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第5話『この事態を素早く解決する方法が一つある』(瞬視点)

(瞬視点)




ヤマトという国に大きな興味を持ち、走り回って楽しんでいたミラであったが、フソウに到着してすぐに行方不明となった。


「どこに行ったんだ? ミラは。流石に街の外に行くことは無いと思うが」


「まぁ、フソウのどこかに居るんなら、見つけるのはそれほど難しくないと思うが、それにしても随分とやんちゃだな。あのお姫様は」


「最近は大人しかったが、興味がある事を前にすると周りが見えなくなるんだよ。ミラは」


「それは中々厄介な」


オーロと宗介の話を聞きながら、俺はふむ、と考える。


そして、名案が思い付いた為、口を開いた。


「この事態を素早く解決する方法が一つある」


「聞こうか?」


「巫女様にお願いするのだ。あの方の持つ千里眼ならば、ミラがどこに居ようと見つけるのは容易いだろう」


「なるほど。それは名案だな。じゃあ俺は街の外に子供が行かない様に言っておくから、瞬は巫女姫様の所へ行ってくれ」


「あぁ」


俺は走り去って行く宗介を見送り、オーロと共に城へと向かった。


のだが、どうやら城では何かトラブルがあったらしくドタバタと役人が走り回っているのだった。


「なんだ。随分と慌ただしいな。ここはいつもこんな風なのか?」


「いや、そんな事は無いと思うが……」


オーロの疑問に答えつつ、俺はちょうど壁を走りながら、通り過ぎようとしていた和葉を見つけ、事情を聞くべく呼び止める。


「和葉!」


「え? あれ!? 瞬君じゃない! 戻ってたの!?」


「あぁ」


「それはちょうど良かった。手伝って! 今人手が欲しい所だったの! そっちの人はお友達?」


「あぁ。オーロという」


「うん。オーロさんね。よろしく。私は和葉。高坂和葉ね。それで手伝って欲しい事なんだけど。実は巫女姫様が行方不明になっちゃって。今フソウ中を捜索中なのよ!」


「なっ!!?」


「なんとまぁ、こっちもこっちでお姫様が行方不明か」


「こっちもってどういう事?」


「あ、あぁ。実は俺達と一緒に旅をしていたミラという子が行方不明になってな。それでミラを探してもらおうと巫女様にお願いをしに来たんだが」


「それは困ったわね。分かったわ。こっちも一緒に探すからその子の特徴を教えて?」


ドンドンと話が進んでゆく状況にただ頷きながら、和葉に問われたミラの特徴を答える。


「ミラは巫女様より少し身長が高くてな。年齢は身長と同じで少し上だな。それと髪は銀色で……目はなんだろうな。色々な色が混ざった感じだ。それと、ミラは聖女だから傷を癒していたらそれがミラだ」


「聖女!!? それって、セシル様と同じ!?」


「あぁ」


俺の言葉に和葉は酷く重々しい顔をして、手で口を覆う。


そして、震えながら言葉を落とした。


「瞬。それは、もしかしたら、ヤマトに何者かが侵入している可能性があるわ」


「何?」


「少し前だけど、霊刀山で不審な人影が目撃されたの。それで、その人影の正体を探ろうとして、巫女姫様にお話を伺おうとしていた時に、巫女姫様が居ない事に気づいたのよ」


「何者かが巫女姫様を攫った可能性があると、そういう話か?」


「えぇ。その通りよ。オーロさん」


和葉の話に俺は激しい怒りを感じて、城から飛び出そうとした。


しかし、腕をオーロに掴まれてしまい、飛び出す事が出来ない。


「離せ」


「情報もなく、どこに行くつもりだ。戦力を自ら減らすバカがどこにいる」


「っ!」


「落ち着け。と言われて落ち着く様なモンでも無いだろうが、それでも落ち着け。焦った所で何も生まれん。どの道誘拐するのが目的なら、傷つける理由はない。能力を利用するのが目的だろう」


