第73話 ビキニとユニフォーム
ドーム球場での野球観戦。オレと4人の華やか女子。
試合も大詰めとなった。点差がある。勝負の行方は見えている。ドーム球場内。そろそろみんな帰り支度を始めている。
あ、そうだ。オレは思い出した。
メアド。メールアドレス交換。オレはスマホを取り出す。
「奥菜さん、いつも勉強会ありがとう。連絡する時もあると思うので、メアド交換しよ」
奥菜、顔が真っ赤になる。
ん? 交換するの嫌なのかな、と思ったけど、
「喜んで!」
奥菜、スマホを取り出し、えくぼを見せる。
やっぱり、恥ずかしくて、メアド交換しようって言えなかったんだ。
オレも早く気づくべきだったな。オレたちはメアド交換する。
「勇希、最近女子に積極的ね」
満月が言う。身を乗り出して、オレに顔を寄せながら。かなりボリュームのある胸がオレの肩にくっつく。
おまえが積極的すぎるんだ。
「奥菜さんには、勉強教えてもらってるし、蘭鳳院とも、メアド交換してるから」
「へー、麗奈とも? 麗奈が男子とメアド交換するなんて初めてじゃないの?」
「越野君とも、交換してるよ」
蘭鳳院が言う。
また越野か。やっぱり越野なんだな。幼馴染。
「あー、そっか、越野がいたね」
満月は頷いて、スマホを取り出す。
「ねえ、勇希、私ともメアド交換しようよ」
うぐ……
みんなの前でメアド交換したのはまずかったかな。満月とメアド交換する理由は特に思い付かないけど、ここで断るわけにはいかない。結局、満月とメアド交換する。
「じゃあ、私も。一文字君。いいでしょ?」
剣華も。
委員長ともメアド交換する。委員長のメール。何かやらかしたら、すぐ叱責メールが来るのかしらん。剣華は顔が広く、交際範囲も広いので、みんなと気軽にメアド交換しているらしい。まぁ、女子のことで悩んだら、剣華にすぐ相談できると言えばできるんだ。委員長が頼もしいことは間違いない。
一気に女子のメアド増えたな。
一応、オレ、女子お断りなんだけど。
満月が、スマホをいじっている。
「挨拶メールに、画像をつけといたから。大事に取っておいてね」
画像?
開いてみる。
うおおっ
想像通りというか……満月のダイナマイトボディ。ビキニ姿。
青い空、白いビーチに、真っ赤なビキニの満月。
よく撮れている。会心の一枚。
うーむ、スゲーな。
健康溌剌……映えが……このままCMに使えそうだ。マムシエキスずっと飲んでるとこうなりますみたいな。
満月の胸は……Fカップ? いや、もっとか?
「それ、私ももらった。よく撮れてるよね」
横から、蘭鳳院が覗き込む。
こんなのみんなに配っているのか。ひょっとして男子にも?
剣華と奥菜も覗き込む。
「わー、すごいですね」
奥菜、目を丸くしている。満月が自分のビキニ画像を男子に配るのに、驚いてるんだ。
剣華は、
「ちょっと、妃奈子、一文字君には、刺激強すぎるんじゃないの? 純粋なんだから」
満月はニヤリとする。
「こんなの夏の海に行けばいくらでも見れるよ。それに、勇希は不純なこと考えないんだから、大丈夫」
「もう。あんまりこういうの人に配っていると、どこかに載せられて、知らない間にばらまかれたりしちゃうよ。気をつけなきゃダメ」
「わかってるよ。信頼できる人にしか送ってないから。勇希なら変なことしないから、絶対安心」
うーむ。
満月のことだ。自分の自慢のビキニ画像でも、自分でSNSに、上げることはできない。ダイナマイトボディビキニをSNSに……トーゼン校則違反。
それで、あちこちに配って、バラまいて、どこかに貼らせて、バズらせようとしてるんじゃないか。誰かに上げてもらって。炎上も肥やしにする算段。やりかねない。実に疑わしい。
ま、オレはしないけどな。勝手にやっててくれ!
