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第3話 確執と支配

作品に目を通していただき、ありがとうございます。


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かつて海から帰ってきた男たちと、その恋人が愛を深めたというアマトゥルの大広場に、所狭しと冒険者一同が集められた。

蒼の詰襟を着用した軍人は苦虫を噛み潰したように険しい面様で固唾を呑み、演説を見守っている。


「では大尉。どうぞ」


異世界の道具だという拡声器を手渡すは、ローレン・ミッチェル少尉。

士官学校を卒業したばかりの新人であり、実務経験は浅い、女性尉官だ。

透き通る白い肌に碧の宝石を思わせる瞳、短く切り揃えた鮮やかな金髪。

見た者を魅力する整った相貌だが、周囲の冒険者や軍人と比較するとやや華奢で、場違いな印象を見る者に与えた。

しかし彼女も選ばれし精鋭には変わりない。


「ありがとう、ローレン少尉。言葉を濁すのは得意ではないので、率直に伝えよう。私は調査隊グロリアの全権を握る指導者であり、君たち冒険者の生命は、今から帝国軍の統制下に置かれる。船内の踏破に指示に従わぬ、感情を宿した駒は不要だ。私からは以上」


鼓舞や称揚もない淡々とした語りには人の感情が欠落しており、腹話術の人形が喋っているようだった。

冒険者を道具とみなす〝統制〟、〝駒〟といった類の単語が次々に並べられ、屈強な漢の額に青筋が浮かぶ。


「横暴だぞ、テメー!」

「お前じゃ話にならねぇ、元帥を出せぇ!」


言い終えた直後、気性の荒い一同はライリーへと食ってかかるのだが


「逆らうというなら構わん。だが我々軍の精鋭の回復や魔法の支援を受けられるのは、軍属の冒険者のみだ」


冒険者の非難へも屈さず、断言した。

射抜くような眼力が単なるこけおどしではないと物語り、冒険者らは立ち竦む。

蛇に睨まれた蛙が自らの立場を悟るが如く、ライリーの放つ並々ならぬ闘気に気圧され、沈黙した彼らに間髪入れず


「無論それ以外の冒険者が、船に許可なく立ち入ろうものなら、我々は帝国の治安維持を名目に、容赦なく制裁を加える。大陸有数の軍事力を誇るサピル・シヌス軍が味方につき、支援までしてくれるのだ。お前たちのようなゴロツキにとっても、悪い話ではないと思うがな」


冒険者への利害と敵意を率直に述べた。

軍を味方につけるか、敵に回すか。

後者には一切の利益はなく、ただ死期を早めるのみだ。

高圧的な物言いには腹は立つが、冒険者としての活動に、後方支援は欠かせない。

この期を逃せば稼ぎのいい依頼は、いつ舞い込むだろうか。

なに、少しの間だけ我慢すればいいのだ。

ゆっくりと深呼吸する冒険者らからは、そんな声が聞こえてくるようだった。

つまらぬ意地を通して利を逃すほど、彼らとて間抜けではない。

軍人、冒険者の幾人かは青年の強引な手段に顔を引き攣らせ、畏怖の念を込めて視線を送る。

ライリーが我が物顔で闊歩し、軍艦へと向かい


「覚悟は決まったかな。乗りたまえ、諸君」


振り返り促すと


「ありゃ? 港じゃねぇのか、あの船は」


冒険者の1人が訊ねた。


「民間人がみだりに船へ乗らぬよう、軍が港から付近の離島へ移動させたのです。皆さん、お気をつけて軍艦へ搭乗してくださいね」

「……つまりアンタらがいなければ、俺たちゃ往復もできねぇのかよ……これもアンタの指示なのか?」

「意地の悪いことをいうな。民草の平和を守る、最善を尽くしただけだろう?」


少尉が何気なく口にした一言に、勘の良い冒険者が察すると、ライリーは薄笑いの後、口角の片側を吊り上げた。

青年の策謀の一部となれば、もう2度とは帰れない。

……死地の旅から、帝国へと。

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