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第178話 1日だけの友達



 「オレは男だ。女子はみんなオレの前に這いつくばれ」


 オレの男の戦闘服。長ランの背中の刺繍文字。


 麗紗(りさ)に見られて。


 まごついた。いや……別にまごつく必要なんてないと思うんだけど。何しろこれは、オレが男のヒーローとして、全世界に向けて天下御免の宣戦布告をするためのもので。堂々としていれば……でも、これ、委員長とかに見つかるとやばいからこっそり着ようと思ってたんだけど。異世界だと自動で装備されちゃうんだ……


 オレは赤くなったり、青くなったりしていたみたい。


 麗紗(りさ)、ちょっと真面目な口調で。


 「これ、勇華(ユウカ)が選んだ装備なんだよね」


 「う、うん……」


 選んだ。間違いなく。でも、みんなに見せびらかそうと思ってたわけじゃなくて。


 「勇華(ユウカ)

 

 麗紗(りさ)赤光聖剣(レッドカリバー)を腰の鞘に戻すと、両手でオレの手を握る。


 「人が苦手でぼっちって、言ってたよね。それ、学校で女子たちからいじめられたからなの?」


 は?


 なんでみんなそんなこと考えるんだ? どうしてそうなるの? オレはヒーロー男子。だから、その、女子なんか目じゃない、ものの数じゃないってことを、要するに言いたいだけなんだけど。困ってる女子は助けるけどさ。


 愛くるしい天使、しっかり微笑む。


 「大丈夫だよ。勇華(ユウカ)、ゲームの中でも、あんなに麗紗(りさ)のことを心配して戦ってくれたし。ホントにホントに、かっこよかった。学校でいろいろあったって、勇華(ユウカ)は強くて優しくてかっこいい。それ、麗紗(りさ)が知っているから」


 温かいなにかが。しっかりとオレの手を握る麗紗(りさ)の両手から伝わってくる。(パワー)の移動。なるほど。念じればできるんだ。確かに。


 小さな蘭鳳院(りさ)、にっこりとして、

 

 「勇華(ユウカ)は、麗紗(りさ)の大事な友達。これからずっとね。そうだよね?」


 オレは、うなずく。微笑みを返す。ごめんよ、麗紗(りさ)勇華(ユウカ)は、今日で消えるんだ。もう二度と現れない。でも、オレがとっさについた嘘を、しっかりと受け止めてくれたね。君は本当にいい子だ。そして優しくて強くて、最高に可愛い。


 オレは、しっかりと麗紗(りさ)を抱きしめる。異世界幽世(かくりょ)の空と大地の間、本当にオレたち2人だけ。


 いい匂いだ。麗紗(りさ)の髪がサラサラと、オレの頬を撫でる。麗奈(りな)とはちょっと違う、明るく輝く天使の匂い。


 

 ぐわん、ぐわん、


 おや。



 時空が歪む。周囲が白くなっていく。やっとか。お帰りの時間だ。



 ◇



 気がつくと、オレは、VRゲームヴァーチャルリアリティ(ボックス)の中にいた。ヘルメット型端子を被って。


 麗紗(りさ)も隣に。


 もちろん、オレは戦闘服長ランじゃなくて、女子モード全開のブラウスにスカート。


 ほっとした。


 そんなに向こうに長い時間いたわけじゃないけど、長い長い異国への旅を終えた気分だ。


 グタッとするオレをよそに、


 ゲーム開始メニュー。始まるんだ。VRゲームヴァーチャルリアリティ


 装備の選択、細かいパラメータの調節。世界観の選択。あれこれの説明。すごくわかりやすい。初心者大歓迎モードだ。


 うむ。至れり尽くせりだ。これがゲームと言うものだ。こうでなければいけない。楽しむんだから当然だよな。痛さの調整とか出てこない。当然だ。痛い思いなんてしないんだから。安全で快適に。


 「次のステージだね!」


 隣の麗紗(りさ)の声、弾ける。


 まだまだやる気満々なんだ。すごいな。実際に痛い思いしたのに。よし。オレも付き合おう。今日1日だからな。とことん付き合ってやるぜ。可愛いオレの天使。

 


 メニュー表示。


 武器の選択。銃にした。ファンタジー異世界世界観だけど、銃が使えるんだ。


 防具は。もちろん長ランはない。立派な甲冑を選ぶ。


 完全に気分を切り替えていこう。


 目の前が明るくなった。


 冒険の旅。新しい世界が始まる。


 「ポイントガンガン稼ぐよー」


 麗紗(りさ)がはしゃぐ。


 

 ゲームスタート。



 VRゲームヴァーチャルリアリティ


 まさか。


 また、ここで、本物の異世界に飛ばされるなんて、ないよね。


 

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