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第262話 少女がスカートでダンスしたらどうなる? ヒーローは心配



 昼休みの音楽室。


 オレと隣の美少女蘭鳳院麗奈(らんほういん りな)の2人きり。


 手を取り合って。

 

 いよいよ2人ダンス(パ・ド・ドゥ)ーー


 あ。


 これはまずい。


 オレは気づいた。


 学園の中だから、当然、オレは学ラン、麗奈(りな)はセーラー服。白地ににライトブルーの襟、赤いスカーフ。そして、ライトブルーの膝丈スカート。


 麗奈(りな)のスカートの下は、透き通るような白い肌の生足で。


 これは……ダメだ。これでダンスしたら、当然、スカートが捲れて……


 「あの」


 オレは言った。


 「だめだよ」


 「だめ?」


 麗奈(りな)が訝しがる。キョトンとしている。お前、わからないのか。女子高生だよね。いつも制服スカートで過ごしてるんだろ?気づけよ。


 「あの、だから、そのスカートで、ダンスなんかしたら……その……見えちゃうよ」


 言ってるオレが真っ赤になる。


 「ああ」

 

 麗奈(りな)、ふふ、と笑う。


 「そんなこと気にしてるんだ。勇希(ユウキ)って純情ね。ねぇ、前に言ったじゃない。短いスカートのときには、ちゃんと下にスパッツ履いてるから」


 「そう……なんだ」


 オレは中学の時、当然女子で膝下スカートだったけど、スパッツ履いた事はなかったな。授業終わってから、ユニフォームに着替えて、暴れまくっていた。麗奈(りな)は、スカートで暴れてもいいように、スパッツ履いてるんだ。なら、無敵だな。


 よし、いいだろ。


 「わかったよ。じゃぁ、始めよう」


 ダンス。もちろん、音楽はかからない。音楽なしでやるのって微妙だけど。音楽なしのダンス。軽い練習ってとこか。まぁそれでいいだろ。ただちょっと初めて、2人でダンスしてみるだけだ。そういうこと。何も難しく考える事は無い。麗奈(りな)はスパッツだってちゃんと履いてるんだし。


 オレは左手で麗奈(りな)の右手を軽く握って持ち上げ、オレの右手を麗奈(りな)の腰に廻す。麗奈(りな)の体温が伝わる。ビリビリくる。


 うぐう。


 でも、こんなの何でもないぞ!


 麗奈(りな)、じっとオレを見ている。別世界感。今日は、オレを別世界に引き込もうとしている? どこか遠くの星へ連れて行く? いや、そんなことさせないぞ。ダンスの主役は男のオレ。そう。オレはヒーロー。いつも主役じゃなきゃ。なんだか最近そうじゃない場面が多いけど。そろそろ主役奪還といこうじゃないか。


 「勇希(ユウキ)、用意はいい? 始めるよ」


 「うん、いいよ」


 「じゃ、1、2、3(アン、ドゥ、トロウ)


 麗奈(りな)の声で、ダンスが始まった。



 2人だけの空間。2人だけの時間。しっかり見つめあって。うむ。これだ。ネコミミの時はぴょんぴょん跳ねまわって、なんだか視線もうまく合わなくて。しかし、今は。


 しっかり2人で。


 手を取り合って。ちゃんと動いて、回って、ステップを踏んで。


 オレ、こういうのちゃんとやるの、10年ぶり位だ。


 でも、ついていけている。オレのヒーローパワー発動……


 それだけじゃなくて。


 麗奈(りな)がオレをしっかりリードしてくれている。


 無理なくオレのレベルに合わせて。優雅な動き。完全に麗奈(りな)のペースだけど。すごく……心地よい。


 「いいよ、勇希(ユウキ)、できるじゃない。じゃ、私がバランスするから、私の手を取って回転させて」


 麗奈(りな)、つま先立ちになり、もう一方の足を後ろに上げる。



 うぐ……



 麗奈(りな)のバランス。手足を伸ばして。その角度、ピンと漲る力、芸術的。オレがゆっくりと麗奈(りな)を一回転させる。


 バレエの基本だけど、学園セーラー服でやると。なんだか……


 いや、すごく見たいと、さっき思ってたんだけど、いざ見ると、心臓が……大丈夫かな、オレ。


 なんでいつも予告なしにこうなるんだろう。もっとこういうのって、事前にカレンダーで日程確かめて、チケット買って、心の準備して、気持ちを高めて、そして……


 でも、今、目の前に、完璧なポーズの麗奈(りな)。それも学園の制服で。その目線は、ただオレ1人に向けられている。舞台(ステージ)じゃ絶対に見れない……


 麗奈(りな)、足を後ろに上げているけど、角度的に、スカートの中は見えない。スパッツちゃんと履いてるんだよね? 廊下を通った人が、見てるかもしれないし。


 余計な心配をしちゃう。


 オレ、のぼせ上がっちゃっている。本当にどこかに惹き込まれそうで。麗奈(りな)の世界にオレが支配される?


 落ち着け!


 まだまだ、これから!


 ヒーローの見せ場!



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