「……また、例の連中か」


「さて、どうかな。犯人は見てみなければ分からないが、どの道、助けるのならば慎重に行動する方が良い。分かるだろ?」


「……あぁ。すまんな。暴走した」


「いや、構わんさ。俺だって気持ちじゃあ飛び出してる」


「そうか」


笑いながら言ったオーロの言葉はおそらく真実だろう。


顔は笑っていても、目は怒りに燃えていた。




それから俺とオーロは和葉に案内され、城の中に入り、対策の為にと集まった者達の中に加わった。


だが、やはりというべきか。俺が加わる事に不快感を示す者達は居る。


「戻ってきていたのか」


「嫌な頃合いに戻ってくる」


「やはり不吉の象徴か」


ボソボソとこちらにも聞こえる様な声で囁き合う連中は、侍らしくなく、何とも情けない姿だ。


イチイチ意識を割いてやる必要すら無い。


だが、そんな連中でもヤマトの一員である為、このヤマトで最も誇り高き男が神刀を立て、鞘の末端であるこじりを畳に打ち付けながら声を上げた。


「静かにしろ。下らない事を語る暇があるのならば、巫女姫様に関する情報を口にしたらどうだ」


「「……」」


神藤時道。


ヤマトに現存する神刀で最も古き刀である『神風』の担い手でありながら、ヤマトで最も強く者の証である『睦月』を持つ男だ。


その強さは言うまでもないが、時道の生きる姿はまさに侍そのものと言っても良い物だった。


「さて、余計な話は終わったな? では本題に入ろう。諸君も知っている事と思うが、巫女姫様が突如として姿を消した」


「……」


「未だ巫女姫様の行方は分かっていないが、誘拐された物と我らは考えている。根拠としては二つ。一つは先日から報告に上がっている霊刀山の人影。そしてもう一つだが……忍衆の統領である波戸辺雷蔵が非番であるにも関わらず家に居ない事が確認された」


「まさか!? 波戸辺が!?」


「雷蔵は巫女姫様に関する事以外では動かない男。仕事すら真面目に行わない奴が消えたとなれば」


「巫女姫様に危機が迫っているという事か!!」


「静かにしろ!」


時道の話に場は騒然となるが、時道が一声かけるだけで再び静寂に戻される。


そして静かになった場で、時道は再び口を開いた。


「事態は急を要する。だが、ドタバタと慌てるばかりでは解決する事など出来ん。分かるな?」


「……しかし、そう呑気にしていられる状況でも無いだろう」


「当然だ。故に、巫女姫様の捜索の為に、それぞれの場所に人を送る。各地の役人と協力しつつ事態の解決を図れ」


「「「応」」」


時道が話を終え、一息吐いた後、他に何か報告がある者は居るかと周囲を見渡した時、俺の近くに座っていた和葉が手を上げた。


どうやら俺の代わりにミラの話をしてくれるらしい。


助かる。


「では私から一つ」


「話せ」


「本日、先ほど。天霧瞬が帰還した際に一つの報告を受けました。おそらくは巫女姫様誘拐事件と繋がりがあると思われる話です」


「……ほぅ」


和葉の言葉に時道の視線が俺の方に向けられ、俺は和葉の言葉を肯定する様に頷いた。


「どんな話だ」


「天霧瞬と共にヤマトへ来た少女が行方不明となりました。私はこの件が巫女姫様誘拐事件と繋がっていると考えております」


「その様なこと! あり得んだろう!」


「そうだ! その少女とやらが巫女姫様を攫ったのではないか!?」


「その可能性はありません」


「何故その様な事が言える!」


「何者かも分からぬ者に!!」


「確かに、その少女と話した事はありません。ですが、天霧瞬は確かに言いました。その少女は『聖女』であると」


「なっ!?」


「聖女、だと!?」


「まさか、セシル様と同じ、聖女だというのか!?」


「えぇ。確かな話です」


和葉の言葉に皆驚き、時道もまた目を見開いて固まっていた。


しかし、流石は時道と言うべきか。


すぐに硬直から復帰すると、俺の方へ視線を向けながら口を開く。


「瞬」


「あぁ」


「その聖女は、ヤマトの敵か。味方か」


「少なくとも敵ではない」


「……分かった。どの道、話をするにしてもまずは救出か」


「そうなる」


「ならば!! 瞬。お前には霊刀山へ行ってもらう。良いな?」


「無論だ」


こうして俺は和葉やオーロと共に霊刀山へ向かう事になったのである。

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