表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/274

第113話 ヒーローに女人禁制ルールは



 「ここは女人禁制じゃぞ」



 もう、ズドーンと。


 見透かされた。目の前の坊さんに。たった一目で。


 女子バレ。バレた。呆気ないな。これがヒーローの最期か。だいぶいい調子だと思ってたんだけどな。魔物(モンスター)も倒したし。宿命の呪い。それが、オレに襲いかかってくるわけ?


 オレは言葉も出ず。


 

 「ごめんなさい、勝手に入って」


 後ろから声がした。


 振り向く。蘭鳳院(らんほういん)がいた。待ってないで、ついてきたんだ。



 「女人禁制だとは知りませんでした。すぐに出て行きます」


 蘭鳳院が言った。


 え? じゃぁ、坊さんが女人て言ったのは……


 「お嬢さん、慌てなさるな」


 坊さん、ニヤっとする。


 うん? なんだ。女人て、オレの後ろにいた蘭鳳院のことか。


 もう、びっくりさせるよなぁ。


校外実習の間でも、とにかく心臓がひっくり返ることが多い。これも試練なのか。


 オレは言った。 


 「勝手に入ってすみません。すぐに行きますから」


 しかし、坊さんはニヤっとして、


 「なに、いかんでよい。ゆっくりしていきなさい」


 「女人禁制は?」


 オレと蘭鳳院、同時に言う。


 「ふふ。戒律では、確かに女人禁制じゃが、まぁ建前だ。方々の寺でも本来女人禁制じゃが、受け入れてるじゃろ。気にせんでええ」


 なんだ。ただオレたちをふざけてからかってただけか。


 しょうもない坊さんだな。


 「しかし、どうやっておぬしらこの寺に入ったのじゃ? 塀を乗り越えたのか? この寺の門は、いつもしっかりと閉じておる。観光客も受け入れてはおらん」


 あ、そうだ。確かに、オレたち不審な侵入者だよな。


 オレたちは、塀が崩れていたことを説明した。たまたま脇の山道を見つけた。上っていくと、塀があった。塀が崩れていたので、中に入ってみた。


 「なんと。塀が崩れた?そのような話、とんと聞いたことがないのう」


 驚いてる坊さんを、オレと蘭鳳院は、塀の崩れまで連れて行く。坊さんは仔細に検分する。


 「確かに崩れておる。全く気づかなんだ。つい最近崩れたようじゃ」


 坊さんは、オレと蘭鳳院に、じっと目を凝らす。


 「この寺が、おぬしらを招き寄せたのかもな。ここは観光客お断りじゃが、これも仏縁。さ、上がっていきなさい」


 ニヤっとする。


 坊さん、オレと蘭鳳院を本堂へ案内する。オレたちは黙ってついて行く。なんとなく、断り切れない。勝手に入ったんだし。それでお招きとか。


 「おっと、その前に」


 本堂、正面の階段に足をかけたところで、坊さんは振り返る。


 中庭。小さな七輪が置いてある。煙が上がっている。さっき見た煙だ。


 七輪の上には、網が置いてあって、そこには。


 坊さんは、網の上の焼けた目刺しをつまんで、パクっとうまそうに食べる。


 「うーん」


 坊さん、至福の表情。


 「この山寺で焼く目刺しは格別じゃ。すまんのう。一尾しかないんじゃ。おぬしらに分けてやる分は無い」


 坊さん、実にうまそう。別にオレたちは、目刺しを欲しいとか思ってないけど。


 目刺しを食べた坊さんは、悠々と、


 「さぁ、若いの、おあがりなさい。目刺しはもうないが、茶でも入れてさし上げよう。若者がここに来るのは、とんと久しぶりでのう」


 今度こそ、オレたちを本堂に案内する。



 怪しげな寺の、怪しげな坊さん。目刺し焼いて食べて喜んでいる生臭坊主。


 一体何がどうなるんだろう。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