表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/274

第200話 異世界戦争の果てに



 剣華(けんばな)麗奈(りな)満月(みつき)の3人の女子。


 やっと、電気のあるところ、武道場へ。


 ほっとする3人。


 剣華(けんばな)、紫頭巾の装束を脱いで顔を赤らめる。


 「 優希(ゆき)、何してたの?」


 満月(みつき)、目を丸くする。


 「えへへ。ちょっと頑張りすぎちゃった。助けてくれてありがとう」


 剣華(けんばな)、頬を上気させ、にっこりして、2人の親友に礼を言う。


 そして説明する。なんだか気になったので茶室の様子を見に行ったこと、そしたら包帯男と出くわしたこと、武道場から木刀と紫頭巾装束を持ち出して包帯男と戦ったこと。木刀を奪られて危なかったところ、2人に助けてもらったこと。


 麗奈(りな)満月(みつき)、唖然とする。


 「そんなことしちゃダメ! もう、 優希(ゆき)。普段は優等生なのに、いざとなるとほんとに無鉄砲なんだから。こんな危ないこと、二度としないでね」


 満月(みつき)がいう。


 「いつも助けが来るとは、限らないんだからね」


 と、麗奈(りな)


 「うん。心配してくれてありがとう。2人には感謝している。これからは、気をつけるよ」


 剣華優希(けんばな ゆき)、正義の炎に身を焦がし猪突猛進したクラス委員長。包帯男は取り逃がしたけど、思いっきり怒りを爆発させたことに不思議と悔いはなかった。


 満月(みつき)、ニヤリとして、剣華(けんばな)の肩を抱く。これは反省してないな、と思う。 優希(ゆき)は、必ず自分の信じる道をーー


 「でも、 優希(ゆき)、友達の事、学園のみんなの事、本当に守りたかったんだよね。そういうところ、好き。これからは1人で無茶しないで絶対私たちにも声かけてね」


 剣華(けんばな)、ますます顔を赤くして、

 

 「ありがとう、頼りにしてるよ」


 麗奈(りな)も、優しく微笑んで剣華(けんばな)を見つめていた。なぜあの暗い中で、紫頭巾装束が、 優希(ゆき)だと気づいたのか。それはわからない。本当にそう感じた。絶対に 優希(ゆき)だと。何が何でも、助けなくちゃと。ただ、それだけだった。親友同士。強い絆。そういうものだろうか。


 「そうだ。緊急メールしなきゃ。学園に伝えるからね」


 麗奈(りな)は、スマホを取り出す。


 「そういえば 優希(ゆき)、天魔って叫んでなかった? 天魔って、なんなの?」


 剣華(けんばな)、気恥ずかしそうに、


 「あ、聞こえてたんだ。うーんとね。女子の敵って言う意味で、天魔って叫んじゃった。ほら、この前の鎌倉の実習で、仏教について習ったから」


 麗奈(りな)は考える。


 天魔。その正体は、何者なんだろう。



 ◇



 朝。ホームルーム前。ガヤガヤする教室の中。一文字勇希(いちもんじ ユウキ)は、グターとなって机に突っ伏していた。


 昨日のこと。激しい戦闘(バトル)の応酬。


 ティオレの治癒(ヒーリング)は、完璧だ。体はピンピンしている。けど、さすがに、頭はぼーっとしている。レベルアップ、ステータスアップ、そんな言葉が、谺する。うん。オレはよくやったぞ。


 でもーー


 「勇希(ユウキ)、ちょっと」


 あ。


 隣の美少女。蘭鳳院麗奈(らんほういん りな)


 「なに?」

 

 「なにじゃなくて!」


 麗奈(りな)は、語気を強める。


 「ペアワーク! 課題、ちゃんとやってきたの!」


 あ、なんかこの前言ってたな。オレはもちろん、とっくに忘れてて。


 「……また、それ? なんだっけ」


 「やってないの?」


 麗奈(りな)、微かに震えている。


 「……うーんと。その……」

 

 麗奈(りな)の剣幕に、オレはしどろもどろ。


 「なに?」


 オレを見つめる麗奈(りな)の瞳。本当に吸い込まれそうな。あぁ、なんでこんな美少女が日々オレに意地悪するんだろう。


 もう。


 オレはヒーローだ。少しは言ってやろう。


 「あのさぁ、オレだって少しはやってるんだぜ」


 「課題やったってこと?」


 麗奈(りな)、オレを問い詰める。


 「そうじゃなくて……その、いろいろ戦ってるんだ」


 もういいや。言ってやろう。信じようが信じまいが。


 「戦ってる?」


 麗奈(りな)、怪訝な顔をする。


 オレは構わず、

 

