第11話 ヒーロー少女の敵は3人の長身美少女!?
転校して1週間たった。
少しは……慣れてきたように思う。
学校では、ひたすらみんなと関わらないようにする。
そして、家に帰ると修行。聖典、少年ヒーロー漫画をとにかく読みまくる。繰り返し読む。最近は三大聖典以外でもいろいろ読んでいる。
男になるための修行。
宿命のヒーローになるために。
1日の怠りも許されない。
難しそうな本も買ってきた。
『五輪書』
『男の一生』
『男子の本懐』
こういうのは、読んでいない。
飾ってあるだけ。
オレは文字ばっかしの本て苦手だ。中学の教科書でも厄介だったからな。
せめてイラストとか、差し絵とか、いっぱいあるといいんだけど。不思議の国のアリスも、確かそんなこといっていたような。文字ばっかの本なんて。
それにしても。オレは考えた。
ヒーローであるオレを悩ませているのは、
女子。
女子どもだ!
なんだいったい、あいつらは……
お澄まし顔で、悪戯ちょっかいしてくる蘭鳳院麗奈。
抱きついてまとわりついてくる満月妃奈子。
オレの保護者気取りらしいクラス委員長剣華優希。
なんなんだ。
オレのヒーローの道、男の坂道に立ちはだかるのは、女子どもなのか?
ばかばかしい。
女子なんて……女子なんて……何でもないぞ。
そうだ。
あいつらに、オレが真のヒーロー、宿命の道に生きる硬派男子だと認めさせてやれば。
オレはヒーローになる。兄との約束、誓いだ。そのためには、まず、女子ども。女子どもをオレの足元に跪かせてやるんだ。
見てろよ。
女子ども。
きっと “わからせ” てやる!
昼休み。
オレは、教室をぶらぶら歩く。
この1週間で、クラスの事情、いろいろわかってきた。
クラス委員長、剣華優希。入学早々から、クラスの立派なリーダー、まとめ役。人気絶大。オレへの演説でますます人気が出たようだ。いやはや。
満月妃奈子。意外にも、オレにまとわりついてくる満月が、委員長の副将格というか、クラスのムードメーカー、盛り上げ役といったところらしい。
陽キャ女子グループ以外のみんなにも当たりが良いので、女子にも男子にも人気がある。オレへの態度は何なんだ。
蘭鳳院麗奈。いつも超然としている。とは言え、クラスのみんなとは、それなりに普通に話をしている。あまり、キャッキャ笑ったり騒いだりするタイプではない。笑顔を見せない。とにかくいつもお澄まし顔。
“つきのもの“ 以来、オレに妙なちょっかいを仕掛けてこない。
オレが警戒しているせいもあると思うけど、とにかくほっとしている。
オレとは、こっちを見ないで朝の挨拶して、授業中必要な会話をするだけ。
蘭鳳院、かなり勉強ができる。優等生だ。授業中の様子を見ているとわかる。先生に、よく誉められている。
オレとは対照的。
蘭鳳院は、言葉にも仕草にも、気品を感じる。気品とかよくわからないオレでも感じるから、本物なんだろう。優等生のお嬢様なんだな。
オレへの悪戯ちょっかい……やっぱり転校生が珍しいので、少しからかってただけ? お嬢様の気まぐれ。それならいいんだけど。
お嬢様と言えば、蘭鳳院、満月、剣華の3人は、天輦学園中等部からの持ち上がり組で、仲良し親友なんだそうだ。
バカ高い学費の私立校に中等部からずっと通ってたんだから、3人とも、すごい金持ちお嬢様なんだろう。
オレは、クラスメイトとは、あまり深く関わらないようにしているが、いやでも、みんながあれこれ話してるのが、聞こえてくる。
クラスの話題の的で、みんなに一目置かれている3人の女子。
蘭鳳院、満月、剣華の3人が仲良し親友。意外だ。
全然タイプが違うのに。
3人はグループを作るという感じでもないが、ベタベタせずに、お互い仲良くすごく尊重しあっている、という。
で、オレは。
とにかく、ぼっち! 孤高のヒーローを貫く。
オレに好意や好奇心を向けてくる女子男子とも、あまり深入りしないようにしている。休み時間に校庭に遊びに行かないかと、男子達に誘われても、丁重に断っている。
なにかで、女子バレしたら終わりだし、女子バレを心配してビクビクするのもいやだ。
