表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/274

第109 話 プレゼントの意味は



 昼飯を終えた、オレたち。


 これから、校外実習が始まる。


 実習課題は、鎌倉の名所旧跡神社仏閣、何でもいいから、選んで、調べて、レポートをかけ、というのである。


 鎌倉だからな。


名所旧跡なんて、いっぱいある。たいした課題じゃない。


 で、問題は……


 校外実習は、ペアで行う。恒例のペアワークである。


 うーん、とにかく、ペアワークが好きな学校だな。


 エリート校ってのはこういうものなのか?


 オレが中学の時は、そんなにペアワークなんてやらなかったけどな。


でも、学校の方針にオレがとやかく言っても仕方がない。オレはこの学校の生徒だ。だから、実習課題はちゃんとやらねばならない。


 ペアワーク。2人で行う。


オレの相手はーー



 「さ、行こうか」


 オレの隣にいるのは、もちろん、お澄まし顔の蘭鳳院(らんほういん)


 いったい何なんだ。席が隣だからって、なんでもかんでも一緒にさせるっていう、この方針は。


 隣同士で、くっつけて、カップルにしようって考えなのか?


 実際、さっそく、四月早々、席が隣同士の女子と男子のカップルがあちこちでできている。


 逆に、席が隣同士で仲が悪いと、このシステム、地獄なんだな。仲がうまくいかず、気まずくペアワークをやってる子たちもいる。


 オレは……


まぁ、何とかなってるかな。



フッ、



 オレは男の修行を積んでいる。


 蘭鳳院(らんほういん)が何を仕掛けてこようが、なんでもねーぜ!


 残念だったな、お澄まし顔のお嬢様。



 「ねぇ、勇希(ユウキ)


 並んで歩きながら、蘭鳳院が言う。


 「私、いろいろ調べて予習してきたから。安心してね。もちろん、勇希(ユウキ)は予習下調べとか、してこなかったでしょ?」



 うぐぐ……



 そりゃ、そうだけどな。なんていうか。


 露骨に上から目線で、言わなくてもいいんじゃないかな。席が隣なんだし。もうちょっとオレの顔を立てるよ……


 「ありがとう、いつも助かるな」


 オレは頑張って笑顔。オレはヒーローなのだ。つまらんことで女子と争わね。度量を示すのだ。


 まぁ、相手は、優等生のお嬢様だ。勉強課題の事は、任せておけば、それでよかろう。



 ◇


 

 5月の陽差しの中、少し暑い。


 並んで歩くオレたち。


 蘭鳳院(らんほういん)の黒い艶やかな髪、風にさらさらと。


 ブラウスの胸のフリルもユラユラ。


 スカートも、ヒラヒラ、白い脛がチラチラする。


 まぶしい。



 蘭鳳院と2人でのんびり鎌倉を歩いている。


 なんだか一緒に旅行に来たカップルみたいだ。


 え?


 カップル?



うぐ……



 オレ何考えている? オ、オレは……べ、別に……蘭鳳院のことなんか、意識してないぞ。


 ただ本当に、席が隣ってだけなんだ。この子とは。



 蘭鳳院は、実習のルートを決めていた。オレも素直に従う。実習っていっても、単に観光地を回るだけだ。


 間違いなく観光旅行。


 でっかい、鳥居のある神社に来た。


 「へー、神社もあるんだ。鎌倉ってお寺ばっかりだと思ってた」


 オレだってそのくらいの知識はあるんだ。


 「ここ、有名よ」


 蘭鳳院、やや、あきれたように。


 「鎌倉はお寺が多いのは当然だけど、有名な神社もあるよ。昔は神社とお寺が一緒にやってたり、また別れたりしてたしね」


 うーむ。


 優等生にはかなわん。余計なこと言うのやめておこう。


 オレたちは、中に入って、ぶらぶら見学。


 「あ、お守りがある」


 蘭鳳院が見つけた。

 

 「お守り買うの?」


 「うん。せっかく来たから。お土産にちょうどいいじゃない」


 蘭鳳院は、熱心に、お守りを選んでいる。


 本当にたくさんあるな。


 「勇希(ユウキ)は、お守りとか買わないの?」


 「うん、別にいいや」


 「大学合格のお守りとかは? あったら欲しい?」


 「大学?あんまり考えてなかったな」


 「ふーん、毎日必死に勉強してるのにね」


 うぎゅ、


 勉強ってのは、運動部の勧誘を躱す口実なわけで。もちろん、ちゃんと勉強しなきゃ、学校でもヤバイらしいけど。


 蘭鳳院、熱心にお守りを見ている。



 オレはぶらつく。


 絵馬だ破魔矢だ、神社関連のグッズ、ストラップ、人形、なんでもいっぱいある。


 大学合格のお守りか。それは別に、神頼みしないけど。


 女子バレしないお守り。


 そんなのがあったら……欲しいかもな……


 そんなお守り身に付けてたら、ビクビクヒヤヒヤしなくて済むのかな。


 でも、売ってるわけないよなぁ。



 「はい、これ、どうぞ」


 目の前に蘭鳳院。


 手に、お守りを一つぶら下げている。


 「もう、お守り選んだの?」


 「うん。これは、勇希(ユウキ)に買った分」


 「オレに?」


 「そう。勇希(ユウキ)の応援するって言ったじゃない。お守りくらい、プレゼントしないとね」


 プレゼント。



 ドキュッ!



 な、なに。


 お土産のお守り、1つくれるだけだ。別にどうってことじゃない。


 「ありがとう」


オレは、蘭鳳院から、お守りを受け取る。


 「これってなんのお守りなの?」


 「ふふ、何だと思う?」

 

 蘭鳳院は、悪戯っぽく笑う。

 

 なんだろ。


女子バレしないお守り?


 いや、まさか。そんなのであるはずがない。


 やっぱり、勉強必勝のお守りかな?


 オレのもらったお守り。


 見ると、


 うぎゃっ!!


 なんだこりゃ!!


 オレは飛び上がった。


 蘭鳳院(らんほういん)のプレゼント。



 安産お守り。



 なんで!なんで!


なんでオレに安産お守り!


蘭鳳院、おまえ、何考えてるんだ!


 ま、まさか、オレが、女子だと……?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