第62話 試合の行方
最初のゲーム、とられた。
ううむ。
オレは、しっかりボールが見えてるし、追えている。ボールに追いつけている。
オレのもともとの動体視力、瞬発力、ダッシュ力にヒーローパワーが上乗せされてるんだ。
余裕を持って、打てている。
けど……
やっぱり、打つ技術がいまいちだ。打ち返しても、コートを外したり、相手にラッキーボールを渡しちゃったりしている。
パワーやスピードがアップしても、技術は上がらないみたい。
野球はずっとやってたから、もともとの技術に、パワースピードが上乗せされて、かなりすごいことになった。
テニスだと。
オレはコートを圧倒的な力で走り回って、身体能力を見せつけているんだけど……
すぐに勝ちには結びつかない。
なかなか難しいな。
◇
2ゲーム目。
厳しいボールが、オレ目がけて来る。
え?
相手陣、蘭鳳院と越野、オレを狙っている?
オレが穴?
やってくれるな。このヒーローに向かって。
テニス部の越野や満月はもちろん、蘭鳳院も、テニスの技術はあるようだ。
オレがテニスの技術が落ちるのは、認めよう。
だからといって、ターゲット? このままで終わらねえぜ。
フッ、
これからだぞ。オレは、相手陣の、蘭鳳院をにらむ。
超然としたお澄まし顔。
1ゲームとったからって余裕だな。
勝ったつもりか。だが、勝負はこれからだ。これからは、そうはいかないぞ。
オレの実力を見せてやる。ヒーローの力を。
それに蘭鳳院。新体操のために体を削りすぎている。スタミナは無いはずだ。長くなれば、ヘロヘロになるはず。ボールに追いつくことができなくなるだろう。
こっちはずっと体を鍛えている。スタミナには自信があるからな。
蘭鳳院が走れなくなれば、後はテニス王子だけ。オレと満月の2対1で追い詰めてやる。
見てろよ。
オレはビュウビュウとラケットを振る。
「勇希、落ち着いて、大丈夫だからね」
隣の満月が、大声を出す。
頬を紅潮させている。1ゲーム取られてカッカしてるな。
しかし、スポーツで女子に激励されるとは。
「まだまだこれからだからねっ!!」
満月もラケットを、ビュンビュン振り回す。
うむ。
決めに行くとしよう。
◇
結局。
オレたちは、負けた。
うーむ。なんというか……
体育の授業、午前中いっぱい使った特別授業だけど、なにしろ1年生全員でトーナメントやるから、1試合に、そんなに時間を使うことができない。ということで、2ゲーム先取したペアが勝ち、と言うショートゲームルールだった。
オレと満月は、2ゲーム連続でとられて、終了となった。
蘭鳳院・越野ペアは、越野がバックで、ボール全般をさばき、蘭鳳院が、前で、狙えるボールを打つという戦略だった。
あまり、蘭鳳院を走らせることができなかった。
蘭鳳院、最後までキレのあるプレイをしていた。息も上がっていない。
オレと満月は、コートを縦横無尽に走りまわって、ボールを打ちまくったが、及ばなかった。運動量じゃ、間違いなく勝っていた。オレのヒーローダッシュ、相手を圧倒した。満月の、ダイナミックで、女豹みたいなプレイも迫力満点だった。
でも技術。オレにボールをさばく技術がないのが痛かった。
それにーー
テニス王子越野の強さ、気迫、桁違いだった。想像以上だ。
王子1人でも、オレと満月、2人で勝てたかどうか。
やはり、本職と言うべきか。本物のテニスエースだな。
オレはスポーツやってたしアスリートのことは尊敬している。ヒーローチートで身体能力アップしても、他の競技で強者に勝つのは難しいみたい。
試合後、オレたち4人は、握手を交わした。
満月は悔しがっていた。
「越野、またやろうね。次は絶対勝つからねっ!」
テニス王子は優雅な笑顔。
「また、よろしくお願いします。一文字君も。対戦できてよかった。いや、ほんとすごい動きだね。驚いたよ。想像以上で。本物のスポーツエリートだね。1年生じゃ一番じゃないかな」
そう言いながら、王子、全然息が上がっていない。
さすがだな。
こいつも間違いなくスポーツエリートだ。
オレたちに勝った後、蘭鳳院と越野は、ハイタッチして笑顔を交わしている。
蘭鳳院の、すごく自然でいい笑顔。知り合いなんだな。ちょっと気になる。
テニス王子越野と蘭鳳院の関係。
◇
トーナメント戦と言うのは、1回戦負けすると、ヒマなものである。
オレは、満月と、空いてるコートでテニスをする。
満月は、まだまだやり足りない。やればやるほどカッカしてくる。オレもそうだけど。
「勇希、テニスの筋いいよ。もっとやればグングン伸びるよ」
うーむ。オレはヒーローの宿命に専念するから。
今日は、勝てなかっけど、オレのヒーローパワーを見せつけることができた。これはこれでよしとしよう。




