第16話 ヒーロー少女はダイナマイトボディ下着女子に負けません!
オレにまとわりついてくるクラスの陽キャ女子リーダー、満月妃奈子。
さんざんオレを引っ張り回した挙句、とうとう下着姿を見せつけてきやがった!
ダイナマイトボディ全開で!
今も。
試着室のカーテン1枚を隔てた向こうには、セクシー下着女子。
何が起きてるんだ。落ち着け。落ち着くんだ。
でも、ドキドキ動悸が止まらない。
おかしい。
なんで女子の下着みて、こんなに赤くなったり、青くなったりしなきゃいけないんだ?
これが高校生活? 中学とは別世界だな。
オレが女子から男子になったとか、そういう事は抜きにしても。
高校生になると、なにもかも、変わるのか?
突然に? 世界が変わる……
まだドキドキが……
オレは動揺してる。くそ、動揺させられた。満月の揺さぶりに、一発食らった。いや、もう何発も食らっている。
これでいいのか?
……よくない……
絶対ダメ。
オレは男の坂道を上るヒーロー。最後の硬派。宿命を背負う男。
ヒーローが、女子の下着なんかで、いくらダイナマイトボディだといっても、くじけたり、ひるんだり、そんなことあってはならない。あるはず、ない。
オレの男修行、ヒーローの道、こんなの軽く乗り越えなきゃいけないんだ。
これは試練だ。
この試練、どうしてやろうか。
フッ、
ヒーローのすべきこと。決まってるぜ。
満月に、思い知らせてやるんだ。
硬派ってものを見せつけてやる。
女子の下着だ裸だで、びびったりしないんだ。
今は、不意打ちを食ったから、動揺しただけだ。今度は、こっちから行ってやる。
よし。覚悟。オレが男の修行で身につけた覚悟。これは本物だ。
行ってやる。こっちから、堂々カーテンの中に入ってやる。
試着室の中、下着姿の満月。
満月め。ダイナマイトボディ。抑え切れない自分を、みせつけてきた。
オレが赤くなったり青くなったりするのを見て、面白がってるんだ。
フッ、
ちょっと過激だけど、幼稚なお嬢様だ。
ビビることは無い。
お前のセクシー下着姿にオレは動じない。眉1つ動かさぬ。それが硬派。今度はオレの硬派を見せつけてやろうじゃないか。
正々堂々の勝負。
一騎打ちだ!!
試着室の中に堂々と入る。そして言ってやるんだ。下着姿の満月を見てもビクともせずに。
「満月さん、あなたは美しい。あなたの美しさ、それは、この世界の誰もが称えるでしょう。あなたは、美しさを讃えられる資格がある。そう、十分に。
だから、あなたを称えるものに、どうか、まなざしの一つもくれてやりなさい。
ただ、このオレは、他の男とは違う。このオレ。なんとも無粋な男なもので。
フッ、
この世の女子の美しさよりも、ただただ、男勝負、ヒーローの道に命をかける、なんとも馬鹿なやつ。ただのヒーローバカなんです。
ハハハ。
驚いたでしょう。あなたの美しさを、わからないものがいるなんて。いや、誤解しないで。あなたの美しさが不完全だとか、決してそういうことじゃない。
このオレは、そう、石ころ。硬くて尖って、どうにもわからずやの頑固な石ころみたいなもの。
だから、どうぞ、気にせずに。
オレなんぞ、あなたの視界に入れる値打ちもないものでございます。この硬派のことを、どうか、笑ってやってください……」
完璧だ。
オレの考えた台詞。
まさにヒーロー。
最後の硬派男子。
やはり、日々の修行の成果が出ている。
ヒーローの言葉がどんどん出てくるぞ。
満月。オレをマムシだ下着だできりきり舞いさせて得意になっているが、これでギャフンとなるだろう。もう、ぐうの音も出まい。
ヒーローの本気の前に、降参することになる。
そうするしかないんだ。
「勇希、あなたって、本物の男だったのね。ごめんなさい。あなたみたいな、本物の男、私、知らなかったのよ。
わかった。もうあなたの邪魔は、決してしない。
ただ、お願い。あなたのヒーローの道を私にも応援させて。ずっと応援していたいの。
本物の男を初めて私に教えてくれた、勇希だもん」
当然、こうなる。
そこでまたオレは悠々、いってやる。
度量を示すんだ。
「満月さん、ありがとう。オレの心意気、受け止めてくれたあなたは、本当に美しい。
オレの男意気に触れ、わかってくれたことが、なによりオレへの応援。
ただ一つ、満月さん、自分の格好をみてください。下着姿じゃありませんか。いけませんよ。さあ、制服を着てください」
満月は、ぽおっと赤くなって、オレをうっとりと見つめながら制服を着る。
こいつが、オレの邪魔をすることは、二度とないだろう。
オレの勝ちだ。
誰もが認めるヒーローの道。一歩、上ることができる。
オレは、考えた台詞をしっかり反芻する。
行くぞ。
これが、男勝負。
オレは、バッと、試着室のカーテンを開けた。
堂々と、だ。
満月は……
あれ?
しっかり、セーラー服を着ている。
なんだ、試着タイム終了か。予定が狂った……
ええと。満月の下着姿を見てもびびらないことを、まず、みせつけようと思ったんだけど。
どうしよう。予定が狂った。
なんだか……
急に体の力が抜けて。オレはへなへなと座り込んだ。いうはずだった台詞もどこかへ飛んでっちゃった。
オレを、みつめる満月。
なんだか妖しい瞳をしてる。
「勇希、どうしたの? あ、そっか。私が下着じゃなかったから、がっかりしたのね? やっぱり、私の下着姿みたかったのね。じゃぁ見せてあげるよ」
満月は、セーラー服の裾をまくろうとする。
うきゃあっ!
おい、やめろ、試着室のカーテン、完全に開けっ放しだぞ。みんなに見られちまうぞ。そんなことをして……このままじゃ、オレまで、とばっちり食っちまう。
ここはともかく……
オレは逃げ出した。
厄介な下着女子から離れるんだ。
もう、頭の中、ぐちゃぐちゃ……




