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第14話『私の方が楓ちゃんよりお姉さんですからね』

ここまで頂上で行われたモンスターと皆さんの戦い。


楓ちゃんから聞いた未来を視る力。


そして、バラバラになったモンスターが復活する際に見せた大きな魔力の動き。


それらの事を総合し、モンスターの生態を把握したと宣言する。


「モンスターを倒す為に必要なのは力ではありません。モンスターへの理解です! そして理解を進めれば、彼らは未知のモンスターから魔物という分類へと至り……」


「その辺の話は後で良い! まずはこいつを大人しくさせる方法を教えてくれ! ミラ!」


「あ、そうでしたね。これは失礼しました」


オーロさんの言葉に、私は暴れているモンスターへと視線を向けた。


しかし、今気づいたのだけれどこのモンスター……頂上に来てから一度も私や楓ちゃんに攻撃して来ない。


弱いから? 神刀を持っていないから? いや、でもたまに雷蔵さんへは攻撃してるし……。


謎だ。


「うむむ。何かあるんでしょうか?」


「ミラ!」


「あっ! 申し訳ございません! ちょっと別の事を考えてました。それでですね! そのモンスターの外側にある水の様なものは全て魔力です! おそらく周囲の魔力を集めて液体に見える程に圧縮した高濃度の魔力です! だから魔力を斬る事が出来る神刀で斬る事は出来ますが、あまり意味はありません!」


ここまで自分で言って思ったけれど、神刀でも無いただの枝であのモンスターをバラバラにした、天霧蒼龍さんは何者なんでしょうか。


いや、瞬さんのご先祖様なのだろう、という事は分かるんですが……あまりにも人間離れした存在に思える。


「……」


『なんだ? 続きを話せ。どうすればアレを消せる』


「あっ! いえ! そうですね。はい! あのモンスターの外側は魔力を集めただけの存在ですから。モンスターの本体を攻撃する必要があります」


「モンスターの本体?」


「はい。魔力の濃度が濃くてよく見えないかもしれないですが、モンスターの中心部にいくつか浮かんでいる物が見えますか? あれが本体です」


『なるほどな。それが分かればもう十分だ。俺様が』


「天霧蒼龍さんだけでは駄目です!」


『アン? 俺様だけじゃ駄目だと? 俺様の力がまだよく分かってねぇみたいだな』


「いえ。分かっています。その上で駄目だと言っているんです」


『ほー。俺様の動きも目で追えない様なガキがよく言う。それで俺様の何が分かるってんだ。言ってみろ』


「はい! 途中経過が見えなくても、始まりと結果が見えれば分かります。天霧蒼龍さん。貴方の一撃は確かに強いですが、その力が広範囲過ぎて、あのモンスターの本体に届いていないんです。魔力の壁に阻まれて、衝撃を散らされている」


