲がざわざわ。当然だけど。
蘭鳳院は、周囲を気にすることなく、お澄まし顔。
どうしたんだろう。いつもこんな格好なのか? まさか。
学校の帰り、わざわざ着替えて来たって事は。
これから、お出かけってことか。
どこへ行くんだろう。
誰と行くんだろう。
わざわざ、あんな派手な格好で。みんなの視線を浴びて。
オレの胸騒ぎ、強くなる。なにがどうなるんだろう。
目立っている。目立つよな。みんな振り向いている。蘭鳳院わかってるの?
どうしよう。
間違いがあったら……危ない目にあったら……何かあったら大変だ。守らなきゃいけない。オレは、ヒーローなのだ。
守る!
蘭鳳院を。この子を守る!
あの、別に蘭鳳院だからって、守るんじゃないんだぞ。
勘違いするなよ。
蘭鳳院は、ただオレと隣で机を並べているだけの、女子。別に、オレにとって何でも……ないんだ。気にすることなんてないんだ。
だけど。だけど、蘭鳳院があんなに危ないことをしてるんだ。もしオレがこのまま見過ごしたら。そして蘭鳳院に何かあったら、どうするんだ。
蘭鳳院のことは見ました。はい、確かに危ない格好したと思います。何かあるんじゃないかという気がしました。でもオレには関係ないのでそのまま見過ごしていきました。
そういうのか?
そう言ったら、みんなどう思うだろう。オレのことをヒーローだと誰が思うだろう?
男の坂道を登る、男の中の男。そんなこと言って目の前の女の子1人助けられない。そんなヒーローいるわけない。それは真の男じゃない、みんなに笑われる。馬鹿にされる。オレがヒーローだなんてもう誰も信じてくれない。
そうだ。絶対そうだ。だからヒーローってのは、こういう時、立たなきゃいけないんだ。
ヒーローってのは、どんなに向かい風が強くても前に進んで行かなきゃいけないんだ。何があっても。
今日は風が強いから家で寝てますとか、そういうのは許されないんだ。それがヒーローの宿命なんだよ。オレは何があろうと前に行く。蘭鳳院よ。おまえのためじゃない。目の前の女の子を守る。それがヒーローの宿命だからだ。そして倒れる時は必ず前に倒れる。後ろに下がる事は許されない。前に倒れて、つかむものは、土や泥だったとしても、それで笑っていける。それがヒーローなんだ。
オレは、蘭鳳院を守ると決めた。守らねばならない。
◇
こっそりと、後についていくことにする。
なぜこっそりなのか。なぜ声をかけないのかと言われても困るけど、なぜか、声をかけないほうがいいような気がした。蘭鳳院が何をしようとするのか、どこへ行こうとするのか、それを確かめたい。そうしたら……どうするか、また考えよう。
ショッピングモールの中を歩く蘭鳳院。オレは今度こそ見失わないように慎重に動く。
蘭鳳院が歩く。スカートが揺れる。うわ、もう見えそう。風も吹いてないのに。やっぱり短すぎるよ。あのスカートは。だめ! だめ! ああ、なんでオレが、他の女子のスカートのことで、こんなにヒヤヒヤしなきゃならんのだ。
蘭鳳院、フードコートの方へ、曲がる。
オレも後を追って、曲がろうと、
そうしたら、
正面から、
蘭鳳院。
出くわした。
腕組みして、オレを見据える蘭鳳院。
ひょっとして、オレに気づいて待ち構えていた?
いつもの美しいお澄まし顔。大胆すぎるコーデで。




