第123話 敵か味方か謎の2人
黄金色の枯れ野に横たわる蘭鳳院の白い裸身。相変わらず意識を失っているようで、ピクリともしない。
独角独眼鬼、ドシ、ドシ、と駆け寄っていく。
青鬼め、あいつ、蘭鳳院をどうするつもりだ?
ーー 異世界空間幽世とこっちの世界現世が重なると、穴ができる。向こうに引っ張り込まれて、魔物に攫われたり、喰い殺されたりするものが出た。
校長の言葉が蘇る。
蘭鳳院が喰い殺される!?
ダメ! 絶対ダメ!
オレが蘭鳳院を巻き込んじゃったせいで、そんなことになったら。オレは女子を守るヒーローだぞ。ヒーローの名にかけて、何があろうと蘭鳳院を護る!
オレは独角独眼鬼目掛け、猛然とダッシュ。
でも、ドシ、ドシ、と走る独角独眼鬼、オレより先に蘭鳳院の所へ。
「危ない!!」
オレは天破活剣を振りかざす。まだ、だいぶ距離がある。剣の刃が届くかどうかわからない。でもそうするしかなくて。
その時、
全力疾走してた独角独眼鬼。動きが急に止まる。
そして、倒れてる蘭鳳院の前に、黄金色の光に包まれた人影が現れる。
◇
なんだ、あれは。
黄金色の光の中の人影。よく見ると2人。
人間だ。普通の人間に見える。普通というか、着ている服は、そう、時代劇で見る昔の衣装。女と男。
女は、赤い裾の長い着物を着て、長い黒髪を後ろで束ねている。
男の方は青い着物。袴を履いている。菱形の黒い帽子。弓矢を手にしている。
2人とも、まだ若い。端正な顔立ちをしている。
一体何者なんだ? 見た目は人間だけど。新手の魔物? それとも、蘭鳳院を助けに現れてきてくれたの? オレにはわからない。
でも、独角独眼鬼。2人にたじろいでいるようだ。グオ、グオ、と言いながら、後ずさりしている。独角独眼鬼にとって、この2人は、危険な敵のようだ。
青い服の男。弓矢を手に、一歩前に出る。独角独眼鬼、後ずさり。やっぱり恐れているようだ。
青い服の男、オレを見る。そして微笑む。
「この方は、私たちがしっかりとお守りします。あなたは安心して、この魔物を倒してください。あなたならできます」
その声。オレは気づいた。女だ。男装してるけど、間違いなく女子。
気がつくと、赤い服の女が、裸の蘭鳳院を抱きかかえている。蘭鳳院も黄金色の光に包まれている。赤い服の女も、オレを見て微笑んでいる。
蘭鳳院が連れていかれちゃう。どうしたらいいんだろう。本当に、この2人は蘭鳳院を助けてくれるのか?ひょっとして、人間に擬装した魔物が、蘭鳳院を攫って行こうとしてるんじゃーー
「勇希、心配するな、その人たちは、お前の味方だ」
悠人の声。
「その女の子は、2人に任せて大丈夫だ。お前は心おきなく独角独眼鬼を倒すんだ」
もう間違いない。オレはほっとした。兄、悠人が言うんだ。あの2人、味方なんだ。
悠人の声があの2人に聞こえたのかどうかはわからない。2人は、オレににっこりすると、蘭鳳院を抱えたまま、黄金色の光に包まれて、すーっと消えていった。
人影が消える。抱えられていた蘭鳳院も。黄金色の光、しばし漂っていたが、やがてすっかり消えてしまう。
あの2人が、蘭鳳院を安全地帯に連れて行ってくれた。そういうことでいいんだよね。
オレは独角独眼鬼に向き合う。
こいつは、オレが倒す。




