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第151話 天使とお風呂



 いったいオレはどこに向かっているんだろう。何に巻き込まれているんだろう。これも宿命というやつなのだろうか。この爽やかで気持ちの良い5月の休日に。


 朝から、次から次へと。



 蘭鳳院麗紗(らんほういん りさ)。小さな天使。



 今度は。


 一緒に風呂に入る!? 


 だって!? 



 うおおおおおおっ!!



 間違いなくこの天使がそう言ったんだよね? オレ、誘われている? なんだそりゃ!


 

 どういうつもりなんだ。


 オレのゾワゾワ、ゾクゾクが、もうピークに……またまた体が固まる。そして、微かに震える。


 考えるんだ!


 オレは必死。クソっ、ずっと先手を取られまくっている。この姉妹には。だから、なんだか引きずられっぱなし。いつも、あれよあれよという間に、どこかへ連れてかれちゃう。考える時間。それをオレにくれないのか? 魔物(モンスター)だって、いきなり不意打ちじゃなくて、ちゃんと間合いをとって、睨み合って、それから戦闘(バトル)になるのに。


 落ち着け。落ち着くんだ。


 耐えろ。これは精神攻撃だ。これに耐えるのも試練だ。えーと、この状況は。今朝、とにかくオレはこの子と友達になる約束をした。で、この子がオレの留守に勝手にオレの家に上がり込んで、カレーを作って、それで風呂を沸かして待っていてくれた。



 お風呂に一緒に入ろうーー



 それって、それって、それって。


 どうなのか? アリなのか?


 いや、待てよ。


 オレはずっとこのところヒーロー男子をやってた。つい、男子モードで考えちゃってた。今のオレ……女子の勇華(ユウカ)。実際に、そもそも、女子だしで。今、友達になった麗紗(りさ)が一緒にお風呂にと誘ってきている。


 アリか? この子、今、中学3年生なんだっけ。1歳年下。


 中学まで、オレはもちろん女子で、部活やってたから、遠征や合宿やらで、女子たちみんなで着替えて、シャワー浴びて風呂に入るのは当たり前だった。年下の後輩の子とも。ワイワイキャッキャしながら。部活以外でも、友達の家に行ったり、友達が家に来たりして、一緒に風呂に入ることもあったし、親戚の子供たちとも、昔から一緒に風呂を。女の子同士で風呂に入る。全く問題ない。


 これって、そんなに焦る話でもないのか、な。


 女の子同士で、風呂に……


 でも、いきなり押し掛けてきて、一緒に風呂とか、かなり非常識。この子は、やっぱりズレている。


 それとも、人が苦手で、一人ぼっちの一文字(いちもんじ)勇華(ユウカ)を放って置けず、ひたすらかまってくるお節介で優しい子なのか? お節介優しさも、限度を超えてると思うけど。


 どうしよう。


 オレの脳は破滅的な状態。


 目の前の麗紗(りさ)、ニコニコしてる。



 「大丈夫だよ」


 可愛い天使が軽く会釈。


 うむ。大丈夫なのか。そうだよね。大丈夫だ。大丈夫に決まっている。


 「勇華(ユウカ)、顔が真っ赤だね。恥ずかしいの?」


 オレ、顔が真っ赤なんだ。てっきり真っ青になってるかと思ってた。


 「そっか。人が苦手だから、誰かと一緒にお風呂に入ったりしたことないんだ。でも全然平気だから。みんなでお風呂に入ると、すっごく楽しいよ」


 麗紗(りさ)、すごく真剣なまなざしで。


 「怖くないからね」


 オレの手を握る。そして、愛くるしい笑顔。本当に可愛いな。



 ハハハ。



 うん。別に怖くなんかないよ。全然平気だよ。ただ、女の子同士で一緒に風呂に入る。友達なんだし。何の問題もない。へいちゃらさ。


 いいだろう。一緒に入ってやろうじゃないか。風呂ぐらい。みんなでお風呂に入るのってすっごく楽しいよね。オレもそう思う。


 ここで、この子を追い出すってのは。


 この行動力過剰で何をしてかすか分からない子を家から追い出すのは、かえって危険……絶対に危険。そうだ。


 流れに身を任そう。それでずっと問題なし。


 オレはヒーロー。


 いきなり異世界異空間に引っ張りこまれても、バッチリ魔物(モンスター)退治してやってるんだ。


 一緒に風呂?


 上等だ。


受けて立とうじゃないか。


 

 フッ、



 ヒーローをなめるなよ。

 


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