第236話 林間学校へ出発!
5月も中旬となった。
新学期の学園も落ち着き、クラスも結構まとまってきたように思う。
オレは……結構目立つ行動を起こしちゃっている……
「勇希はそういうやつなんだ」と、いう目で見られているような……
まぁ、オレは周囲の雑音などものともしない。ひたすらヒーローの道。男の坂道を上る鍛錬だ。
クラスメイト女子の裸だ、下着姿だ、そんなのが頭にまとわりついてるけど…… ええい! 女子なんかに目もくれないぞ!
「今日はいよいよお待ちかね、林間学校。皆の心のような晴天の下、1泊2日旅行、存分に楽しみたまえ。お互いの絆を深め、自分を見つめ直す機会にしてほしい」
学園の1年生全員が、校庭に集合していた。
しゃべってるのは、校長の城良太郎。
林間学校か。なんだかんだ、みんなウキウキしている。お互いの絆を深める……オレはなんだかんだ不必要にクラスの女子たちと関係を深めちゃってる。少し距離をおきたいんだけど。
ともあれ。
クラスごとにバス分乗して、出発!
この林間学校。なんと校長もついてくると言う。高校でこういうのはアリなのか?
オレのクラス、みんな震え上がった。鎌倉の時のこと、忘れられるわけがない。また、あの校長の暴走運転? 今度こそ死ぬぞ。
幸い。オレのクラスのバスは、校長の運転じゃなかった。普通の運転手さんである。もちろん安全運転。暴走もぶっとびもない。みんなワイワイキャッキャしながらバス旅行を楽しんでいた。
校長は他のクラスのバスの運転をしていたようだ。校長運転バスから降りてきた生徒たち、みんな青ざめてガタガタと震えていた。ま、死ななかっただけ、よかったね。
今回の林間学校。
北関東にある、由緒ある山寺、だそうだ。なんだか、寺に縁があるな。鎌倉に続いて。
昔は坊さんがたくさんいて栄えていた寺だけど、今は坊さんも少ないので、広大な寺の建物を、学生や社会人の研修施設、実質観光客に解放しているんだという。電気ガス水道もバッチリ、かなり快適な山寺宿泊体験ができるという話である。鎌倉の廃寺と違って、オープンなレジャー観光寺だ。結構人気の観光スポットだけど、寺の住職が、校長と昵懇の仲なので、うちの学園の生徒は格安で利用できるんだと言う。
しかし、一泊旅行。宿泊である。
もちろん、オレは、男子に混じって宿泊することになる。
心配なので、行く前に、校長に、訊いてみた。
「あの、オレ、林間学校は、行かないほうがいいと思うんですけど」
「なぜだ」
「だって、男子に混じって泊まるんでしょ?キャンプのテントの中で、一晩男子たちと一緒に寝るって、女子バレの危険が大きすぎますよ。それじゃあ、心配で、ろくに眠れないし。それに、風呂だって、みんなと一緒に入れないし」
「心配いらん」
校長の銀縁眼鏡が、キラリと光る。
「宿泊はテントではない。寺には広い僧坊がたくさんがある。そこでクラスごとに、宿泊する。確かに、男子グループと一緒だが、かなり広くてスペースがあるから。隅っこで寝てればそれでよい。それに風呂は、大浴場だけでなく、個室シャワーもある。どうだ、至れり尽くせりだろう」
「でも……眠っているときに、男子がふざけてちょっかいししかけてきて、それでうっかり女子バレとか、やっぱり危ないですよ」
「君は、ヒーローになるのだ」
校長、言葉に力を込める。
「異世界幽世でだって、眠らにゃならんことがあるだろう。寝込みを襲われたらどうするのだ。常に君は敵に取り囲まれている。そう肝に銘じねばならん。常在戦場だ。そのための鍛錬、これは試練だ。これしき乗り越えられなくてどうする? それに、この林間学校には、私もついていく。何かあったら、すぐ私に相談しなさい。頼りにしていいぞ」
うーん。この校長ってのが、全然頼りににならないんだけどな。何かあったら、すぐ逃げるんだろうし。しかし、まぁ、確かにクラスの男子に怯えるなんて、ヒーローらしくない。よし、堂々と男子として、この林間学校乗り越えてやろうじゃないか。クラスメイトが怖くて、ヒーローやってられるか!
オレたちは、山寺に着いた。なかなか立派なお寺だ。寺院風の観光旅館みたいな。