『……』


天霧蒼龍さんは私の言葉を聞いて、即座にモンスターへと飛び込んで、大きく枝を振るった。


しかし、やはり衝撃は分散されて本体は少しも傷を負っていないのだった。


『なるほどな』


天霧蒼龍さんは小さく言葉を呟いた後、次の瞬間には私のすぐ近くで雷蔵さんと拳をぶつけ合っていた。


「え? え!?」


『どけ。小僧』


「断る。この少女は巫女姫様の客だ」


「わ、私の言葉が気に障ったのでしたら謝罪しますが……!」


「違う! 下がれミラ!」


「え!?」


私は楓ちゃんに後ろから抱きしめられ、そのまま引きずられてしまう。


そして、見えないけど、目の前で多分雷蔵さんと天霧蒼龍さんが激しい戦いをしていた。


『あの小娘は俺様が有効活用してやる。お前らでは宝の持ち腐れだ』


「それを決めるのは俺じゃない。巫女姫様だ」


雷蔵さんの動きは人間離れしていて、同じく人間じゃない天霧蒼龍さんと対等に見える様な戦いをしていた。


二人がぶつかり合う衝撃で、空気が爆発した様な衝撃があり、私は楓ちゃんと共に崖下へと飛ばされてしまうのだった。


「ミラ!!」


「巫女様!! ミラ!」


オーロさんや瞬さんの声は聞こえたが、あのモンスターが間に居る為手は届かず、私は自分よりも小さな楓ちゃんをギュッと抱きしめて山の斜面を転がり落ちてゆく事になった。




どれだけ時間が経ったのか分からないが、私は鈍い痛みの中で目を覚ました。


目の前には心配そうに私を見ている楓ちゃんが居て、私は楓ちゃんに看病して貰っていたのだと悟った。


「っ! ここは」


「霊刀山の裏側じゃ。まったく無茶をしおって」


「ま、まぁ。私の方が楓ちゃんよりお姉さんですからね、いたた」


「何がお姉さんじゃ。子供の癖に」


「子供じゃありませんよ。立派な大人です」


「ほー。じゃあどんな所が大人だと言うんじゃ? 言ってみい」


私は自分の体を癒しながら、立ち上がり周囲を確認して口を開く。


「まず、私は既に国のお仕事を何度も手伝った事があります」


「そのくらい。わらわはもーっと小さな頃からやっていたぞ」


「む」


「なんじゃ。その程度かー。ならミラよりわらわの方がお姉さんという事になるな」


「それだけじゃありませんよ! 私は! その……」


私はムキになってセオ殿下の事を話そうとしたが、何だか急に恥ずかしくなってしまい続きを口に出来なくなってしまう。


「なんじゃ? 何も無いんじゃろう。さぁさ。わらわの事をお姉ちゃんと呼んでも良いぞ?」


「私は、婚約者がいます。今は旅をしていますが、この旅が終わったら結婚するつもりです」


「婚約者!? 結婚!?」


驚いている楓ちゃんを見て、少しだけ心が落ち着いた私はニコリと笑って、続きを話した。


「そう。結婚は、大人にしか出来ない事ですからね。私は立派な大人という事です」


「ふ、ふん。じゃが、まだ婚約じゃろ。実際に結ばれたワケではない。というよりも、まだまだ子供じゃから出来なかったというコトじゃろ」


「そんな事ありませんよ! セオ殿下は私と今すぐに結婚しても良いと言っていました! ですが、私には世界を見たいという夢があったため、それを優先しても良いと言って下さったのです」


「口ではどうとでも言えるじゃろう。まぁ、お優しいミラの婚約者殿は、子供だからと言わず、そういう理由にしたんじゃないか?」


「むむむ!」


「ま、ミラもまだまだ子供なのは良く分かった。それで……「わ、私は、セオ殿下と、その……口づけをした事があります!」え」


私は顔が熱くなるのを感じながら、それでも叫んだ。


そう。私はもう子供では無いのだ。


それを証明する為なら、多少の恥ずかしさなんて……! なんて!!


『おぉ……最近の女子は進んでいるな』


『我らが生きていた時代はもっと慎み深かったが』


『まぁ、外の世界とヤマトは違うのだろう』


『巫女姫様。お気になさらずとも、巫女姫様を悪く思う者などおりますまい』


『そうそう。巫女姫様がお望みになればいくらでも』


「そ、そうじゃな……って!? お主等! どこから出て来た!?」


突然現れた神刀を持った人々は、まるでお父様やお母様の様な穏やかな顔をしながら私達の周囲を囲み、微笑んでいた。


山に入った時は襲ってきたというのに、今はそんな気配を少しもさせていなかった。


『どこからと言われましても。我々はこの霊刀山のどこにでも行けますからね』


『巫女姫様とお客人が護衛もなく山を歩くとなれば、我らが護衛しなくては』


『担い手を求める情動が暴走しておりましたが、流石にこの状況では冷静にもなりましょう』


「そ、そうか。それは良かった」


安心した様に笑う楓ちゃんを見ながら、私は神刀さん達の間から見える景色に心の中でため息を吐いた。


見渡す限り、木と木と木しかない。


少なくとも山を登る時にあった様な道は存在していなかった。


だいぶ厄介な事になった様だった。


「……困りましたねぇ」


しかも、最悪な事に私の呟きに反応したワケじゃないと思うが、頂上に居たモンスターとよく似たモンスターが私たちの前に空から振ってきたのである。


「っ!?」


「まさか、ここまで追ってきたのか!?」


「いえ、これはおそらく別個体です!」


私は楓ちゃんの前に立ちながら、おそらく効かないであろう魔術を構えて、モンスターを見つめるのだった。

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