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第15話『行くぞ!! 瞬! オーロ!!』(瞬視点)

(瞬視点)




どれだけ間違えれば気が済むのだろうか。


何度も、同じ過ちを繰り返して、また失うのか!


俺は巫女様とミラに駆け寄ろうとして、モンスターに弾き飛ばされながら、失われた者達を想った。


「情けない限りだが! まだ終われん!」


俺は歯を食いしばり、意識を繋いで空中で反転する。


そして、トドメとでも言わんばかりに体の一部を細く長く伸ばし、俺に向けて放ってきたモンスターの一撃を『如月』で受け、衝撃を受け流しながら体をさらに回転させ、続く二撃、三撃目も弾いてゆく。


「瞬! 無事か!」


「あぁ! 問題ない!」


空中で勢いをつけたまま、俺はモンスターの体の上を走り、大きな水の塊の様に見える本体へと走る。


モンスターは、自分に向かってくる俺を仕留めようと更なる追撃を仕掛けてきたが、ミラよりこの体が魔力そのものだと聞いている以上、対処は容易い。


そう。神刀なら全てを切り裂く事が出来るのだから!!


「そこだっ!」


俺は巨大な水の様な塊に接近し、モンスターの本体を切り裂こうとした。


しかし、『如月』でモンスターの外側を切り裂いても、モンスターの本体は『如月』の生み出した衝撃で弾かれながら魔力の中を飛び回る。


うまく衝撃を逃がされてしまったようだ。


「くっ」


結局切り捨てる事は出来ず、俺はオーロや時道の居る場所へと跳んだ。


「弱点が分かっていても容易くは無いな」


「しかもミラたちが居なくなってから動きが変わったぞ。俺達をミラの所へ向かわせないつもりだ」


「……確かにそうだな。巫女姫様とあの少女をどうするつもりだ? アレは。まさか食うというワケでも無いだろうが」


「分からん。だが、いい気持ちはしない」


オーロと時道の話を聞きながら俺は思考の海に沈む。


俺達がここから動かない以上、モンスターもこちらを攻める気は無いようだ。


そして、どうやら直接巫女様とミラの元へ向かわなければこちらに攻撃をする意思も無いらしい。


宗介と和葉が遠回りに下へ降りてゆく時も邪魔はしなかった。


「瞬」


「あぁ、分かっている。二人の事は宗介と和葉に任せよう」


「そうだな。二人の方が適正は高い」


「ならば……こいつは俺達で倒そう」


雷蔵は天霧蒼龍と激しい争いを繰り広げながら頂上から何処かへ消えた。


おそらくは天霧蒼龍の邪魔をひたすらにしているのだろう。


頂上に残ったのは俺と時道とオーロの三人だ。


この三人でモンスターを倒さなくてはいけない。


巫女様とミラの安全の為にも!


「例えば、だが……オーロが使える魔術であのモンスターをどうにかする事は出来るか?」


俺はまず確認とばかりにオーロへと問い、時道も同じ様にオーロを見る。


しかし、オーロは静かに首を振った後、その理由を語った。


「駄目だ。ミラが言っていた通り、あいつの外側が魔力の塊なら、魔術はおそらくほぼ通らない。やるなら物理的にやるしかないな」


「物理的に?」


「そうだ。魔術そのものをぶつけても意味は無いだろうが、例えば魔術で崖を崩せば破壊された岩が襲い掛かるだろ? そういうのは止められないって事だ」


「なるほどな」


だが、それが決定打にはならない。


オーロは言葉でこそ最後まで言わなかったが、気配がそう俺たちに告げていた。


そもそもやろうと思えば俊敏に動けそうな奴だ。


埋めようとしても逃げるだろうし、体が水の様な状態なら隙間から抜け出してしまうだろう。


「そうなると、やはり物理攻撃で仕留めるしかないという事か。そういう事だな」


「何か策でもあるのか? 時道」


「ない!!」


「……」


「だが、ある」


「どっちなんだ。ヤマトの大将さんよ」


「ふふん。オーロ。お前は確かに強い。頭も回る。そして瞬と共に戦ってきた経験から、我ら侍の事をよく知っているのだろう。それは分かる」


「あぁ」


「だが、足りない。その程度の理解では、俺達の事を理解したと思うには程遠い!!」


時道は、頂上に来てから握っていた『睦月』を鞘に納め、『神風』を再び抜いた。


そして、笑う。


「良いか? 俺達侍に小賢しい策など必要ない。そう! 必要なのは、圧倒的な力だ! 全てを砕く力こそ、我らの示す最上の手になる!」


「時道……! まさかお前!」


「あぁ、そうだ。俺は、新たな技を身に着けた! みせてやろう!! 俺の編み出した新たなる技を!!」


時道は『神風』を両手で握り、上段に構えてからモンスターを睨みつける。


そして、時道の敵意に反応したのかこちらに向かってきたモンスターに時道は勢いよく『神風』を振り下ろした。


速い……!


