第102 話 夢粋の決着
昨日からオレの心を散々かき乱してきた紙飛行機。
ついに、蘭鳳院に問いただす。
「紙飛行機? 飛ばしてないよ」
蘭鳳院は、こともなげに言った。
「本当? あの、昨日、オレの名前を書いた紙飛行機が落ちてくるのを拾ったんだけど」
「勇希の名前を書いた紙飛行機? それを私が飛ばしたっていうの? なんで。なんで私が勇希の名前書いた紙飛行機を飛ばすの?」
うん?
何だか少し、蘭鳳院の口調が険しくなってきた。蘭鳳院じゃなかった? おかしいな。
だけど、確かに、オレしか書けない。ネコの絵が……
「おう、あれ、一文字、拾ったのか」
後から、声がした。振り返る。
柔道部の柘植。丸刈りずんぐり巨漢。委員長の親衛隊子犬四天王の1人。
「あれ飛ばしたの、わじゃ」
柘植の言葉に、オレは口があんぐりと。
「あの……柘植……おまえが紙飛行機にオレの名前を書いて?」
「おお、そうよ。しっかり書いてやったぞ」
頭から血が引いていく。とっくに引いてたけど。
あれ。ふと、思い出す。
そうだ! 柘植にも、ノート借りたことがあったんだ。ちょっと前の事だから、忘れてた。ノート借りて写す時、癖で、柘植のノートに猫の絵描いちゃったんだ。で、昨日、柘植がそのノートを破って紙飛行機を。
でも。
オレの名前を書いた紙飛行機を飛ばしたのが、柘植?
どういうことなんだ? あれって、恋愛成就の? つまりそういうこと? 柘植、おまえって……あの……誰であろうと、オレは恋愛断固お断りしなくちゃいけないんだけど……
「ええ、……いったい……どういう……」
オレは、なんだか、ぶるぶる震えていた。
「みんなやってますよ。それは」
また横から声が。
剣道部の矢駆。これまた、子犬四天王の1人。剣道部。髪をきれいに分けた長身ややイケメン。
みんなやってる? オレは知らないぞ。どういう話?
「男子の間でも流行ってるんですよ」
と、矢駆。
えー、そうだったのか。流行ってるっていうのは、その、どういう。男子が男子の名前を書いてて紙飛行機を飛ばして。それで、どうするの? その……
「応援したい仲間や友人の名前を書いた紙飛行機を飛ばすんですよ。一文字君、知らなかったですか?」
矢駆が続ける。
え?
応援したい相手?
「そうよ」
と、柘植。
「部やクラスの者の名前を書いて、紙飛行機を飛ばしてな。みんな頑張れよって。おまえの名前もしっかり書いてやったぞ。お前は1人で黙々と体も鍛え勉強もしてるからのー。感心しとったんじゃ。せっかくだから応援しようと思ってな」
がんばれ? 応援? 恋愛成就とか、そういうのじゃないの? よかった…けど。
話がもうぐちゃぐちゃで。
「へー、そうなんだ」
これは蘭鳳院。
「男子じゃ、応援するために、紙飛行機飛ばすんだ。女子だと今、好きな人の名前書いて、紙飛行機飛ばすの流行ってるよ」
うぐ。
なんだ、女子と男子で、ちょっと違う流行してたのか。そんなの全然知らねーよ。オレ、思ってたより、ぼっちだったのかな。別にいいんだけど。みんな勝手に変なことしないで欲しいな。
ん?
蘭鳳院、オレを見つめている。
「勇希、どうして私が紙飛行機飛ばしたと思ったの?」
うぎゅぎゅ。
その。
「いや、蘭鳳院なら、オレのことを応援してくれてるかなと思って」
「ああ、そうなんだ」
蘭鳳院、クスっと笑う。
「応援ならしてるよ。それとも、私に紙飛行機飛ばして欲しかったの?」
いや、そういうわけじゃ。
「あ、そうだ」
蘭鳳院が言う。
「ペアワークは、ペアワークであるからね。課題が」
「え?」
「やっぱり何も聞いてないんでしょう。授業で寝てばかりだもんね。ちゃんと課題出てるから。今日は親睦会だから、楽しもうね。今度ちゃんと説明するから」
「あの、ペアワークは、もういいよ」
「え、どうして?」
「また、夢で出すといけねえ」
( 第12章 芝浜的ラブコメ 了 )
本作品を、気に入ってくださった方は、下の評価の星と、ブックマークをよろしくお願いします。
読者のみなさまの支持が、作者のやりがいです。
どうかよろしくお願いします!




