表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

121/274

第121話 青鬼、その名は



 

 異世界異空間転移。


 3度目か。慣れたぞ。オレは落ち着いている。


 周りは真っ暗から、真っ白になり、やがてぼんやりと、次第にしっかりと輪郭が。



 気がつくと、オレは野原にいた。


 空は ーー 晴れている。太陽。空は、オレの現実世界現世(うつしよ)と同じだ。太陽が西に傾き、午後もだいぶ遅いようだ。


 足元 ーー 野原。ここじゃ、秋なのか? 枯れた草、ススキが風にしなっている。


 少し離れて、木立。森が見える。


 人気はないな。



 ここ、黄泉の国、幽世(かくりょ)ってとこだよね。


 オレは異世界異空間に転移した。これって例によって魔物(モンスター)に引き込まれたってこと? じゃあ、どこかに、オレを引き込んだ奴がーー



 オレは周りを見回す。黄金色の枯れススキの野原。枯れ野というやつ。


 その時、風がビュオッと吹いて、空気が震えた。


 

 グオッ!!



 咆哮。そして獣の臭い。


 早速お出ましか。


 どこだ。オレはあたりを見回す。わりと近くから聞こえた。


 おや?


 10メートル位先の、ススキの山、盛り上がった。と思ったら、


 ガバッと枯れ草の下から魔物(モンスター)が現れた。



 ◇



 毎度ながら。


 でかい。


 今度は二本足で立っている。見た目は、鬼。そうだ。絵本とかでよく見る鬼とだいたい同じ。ごっつい筋肉質の巨軀。全身青銅色。青鬼か。太い腕に足、所々妙な盛り上がりがある。瘤というか。凸凹した巨軀。黄色い腰布を巻いている。頭。1つ目に、1本角。


 背丈はオレの3倍以上はある?5メートル位か。


 手には、巨大な刀……て言うのかな?長方形の、包丁や鉈をでっかくしたようなやつ。長さ3メートル位ありそう。むき出しの刃。ギラリと光っている。



 青鬼、悠然と、枯れ草の中から起き上がる。


 グオ、グオ、と不気味なうなり声。



 相変わらず壮観だな。しかし、不思議と恐怖は無い。でっかいのに慣れたのか。ヒーローパワーで、心や感覚が強化されるのかしらん。何も知らないでこいつを見たら、腰を抜かすよなあ。


 しかし今は。こいつはこの野原で何をしてたんだろう?昼寝でもしてたのか? それでオレの匂いをかぎつけて、オレをこっちに引っ張り込んだのか?そんなことを考える余裕もあった。



 「そいつは独角独眼鬼(トールオーガ)だ」


 

 兄の声だ! 悠人(ゆうと)。姿は見えない。でも、本当に安心する。ちゃんと、サポートしてくれるんだ。悠人(ゆうと)案内(ガイド)。これがあれば、何も怖くは無い。


 オレは、改めて目の前のやつを見すえる。


 独角独眼鬼(トールオーガ)っていうのか。青鬼さんの方がしっくりくるけどな。出会って早々、悪いが狩らせてもらうぜ。ヒーローのステータスアップさせてもらうぞ。



 「天破活剣(てんはかつけん)!」


 

 オレは叫ぶ。


 右手に、青白い光を帯びた木刀が現れた。そして、オレがまとっているのは、風にたなびく長ラン。


 ヒーローモードだ。


 一撃で決めてやるぜ。


 的はでっかい。外すわけがない。


 オレは両手で天破活剣(てんはかつけん)を握り、上段に構える。


 でっかい独角独眼鬼(トールオーガ)、動かず、オレを見下ろしながら、グオ、グオ、と息を吐いている。

 

 

 フッ、



 ヒーローを前に怖じ気づいているようだな。


 ならば、こちらから行く。


 オレは枯れ草を踏みしめ、天破活剣(てんはかつけん)を、


 「えい!」


 と、振り下ろす。刀身よりはるかに長い青白い光が、独角独眼鬼(トールオーガ)の頭上。


 よし、真っ二つだ! ちょろいぜ。



 ガキーン!



 あれ。妙な金属音。


 あっ。独角独眼鬼(トールオーガ)。長くて分厚い刀で、オレの天破活剣(てんはかつけん)を受け止めている。天破活剣(てんはかつけん)の光の刃では、刀は切れないようだ。


 受けた。オレの剣を受けやがった。しかも独角独眼鬼(トールオーガ)、片手しか使っていない。片手で持った刀で、オレの天破活剣(てんはかつけん)を余裕で受け止めている。


 オレは一旦、剣を引いた。木刀の先の青白い光、すーっと縮む。



 独角独眼鬼(トールオーガ)、グオ、グオ、と前に出てくる。ズシ、ズシ、歩くたび、太い足の下の枯れ草が、ざわざわと。


 こいつは一筋縄ではいかないようだ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