「勇希の画像、ちょうだいよ」
満月に言われる。妙に期待してる目だ。
え?
お互いの画像の交換。まぁ、メアド交換したんだから、それもありだけど……
絶対に……オレの水着の画像なんて送らないぞ。当たり前だけど!
「オレのどういう画像がいいかな」
満月が目を輝かせる。さっそく食いついてくる。
「ねえねえ、この前、野球部の試合で大活躍したんでしょ?その時の画像ある? あったら、それが欲しいんだけど」
「え? ある事はあるけど」
この前の試合、野球部員が撮影しててくれて、貰っている。投球フォーム確認したりするから、撮影するのが基本なんだ。
「オレの、野球のユニフォーム姿でいいの」
「全然いい! 欲しい! 勇希の圧巻ユニフォーム姿送って!」
オレのユニフォーム姿。プレゼントしても別にいいだろう。満月だって、一応常識があるはずだ。おかしなことには、使うまい。
オレは、自分のユニフォーム姿から無難なものを、満月に送った。
「ありがとうー! 大感激! お礼に私の画像、何でも送るから、欲しいのがあったら、どんどん言ってね」
いや、もういいよ。男子に下着見せつけるくらいだ。なに送ってくるか、わかったものじゃない。
「あの」
ん? 奥菜だ。
奥菜が、恥ずかしそうに、
「私も、一文字君の、野球のユニフォーム画像もらえますか?」
どうしたんだろう。もちろん、奥菜ならいいけど。
「いいよ。満月に送ったのと同じのでいいよね」
オレは、奥菜に、画像を送る。
満月が言う。
「もう、勇希って、女子の気持ちわかってない。こういうの、みんな自分だけの画像が欲しいものなのよ」
うぐ……
いや、別に……そんな、特別な関係じゃないし。普通の友達だよね。女子と男子だからって。なんですぐにそうなるんだ?
「私は、これで嬉しいですよ」
奥菜が、かわいいえくぼを見せて言う。
「じゃぁ、代わりに私の画像も送りますね」
え?
奥菜もビキニ? 一瞬、オレは固まった。
「ボクシングのユニフォーム姿で良いですか?」
「もちろん」
あー、よかった。ビキニじゃなかった。当たり前だよな。
奥菜の画像。
ヘッドギアはせず、グローブをはめて、ファイティングポーズ。かわいい。
でも、すごい気迫闘志を感じる。
「すごくかっこいい」
オレは、素直に感想を言う。
奥菜、真っ赤になる。
「一文字君、私も画像交換していい」
剣華が、言ってきた。なるほど。女子と言うのは連鎖反応をすぐ引き起こすんだ。
「喜んで」
オレは、同じユニフォーム姿を送る。
「ありがと。じゃあ私は、チアのユニフォームでいいかな」
「チア?」
「うん。私は、チアリーディング部なの」
なんと。委員長は、チア部なんだ。ちょっと驚き。てっきり、空手部とかそういうのだと思ってた。
委員長剣華から送られてきた画像。
天輦学園高校チア部のユニフォーム姿。
青と白の、ノースリーブのシャツと、ミニスカート。オレンジのポンポンを、持ってびしっとポーズを決めている。
可愛い! 笑顔だ。すごくいい!
うーむ。
可愛い。それだけじゃなくて、なんだか気品を感じる。威光というのか。
こういう画像も、あちこちに配ってるのかしらん。
「剣華さん……かわいい」
オレは、ドギマギしていた。
「ありがとう」
剣華は、にっこりした。ちょっと恥ずかしそうに見える。
「一文字くんの勉強も、しっかり応援するからね」
そうだ。ついつい忘れそうになるけど、オレは勉強一筋で、部活やってない設定だったんだ。なんとも恥ずかしい。
3人の女子と、メアド画像を交換して、
残ったのは、蘭鳳院。
オレの隣のお澄まし顔の蘭鳳院。