「神凪!!」


瞬間、世界が止まるのを感じた。


そして、モンスターは両断され、風が暴風の様に吹き荒れる。


「ふっ、どうだ。瞬。俺の強さを見たか」


「あ、あぁ」


「ふふふ。この事件が終わったら摸擬戦をするのも良いだろう。俺ばかりお前の技を知っている状況では次回の祭りで不平等だからな。存分に見せてやろうじゃないか」


「いや、それは良いんだが」


「ん?」


「既にモンスターは復活しているぞ」


「何ィ!?」


時道は俺の言葉に背後からの攻撃をかわして、距離を取りつつ、時道に大きな脅威を感じたのか攻撃を仕掛けるモンスターの手を『神風』で弾く。


「バカな!? 俺の新技が、効かない!?」


「お前! 話を聞いてたか!? 神刀じゃあ結局どれだけ威力があっても、その威力で本体が弾かれて倒せないってミラが言っていただろう!」


「その様なもの! 俺の新技なら蹴散らせると思ったのだ」


「……とんでもない戦闘バカだな」


オーロは時道の行動に呆れながらため息を吐き、俺は時道らしいなと笑いながら援護をする事にした。


しかし、そこで気づいたのだ。


これは一人一人で行うから倒せないのではないかと。


ミラが言っていた、巫女様にしか出来ない役割というのは、俺達が振るう攻撃で逃げる方向を予測して貰い、そこに他の誰かが追撃する事では無いかと。


頭の中で、正解です! 瞬さん! と笑うミラが浮かび、俺は笑った。


「オーロ! 時道! 一つ策を思い付いた」


「ほぅ! なんだ瞬! 新技か!?」


「瞬……お前までアホをやるんじゃないだろうな?」


「違う。このモンスターは俺達が攻撃すると逃げる性質があるのだろう? ならば連携だ。


「……なるほどな」


「どういう意味だ瞬!」


「時道が先ほどの技を放ち、本体が逃げたところを俺の天斬りで更に追い詰める。そして最後にオーロが残った本体を撃ち抜いてくれ」


「……」


「……」


俺の提案に二人は黙り込んでしまい、俺は少し怯んでしまった。


が、すぐにオーロが口を開き、世界は進み始める。


「まさか、瞬の口から連携という言葉が出るとはな」


「連携技の名前を考えなくてはいけないな!」


「……そうだな」


「おぉ! どんな名前にする!? 良い候補はあるか!? 入れたい言葉もあるだろう!?」


今までも誰かと戦う事はあったが、それでもどこか一人で戦おうとしていた様な気がする。


しかし、それでは届かない物があると知った。


守る為には一人で何とかする事が大事なのではないと理解した。


そうだ。


間違えるな。


俺はただ強くなりたい訳じゃない。


大切なモノを守る為に……! 強くなりたいのだ。


その為なら、必要な事は全てしてみせよう。


「おそらく、ミラは巫女様の力で本体が逃げる方向を予測してもらうつもりだったのではないか?」


「……なるほどな」


俺達はモンスターの攻撃をさばきながら、話を進める。


「だが、ここに巫女様が居ない以上……! やる事は一つだ」


「もはや逃げ場がないほど、徹底的に砕くのだな!?」


「そういう事だ」


「はぁ……結局は力技か」


オーロは呆れながら、手ごろな剣を抜き、魔術を使って刀身を燃やす。


そして、時道は既に先ほどの技を放つ準備をしていた。


「行くぞ!! 瞬! オーロ!!」


「あぁ!」


「わかったよ!」


「神凪!!」


「天斬り……!」


「燃えて砕けろ!」




それから俺達は逃げ場がないほどに、モンスターを追い詰め、遂にはその活動を完全に停止させる事に成功するのだった。

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