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第125話 異世界を歩くのにマップは欲しいね



 ジリジリと陽が西へ傾いていく。


 ビュウビュウと風の吹く黄金色の枯れ野で。


 しばらく立ちすくんでいたオレ。


 何も起きないな。


 ここは異世界異空間。黄泉の国。幽世(かくりょ)。ずっといていいわけない。とりあえず、出口を探さなきゃ。それに蘭鳳院(らんほういん)も。大丈夫かな。


 蘭鳳院(らんほういん)を連れて行った女子2人。男装の青服のほうも、間違いなく女子だった。あれは、オレの現実世界の人間なのか? それともこの幽世(かくりょ)の住民なのか? どこに行ったかだけでもわかればいいんだけど。


 なにはともあれ。


 行こう。


 オレはまだ、手に木刀、天破活剣(てんはかつけん)を握っている。長ランも、裾を風にたなびさせている。


 ヒーロー戦闘モードのままだ。


 おや?


 気づくと腰に白いベルトが。腰のベルトの左に、木刀を差す剣帯がある。そこに天破活剣(てんはかつけん)を差す。この世界、必要なものは自動で出てくるの?


 戦闘装備がそのままってことは、幽世(かくりょ)での時間、まだまだ続くのか? また魔物(モンスター)に襲われるのか? 独角独眼鬼(トールオーガ)を倒しても、元の世界に戻れなかった。この先に、敵のボスがいるのか?


 まるでわからない。でも、じっとしてても仕方がない。

 

 行くと決めたオレ、あたりを見回す。


 足元には、独角独眼鬼(トールオーガ)のでっかい刀が転がっている。


 すごい得物だけど、重くてとても持っていけないので、残念ながらそこに置いていく。4次元ポケットみたいな収納アイテムがあればいいのに。





 オレは歩き出した。どっちに行けばいいのか、どこに何があるのか、もちろん何もわからないけれど、悠人(ゆうと)案内(ガイド)が何もないって事は、オレはとりあえず間違っていないということだろう。


 何かあったら悠人(ゆうと)が教えてくれるはずだ。たぶん。


 悠人の案内(ガイド)。そのおかげで、オレは異世界幽世(かくりょ)魔物(モンスター)と戦えてるけど、それっていつまでもあるのかな。


 なくなったらどうなるんだろう。


 ここはファンタジー異世界だ。間違いなく。ステータス表示とか、マップ表示とか、そういうのないのかな。あと、魔物(モンスター)図鑑とか。魔物(モンスター)の種類名前とか、特性属性レベルとか、わかると便利なんだけど。


 戦闘(バトル)システムの解説とかも。


 とりあえず勝ててるけど、こっちのレベルで倒せる魔物(モンスター)が出てくるって言うシステム、いつまでも続くのかな。いきなり超強力な魔物(モンスター)が出てきて、パクっとやられちゃうとか。


 オレはゾワゾワっと。


 いかん。考えるのはやめよう。考えてもどうにかなる問題ではない。


 兄、悠人が、オレはヒーローになれると言ってくれたんだ。間違いなく。オレはヒーローになれる。剣も長ランもある。


 しかし、マップは欲しいな。


 人影も、魔物(モンスター)も見えない野原を歩いていると、心細くなる。



 ◇



 太陽が真っ赤になって、西に沈みそうになる頃。 


 さんざん歩いたオレは、村に着いた。


 村。で、いいんだよね。


 集落があった。時代劇で見るような、昔の造りの家が並んでいる。茅葺きの屋根と言うのか?質素な家々だ。


 集落を取り巻くように、膝くらいの高さの石垣がぐるっと積んであった。


 オレはそれをまたいで、中に入る。


 人の姿が。


 やはりみんな着物を着ている。髪型も。時代劇のまんま。


 オレを見ると、みんなびっくりして、家の中に入ってしまう。


 うーむ。


 これでいいのかな。悠人(ゆうと)、いいんだよね。


 沈みゆく陽。ビュウビュウと吹く風。時代劇の世界に入り込んだような古い造りの家が並ぶ閑散とした村の中で。




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