関わらないのが1番。
女子たちのオレをみる目のキラキラ度、けっこう高い。
オレは中学まで女子だったけど、女子たちにこんな風に見られた事は無い。詰襟学ラン男装するだけでこんなに変わるのかね。世の中わからんものだ。
最初のデビューから、派手にヤラカシすぎたのも、確かにある。オレだけじゃなくて、蘭鳳院の責任でもあるんだけど。
他のクラスや他学年からも、オレを見学に来るやつがいる。
「あれが衝撃デビューした、転校生くん?」
「面白男子?」
「話聞くと、中二病みたいだよ。イキりたいみたい」
「噂通りの乙女男子だね」
「乙女男子が騒動起こしたんだ」
「かわいい。だから、何やっても許せる」
「イキってる乙女男子。いいね」
「しかも、硬派で女子お断りだって」
「いまどき、硬派?」
「もったいねぇなぁ、女子の注目の的なのに」
「でも、絶対誰かアタックして、ものにしちゃうんじゃない?」
「誰が行くんだろうねぇ」
「乙女男子の隣の席の子、すごく綺麗じゃない? あの子は?」
「あー、あの子、蘭鳳院麗奈。あの子はだめだよ。男子お断りだから」
「へー、そうなんだ。乙女男子と美少女が並んでいるのに、お互いそっぽ向いてるんだ」
「女子お断りの男子と、男子お断りの女子が、並んでるの? すごいね」
いろいろ言われてる。
いろいろ聞こえてくるが、とにかくシカトだ
美形だ。乙女だ。美少女だ。かわいいだ。
いわれても、オレは聞き流している。
ふん。
なに、気にすることはない。
ヒーローは外野の騒ぎに動じない。
それに、委員長の目が光っている。やたらと暴れるわけには、いかない。もう変な注目されたくないしな。
◇
キャッキャする女子の声。
聞こえてくる。いつも聞こえてくる。
満月のグループだ。
いつもワイワイキャッキャ。一番大声で騒いでいる。
陽キャ女子グループ。その中心の満月。陽キャ女子グループのリーダー。
委員長剣華が、クラスのキング、王様だとすれば、満月は、クラスのクイーン。女王様といったところだ。
満月は、自分のグループ以外の生徒にも当たりが良い。陽キャリーダーだけど、隂キャにも丁寧だ。
さすが、委員長の親友だけのことはある。まあ、いい奴なんだろう。オレに、妙なことさえしなければな。
キングにクイーン、か。
そうすると、蘭鳳院は?
蘭鳳院……剣華の王国に招かれた、客人みたいな立場か。いつも、1人で静かにしている。
オレは……なんというか、異邦人だな。ここじゃ。
異世界を救うために召喚された、勇者みたいなものか。
勇者って、必ずしもいい扱い受けないんだよな。試練ばっかだ。そういうもんだろ。
満月の机に女子が集まっている。
満月のキラキラ感、さすが。校則の範囲内で、とにかく、最大限盛って、自分を飾っている。
そして……満月の胸。
最初抱きつかれた時、まちがいなく、ノーブラだった。それはもう、絶対、確か。
でも、
あの胸で、EかFか、よくわかんないけど、ノーブラなら、絶対揺れまくって、風紀を乱すはずだ。しかし、注意して見ているが、全然揺れてない。普段は、ちゃんとブラをして抑えてるみたいだ。
じゃあ、なんだったんだ? オレに抱きついてきた時は。
まさかと思うが、抱きつく準備として、わざわざノーブラにしてきたっていうのか?
オレに胸をこすりつけてアピールする、ただそれだけのために?
なんてやつだ。
ありえない。信じられない。
オレの中学の時は、こんな女子はいなかった。
そもそも公然と男子に抱きつく女子なんてみたことない。オレは中学時代、男子とは、普通に話したりしたけど、抱きつこうなんて思ったこともない。
恐ろしい。
これが高校なのか。
気をつけなきゃ。
満月の胸をチラ見してると、目があって、ニヤリとされる。うぐ……実にまずい。
別にそういうわけじゃないんだよ。満月、お前が変なことを仕掛けてくるからさ……
オレはヒーロー。最後の硬派だ。女子なんかには、目をくれない。いくら胸を押し付けてきたって、無駄なんだぞ!
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