 「うん。昨日の事なんだけどさ。オレは魔界の戦争に遭遇したんだ。まず、木の眷属と、風の眷属が戦っていて、そこでオレは木の眷属に味方して、風の眷属と戦って勝ったんだけど、負傷して包帯ぐるぐる巻きの膏薬ペタペタにされた。それで終わったと思ったんだけど、今度は、天魔族と紫頭巾族の戦いに巻き込まれたんだ。で、オレは紫頭巾と戦う羽目になったんだけど、こいつがなかなかの強敵で。でもオレはやつの木刀を見事奪ってやった。そこで敵に加勢が来たから、退却したけどな。こんなふうに、オレは、日々戦ってるんだ。麗奈(りな)、お前にはわからないだろうし、信じてくれなくてもかまわないけどな」


 「え?」


 麗奈(りな)は、オレを、じーっと見つめる。


 なんだ。冴え冴えとした美少女に見つめられて。


 「それ、本当の話なの?」


 「本当さ」


 「そうなんだ」


 麗奈(りな)は、やがて、微笑む。


 「ふうん。勇希(ユウキ)も頑張ってるのね。ねえ、私も、魔界の戦争に遭遇したのよ」


 「……まさか」


 何を言ってるんだ。オレは麗奈(りな)をまじまじと見つめる。


 「うふ。本当よ。天魔族と紫頭巾族が戦っていたの。それで、紫頭巾が負けそうになっていたから、私が天魔族を追っ払ったの」


 「……どうやって?」


 「うん。コラッ、て叫んだの。そうしたら、天魔は逃げていった」


 「……適当なこと言うなよ。バカバカしい」


 「うふふ。本当よ」


 「そう……じゃぁ、その天魔は、弱虫なんだ」


 「そうだね。きっと、その天魔、いつも女子に怒られてるから、女子に弱いんだね」


 「女子に弱い天魔か。オレとは違うな」


 麗奈(りな)は、本当に素敵な笑顔を浮かべた。そして、白い指を伸ばし、オレの頬を、すっと撫ぜる。


 「あ、なにするんだよ」


 オレは赤くなる。もう。いつもいつもおちょくりやがって。


 麗奈(りな)、ホームルームが始まっても、ずっと笑っていた。



 ◇



 防犯カメラに、包帯男が全力で逃げるところが、しっかり映っていた。学校の塀を、飛び越えるところも。とても人間業とは思えない身のこなし。防犯カメラをチェックした警察も、警備会社も、皆、びっくりしていた。


 犯人は、外部の者と言うことで確定した。


 学園の理事会は、対策を発表した。防犯センサー防犯カメラを、死角のないように配置する。警備を強化する。電灯の無かった奥のスペースにも、常夜灯をつけることとなった。特別な茶事などのときには、しっかり警備をした上で、電灯を消し、昔ながらの情緒風情を楽しむこととなった。


 学園内に防犯カメラが増えることについては、全校集会で、生徒会長の雪原(ゆきはら)が、生徒のプライバシーを脅かすものではなく。学園の平和、生徒の安全を守るためのものであると、確保たる口調で説明した。皆、納得し、賛同した。


 茶道部員一同、剣華(けんばな)の友人の女子生徒も、また安心して、茶道部の活動に励むことができるようになった。


 侵入した不審者に遭遇した生徒会役員剣華優希(けんばな ゆき)が、果敢に立ち向かい、追い払った。その事は公式にはアナウンスされなかったが、やがて学園内に広まった。


 剣華優希(けんばな ゆき)の信望は、ますます高まった。まだ入学して1ヶ月ちょっとの一年生であったが、早くも、将来の生徒会長と目されるようになった。


 もっとも、伝統ある名門エリート校である。


 名誉ある生徒会長の座。虎視眈々と狙う生徒は、大勢いた。


 剣華優希(けんばな ゆき)の生徒会長への道も、まだまだ平坦安泰とは言えないのである。


 

 ◇



 剣華優希(けんばな ゆき)蘭鳳院麗奈(らんほういん りな)満月妃奈子(みつき ひなこ)の3人の親友の絆。ますます強まった。

 

 正義と勇気、信頼の結びつきは、変わることなく続いていくのである。




 (   第15章 学園の天魔  了  )



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