第4話 結びつく利害
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〝サファイアの海〟と称される海を軍艦から見下ろすと、ダーツ・フィッシュが一対の羽根を広げ、水面を飛び跳ねた。
味が不味いせいで売り物にはならず、普段は外道と毛嫌いされる魔物。
しかし今は冒険を見送りしてくれるかのようで、自然と心が洗われた。
暫く冒険者らがこの世の楽園のような景色を眺めると、次第に離島が目と鼻の先まで近づく。
船は水色の軍服に取り囲まれて見えないものの、物々しい雰囲気が、〝それ〟の在り処を示していた。
軍艦が島に数隻、着陸する姿はさながら戦時を彷彿とさせるが、あれはいったい何故あるのだろうか。
「よーし、いっちょう儲けるぜ!」
「ハイ、頑張りましょう」
冒険者らが互いを励ましあうと
「ずいぶん勇ましいものだが、イアン殿はキャビンを開けた直後に、魔獣に連れ去られたという。つまり入るにも、常に危険がつきまとうということだ。我々は頻繁な船への出入りを想定していない」
と、ライリーは端的に告げる。
困惑した冒険者が
「ああ、確かに活動内容は不定期とあった。得心がいったよ……この軍艦はそれと何か関係あるのか?」
と、問うと
「先述の通り、出入りもままならん状況だ。なればこそ外部に頼らず活動できるよう、船内に拠点を設ける必要性が生じるわけだ。その為の資材を運搬している。戦うばかりが能の冒険者諸君には、我々帝国軍の苦労はわからんだろうがね」
「あー、本当に嫌な奴だな。アンタは一言余計なんだよ、た・い・い・ど・の!」
嫌味ったらしく話すライリーを睨み、冒険者はそっぽを向いた。
行動の筋は通っているが、もう少しやんわりと伝えられないのか。
彼らが不快感を露わにした最中、デコを出したオールバックが特徴の垂れ目の軍人が接近し
「うっわ〜、大尉殿と冒険者が一触即発だ。人望ないんだねぇ、大尉殿は。君たちはこの人の嫌味にいちいち苛々しすぎだよ〜。精神安定のお薬でもあげようか〜。ニシシッ!」
「ジェレミー衛生隊長。今はともかく、任務中は私語は謹んでもらおう。君の発言は他人を酷く不愉快な気分にさせる」
「ごめんちゃ〜い。俺は万人を平等に扱うからねぇ。つまりみ〜んな、おちょくるってことだけど♪」
口許を緩め、悪びれもせず微笑を湛える彼を一言で言い表すならば〝軽薄〟。
軍人として以前に、人としてまったくもって信用ならない男である。
「嫌味男と軽口野郎が。用件がねぇなら、さっさと消えろよ。お前らの面を見てると腹が立つ」
「私は冒険者諸君のように暇ではないさ。君たち、例の物を彼らに」
「ハッ、大尉」
そういうと軍人は羊皮紙とペンを手渡す。
眉を顰めた彼らへ
「冒険の前に渡しておく。余裕があれば魔物の行動を記録しておくこと。詳細で精確な情報であれば、それなりの値段で帝国軍が買い取ろう。無論、魔物の危険度に応じて報酬額も上げてやる。命知らずの無法者のお前たちには、願ってもない提案だな」
と、ライリーは冒険者へ持ち掛けた。
有益な情報の共有は安全かつ迅速に任務を果たすためにも、軍は喉から手が出るほど欲していた。
危険を犯すのを報酬という形で報いるならば、冒険者たちも異論はない。
「あと船内で得た魔物や採集品が素材の武具は、特別に船内で販売する予定だ。質の高い装備があれば、さらに効率よく稼げるぞ。帝国軍の叡智と技術の恩恵にあずかれる幸福を感謝し、未知の船の探索に励んでくれたまえ」
「裏はありそうだが、俺らにとっても利益はある。乗ってやるよ、アンタの思惑にな」
「ああ、君たちの健闘を祈る」
はにかむライリーは、白く輝く歯を覗かせた。
だが濁りきった双眸は、冒険者たちには向けられていないのであった。
新人尉官 ローレン・ミッチェル少尉
職業·魔法使い(ウィザード)
種族·人間
MBTI:ISTJ
アライメント 秩序·善
碧眼金髪の新人女性尉官。
口数は少なめだが実直で真面目に職務に取り組む、絵に描いたような理想の軍人。
周りと比べると華奢で身体能力の低いものの、高度な魔法技術で補い、士官学校を卒業した。
冒険者との対立にも臆せず、時折冷徹かつ合理的な判断を下すライリー大尉を、内心頼もしいリーダーだと認め尊敬する一方で、恐れを抱いている模様。
衛生部隊隊長 ジェレミー・ロス
職業·薬草師
種族·人間
MBTI:ENTP
アライメント 中立·中庸
常に口許を緩めニヤついた、垂れ目が特徴の男性。
日頃から人をからかうような喋りをし周囲を苛立たせる。
仕事の面で足を引っ張ることはないものの、普段の軽薄な態度で仲間からの信頼度は低め。
しかし衛生部隊の職務に誇りを持ち、人命を第一に考える、熱い心根の持ち主。