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第264話 イソギンチャク



 床ドンだ!


 オレは音楽室の床に大の字になって倒れて。


 上からまたがる蘭鳳院麗奈(らんほういん りな)


 顔と顔。もう10センチの距離。


 また、いきなり……まだオレたち、壁ドン!も経験してないのに。手順だルールだキモチだ全て素っ飛ばして。これが現世(うつしよ)ってやつ。幽世(かくりょ)魔物(モンスター)に話したら、連中も魂消るだろう。


 えーと、その。何があったんだ?


 オレはバレエのリフトで麗奈(りな)を持ち上げた。しっかりと。うん。ここまでは良かった。オレは男としてやるべきことをやった。で、麗奈(りな)のスカートが捲れて……履いてなくて……見えちゃって……それでオレは、思わずバランス崩してもつれて倒れてーー


 「大丈夫?」


 麗奈(りな)が言った。


 大丈夫じゃない、のは見りゃわかるだろう。


 「勇希(ユウキ)、倒れた時、ゴツン、て音したよ。頭打ったんじゃない?」


 うん。そうか。頭を打った。そうなんだろうな。頭を打ったことも忘れるくらい強く打っちまったんだ。それできっと、オレが目を回している間に、地球が一回転したんだ。この感覚。そうに違いない。


 麗奈(りな)、まだ10センチの距離を保ったまま。オレはもうこれ以上後ろに下がれない。というか、体がピクリとも動かない。完全に麻痺している。頭を打った効果か?


 隣の美少女、いや、目の前の美少女、なんで顔をくっつけそうにしたままなんだ? ひょっとしてやっぱり、麗奈(りな)も頭を打ったのか?


 麗奈(りな)は微動だにしない。お澄まし顔。もつれて倒れたから、髪が少し乱れてるけど、息は乱れていない。この子はいったいーー


 そうだ。なんでこうなったのかって言うと。


 「パンツ」


 オレはやっとそれだけ言った。麗奈(りな)がスパッツ履いてるとか言って、履いてなかった。それでパンツが……オレは悪くない。絶対に。この前も麗奈(りな)の着替え下着姿見ちゃったけど、覗いたのは……いや、覗いたわけじゃない!あれはあれで仕方なくて。あの時は距離があったけど、今回は、思いっきり目の前ではっきりと見ちゃって……


 麗奈(りな)のパンツ。くっきりとオレの目に焼きついている。


 忘れようがない。


 なんだあの図柄は。


 この前は高級そうで気品のある金百合柄だったけど。


 今回の麗奈(りな)のパンツ。明るいブルーの地に衝撃な図柄が。そうだ。オレははっきり見て、だから絶対間違いないんだけど、


 

 イソギンチャク!



 図柄。イソギンチャクだった。青地にピンクのイソギンチャク。見間違いじゃない。この図柄って水族館? 何が言いたいの? いきなり目の前にイソギンチャクが現れたから、オレはもうパニックになったんだ。パンツってだけでも強烈なのに。


 イソギンチャクパンツ。何を考えてるんだ。男子に見せていいってもんじゃないだろ。さすがに限界が。女子の間でも……最近はこういうのが流行ってるのか? オレが女子を辞めてからまだそんなに経ってないんだけど。オレはさすがにこういう柄のパンツなんて履いたことないし、そもそも売ってるの見たことない。オレの女子のパンツの図柄といえば、猫ちゃんとか、リスちゃんとか、そういう可愛いのだけだ。それが当然だろう。高校生になったからって急になんでイソギンチャクなんだ? それが学園生活なのか?


 「あの、麗奈(りな)


 オレは気力を振り絞って、


 「履いてないじゃない」


 オレは思いっきり麗奈(りな)のパンツを見た。麗奈(りな)が恥ずかしがるとか、そんなことはどうでもいい。この責任の所在をとにかくはっきりさせるんだ。


 「え?」


 10センチの距離の麗奈(りな)、不思議そうな顔をする。とぼけるな。


 「スパッツだよ。スパッツ履いてるって言ってたじゃない。でも、履いてなかったよ」


 「あ」


 麗奈(りな)は、今気づいたと言うように。


 「そっか。いつも履いてるから、今日も履いてると思って。履くの忘れてたんだ。いつもすごく短いの履いてるから、履いてなくても、わからなくって」


 履いてるつもりが履いてなかっただと?


 嘘だ。絶対に。お澄まし顔のお嬢様。すべてに完璧な君がそんなところをうっかりするなんてありえない。


 「見たの?」


 麗奈(りな)、さらにオレを覗き込むように、顔を近づける。うわ、もう限界。なんでここで近づけてくるの? オレを圧迫してどうしたいの?


 姫が王子に迫る。これが最近の流行なのか?


 オレはガタガタとなって、何も言えない。


 「見たんだ。ちょっと恥ずかしいかな」


 麗奈(りな)、表情を変えずに言う。


 見られて恥ずかしい? 何を言うか。オレが見たんじゃなくて……お前が見せたんだろう。それにこの前は、見て欲しかったとか言ってたし。金百合とイソギンチャク。真逆の自分を見て欲しいってこと?


 「でも、見られたのが勇希(ユウキ)で良かったな。だって、どんな時でも、勇希(ユウキ)って不純考えないし感じないんでしょ?」


 麗奈(りな)、ふっと微笑む。


 うむ。誓って不純なんて考えてないし感じてない。それどころじゃなくて。


 「あ、ひょっとして」


 麗奈(りな)、また真顔に戻る。



 「初めての不純、感じた?」



 うぐ……


 うぐぐ……



 なんだろうな。


 一撃。


 魔族だ魔物(モンスター)との戦いをくぐり抜けたオレの精気(エナジー)を根こそぎ奪いダウンさせるような。


 麗奈(りな)


 ねえ、君っていったいーー


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