第66話 隣の美少女を守りたい
蘭鳳院を、野球に連れて行く。
日本のプロ野球の、公式戦でいいんだ。
この前オレが野球部の練習試合で大活躍したので、蘭鳳院も野球に興味を持った。
いい流れだ。ぜひ野球観戦に連れて行ってやろう。
一応、元野球部で野球界の端くれであるオレの務めだ。
蘭鳳院。
オレは、夜、ベッドで、ずっと考えていた。
なんだか体が火照る。頭もずっと熱く。
どうしたんだろう。
そうだ。今日テニスして。
テニス。
そうだ、あの、テニス王子。
越野。
イケメンで、長身、白い歯を見せて感じよかったな。
コートの上では、猛獣、ライオンになる。
あれが、蘭鳳院の、幼馴染なんだ。
幼馴染。
一緒に風呂にも入ったとか言う。
いや!
そんなの、昔の子供の時の話だし。
蘭鳳院の、子供時分。
オレ、全然知らないよな。当たり前だけど。
机を並べてから、1ヵ月も経っていない。
何も知らない。
越野。
小さい頃から、蘭鳳院をよく知っている。
別荘地。
何してたんだろう。まぁ、子供だからな。
他愛無いことで、キャッキャして、それだけ……
それだけ……なのかな。
一緒に風呂にも入ってるし。
風呂。
それは、ほんの小さい時のことで。
それだけ……じゃなかったら?
小学生の 時だけじゃなく、中学生になっても、あいつら一緒にいたのかな。
中学生になったも、別荘地で一緒に?
大丈夫かな。別荘地… …人目ないところもいっぱいありそうだし。なにか、してないかな。なにやってたんだろう。
大人はちゃんと、子供の管理してたのかな……
ズキュッ!
なんだ? 動悸が。
おかしい。こんなの。
オレが気にする事はないんだ。
だいたい……
満月が言っていたよな。
蘭鳳院は、ずっと、男を振りまくっていたと。蘭鳳院は、男子お断りと評判なんだ
彼氏とかいなかったんだ。
満月だって、蘭鳳院の幼馴染だ。
間違いない。
すると、越野、テニス王子は、結局、ずっと彼氏になれなかったんだ。
幼馴染ってだけで。
そうだ。
うん。気にすることはないんだ。
え?
気にするって!
べ、別に、蘭鳳院の男関係とか、オレに何の関係もないんだけど!
ハハハ。
蘭鳳院に、男友達や、男の幼馴染の1人や2人いたって、いいじゃないか。最初から、オレに何の関係もないんだ。
お澄ましの蘭鳳院。
彼氏なんで当分……
でも。
蘭鳳院だって、高一15歳だ。
もう子供じゃないし。
ちょうど……その……
なにが起きても。
なにか起きるかも。
蘭鳳院、今は新体操に打ち込んでいるアスリート。
新体操をする蘭鳳院、本当に真剣だ。
で、もし、
いきなり、心を揺さぶられたら。
心を奪われたら。
そんなことが起きたら。
ちょっとしたことで、火がつく。
今までは、幼馴染だったのが急に。
テニス王子が言う、
「幼馴染は、もう卒業です。麗奈、あなたを、1人の女性としてみたい」
蘭鳳院が、
「私も。とっくに幼馴染は卒業してたの!」
うわわわわわわ!
蘭鳳院が、いきなり男に心を奪われたら!
蘭鳳院は、なんだかんだ、新体操一筋のアスリートバカ。新体操以外何も知らない。お澄ましで、生意気な顔してるけど。それが、急に、男に持って行かれたら。
男に心を奪われたら?
オレは、奪われたことないけど……もし、蘭鳳院が奪われたら……
うおおおっ!
持っていかれる。
全部持っていかれる。男に!
テニス王子だってアスリートバカだ。
アスリートってのは、火がつくと、どうなるか。
いきなり、体からとか!
それ、まだ早すぎるよ!
高一15だよね!
蘭鳳院と越野が……
(一文字勇希は、最近覚えた性知識で頭の中がいっぱいだったのである)
不純なんてしちゃだめ!
そうだ。
この前の保健体育の授業で、蘭鳳院がやけに詳しく……女子と男子の……ことをオレに教えてくれたのは、蘭鳳院が、……したいと思って、必死に調べたからなんじゃないのか。
ダメ!
絶対ダメ
オレが許さん!
テニス王子が背が高くて筋骨隆々すっきりした性格の良いイケメンだったとしても!
けしからん! けしからん!
無理!
なにがあろうと!
まだ15歳、いきなり火がついて、燃え上がって、そのまま “まちがい” をしちゃったら……
ならぬ。
オレが止める。オレが絶対、蘭鳳院を守る!
オレと蘭鳳院は、ただ、隣で机を並べているだけの関係。それだけだ。
でも、オレは、男の坂道を上るヒーロー。
たとえ隣で机を並べているだけの女子だって、やっぱり守らねばならない。女子に危険が迫っていたら、女子がピンチになっていたら、何があろうと迷わず助ける。
それがヒーローなんだ。
それが男だ。
男の中の男の務めだ。
最後の硬派たる者の宿命だ。
オレは、蘭鳳院を守らねばならない。
ベッドの上で、オレは枕をぎゅうっと抱きしめる。
男の修行ももっとしなくちゃな。
オレは、もっともっと強くならねばならない。
ヒーローだからだ。
男だからだ。
なにがあろうと、女子を守る力を持たねばならぬ。




